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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第四十一話 ~ 王立アカデミ-の休日 ➄ ~

第四十一話 ~ 王立アカデミ-の休日 ➄ ~ 序章



 マノンとレナが恋人同士になったとはいえ、二人の関係に大きな変化があるわけでもない。


 どちらかと言えば、周りの人たちに方に変化があったといってよい。

 マノンもレナも気付いていないが、この二人はアカデミ-でも上位にランキングされる今期の生徒達のお相手探しのターゲットだったのだ。


 その二人がくっついたと知れれば話題となるのは当然とも言えるのだが……。






第四十一話 ~ 王立アカデミ-の休日 ➄ ~ 




 二人が恋人同士になり数日が過ぎた。

 

 ある日……マノンとレナはいつものように中庭のベンチで話しているとエレ-ヌがこちらに歩いてくる。

 「エレ-ヌ」

レナが声をかける


 「やあやあ、二人とも相変わらず仲がいいね……まるで恋人同士みたいだよ」

エレ-ヌが冗談交じりに言うと


 「そうかしら……」

レナが恥ずかしそうに言う、それを見てエレ-ヌが


 「二人とも、人気者だからこれから大変だねぇ~」

と意味ありげに少し笑って言う


 「何が大変なの」

レナが私と顔を見合わせ不思議そうに言うと


 「そっか……意外と当事者は知らないからね」

言うと事情を話し始めた


 「マノンもレナも、今期のパートナ-争奪戦のターゲットになってるよ」

 「要するに、お付き合いする相手探し標的になっているって事だよ」

 「二人とも、選り取り見取りだよっ!この幸せ者っ!!」

茶化すように言う、私とレナは顔を再び見合わせ


 「パートナ-争奪戦のターゲットッ! 何の事!!」

何の事か分からないので吃驚する。


 マノンはレナを、レナもマノンの事しか見えていなかったので、お付き合いする相手探し……なんてものは関係がなかったが周りはそうではない。


 卒業を控えた二回生にとっては、正にラストチャンス……。

 美少年で優しくて優秀なマノンと、美人で巨乳でナイスバディのレナは格好の標的なのは当然なのである。


 私とレナは、顔を見合わせたまま、お互いが相槌を打つとレナが言い難そうに

 「あの~エレ-ヌに言っておきたいことがあるんだけど……」

 「じつは……私達……付き合ってるの……」

レナが小さい声で言うとエレ-ヌが無表情になる


 「……えっ!!!」

暫く唖然としていたエレ-ヌの顔が引きつる。


 「この前、そんな仲じゃないって私に言ったよね! 確か言ったよねっ!!」

 「あら~……私、皆にマノンとレナはそんな仲じゃないって言っちゃったよ」

 「あの時のオッパイ揉み揉みもガチだったのね……やっぱり、そういう関係なんだ」

エレ-ヌは私とレナを横目で見る


 「違うっ! あれは本当に違うのよっ!!」

レナは必死に否定するが


 「ホントに~」

エレ-ヌは疑惑に満ちた眼差しで私とレナを見る


 「それより、二人とも"私達、ヤっちゃってます"宣言した方がいいよ」

エレ-ヌが真面目そうに言う

 「だからっ! ヤってないんだってっば!!」

 「本当にまだ、キスしかしてくれないのよっ!!!」


混乱したレナが顔を真っ赤にして墓穴を掘る……エレ-ヌが私を見て

 「この甲斐性なしっ」


と目を細めて小さな声で軽蔑したように言った。


 私は、下を向いたまま黙るしかなかった。


 それからの四日間は、私もレナも呼び出しの連続だった。

 私もレナも「ごめんなさい……」を何回言ったか……。


 私とレナが付き合っている事は、アカデミ-で話題となったが、周りも周知の事となると落ち着きを取り戻していった……。


 それから数日後……レナと二人、疲れ切った様子で中庭のベンチで日向ぼっこしている…。


 私は、予てからレナを魔法工房に連れて行きたいと思っていたので丁度良い機会だと思っていたのだった。

 それに、あそこにはレナの好きな大量の書籍と温泉がある。


日が傾き、宿舎への帰り道に私は疲れた表情のレナを見ながら

 「ねえ……レナ……明日、私にちょっと付き合ってくれない」

レナに言うと


 「いっ、いいわよ……付き合うわよ」

レナは弱々しく言った


 「じゃ、明日の朝、宿舎に迎えにくね……それと、下着と服の着替えも用意しておいてね」

 私はレナに何気なく言うと


「きっ!着替えって、しっ!下着も!!っ……わっ分かった……」

焦ったように言うとその後は何も言わなくなった。


 別れた後、シャワ-を浴びてベッドに入る

 「レナちゃんを、工房へ連れて行くのか」


爺が話しかけてくる

 「うん、レナには知っておいてもらいたいから……温泉にも入りたいし」


私が言うと


 「そうじゃな……お前さんがそうしたいなら、わしは何も言わんよ」

そう言うと気配を消した


 朝になり、女子寮の前に行くと既にレナは鞄を持って私を待っていた

 「おはよう……レナ」

私はいつものように挨拶をする。


 「おっ! おはようございますっ!」

なんだかレナは緊張しているようだ。


 「じゃあ、行こうか……」

そう言うレナも小さく頷く……


 王立アカデミ-を出て教会の方に向かって歩き出す、行先は、以前に言った事のある塔の天辺の展望台だ。

 歩いていると、半年ほど前の事が記憶に蘇ってくる。

 レナと一緒に塔の階段を登って行く

 「マノン……どこへ行くの」

レナは不安そうに私の顔を見て言う


 「もうすぐ着くよ」

私は笑って言うと、レナは不思議そうな顔をする。

塔の天辺に着くと私はレナに私に掴まる様に言うと……レナは私の腕に掴まる。

 「しっかり捉まっててね」


レナにそう言うと私もレナの腕を掴む

 「爺、もういいかな」

心の中で爺に呟くと


 「いいじゃろ」

 爺が言うと同時に転移ゲ-トが発動する。

 ……眩い光が私とレナの周りを包みこむ……。

 私の腕を掴むレナの手に力が入る。


 「もういいよ……レナ」

私が言うとレナが暗闇の中で(つぶ)っていた目を開く


 「なに……ここ……どこなの」

レナが怯えたように言うと徐々に周りが明るくなってくる。

 ……目の前に聳える巨大な魔法工房が見えてくると

 「凄い……何、大きなこの建物」

レナが驚いたように言う


 「ここが、300前の伝説の大賢者パトリックの魔法工房だよ」

 「ヘベレスト山脈にあるウイニ-山の山腹の中だよ」

私が驚いているレナを見ながら言う


 「パトリックさんの魔法工房って……ヘベレスト山脈って……」

完全に混乱している……無理もないことだ……そして……

 「パトリックさんて本当は凄いお金持ちだったんだ……」


小さな声で言った……それを聞いた私はレナも考えることは私と同じなんだなと思った


 私が巨大な扉の前に立つと音もなく扉が開く、混乱しているレナの手を取ると工房の中へと入っていく。

 レナは、ただ呆然としている……レナと一緒に絨毯に乗り魔法刻印を踏む……音もなく絨毯(じゅうたん)が動き出す。

 「ひぃ……絨毯が勝手に動いてる……」

怯えながら私の腕を強く掴む


 「心配ないよ、もうすぐだよ」

私はレナを見て微笑む……レナは、何も言わず私を見ると頷いた。

 

 ある部屋の前で、絨毯が留まると私はレナの手を引いて絨毯から降りると扉を開けて中に入る。


 そこは、魔法工房の図書室だ、広い部屋の本棚に並べられた膨大な書籍を目の当たりにしてレナが呆然している……そして……。


 「すっ……凄いっ! これ何冊ぐらいあるの……」

レナは王立アカデミ-の図書室を上回るほどの膨大な書籍を目の前にして少し興奮気味だ。


 私は爺に何冊ぐらいあるのかと尋ねると

 "そんなもん数えてもおらんから分からん"

 "ざっと……ん~……15万冊ぐらいかな"

じじいにもよく分からないようだ。


 レナは大好きな本に目を輝かせているのがわかる

 「じっ、パトリックさんの話だと15万冊ほどらしいよ」

私が何気なく答えると


 「じっ、じっ、15万冊っ!!!」

 「はぁ~」

レナは気絶しそうになると

 「凄いよっ! 王立アカデミ-の図書室より5万冊も多いじゃないっ!!」

レナの視線は大量の本に釘付けになっている。


(ガリア王立アカデミ-の図書館は大陸屈指の蔵書量を誇っている)



 私はそんなレナの様子を微笑ましく見ていると

"レナちゃんは本当に本が好きなようじゃの"

"どこかの誰かさんにレナちゃんの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいの"

笑いながら厭味ったらしく言うと

"レナちゃんにはどれでも好きなだけ読んでもいいと言ってやるがよい"

爺は嬉しそうに言うのだった


 爺と話し終えると私はレナの視線に気が付く

「パトリックさんがどれでも好きなだけ読んでもいいと言ってさ」

私がそう言うと


 「ありがとうっ! パトリックさんっ!!」

そう言うとレナは図書室の中へと駆け出した


 本棚に並べられた本を次々に手に取ると

 「これって王立アカデミ-のある医学書の原本じゃないのっ!」

 「こんな本もあるんだ……」

 「こんなの見たことも無いわ」

目を輝かせ感動に打ち震えるレナの声が図書室に響く。

 以前、カルベネの本屋の主人がどうして本を半値に値引きしてくれたのかがようやく私にも理解できるのだった。


 王立アカデミ-にも図書室はあり本の閲覧は自由だがどんな本をいつでも閲覧できるわけではない。

 大勢の学生が図書室を利用するので目的の本が閲覧できない事も多々あるのだ。

 当然、貴重な本の貸し出しなどは一切行われておらず図書室内での閲覧のみに限られている。


 レナのような本好きにとっては、ここはまさにパラダイスなのである。

 そんなレナを見ていると温泉には当分入りそうにない……。


 暫くの間、私は本に夢中になっているレナを見守っていたのが流石に退屈してくる

 「レナ~、私、少し行きたい所があるから」

 「少ししたら戻ってくるから」

本に夢中になっているレナにそう伝えると


 「分かったわ~」

レナは私の方を見向きもせずに適当な返事をするのだった。


 「本にレナちゃんを奪われたようじゃな」

爺が笑いながら言う


 「ははは……はぁ~」

私は無性に虚しい気分になった。

そんな時には温泉にでも浸かって身も心も癒すに限る。


 私は図書室を出ると温泉に向かう、服を脱ぎ温泉に漬かるとホッとする。

 やっぱり、私には本よりこっちの方が良い……そうしていると爺の声が聞こえてくる。


 「お前さんに話しておきたいことがある」

いつになく真剣な爺の口調に私は重要な話だと予感がする。


 「……これから話すことは少し酷かもしれん……」

 「じゃが、話さないわけにもいかんからの」

そう言うと爺は話始める


 「単刀直入に言う、お前さんとこの世界の女子との間に子供は出来ない」

 「厳密に言えば、子供が出来る確率は極めて低いと言った方が良い」

 「歴代大賢者で子供が出来た者は一人もおらん」

爺の突然の宣告に私は何の事なのか理解できないでいる

 「子供が出来ない理由は、お前さんが先祖返りしているせいなのじゃ」

 「今この世界の住人と旧世界の住人とでは似て非なる者なのじゃ」

 「つまり……同じ人類なのじゃが、種が違うのじゃ」

爺の突然のウンチクに呆然としている私だったが、何故か冷静だった


 「それって、レナと"交わる"っても子供が出来ないってことだよね」

私が淡々に言うと


 「そうじゃ……」

 「今まで何も言わず、すまなんだ……」

 「隠す気は無かった……ただ、言い出しにくくてな……」

爺の苦悩する言葉に私には、これが仕方のない事だというのは理解できた


 「いいよ、何となくそんな予感がしてたよ」

 「だからなのかな……レナに……」

私が途中で言うのを止めると


 「エッチな事をしないのは」

と爺が続きを言う


 「そうだよ……」

私は爺の言葉を否定しなかった。


 「問題は、この事をどうやってレナちゃんに伝えるかだ」

爺が深刻そうに言うと


 「ありのままを伝えればいいんじゃないの」

私が何の躊躇いも無く言うと


 「あのなぁ……お前さん……」

 「レナちゃんはお前さんとは違うのじゃ」

爺は呆れ果てた口調で私に言う


 「へっ?」

訳が分からずに唖然としている私に爺がその訳を話し始める


 「お前さんのレナちゃんに対する好きと、レナちゃんのお前さんに対する好きは」

 「違っているのじゃよ……」

 「つまり、レナちゃんは……その……何と言うか……」

爺はどう言ってマノンに説明して良いのか悩んでいる。


(マノンのプラトニックな愛とレナの実質的な愛では同じ愛でも求めるものが異なっていると爺は言いたいのだ)



 「要するに……レナは、私に男女の関係を求めてるってことなの」

私が爺に問いかける


 「そうじゃ! 分かっているのか……」

爺は拍子が抜けたような口調になる


 「以前、爺が私にレナが……その……やっ…その……」

今度は私が言葉の選択に困っていると


 「レナちゃんは、お前さんと"交わり"子供を授かる事を心から望んでおる」

 「だからこそ、この事を伝えるのは酷というもの」

爺は心苦しく辛そうに言う


 「でも、絶対に子供が出来ないわけじゃないんでしょ」

私が爺に言うと


 「そうじゃな……お前さんの言う通りじゃな……」

爺もそれに同意する、そんな爺に私は


 「レナに伝えるのはもう少し待った方がいいかも」

私が呟くように言うと爺も同じように同意するのだった。


 私は、自分でも驚くぐらい冷静だった。

 

 そんな私に爺は不思議な可能性を感じていた。

 ……この者ならば、"儂と同じ道を歩むことはあるまい"


 爺はかつての自分が歩んだ道を振り返るのであった。



 その頃、レナは大好きな本達に囲まれて幸福の頂点にいるのだった。

 


  第四十一話 ~ 王立アカデミ-の休日 ➄ ~ 終わり


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