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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第三十八話 ~ 王立アカデミ-の休日 ➁ ~

第三十八話 ~ 王立アカデミ-の休日 ➁ ~ 序章




 王立アカデミ-の女子率が非常に低い、この時代は女子に高度な教育は不要と言う考え方が濃いためである。


 女子生徒の数はアカデミ-の全生徒数の二割に満たず、100名程度でありその内の約七割は女子校などの教育課程つまり文学科に属している。


 理学科に属している女子生徒数は残りの三割となり文字通り紅一点の存在となっているのだが限られた時間内での過酷な勉学のせいで男女共に講義にレポ-トと忙しく恋愛などに現を抜かしている余裕は無いのである。


 王立アカデミ-生徒の学生生活は、アルバイトして合コンしてとか我々の想像する大学のキャンパスライフなどとは無縁でドドメ色の学生生活を送る事になるのである。


しかし年に二回の長期休暇の時期だけは例外である。


 講義とレポ-トから解放されたこの時期に、自分が目を付けていた生徒に如何にして御近づきになるか男子、女子を問わず思いを巡らせる時期が到来したのである、特に卒業を間近い二回生にとっては最後の機会となるのである。


 女子生徒にとっては、国中から有能な人材が集まり、且つ女子の数が圧倒的に少ないというのは選り取り見取りな環境ではあるのだが……。


 どこの世界でも女心は我々のバレンタインデ-のチョコレ-トと同じように特定の人間に集中するのである。


 ……当然、この世界も例外ではない……。


 多くの男子生徒も女子生徒も目的の獲物を射止めることは王立アカデミ-に入学するより遥かに低い成功率となる。





第三十八話 ~ 王立アカデミ-の休日 ➁ ~ 

 


 マノンと同じ薬学科に所属するマリレーヌ・アルシェはマノン・ルロワを将来の伴侶として最適であるという結論を得たのだが……。

 彼女は、致命的な問題を抱え悩んでいた。


 マリレーヌ・アルシェの実家は王立アカデミ-から歩いて十分程度の所にある王都の大通りから一つは入った小さな商店が立ち並ぶ裏通りに店を構え乾物を取り扱う商家である。


 あまり人付き合いというものを望まない彼女は、必要な知識の殆どを書物から得ていた。

 彼女にとって男女恋愛関係などと言うものは文字通り未知の領域であり……書物に明確な対処法が記されているわけでもない。

 当然、"恋バナ"を相談するような友達もいるはずもなく、かと言って経験豊富の誰かに相談すると言う事も出来ず……。

 初めの一歩から躓くこととなり、既に数日が過ぎ去っていたのである。


 更に、獲物のマノン・ルロワを狙っているのは自分一人ではない事も知っている。

 このままでは何もしないまま春の種蒔休日は虚しく過ぎ去り一人寂しく卒業するだけである……。



 マリレーヌはある晴れた日の午後、考え事をしながら実家の店番をしていると一人の客が店を訪ねてくる

 「すいません……何方(どなた)かいらっしゃいますか?」

と呼び声がする……マリレーヌは返事をして対応するとその客はマノン・ルロワだったのだ

 「えっ……マノン君」

私が少し驚いて言う


 「はい……そうですが……何処かでお会いしましたか」

私の顔を見て必死で思い出そうとしている様子が窺える。


 それを見ていた私は"……間近で見ると噂通りの美形なのね……"と心の中で呟く

 「私も王立アカデミ-の生徒なんですよ、それもあなたと同じ薬学科」

私が淡々と言う


 「そうなんですか……気付きませんでした」

手で頭を掻くとすまなさそうに言う


 「知らなくて当たり前よ……私は卒業科目の講義だし、目立たないから」

 「でも、貴方は有名人だからアカデミ-の生徒は皆知ってると思うわよ」

私が言うとマノンは困った顔をして


 「有名人って……入学式のアレですか……」

少し小さな声で恥ずかしそうに言う


 「それもあるけど、とっても優秀だって事もあるわよ……それに美少年だって」

私がマノン君の顔を見て淡々と言う


 「そんな事は言わないで下さいよ……恥ずかしいです」

と言って照れると顔を赤くする……

 それを見て私は"この子……本当に可愛い子だわ"……と柄にもないことを思ってしまった。


そうしていると

 「ゲンノショウコ、ゲンチアナ、エンメイソウなんかはありますか」

私に平然と聞いてくる


 「えっ……はい、あると思います」

少し在庫の事を考えてから言うと


 「良かった……意外と何処にも無くて困っていたんです」

 「オウバクの皮とセンブリはあったんですけどゲンノショウコ、ゲンチアナ、エンメイソウなんかが無くて……何処にでも生えてる薬草なのに意外と無くて・・・」

 安心したかのよう笑顔で言う……。


 それを見て私は"ホントに可愛い子だわ……"とまたもや心で呟いてしまう。

 

 「すいませんけど、ゲンノショウコ、ゲンチアナ、エンメイソウを20g程下さい」

私に注文を出す。


 「マノン君……自分で作るつもりなの……何を作るの」

私は薬草の入った瓶を取り出しながら疑問に思ったことを聞くと


 「腹痛薬ですよ……」

小さな声で薬草を見ながら言う


 「痛み止めならカンゾウ・シャクヤクなんかが良いんじゃないの」

私が別の薬草を指さして言うと


 「そうですね……確かに即効性で急性の腰痛・腹痛などには有効ですけど……」

 「これは腹痛薬と言っても下痢止めや胃腸薬の方ですよ」

私に薬の違いを説明する


 「マノン君……自分で薬草を調合して薬を作れるなんて本当に薬に詳しいのね……」

私が感心して言うと


 「そんな事は無いですよ、調合は誰にでも出来ることです」

 「あっ!、許可が無いと売買は出来ませんけどね」

 「どちらかと言えば薬の精錬の方が厄介ですよ」

私に何気なく言う


 「代金はいくらですか」

小さな鞄に薬草の入った紙の小袋を入れると私に聞いてくる


 「いいよ、今日はサ-ビスしちゃうから……今後ともアルシェ商会を贔屓にしてね」

私が微笑んで言う……"あれっ……私……今、笑ってる"と自分が笑っているのが信じられないでいる


 「良いんですかっ!……ありがとうございます」

元気な声で言うと頭をペコリと下げて店を出て行った。


 私は、暫くの間呆然としていた……

 "私にも他人にこんなにも興味を持つ事があるのね"と心の中で呟く……

 マリレーヌ・アルシェ……17歳、初めて他人に興味を持った瞬間であった。

 残念なことに、彼女はそれが初恋だとは思いもしないのであった。


  "まぁ……ゲンノショウコ、ゲンチアナ、エンメイソウ……20gなんて、大した金額じゃないし、これで彼と繋がりが出来たのだから安い物よ……"とマリレーヌ・アルシェ……17歳やはり商家の一人娘だけの事はあり恋愛にも計算高いのだった


 その頃、マノンは薬草をサービスしてくれた優しいお姉さんに感謝しながら宿舎に急いでいた……

 この後、マノンは"無料より高い物はない"と言う事を身をもって知ることとなる。



第三十八話 ~ 王立アカデミ-の休日 ➁ ~ 終わり


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