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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第三十四話 ~ 王立アカデミ-時計塔事件➁ ~ 

 第三十四話 ~ 王立アカデミ-時計塔事件➁ ~ 序章


 

 使いの者が捕らえられ、尋問に掛けられている事などグレゴワールとエヴラールには知る由もなかった。


 それから数日後、男は遂に全てを白状するのだった。


 男が白状したとの報を受けたクロードは読んでいた本を閉じると

 「そうか……アカデミ-の協力者にこれを」

 そう言って手紙を使いの者に手渡した。

 




 第三十四話 ~ 王立アカデミ-時計塔事件➁ ~ 

 


 いつものように宿舎を出て講義室に向かうとレナが講義室の前で待っていた。

 「おはよう、レナ」

といつものように挨拶をするがレナの様子がおかしい


 「どうしたの……何かあったの」

と心配になってレナに聞くと


 「ごめん……マノンの事……エレ-ヌさんにバレちゃったみたい」

と小さな声ですまなさそうに言う、私は少し驚いたが何となくそんな予感がしていた


 「いいよ……エレ-ヌさん薄々感付いてるみたいだったし、その内にバレる思ってたよ」

と私はレナに気にしないように言うとレナと別れ講義室に入っていった。


 講義が終わり、いつものようにレナと待ち合わせして早めの昼食を取っているとエレ-ヌさんがやって来る……。

 これもいつもの事だが、何処かエレ-ヌさんの様子がいつもと違う。


 「やっやぁ……こっここに座っていい」

と言うと私の隣に座る、ここまではいつも通りなのだが言葉遣いと動きがぎこちない


 「どうしたの、エレ-ヌ調子悪いの」

と私が心配そうに聞くと


 「いえっ、べっ別にどこも悪くないよ」

と言うと私の顔を見てモジモジしている……ハッキリ言って気持ち悪い……。


 「どうかしたの、本当に変だよ」

と私がエレ-ヌを見つめて言うと顔が赤くなっていく


 「あのっ、そのっ、何でもないです……本当に」

私はエレ-ヌの態度がおかしくなった原因は何となく判っていた……。

 私が大賢者だからだ……今までも皆そうだった。


 「エレ-ヌ、私の事は特別扱いしなくていいよ……」

 「ここはそういう所じゃないんでしょう」

 「最初に会ったときに、エレ-ヌがそう言ったじゃない」

と言うとエレ-ヌは小さく頷いたのを見てホッとしたが、正面を向いてギョッとした……レナが物凄い怖い目つきで私を睨んでいる。


 三人で昼食を取る……会話がない……

 エレ-ヌはいつもよりお淑やかで時折、私をチラ見している……。

 

 私の正面ではレナがこちらを見ながら不機嫌そうに昼食を食べている……


 昼食を食べ終わり、いつものように中庭のベンチでレポ-トをこなしていると

突然、エレ-ヌが立ち上がり

 「こっこれをっ」 

と言って手紙を差し出し私に手渡すと物凄い勢いで走り去っていった


 私は手紙を握りしめたまま呆気に取られていると……すぐ横から強烈な殺気を感じる……恐る恐る横を見るとレナが物凄い形相で私を睨みつけている

 「ヒィ」

とそれを見た私は小さな声を上げてしまった


 「マ・ノ・ン……その手紙はなぁに~」

レナが私の顔を覗き込むように言い寄る。

 全く心当たりの無い私は焦るがどうしようもないので

 「本当に心当たりがないんだよ、一緒に見てもいいよ」

と素直な気持ちで言う


 「そうなの」

と言ってレナの機嫌も少し治ったようだったので、封を切り中の手紙を出し広げてみると




   "今晩十一時に、時計塔でお待ちしております。"




 と書かれていた。


 「あれっ……何のことかな」

私が首を傾げて誤魔化すように言うと


 「マ・ノ・ン~どういう事な~の~」

レナが薄ら笑いを浮かべながら聞いてくる。


 「本当に心当たりは無いんだって」

命の危険を感じた私は必至で訴えると


 「なら……私も一緒に行っていい」

疑惑の眼差しで私を見つつ聞いてくる。


 「いいよ」

そう言うしか私には他の選択肢はなかった。


 レナと別れた後に宿舎に帰りレポ-トを片付けシャワ-を浴びて服を着て身なりを整える。

 時間は、まだ早い……エレ-ヌはいったい何のなんのつもりなんだろう……。

 こんな夜遅くに呼び出すなんて、それよりレナも本当に来るつもりなのかな

 などと、いろいろ物思いに耽っていると


 「随分とお困りのようじゃな」

爺の声が聞こえてくる


 「なんだよ、人が物思いに耽ってるときに」

私が不機嫌そうに言うと


 「エレ-ヌちゃんと逢引きか……良いのう……若い者は、甘酸っぱい香りがしてくるわい」

嬉しそうに言うので


 「レナも一緒だよ」

そう言うと


 「本気かお前さん、なかなかの勇者じゃの……」

呆れたように言うと爺は気配を消した。


 そろそろ時間だな、私が宿舎を出ると……本当にレナが待っていた。

 「本当についてくるつもりなの」

私が言うと


 「当然でしょうっ」

そう言うと時計塔に向かって歩き出す……慌てて私も歩き出す。


 時計塔の近くまで来ると二人とも突然、時計塔の横の建物の陰から誰かに手を引っ張られる。


 「静かにして下さい……大賢者様」

小さな声がする……。

 この声はルシィだ、同じようにレナもエレ-ヌに捕まっている。


 暗闇でよく見えていなかったっが、ルシィたちの後ろにも何人も人がいるようだ。

 ……その中から一人の男が私に近づいてくると

 「大賢者様、ご無礼をお許しください……」

 「私は、大司教代理のエドモン・バイヨと申すものです」

 「これより、時計塔に誘き寄せました、王立アカデミ-の不埒物を捕縛いたします」

 「我らにご許可を」

そう小声で言うと周りの者が一斉に跪く

 

 「へっ……」

私と爺には突然の事に何の事か分からずに困惑していると


 「大賢者様っ……"許可すると"お言い下さい」

ルシィが耳元で聞こえないほどの小さな声での私に言う


 「許可する」

私は、訳が分からないままルシィの言われたとおりに言う


 「かかれっ!」

大司教代理のエドモン・バイヨが言うと同時に何人もの男たちが一斉に時計塔に入っていく……

 

 事態が分からず、私と爺は呆然としてそれを見ていた。

 後ろを振り返るとレナも呆然としている


 その時、時計塔の中にはグレゴワールとエヴラールの二人がいた……

 二人は、サン・リベ-ルに使いに出した者から聞き出した連絡法を使って大司教にまんまと誘き出されたのだ……


 「使者はまだ来ぬのか」

エヴラールとイライラしながら言うと


 「まだのようだな」

グレゴワールが薄暗い部屋の中を見回して言う……その時、下の方で物音がする


 「どうやら、来たようだな」

とグレゴワールが下を見ると大勢の男が入ってくるのが目に入った


 「エヴラールっ! 謀られたぞっ、下に不審な者達が大勢おる」

慌てて言うと


 「何だとっ! 仕方が無い」

そう言うとエヴラールが抜け道に通じる隠し部屋の扉を慌てて開ける。

 二人はその中へ入ると扉を閉めた……殆ど間を置かずに男たちが入ってくる。


 「何処だっ! 誰もいないぞっ」

男たちが二人を探すが何処にも見当たらない


 「逃がしたのか……」

一人が言うと


 「そんなはずはない、確かに二人が入っていくのを確認している」

もう一人の男が言う


 「とにかく探せっ! 探すんだっ、ここで逃がしたら全てが水の泡だ」

と責任者の男が言うと全員総がかりで部屋を探し回っている頃、グレゴワールとエヴラールの二人は隠し部屋から抜け道へ急いでいた。


 「まんまと嵌められたな」

グレゴワールが悔しそうに言うと


 「とにかくこの場から逃げおうせなければ……そうすれば何とでも言い訳が立つ」

 そう言うと狭くて窮屈な通路を通って抜け道へ急いでいる。


 大司教代理のエドモンに使いの者が来ると、二人の姿が見当たらないとの報告をする

 「何処かに抜け道があるはずだ、何としてでも探し出せ」

 エドモンが強い口調で言うのを聞いて私と爺は……


 "何か……ヤバそうだね"

私が言うと爺は

 "そうじゃな……このままほ放って置くわけにもいかんな"


 そう言うと爺は例の得意の術を発動する……。


 あっという間に時計塔が消えてなくなると例によって丸裸の男たちが右往左往をしている

 時計塔が瞬時に消えてなくなるのを見て、エドモンとエレ-ヌが呆気に取られている


 地面にポッカリと穴が開いている、どうやら抜け穴らしい……

 それを見つけた丸裸の男たちは裸のまま次々に抜け穴へと入っていく……


 辺りに静けさが戻ってくるのもつかの間、何処からか人の争っている声がする。


 いきなり、私たちのいる建物の向かいの建物から人が二人り逃げるように出てくる……

 その後から、裸の男たちが出てくると服を着ている二人の男に飛び掛かる。


 どうやら服を着ている二人がグレゴワールとエヴラールで裸の丸出し男たちが捕縛隊のようだ……じつに分かり易い。

 月明かりの中、裸のレスリングが始まる。

 幸いにも、夜も遅いし時計塔は男子・女子寮からも寄宿舎からも離れているので、この悍ましい光景を見ることはないだろう。


ほんの数分で勝負はついた、捕らえられたグレゴワールとエヴラールは疲れ果てているようだったが観念はしていないようで

 「このような狼藉は決して許さぬぞっ! 後で覚悟しておくがよいわっ!」

エヴラールは私たちを睨みつけて言っている。

 

その横で傷だらけで土にまみれた裸の男たちを見て爺が 

 「若い女子もおることだし、このままでは流石に具合が悪いのう」

そう言うと、手から次々に布を出しては裸の男たちに掛けてやるのを見た二人は

 「まさか……大賢者なのか」


グレゴワールが驚くと二人とも肩を落とす……どうやら観念したようだ


 エドモンが私に挨拶をするとグレゴワールとエヴラールを連れてすぐに立ち去る。

 ……その場には、私たち四人がポツンと残された。


 「お疲れさまでした、大賢者様」

ルシィがホッしたように言うと


 「最初から、計画済みだったんたね」

私が呆れたように言う


 「まぁ……その……その通りです」

ルシィが頭を掻きながら済まなさそうに言う、それを聞いていたエレ-ヌが


 「私にまで秘密にしていたんですよ、この人……酷くありません」

 「……で……どうしてレナが一緒にいるの」

意地悪そうにレナを見て言うとレナは目線を逸らして


 「それは……あの……」

レナが言い難そうにしていると


 「私とマノンがあんなことやこんなことしないか心配だったんだよねぇ」

エレ-ヌがニヤけた顔をして言うと


 「そっそんなんじゃ、ありませんっ!」

強く否定すると

 「もういいよ……でもレナって……本当に嘘つくの下手だね」


そうエレ-ヌが笑って言うと、レナは顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。


レナが嘘をつくのが下手だという事には全くの同感だ……そうしていると

 「これで、私もお役御免……部屋に帰って一息つくとします」

横で聞いていたルシィが言う……


 ルシィと軽く別れの挨拶をした後、私たち三人も宿舎へと歩き始める。

 ……なんだか夢を見ているような気がする。


 レナとエレ-ヌと別れた後、部屋に戻ると寝間着に着替えベッドに着く。

 ……何か忘れているような気がする……がすぐに寝てしまった。


 朝、目覚めると外が騒がしい、何だろうと思い部屋を出て見ると生徒たちの話し声が耳に入ってくる

 「時計塔が跡形もなく消えちゃってるってさ」

と言っている生徒もいれば


 「何でも、昨日の夜遅く裸の人が走り回ってたってさ……」

 「しかも、時計塔の在った所にポツンと穴まで開いてるって」

と言うのも聞こえてくる……


"あ~これだ昨日気にかかってたことって"……

 何も聞かなかったことにしようと私と爺は決意した。


 これは後に、王立アカデミ-時計塔事件として記録されることとなる……。

 但し、事実を知る者は極一握りの者達だけである。 


 第三十四話 ~ 王立アカデミ-時計塔事件➁ ~  終わり


 

 


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