第三十三話 ~ 王立アカデミ-時計塔事件 ① ~
第三十三話 ~ 王立アカデミ-時計塔事件 ① ~ 序章
王立アカデミ-の特別推薦生の真新しい宿舎は独立していて、良い設備が整っている。
これらの施設は、王国の権力者や金持ちの寄付によって近年に建築されたものである。
特別推薦生制度は、過酷な入試試験を受けることも無ければ、在学期間も四年~六年と時間的にも余裕がある上に兵役免除と王立アカデミ-の卒業資格がもらえるというじつに都合の良い有難い制度だ。
当然、特別推薦生になるには相当な学識を必要とするのだが残念なことにここ数年は一部の特別推薦生はそうではなかった。
以前から、権力者や金持ちの縁者に対する多少の優遇処置はあったが、それ相当の能力を持った者達が選出されており勉学も真面目に受け問題も起こさず、容認できる範疇であった。
ここ数年の一部の特別推薦生は明らかに著しく能力に劣る者が数人づつ特別推薦生になるようになりその数は徐々に増えて行っているのだった。
しかも、勉学はそっちのけで講義も受けず他の生徒と問題を起こす始末……。
それでも、彼らには科目終了認定が出て進級していく。
公然と不正を行いしかも態度が尊大で横暴な忌み嫌われる存在となっていた。
当然、生徒たちは彼ら特別推薦生の所属する学科と科目終了認定を出す導師が誰なのかも分かっている。
第三十三話 ~ 王立アカデミ-時計塔事件 ① ~
特別推薦生の真新しい宿舎の一室、豪華な家具が揃いまるで高級な宿屋の特別室のようだ。
「どいつもこいつもビビりやがって、話になんねぇな」
口汚く嘆くのは王国高官の次男であるカジミール・バラケだ。
「仕方がないよ、相手が大賢者と縁のある者じゃ」
エメ・クーランが宥めるように言う彼は帝都で王室御用達でもある大商人の孫だ。
この二人は王立アカデミ-の殆どの生徒が知っているといってもよい不正入学の問題児の特別推薦生だ。
親の七光りで何でも思い通りになってきたのだが、どうも今回はいつもと様子が違っていた。
目障りな新入生を追い出そうと、同じように仲間の(不正入学)の特別推薦生に持ち掛けたのだが、誰も話に乗ってこないのだ。
「なにが、大賢者の弟子だっ」
カジミールが機嫌が悪そうに罵ると
「僕も、父からあの新入生には手を出すなって言われているんだ」
エメが言い難そうに言うと
「お前もかよ……俺もだっ!」
カジミールが困ったように言うと
「それに、最近はエレ-ヌと一緒にいることが多いし……」
「大司教の孫娘まで敵に回すとこっちが潰されるよ」
「それに……お爺さんの話だと、大賢者はシルビィ王女と結婚して次期国王になるかもしれないって……そんなのに手出ししたら王室御用達も危うくなるどころか王都で商売が出なくなるから絶対に何もするなって」
エメはカジミールを説得するように言うと
「俺のオヤジは、大賢者がゲルマニア帝国のマキシミマアン皇帝とサシでこの前の戦争終結の話付けたって言ってたな……。」
「そんな相手に手を出すのは身の程知らずもいい所だ絶対に手出しするなってな」
「他の連中も俺たちと同じって訳だな……クソッ!」
そう言うとテーブルを蹴り上げるとため息をついた。
結局のところ、この手の輩は自分よりも強大な力を持った者には何もできないのだ……何か弱みを掴んでも金を山ほど積んでも大賢者の徳は揺るがない。
逆に、目を付けられれば圧倒的な力で握り潰される。
馬鹿なりに、それがどれ程惨めで悲惨な結果を生むかを自分たちが散々やってきた力の法則をちゃんと熟知しているのである。
……尤も、既に彼ら不正入学者のこれからの運命は確定しているのだが……
子供の喧嘩はこれでいいかもしれないが、それでは済まない者もいる。
不正に手を染めてしまった者達である。
「サン・リベ-ルから使者はまだ帰ってこんのか……もう四週間経つぞっ!」
暗い部屋に焦り声が聞こえる
「我らには、どうすることも出来んな」
ともう一人が冷静に言うと二人は黙り込む、薄暗い部屋に夕日が差し込み顔が照らし出される
導師幹部のグレゴワール・セルトンとエヴラール・オービニエだった。
「ルシィ医師は、マノン・ルロワに見覚えがないと言っておったがな」
とグレゴワールが言うと
「大賢者の弟子の事までは知るまい」
とエヴラールが投げやりに言う
「仕方がないな、使者が戻るまでもう少し待つとするか」
とグレゴワールが言うとエヴラールも頷いた。
彼らが、大賢者とその弟子をここまで恐れるのには理由がある。
王立アカデミ-は中立で初代王の言付により国王や直接管轄の大司教ですら手出しを許されない。
それを良い事に、不正を働き富を得て来たのだが想定外の事が起きたのだ……たんなる伝説でいないと思い込んでいたはずの大賢者の出現である。
初代王の言付には、例外がある……それは、"知識の伝道者たる大賢者とその弟子に限り初代王の名において王立アカデミ-の全権を託すものである"と明記されているのである。
つまり、大賢者とその弟子は王立アカデミ-において最高権力者なのである。
大司教のクロ-ドは自分たちの不正に気付き探りを入れていることは既に察しており、もしも、大司教のクロ-ドが不正の事実を大賢者に明示されれば自分たちはすべてを失う事は確実だったからである……彼らは既にもう逃げ道がないのだ。
当然だが、当事者のマノンと爺そんな事は全く知らない。
マノンは、いつものようにレナとエレ-ヌの中庭のベンチでの課題を終えて宿舎に戻りレポ-トを終えてベッドに入り部屋の灯りを消す。
"エレ-ヌさん、最近はずっと一緒にいるな、私たちの事を心配してくれているのはありがたいけど……"
私が眠りに着こうとしていた頃、レナとエレ-ヌは女子寮でシャワ-室にいた
「レナ、いつ見ても立派なオッパイだね~」
「マノンもウハウハだねっ……で、どこまで行ってるの」
エレ-ヌはレナの胸を見ながらいやらしそうな笑いを浮かべて言うと
「何が、どこまでいってるのですかっ」
レナはエレ-ヌの視線を感じて胸を隠して言う
「二人の関係だよっ! もうやっちゃったの」
エレ-ヌが服を脱ぎながら意味ありげに言う
「……そっそんなんじゃありませんっ!」
レナは顔を赤くして言うと
「そう言うエレ-ヌさんこそ、もうやっちゃってるんですか」
と意地悪そうに言う
「うっ……私は……その……」
そう言うと口籠る、エレ-ヌには浮いた話の一つもないのである。
……要するに彼氏いない歴=実年齢……現在なお更新中なのである
。
「どうせ…・・・私はレナみたいに美人でもなければオッパイ大きくもないですよ」
と拗ねるように言うと
「エレ-ヌさん、裸のまま突っ立てると風邪ひきますよ」
落ち込むエレ-ヌを放置したままレナはシャワ-を浴びる
「レナって結構……残酷だね……」
エレ-ヌの悲痛な声が聞こえてくると隣のシャワ-の出る音が聞こえる
「レナってさぁ、大賢者の近くに住んでたんだよね……」
「なら、大賢者に会ったこともあるんだよね」
エレ-ヌが何気なく聞いてくる
「えっ! どうしてそんな事聞くの……直接の面識はないわよ」
レナはマノンから大賢者の事は秘密にしてほしいと頼まれていたので少し慌ててしまうが何とか誤魔化そうとする。
「そうなんだ……マノンなら知ってるかな」
エレ-ヌがレナに更に大賢者の事を聞いてくる
「どうかしら……マノンもよく知らないんじゃないかしら」
レナは誤魔化そうとするが
「レナって……嘘つくの下手だね」
エレ-ヌが言うとシャワ-の音が留まる。
レナも慌てて外に出るとエレ-ヌは体をタオルで拭いている。
「どうしたのレナ……オッパイ丸見えだよ」
エレ-ヌが笑って言うと服を着替えてシャワ-室を出て行った。
残されたレナは暫く裸のまま立ち尽くしていた。
レナは部屋に戻るとシャワ-室での事を考えていた。
"マノンの事、エレ-ヌさんにはバレちゃったよね"
"明日、マノンには言わないといけない"と思いながらレナはベッドに入るのであった
その頃、エレ-ヌは女子寮を出て足早に導師の寄宿舎へと向かっていた。
人がいないのを確かめると寄宿舎へと入っていく……。
そして、ある部屋の前で立ち止まるとあたりの様子を確かめドアをノックする。
「エレ-ヌです……夜分失礼します」
そう言うとドアが開く、中から出てきたのはルシィだった
「どうしたの……こんな時間に、入って」
ルシィは頭を掻きながら言うとエレ-ヌは部屋に入りドアを閉める
「先生……相変わらずですね」
エレ-ヌは呆れた顔をして言うとルシィと部屋を見回す。
「凄まじい汚部屋ですね……少しは掃除したらどうですか」
そう言いながら足元に散らかった物を退けながら部屋に入っていくと
「突然ですが、ルシィ先生はマノン・ルロワさんの事をご存じですね」
エレ-ヌは真剣な眼差しでルシィを見つめて言うと、ルシィは暫く黙り込む
「……そうか……バレちゃったか……もう隠す必要もないか……」
小さな声で呟くと
「エレ-ヌさんの言う通りマノン・ルロワさんの事はよく知ってます」
ルシィはエレ-ヌの言っている事が事実だと認める
「どうして、私にまで噓をついてまで隠したのですか」
「貴方は、お爺様から内々にアカデミ-の不正の調査を依頼されていたはずです」
真剣な表情で言う
「……それは、そうした方がいいと私が直感したからだよ」
「大賢者様が身分を隠してまで王立アカデミ-に入学してくるのには何か訳があるに違いないと思ってね」
左手の薬指の指輪を見ながら言うとエレ-ヌの表情が見る見る変わっていく
「えっ! いっ! 今、大賢者様って言わなかった、それじゃ……」
エレ-ヌが慌てて取り乱しているのを見て
「そうだよ、マノン・ルロワさんは大賢者本人だよ」
ルシィがにっこり笑って言うと
「ぅっ!うっ!嘘~っ……」
大声を上げそうになるのを見て慌ててルシィがエレ-ヌの口を塞ぐ
「ふぐっぐっ……」
エレ-ヌがもがくのもお構いなく口元を押さえ続けると
「ぐほっ……うぐっ……ぅっぅっ……」
ルシィは顔が青くなり白目を剥いてピクピクしているエレ-ヌに気付き塞いでいる口を開ける
「ひぃひぃぜぇぜぇ……こっこっ殺す気ですかっ」
息も絶え絶えに言うと
「あ~ごめんごめん、つい力が入っちゃったよ」
ルシィは、エレ-ヌも大司教様もマノンの正体を知った時のリアクション同じなんだなと思い出しながら謝ると……
「あれっ……そう、マノン・ルロワさんの事、ホントなんでしょうね」
窒息死寸前になったために記憶が飛びかけたエレ-ヌが念を押すと
「間違いないよ……この事は、大司教様にも伝えてあるよ」
「もうすぐ、アカデミ-の大掃除が始まると思うよ」
ルシィはエレ-ヌを見て言うのだった
「じゃ……何にも知らなかったのは私だけなのね……それ酷くない」
エレ-ヌがムクれっ面になって言うと
「そうだね……でもそれは大司教様のご指示なんだよ……敵を欺くには、まず味方からって言うでしょう」
ルシィは平然と言うと表情が変わり真剣な表情になる
「今回の事は大司教様は、事を荒立てずに内々に済ませるご意思のようなんだよ」
と言うとにっこり笑った
当の大賢者様のマノンと爺は何知らずにベッドで熟睡しているのだった……。
第三十三話 ~ 王立アカデミ-時計塔事件 ① ~ 終わり




