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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第二十九話 ~ 王立アカデミー入学 ➁ ~ 

 第二十九話 ~ 王立アカデミー入学 ➁ ~  序章



 どこの国の学校でも、その年の新入生代表の挨拶はその年の入試試験の優秀者を学校側が選出し依頼するものである。


 マノンは、午前の一般試験は平均点であったものの、午後の専門試験は他を寄せ付けない満点という好成績を叩き出しているので、王立アカデミ-幹部導師の目に留まり新入生代表の挨拶を命じられたわけである。


 じつは、マノンが遠いと愚痴っていた入り口から一番遠い個室A501~A504の四室は、その年の一般入試優秀生徒の指定部屋で大変名誉なことなのである。


 入学手続きの際に係員がマノンに入学生代表の事を何も言わなかったのも、入学手続きの際に王立アカデミ-の刻印の入った封筒を渡されるという事は、その年の新入生代表として挨拶をするということであり、入り口から一番遠い個室A501~A504の四部屋の事も含めて王立アカデミ-を目指すものなら誰もが知っている事で説明の必要がないと係員が判断したからである。


 しかし、王立アカデミ-の事など眼中になかったマノンは殆ど思い付きで試験日の僅か三週間前から試験勉強を始めたのでそんな事は知る由もなかったのである。


 しかも、一般入試最優秀生徒に抜擢されるという、何年間も王立アカデミ-を目指して血の滲むような努力をしてきた者たちにとって言語道断とも言える存在なのである。


 世の道理から言えば、少しぐらいの苦労はしても神仏が与えた試練で当然と言える。






 第二十九話 ~ 王立アカデミー入学 ➁ ~  



 マノンは、困り果てていた。

 昔から成績もたいして良くはなく生まれてこの方、この手の行事には全くの無縁であったからである。


 どうしょう……新入生代表として挨拶なんて考えたこともない。

 相談する相手は、爺かレナ以外に思い浮かばない……。

 とりあえずレナに相談してみようと思い部屋を出ると女子寮の方に向かう。

 

 女子生徒は男子生徒に比べて数が少ない事もあり女子寮は、男子寮に比べてこじんまりとした感じの二階建ての木造の建物だった。


 困ったな……男子が女子寮へ無断では入る事が出来ないはずだし……。

 女子寮の前で途方に暮れていると後ろから声がする。

 

 「どうしたのかな……。こんな所で」

 「君、新入生なの?」

私が振り返ると一人、女子生徒がいた。


 「同郷の友人に会いたいのですがどうしていいのか分からなくて…」

私が困ったように言うと


 「なんていう名前、私が呼んできてあげるよ」

と言ってくれるので


 「ほんとうですか……。ありがとうございます」

 「レナ・リシャ-ルという生徒です」

 「私は、マノン・ルロワと言います」

自己紹介も兼ねてレナの名前を言う


 「マノン・ルロワさん……ね」

そう言うと女生徒は私の顔をじっと見て


 「分かったわ、ちょっと呼んでくるね」

彼女は足早に女子寮に入っていった。


 随分と親切な人だな…名前聞くの忘れちゃったけど今度会ったときに聞かなくちゃと考えていると制服に着替えたレナが女子寮から出てくる。


 「どうしたの…マノン」

レナが問いかけてくる、私は、レナの制服姿を見てちょっと驚いた


 「酒場のウエィトレスのバイト」

思わず本音を口走ると


 「何よ! いきなり酷いじゃないのっ!!」

レナは怒っているようだが、私は、普段からゆったりしたレナの服装しか見ていなかったので王立アカデミ-の制服を着た姿からは強烈なインパクトを受けた。


 大きな胸はより大きく強調され、本当に夜の酒場のウエィトレスのお姉さんのようになっていた。


 私が、じっ~と見ていると

 「ちょっとっ!そんなにジロジロ見ないでよ」

 「……恥ずかしいじゃない」

そう言うとお腹を隠している


 「どうしてお腹隠すの……」

私はレナに不思議そうに言うと


 「この制服って……目立つのよ」

 「……その……お腹が……」

と顔を赤くしながら言っている


 「大丈夫だよ……そんなに目立ってないよ」

私がそう言うと少し安心したように


 「本当に……目立たない……」

と言ってお腹にあてた手をどける。

 確かに少し出ているがそれ以上に巨大な胸のふくらみが目立ち全てをカバ-してくれている。


 「レナに相談したいことがあるんだ」

そう言って私はポケットから封筒を取り出すとレナに手渡した


 「見ていいの」

レナが言うので首を縦に振ると封筒の中の手紙を見る


 「エ-ッ!」

レナは思わず声を上げた、驚いた周囲の人が何事かとこちらを見ている


 「ちょっと、レナ声が大きいよ」

私は慌ててレナに言うと

 「ゴメン……本当に驚いちゃったよ」

と言って平常心を取り戻す


 「どうしたらいいのかわからなくて……」

 「レナに相談しに来たんだよ」

私は小さな声で言うと


 「これって凄く名誉なことよ……マノン」

 「……大丈夫よマノンなら……きっと……その…」

言っているレナ口調が次第に落ちてくる終いには口籠ると目が泳いでいる


 「レナ……嘘つくの下手だね」

私は悲しそうに言うと


 「そうよっ! パトリックさんならこの手の事、上手そうじゃない」

困ったレナは爺に話題を振ると、爺の声が聞こえてくる


 「仕方がないのう……わしに任せるがよいっ!」

と爺は自信満々に言う


 「ありがとうございますっ!」

 「おじさまっ!……このご恩は一生忘れません」

私は本当に心から感謝しお礼の言葉を言う


 「気持ち悪いから、もうやめてくれっ」

と爺は不快感を顕わにする。


 そして、入学式の当日……遂に私の新入生の挨拶の順番が回ってきた。


 新入生代表、マノン・ルロワくん

 新入生の挨拶をお願いします……と進行担当の職員が言うと私は爺と入れ替わる

 爺は大きな声で返事をしゆっくりと前に進み出て整列している学校の教職員に礼をした後に、正面を向きもう一度礼をする。

 

 "いいぞっ! いい感じだぞっ!! "っと爺に感謝する

 

 未熟者ではありますが本日、新入生代表の挨拶を務めさせていただきます。


 マノン・ルロワと申します。

 本日は、我々は晴れて歴史ある王立アカデミ-への入学を許されることを大変光栄に思います。


 王立アカデミ-設立の精神と理念とに基づき我々、新入生は日々勉学に励むことは勿論の事、国王陛下と国民の皆様の惜しみない援助のもとに充実した環境のもと、にこの身を置けることを誇りに思い、王立アカデミ-の生徒として恥ずかしくない行いをする事をここに誓います。


 "いぞっ!爺っ完璧だっ!!ここら辺でもういいぞっ!!!"


 …そもそも、王立アカデミ-がこの王都ガリアンの地に設立されたのは王国建国の父である、初代王クリストフ・ド・ガリア陛下の思し召しであったと聞き及びます。


 国内全ての才ある者に等しく勉学の場を与えんとする初代王のお考えと精神は実に300年の長きにわたってこの王立アカデミ-の先達によって守られ……


 "本当にもういいぞっ! そろそろ話を纏めて……終わりに……あれっ……"

 "しまった…これはマズイ…爺がウンチク講座に入る前兆だっ!"


 私は直感し何とかしようと思ったが、既に手遅れだった。


 爺は気の済むまで延々としゃべり続けほぼ300年に上る全ての王立アカデミ-の歴史を紐解き解説し終えるまで約二時間以上しゃべり続けた。


 これは、王立アカデミ-設立以来、最長の新入生挨拶として王立アカデミ-に代々語り継がれることとなる。


 同時に、その年以降の例の封筒の書面には"挨拶の時間は15分以内"という事項が書き足されたのであった。

 また、マノンの首席卒業を危惧した幹部導師は卒業生の挨拶にも同様の1行を書き足したのであった。

 これも実に300年ぶりの定型書面の変更であった。


 因みに、今にもはち切れんばかりのレナの制服姿はすぐにアカデミ-の男子生徒で話題となり、その後、例の事件が幹部導師の耳に入ってレナには特注の制服が支給されることとなる。


 第二十九話 ~ 王立アカデミー入学 ➁ ~ 

 

 


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