第二十八話 ~ 王立アカデミ-入学 ➀ ~
第二十八話 ~ 王立アカデミー入学 ➀ ~ 序章
マノンとレナが旅立って二週間、二人の旅も終わりに近づきつつある。
王都ガリアンは、村から300ゲール"Km"ほどあり普通に歩いて旅をすれば二週間ほどの距離にある。
一日平均、30ゲール"Km"ほど荷物を背負い歩かなければならない。
既に、季節は初冬で雪が降り寒い、街道の石畳にもところどころに雪が積もっている。
元々、島だったので人を襲ったりするような大型の肉食獣はいないの幸いである。
しかし、王都への道中には幾つかの難所もあり、悪天候の日もあり、決して楽な道のりではなく、場合によっては命を落としかねない。
二人同じ部屋に泊まることもあったが毎日が強行軍でクタクタに疲れているのですぐに二人とも寝てしまい……爺が密かに期待したような間違いも起こることなく旅は終わりを迎えていた。
「予定より一日遅れたけど、なんとか入学式までには着いたね」
私が言うと
「ほんとに……王都って遠いのね……」
レナがしみじみと言う
王都は他の街とは違って四方を高い城壁に囲まれた巨大城壁都市で全ての出入り口には検問所があり出入りする者は、衛兵の検閲を受ける必要がある。
王都ガリアンを囲う城壁は高さはゆうに十m以上、十数Kmに及び城壁の周りは満々と水を湛えた幅50m以上の深い堀が巡らされている。
この城壁の中には約十万人が暮らしている、大陸でも都市国家シラクニアの城塞都市と並ぶ最大級の城壁都市である。
因みに、ゲルマニア帝国の帝都ヴァ-レには宮殿周辺にしか城壁が無く、都市部には城壁がない。
堀に架けられた石造りの橋の入口にある検問所に二人並んで順番を待ち通行証代わりの王立アカデミ-合格証を提示する。
それを見て兵士は微笑むと
「ようこそ、王都へ……長旅ご苦労様でした」
そう言って道を開けてくれる。
この時期は王立アカデミ-の新入生が次々に地方から王都にやってくる。
遠い所だと一か月近くもかけて来る者もいだろう。
周りを少し見回しただけでも同じ年ぐらいの子が何人もいる。
皆大きな荷物を持っているので王立アカデミ-の新入生だと判る。
これから、この王都での新生活が始まるのかと実感した瞬間だった。
第二十八話 ~ 王立アカデミー入学 ➀ ~
レナと一緒に巨大な城門を潜り王都に入る……。
目の前に、広がる景色を見たレナの足が止まる
「凄いわね…」
そう言うと辺りを見回す、典型的な田舎者の行動をする。
それを見ていた私は
「早く、王立アカデミ-に行って入学手続きしないとね」
「部屋割りに、それから荷解きも……やることはいっぱいあるよ」
私が言うと思い出したかのように
「あっそうね……」
と言うと急にクスクスと笑いだした
「どうしたの」
私が不思議そうに言うと
「なんだか…マノンが頼もしく感じるのよ」
レナはなんだか嬉しそうに笑いながら言う
「酷いな……私ってそんなに頼りなさそうなの」
私が不機嫌そうに言うと
「頼りにしてるわよっ……マノンっ!」
笑いながら言って歩き出す。
やがて、王立アカデミ-の正門に着くと"新入生はこちら"と置き看板がある。
その通りに歩いていくと入口に"入学手続き"と書かれたドアがある。
何人もの新入生が順番待ちの列を作っていた。
皆、長旅をしてきたのだろう、やや疲れ気味のように見える。
順番は思ったより早く回ってきた。
私は、ドアを開けると部屋の中を見回してルシィがいないかを確認する。
……いないようだ。
と安心していると、係員が私に声をかけられて少し驚く。
「次の人、こちらへ」
声を掛けた男の係員が私を呼ぶ、私はその方向に歩いていくと
「ここに、座って……王立アカデミ-合格証を出してください」
言われた通りに王立アカデミ-合格証を提示すると入学申請書類の内容を簡単に説明する。
王立アカデミ-の生徒として恥ずかしくない行動をとること等々、一般常識的な決まり事を事務的に淡々と述べた後に
「了承したら、ここにサインを」
と言って入学申請書類の最後の部分を指し示す、私がサインをすると後ろの係の人が受験時に提出した受験者証のサインと照合をする。
後ろにいる人は筆跡鑑定師で、写真のない時代なので本人のサインであるかを確認し替え玉受験を防止しているのである。
暫くすると……後ろの筆跡鑑定師が筆跡を確認し承認のサインをする。
これで入学申請終了である。
「お名前は、マノン・ルロワさんに間違いないですね」
「ポルトーレ地区サン・リベ-ルで間違いないですね」
確認をとっている間に隣の人が別の書類を差し出すとそれを見た係員の表情が少し変わる……。
「貴方の宿舎は、A-501です」
「宿舎は、指示板の通りに行けば分ります」
「次は制服の採寸を行いますのであちらの部屋へ」
と言うと学生証と部屋の鍵と王立アカデミ-刻印の入った封筒を渡してくれる、指示された部屋に入ると何人かの職員が採寸している。
「次の方」
と呼ぶ声がする……その方に行くと職員が数人がかりで体のサイズを測ると
「上下とも普通サイズ長C-大1」
と言う、別の職員が制服を持ってきてくれると
「これで終了です……部屋を出て宿舎の方に行って下さい」
そう言うと"入学のしおり"のようなものを渡された。
実に見事な流れ作業だなと感心しながら外に出ると、レナはまだ居なかった。
私のすぐ後なので、もうすぐ出てくると思ったがなかなか出てこない。
待っているうちに何かあったのかと心配し始めた頃にレナが出てきた。
「どうしたの何かあったのか」
と私が心配して聞くと
「なっ! 何もないわよ」
少し慌てたように言うので、不審に思った私がもう一度聞き直すと困ったような顔をして
「制服のサイズが……その……」
小声で恥ずかしそうに言う
「制服のサイズ……?」
私が不思議そうに言うと
「無かったのよっ!}
「だから……直してもらってて……」
「その……時間がかかって……」
恥ずかしそうに言う
「サイズ直ししてたんだね」
「それで時間がかかったんだ……心配しちゃったよ」
私はサイズ直しの理由はあえて聞かずに……。
それじゃ……宿舎に行こうかと言ってレナの手を引く。
(後で知るのだが、上下ともにサイズがなく直したそうである。)
(上着は胸が大きすぎて前のボタンが留まらない、スカ-トもウエストが留まらないので上下とも大きいサイズの袖と裾を切り詰めた)
案内板に沿って歩き出す……それにしても広い……。
横を見るとレナの表情からも驚いている様子がわかる。
「思ったより広いね」
私が言うと
「そうね……迷子になっちやぅわね」
レナも不安そうに言う……
幾つもの立派に石造り建物が立ち並ぶ校内を""入学のしおり"の地図を見ながら宿舎へ歩く。
二人ともその広さに圧倒され無言で歩き続ける。
歩いているうちに、宿舎らしきものが見えてくる。
立派な石造りの三階建ての大きな建物だ。
建物の前に、荷物を背負った人が並んでいるのが見える。
私とレナもその列に並ぶ、入口の職員が生徒を確認しながら宿舎に入れている。
当然、男子と女子は別でなので違った宿舎に入ることになる。
「また、後でね」
そう言ってレナと別れる。
男女で別の係の人が対応してくれる。
「マノン・ルロワさん……A501ですね」
「最上階の一番奥の個室です」
宿舎の中に案内された。
私は、階段を上り一番奥まで行くとA501と書かれたドアを発見する。
あった…ここだ…それにしても一番入口から遠いんじゃないか……。
一階の入り口のすぐ横だったら良かったのにと心の中で愚痴った。
ドアの鍵を開けて部屋に入る……なかなか良い部屋だった。
私は、荷物を降ろすと荷を解く、大したものは持ってきていないが備え付けのチェストに荷物を詰め込むと制服に着替える。
ブレザ-・タイプで肩掛けサイズのマントが付きマントには王国の紋章が刺繍されていて見ただけで王立アカデミ-の生徒だとわかる。
入学式は明日なので、備え付けの机と椅子があるのでそれに座り、さっき貰った入学のしおりを開き読む。
王立アカデミ-の配置図と学部棟の案内図があったので見ると改めて王立アカデミ-の広さがわかる。
本当に広いな……と思っていると、さっき貰った刻印のある封筒が目に留まった。
何だろう…と思い封筒の封を切ると中に一枚紙が入っている。
取り出して広げてみる……私は目を疑った。
"一般入試新入生代表として入学生代表の挨拶を命じます"
王立アカデミ-導師総代 ジェルマン・ベクレル
「なんですと~っ!」
と思わず一人で大声を上げる私であった。
第二十八話 ~ 王立アカデミー入学 ➀ ~ 終わり




