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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第二十七話 ~ 王立アカデミ-へ ~

 第二十七話 ~ 王立アカデミ-へ ~ 序章



 ガリア王国には、王都ガリアンに最高学府としてガリア王立アカデミ-と言う教育機関が存在する。


 王国全土から分け隔てなく優秀な人材を登用する事を目的とした公的機関であり、その歴史は大陸で最も古く原型は300年以上も遡るといわれている。


 教育機関として多くの人材を輩出し永らく存続している反面、不正などの色々と問題も抱えており抜本的な見直しが必要との意見も王国内にはある。


 年に二回、前期・後期の二回に分けて王国全土の主な地方都市で入学試験が行われ多くの者が受験するが合格率は5%に満たない。


 入学試験の受験資格はガリア国民であれば身分・人種・宗教・年齢・性別などほぼ無制限であるが受験には各市町の教育機関又は市町長の推薦状を必要とする。


 入試には、一般入試と特別入試があり一般国民はほぼすべてが一般入試である。


定員約250名の内訳は理学科150名と文学科100名で在学期間は最長二年で生徒各自の自由カリキュラム制で専攻学部の各基本科目を受講し科目選任教官の終了証明を受け論文が学部発表で評価されれば卒業資格証が与えられる。


 理学部の定数が文学部より多いのは、理学部の方が卒業者比率が低いためである、因みに文学科は教育学部のような存在であり、卒業生の多くは地方の教員となることが多い。


 一般入試在学者数は、一期生と二期生の合計でほぼ一定で500名である。


 特に優秀な生徒は、特別学部への編入も可能である、特別推薦生は、四年~六年の在学が許される。

 特別推薦生の在学者数は60~90名の間であるが事情により変化することが多い、よって王立アカデミ-の在学者数は560名~590名が在籍することになる。

 

 一般入試生は、短期間でも条件を満たせば卒業可能である反面、衣食住と学費を全額国家が支給するため留年制度がないので二年を過ぎれば強制的に退学となる。


 毎年多くの者が強制退学となり入学よりも卒業することのほうが遥かに難しく代わりに卒業生にはそれなりの将来が約束される。

 また、徴兵は免除されず兵役該当者は入学時より二年間の猶予期間が与えられ延期されるだけである。


 試験に合格した者は兵役中を除き国民学校などに在学中であっても編入が認められ卒業資格が与えられる…それほどに一般入試は狭き門なのである。


 毎年のように、多くの者たちがこの狭き門に挑戦するために各都市に集うのである。


 一方で特別入試は特に優れた者を優先的に入学させる制度で形式上の入試で特別推薦状があれば100%入学出来る。

 特別推薦状は一般推薦者の中から王立アカデミ-の幹部導師が特に優秀と認めたものに発行されるようになっている。


 導師などの教育者を育成するために設けられた制度であり、定員は15名程度と定められ在学期間も長く四年~六年間であり、兵役も免除される特典がある。

 

 この制度が現在の王立アカデミ-を腐敗させた最大の要因である。


 特典の兵役免除制度は、権力者や金持ちの子息の徴兵逃れの手段として用いられるようになる。

 王立アカデミ-の幹部導師を買収し能力が低くても特別推推薦状を金や権力で手に入れる者が年々多くなりアカデミ-のレベルを大きく損なっている。

 

 公然とした汚職で最近では学生は勿論、国民の知るところであり幾度となく改革が叫ばれたが、当の改革される側と改革する側の双方の権力者に不正者が多くいるために改革の論議は全てもみ消され闇に葬られ今日に至ったいる。


 尚、初代王の言いつけにより王立アカデネミ-は中立である事が前提とされているために国王でも容易に介入できないことが更に状況を悪化させているのだった。


 が……流石にこのまま放置するわけにもいかず……。



 ガリア国王レオナールのもとに書簡が届けられる、その書簡を読み終えると考え込むようにため息をつく。

 「やはり、今期もか……やれやれ困ったものだ」

国王レオナールが嘆くように言うと


 「例え初代王の言付に背く事となろうともこれ以上の放置は見過ごせませんな」

 「国王陛下……ご決断を」

真剣な表情で最高司祭クロードが国王レオナールに決断を迫る


 「やむを得んか……」

 「しかし、それには確たる証拠がなければならんな」

国王レオナールが言うと


 「大方の手はずは既に整っております…暫しのご猶予を…」

最高司祭クロードが静かに言った


 「随分と手際がいいではないか……」

国王レオナールが少し笑って言うと最高司祭クロードは深く頭を下げた。


 長年の王立アカデミ-の不正は既に国王レオナールや最高司祭クロードの知るところとなって久しかった。

 最高司祭のクロードは独断で信用のおける一部の者を使い予てから不正の動かぬ証拠を集めてきたのである。

 

  (王立アカデミ-は、独立機関ではあるが組織上は最高司祭クロードの管轄になる)


 二人は、国の要職や王国の大商人にまで広がっている王立アカデミ-の不正をこのまま放置すれば将来的に不正をした者が国を動かすことになり社会に大きな歪を生むことは確かであると判ってはいたが、初代王クリストフの"王立アカデミ-の独立性"と言う言付もあり今まで静観してきたのである。


 しかし、事ここに至り、遂に重い腰を上げたわけである。

 何せ、この不正行為は既に国の要職や大商人にまで不正が広がっているために王国内に何らかの形で混乱を招くことが懸念されたからだ。

 

 それゆえに、国王レオナールや最高司祭クロードですら安易な行動は取ることができずにいたのである。

 マノン達が王都に旅立つ三週間ほど前の出来事である。







 第二十七話 ~ 王立アカデミ-へ ~ 




 その頃、王立アカデミーの事情など全く知る由もないマノンは、受験を終えて家に帰ってから一人悩んでいた。

 

 "なんで、レナにキスなんかしたんだ"

"もしあの時に、母さんに呼ばれなかったらあの後どうなってたんだ"

 "今度、レナと会った時にどんな顔すればいいの……"

 と考えれば考えるほど整理がつかなくなってくる。


 今まで試験の事で頭がいっぱいで精神的に余裕が無かったが、試験が終わり余裕が出て来ると自分のした事に戸惑ってしまう。


 「遂にヤリよったな……」

と爺のいやらしい声が聞こえてくる


 「変な言い方しないでよっ!」

と私が不機嫌そうに言うと


 「どうじゃ、初めてのチュ-の感想は」

と爺がはやし立てるように言う


 「何でレナにあんな事しちゃったのかな……?」

 「もう、何だか訳が分からないよ」

と私が困惑していると


 「じつはな……最後の一押しはわしがしてやったのじゃ」

と爺が勝ち誇ったかのように言う


 「えっ! じゃあの時、勝手に体か動いたのは」

 「変だと思ったらやっぱり爺の仕業かっ!」

 「どうしてくれるんだよっ! この後の始末っ!!」

私は泣きそうに爺に抗議すると


 「勘違いするなよ、わしはお前さんの体の力を抜いてやっただけじゃ」

 「レナちゃんにキスしたのはお前さんの意思じゃよ」

と爺は冷静に言う


 「それじゃ……私が自分から進んでキスしたの」

 「そんな、私そんな気なんてなかったよ」

と私は困惑して言う


 「お前さんは、気が付いておらんだけだ」

 「本当は、レナちゃんの事を愛しているんじゃよ」

 「…それも…女子の頃からな」

 「わしには分ったぞっ……以前、レナちゃんにお前さんが憑依したときにな」

 「つまり……お前さんとレナちゃんは相思相愛と言う事じゃ」

私には思いもよらない事を爺が指摘する。


 「じっ女子の頃からって」

 「相思相愛ってそんな……」

いろんな事が私の頭の中を駆け巡る


 「もう寝る……」

私がポツリと言うと爺は何も言わずに気配を消した。

ベッドに入り横になる今日は流石に眠れそうにないかも……。


 が……気が付けば朝だった……。


 どうやら、数分で眠ってしまったようだ……我ながら少し恥ずかしい……


 窓から日差しが差し込んでくる。

 これから、どうしようかと悩んでいると。

 「あれだけ悩んでても、ほんの五分ほどで熟睡とは…」

と爺の呆れ返った声がすると


 「お前さんの脳みそは、深刻な悩みがあると思考を停止するようじゃな」

 「それはそれでいいことじゃよ……精神のバランスをとる上でもな」

爺はウンチクじみた事をいう


 「……温泉に入りたい……魔法工房の……」

私が何気なく言うと


 「ちょうどよい機会じゃ、レナちゃんも誘うと良い」

 「工房の事も言っておきたいしな」

爺の言う通りにレナにも魔法工房の事は言っておいた方がよいと思った。


 服を着替えると朝食を食べてレナの家に向かう。

 しかし、レナは家にはいなかった。


 レナの母が王都に旅立つ直前までクリスティ-ヌ女学校に通うと言っていた。

 王立アカデミ-の試験に合格した時点で女子学校の卒業証明がもらえるのだが……

 私は、真面目なレナらしいと思った。


 仕方がないので自分一人で魔法工房に行くことにする。

 転移ゲートを潜り魔法工房へ着くと温泉に入る。


 なんだか、悩みも流れ落ちていくような気持になる。


 ……やっぱり温泉はいいねと思う…今度はレナも誘おうと思った。

 それから久しぶりに、魔法工房の書庫に行く物凄い数の本が収蔵されている。

 レナが見たらきっと喜ぶだろうなと思う。


そんなことを考えていると

 「お前さん、さっきからレナちゃんの事ばかり考えているのぉ」

と突然、爺の声がした。


 「……そうだね」

 「私もレナの事を愛しているんだと思う」

 「レナとは、ずっと一緒にいたいと思うよ」

 「でも、今は爺の言うような"交わる"事とか考えられない……」

私は呟くように言うと


 「随分と悟ったようなことをいうの」

 「愛の形は人それぞれ……急いで答えを出す必要はないぞっ」

そう言うと爺は話題を変える

 「王都へは、転送ゲ-トを使うのか」

と爺が聞くので


 「歩いていくつもりだよ、他の街も見たいからね」

私が答えると


 「そうか……後、二週間ほど時間があるの」

 「わしも、やっておきたいことがあるのでのお前さんの体を使わせてもろうてもいいか?」

 と爺が言う


 「いいよ、どうせする事もないしね}

 「二週間は自由に使っていいよ」

私が言うと爺は私と入れ替わった。


 それからの二週間は、爺に体を貸していた。

 私にとっては、王都へ旅立つちょうど良い休暇となった。

 レナとは、あの日以来会っていない。

 

 この二週間は気持ちを切り替えるのに良い時間でもあった。

 爺は、毎日のように魔法工房へ行って魔道具の整理や工房の設備を点検していた。

 それらの作業は、爺のウンチク説明付きで何度も寝てしまった。

 が……私にとっても良い勉強になったようだ。


 そして、今までにしたこともない魔道具の錬成も体験する。


 爺は、王都へ旅立つのに便利な魔道具を幾つか作るらしい

 「魔道具の作り方じゃ、よく見とれよ……」

 と爺が言うと、複雑な魔方陣が青白く光りだす。

 魔法陣の中に置かれた物が光の粒となって舞い上がると魔方陣の中心へと集まっていく、それは徐々に物の形を成していく。


 「出来上がりじゃ…」

と爺は一息ついて言うと出来上がった物を手に取る

 「まずまず…思った通りの出来だな」

と爺は品定めしながら言う


 「なにそれ…」

私は何か嫌な予感がしたので爺に問う


 「新しいタイプの魔装服じゃよ、今のは目立ってしまうしの…」

 「この前にカルベネの街を散策したときに今風の服に新調したのじゃ」

 「レナちゃんの分も作るからの…プレゼントしてやるがよい」

と爺は少し笑ったように言うと次々と魔道具を錬成していく


 "うげぇ~、趣味悪っ!"

何とも言えない爺の服のセンスに心の中で呟くと

 「これ、全部持って行くつもりなの」

 「いくら何でも多すぎるよ」

目の前の魔道具の山を見て私が言うと


 「そんな事ぐらい分かっておるわい」

 「じゃから最後にとっておきの魔石を錬金するのじゃ」

 何か策があるようだった。


 こんな調子で毎日が過ぎていった。

 そして、最後の日最大のイベントは初めて見る魔石の錬金で、えらく複雑で時間がかかると以前に爺が言っていた通りだった。


 この二週間の間、爺はほぼ毎日のように少しづつ魔石錬成の下準備をしていた。

 

 爺が言うには錬成術と錬金術は似て非なるものらしく錬金術の方が遥かにに高度で魔力と手間を必要とするらしい、魔石の錬金はその典例みたいなものだそうである。


 鉄鉱石から剣や鎧を作り出すのは錬成術、鉄鉱石から金を作り出すのが錬金術だそうである。

 錬成術は物質そのものは変化しない形状変化、錬金術は物質そのものを変化させる物質変換のだそうである。


 魔石は魔力というエネルギーを物質化する錬金術でも最高難度のものだという。

 因みに、鉄から金を作れば大金持ちになれるのではないかと言う私の俗な質問に爺は、一グラムの金を錬金するのに必要な魔力と手間を考えると割に合わないと言っていた。



 「やれやれ……やっと終わったわい」

爺は一息つくと魔法陣を発動させると物凄い光とともに熱が発生する。

 まるで部屋の中に小さな太陽ができたようだった。

 やがて冷えて固まると魔方陣の中心に数センチ(カード)の半分ほどの小さな白い石板が一つある。

 「ふう~なんとか間に合ったわい」

と言うと爺は石板を手に取る。


 「我ながらこれはいい出来じゃ」

と満足げに言う


 「なにそれ」

私が訪ねると


 「超小型の転移ゲ-ト操作盤じゃ」

爺は自慢げに言う


 「そんなに小さいの」

私が驚いたように言うと


 「これは、祠の代用品でな離れたところから近くの転移ゲ-トの魔石を操作できるのじゃ」

 「似たような物は前にも幾つか作ったがどうも今一じゃったが、これは今までの物より遥かに高性能じゃ」

そう言うと石板を作動させる……光とともに裏山の祠の前に転移していた。


 「よしっ! 動作も問題ない」

 「これでいつでも王都から工房へ転移できる」

 「何か必要な物があればすぐに取りに来れるというわけじゃ」

爺が満足げに言う。


 家に帰るといつものように、家族と食事をとりベッドに入る。


 明日は、王都に出発か……レナと会うのも久しぶりだな。

 元気にしているのかなと考えているうちに眠りについた。


 「お兄ちゃん! 朝だよっ…今日は王都に行く日だよっ早く起きてっ!!」

 というイネスの声で目が覚める、慌てて服を着替え、朝食を食べ荷物を背負って家の外に出る。

 雲一つない……いい天気だ。


 「いってらっしゃい…体には気を付けるんだよ」

と母が少し涙ぐんで言うと


 「マノン……しっかりな……」

 「さあっ! 行ってこいっ!!」

と父が力強く言って肩をパンと叩くと


 「お兄ちゃんっ! 」

とイネスが涙ぐむ


 「じぁ! 行ってくるね」

私は家を後にした…今日は、カルベネまで行く予定だ。


 その前にレナの所に行って爺に作ってもらった魔装服をプレゼントするつもりでもある。

 爺の自信作で魔力のある者が着ると相当な防御力やいろいろな機能が使えるのだが、魔力のない普通の人が着ても普通の服よりはいいらしい。


 レナの家に行くと、既にレナは玄関で待機していた。

 「おはようレナ」

と挨拶をすると


 「おはよう…マノン…」

と私を見て優しそうな笑顔で挨拶をする


 「これっ…あげるね…」

爺の自信作の魔装服を渡す


 「えっ!あっありがとう、着させてもらうね」

そう言うと、手早く大きなリュクにしまい込んだ。


 爺の自信作の魔装服を見た時のレナの表情はどんなものか言うまでも無い。


 見送りに出てきたマノンの両親と挨拶を交わすと私とレナは、王都に向かって第一歩を踏み出した。


 後日談だが、爺の自信作の魔装服はレナのサイズには合っていなかった。

 どこが合っていなかったかは、あえて言及しないことにする。

 

 


  第二十七話 ~ 王立アカデミ-へ ~  終わり





 

 


 


 






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