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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第二十四話 ~ 受験勉強 ~ 

第二十四話 ~ 受験勉強 ~ 序章


 「マノンっ! ここ間違ってるわよっ!!」

 「それにここもっ! さっきと同じ問題だよっ!!」

 「こんなのじゃ、アカデミ-の試験なんて絶対に通らないわよっ!」

 情け容赦の無いレナ大先生の叱咤の声がする。


 村に帰った私は久しぶりの再会を楽しみにレナに会いに行ったのだが、何故か勉強会になってしまったのだった……。

 

 カ-ン、カ-ン、カ-ンと夕暮れを告げる教会の鐘が鳴る。

 その音を聞いた私は心の中で安堵した……こっ、これで開放される。

 「……もう時間だから帰るね」 

と私がホッとしたように言うと


 「何言ってるのよっ! アカデミ-の試験日まで後三週間ほどしかないのよっ!!」

 「明日は休みだから、今日は遅くなってもいいのっ!」

レナは怖い顔をして言う

私は横目でレナを見る、昔の女神の如きレナは何処に行ってしまったのかと思いながら……


 「でも……まずいんじゃない……」

 「年頃の若い娘さんの所に夜遅くまでって」

 「その世間体ってのもあるし迷惑なんじゃないかな」

 と私は恐る恐る言うと


 「マノンと私は昔っからの幼馴染だし、べつに迷惑なんかじゃないわよ」

 「うちの両親も何とも思わないわ……」

 「……そっそれに、マノンは私の命の恩人だし……」

 「べつに……何かあったとしても……私は……」

とレナは途中まで何かを言おうとしたが口ごもってしまった。


 「どうしたの、顔真っ赤だよ……調子悪いの」

と私が何気なく言うと


 「つぎっ! ここからっ!!」

急に機嫌が悪くなる


 「はいっ! 今日は遅くまでがんばらせて頂きます」

と私は背筋を伸ばして大きな声で言うのであった。

 この間、ずっと爺の笑いを堪える声がしていた……。





 第二十四話 ~ 受験勉強 ~ 



 「お兄ちゃん、朝だよ起きてご飯できてるよ」

私を起こすイネスの声がする


 「分かった、今行くよ」

大きな声でイネスに返事をすると、私は服を着替えて下に降りていく。


 なんだか余り寝た気がしないな……。

 結局、昨日はレナの両親が帰宅するまでレナにシゴかれたのであった。


 今日もこれから恐怖のお勉強会である。

 「お父さんとお母さんは、畑に行ったよ」

 「後はお兄ちゃんだけだからね、早く食べちゃってね」

 「それで…お兄ちゃん、昨日はレナお姉ちゃんとこに行って帰りが遅かったけど」

 「……何かあったの」

と興味津々の眼差しで私を見詰めている


 「あ~王立アカデミ-の受験勉強だよ」

 「昨日は夜遅くまでレナにみっちりシゴかれたよ…今日もこれから勉強会だよ…」

と私はゲッソリとした表情で言うと


 「何だ……勉強会なんだ」

 「あんな夜遅くまで……」

 「いったい……何の勉強……」

少し、いやらしそうな笑いを浮かべてイネスが言う、どうもこの頃イネスは耳年増になってきている。


 「そうだイネス」

 「私、王立アカデミ-に入学するつもりなんだ」

 「昨日、お父さんとお母さんにも王立アカデミ-の受験のことは言ってあるよ」

と私はイネスに言うと


 「そうなんだ、そうするとお兄ちゃん、王都へ行っちゃうの……寂しくなるな」

と寂しそうな顔をするので


 「すぐに戻ってくるよ、特別推薦は四~六年だけど一般推薦だから長くて二年だよ」

 私がそうそう言うとイネスは少し嬉しそうな表情になった。


 自分勝手な思い付きで両親にもイネスにも迷惑をかけるが、どうも王立アカデミ-の事が気になって仕方が無い。

 それに爺はルシィのことが心配のようである。


 私は、食事を終えると筆記用具の入った鞄を持って家を出るとレナの家に向かって歩いていた。

 道を歩きながら今まであった事を考えていた。


 足止めされていた兵団も村を去り人通りも無くいつもどおりの田舎の村に戻っている。


 ほんの二月前までは普通の女子学生だったんだよな。

 いつの間にか大賢者になってて今では男子なんだよな。

 ほんといろんなことがあったよな……。


 そういえば、ルメラ達は元気で暮らしてるのかな。

 町にいた頃の話ではシラクニヤも他の国も再興が許されたって話しだし、進攻してきたゲルマニアの兵隊も春にはゲルマニヤに帰還するとか言ってたし…ちゃんとマキシミリアンは約束を守ってくれたんだ。

 そういえば……爺はどうしたんだろう最近気配が無い……。

 

 と考えているうちにレナの家に到着した。

 ドアをノックするとレナが出迎えてくれた。

 「おはようレナ……今日もよろしく頼むね」

と私が言うと


 「私の部屋に入ってて、後で私も行くから」

と言うと奥の方に行ってしまった。


 私は、レナに言われたとおりに階段を登るとレナの部屋に入った。


 若い嫁入り前の娘の部屋に男が上がり込み夜遅くまでいるのはどうかと思うのだがレナは私が元女子だということを知っているので余り気にしないのだなと思っている。


 ガチャっとドアの開く音が聞こえるとレナが何か持って入ってくる

 「ちょっと手伝ってマノン……」

と言うと椅子を部屋に持ち込もうとしている


 「椅子なんかどうするの」

と鞄を机の上に置くとドアに向かって歩いて行く


 「私が使うのよっ、私も一緒に勉強するつもりだから……」

 「この椅子、結構重いのよ」

そう言うと力任せに椅子を部屋に入れようとする、その時に勢いづいた拍子に椅子の脚が私の股間に直撃しメリ込んだ。

 「う゛っ!」

余りの痛さに股間を押さえてうずくまる。


 「あれっ、マノンどうしたの?、そんな所にうずくまって」

レナは何も気付かなかったようでうずくまっている私を見て言う


 「なっなっなんでもないよ」

猛烈な痛みを堪えて言うと


 「どうしたのマノン! 顔が真っ青だよ」

心配そうに言うが……流石に言えない……


 「あっ、慌てて机の脚に足の小指をぶつけただけだよ、もう大丈夫……」

と私はとっさに嘘を言ってしまったが、これはこれでよいと思う


 「気を付けつてね……マノン」

と心配そうにレナが言う

 マノン・ルロワ……もうすぐ16歳……始めて知る男の痛みであった。


 かくして地獄の受験勉強が始まった。


 私の隣に椅子を置いて私に教えながらレナも一緒に勉強をしている。

 少しだけ良い匂いがしてくる…レナからだ。

 これはミントかな……

 (この地方ではミントは野原や庭に普通に自生しているので料理などによく使われる) 


 アカデミ-の試験が終わったら、香水でも作ってプレゼントしようかな…などと考えていると

 「マノン、手が止まってるわよ」

レナが私を見て言う

 

 「はいっ! 導師っ!」

私がそう言うとレナは少し笑ったようだった。


 窓から柔らかい日の光が差し込んでいる。

 そういえば、クリスティ-ヌ女学院の試験の時もこうしてレナに勉強を教えてもらったな。


 穏やかな時間がゆっくりと流れていく。

 もう直ぐ昼だな……勉強は嫌だがこういう時間は好きだ。

 窓の外から子供たちの遊ぶ声が聞こえてくる……。

 なんだか…なんだか…眠気が……ここで私の意識は途切れた。


 カ-ン、カ-ン、カ-ン教会の鐘の音が聞こえる。

 気が付くと夕暮れになっている。

 ヤバイぞっ途中で眠ってしまった。


 レナ大先生に叱られてしまうと思いきや、隣でレナも寝てる。

 昔もそうだったな……なんだか懐かしく思えてくる。

 寝ているレナの頭を思わず撫でてしまった。

 

 もうすぐ、レナともお別れだ……そう思うと急に寂しく思えてくる。

 暫くの間、レナの寝顔を見ていると…レナも目を覚ました…

 「えっ! もうこんな時間っ大変……寝ちゃったんだ私……」

と言うと少し焦っているようだ


 「もう、夕方だから家に帰るよ」

と筆を片付け鞄を持って私が言うと


 「そうね、少し無理し過ぎかもね」

とレナが少し笑った表情で言うと座っていた椅子を重そうに持ち上げる。


そして少しふら付きながら

 「ちょ、ちょっとマノン、椅子をまた居間に下ろすからドア開けてくれない」

と言うので私はドアを開けたのだが持っていた鞄を落としてしまい拾おうとして屈んだ時…

 "すぼっ!"


 「あふっ!」

今度は、鞄を拾おうとして突き出したわたしのお尻に椅子の脚の先がお尻の穴を直撃し突き刺さったのだった。


 余りの痛さにお尻を押さえてうずくまる私を見てレナもパニックになる。

 「大丈夫っ! マノン」


と持っていた椅子を思わず手から離しまうと今度は、レナが爪先に椅子が落ちる。

 「いたっ」


とその場にうずくまる。

 二人してその場で暫く苦しむ……。

 「もう、この椅子を使うのは辞めようよ……」

と私がお尻を押さえながら言うと


 「そうね、」

とレナも言うと二人は大笑いした。


 その後、二人でこの危険極まりない椅子を居間まで慎重に持って行く

 「お茶でも飲んでいく」

とレナが言うので


 「うん、飲む」

と私が嬉しそうに言うと

 レナは、居間の暖炉の灰の中の残り火に薪を入れると火を起こす。

 竈に火の付いた薪を少し入れて鍋をその火にかける。

 私は、居間の椅子に座ると……いつしかの雨の日の出来事の記憶が蘇ってきた。


 「お茶が入ったわよ、クッキ-もあるからどうぞ」

とレナが木の器に入ったクッキ-を差し出してくれる。


 私は、クッキーを食べながらレナの方を見ていると

 「昔もこんなふうにお茶した事があったよね」

とレナが何気なしに言う


 「うん、あったよね……私もあの日のこと思い出したよ」

と私が小さな声で言うと


 「あの時はゴメンね」

 「その……意地悪して毛布を取り上げてマノンを裸にして」

とレナが謝るので


 「私もゴメン…調子に乗ってレナの服を捲り上げちゃって」

と私も申し訳なさそうに謝る


 「あの時は、私も女子だったから良かったけど今だったら完全にアウトだね」

と笑いながら私が言うと


 「私にとっては、男でも女でマノンはマノンだよ」

とレナは小さな声で言う


 「私にとっても、レナはレナだよ」

 「でも、今はもうあの時みたいにレナの目の前で裸にはなれないかな……」

とちょと照れくさそうに言うと


 「私は、今も昔も恥ずかしくてマノンの前では裸になんてなれないよ」

 「死熱病の時の事なんて……今でも時々夢に見るぐらい……」

と少し頬を赤くしてレナが言う


 「あの時はゴメンね痛かったでしょう」

と私が慌てて謝ると

 

 「そうじゃなくて……その……」

 「私……お腹が出てるから……」

とレナが下を向いて恥ずかしそうに言う


 「えっ!…お腹…?」

と私は意外なレナの言葉に驚く


 「マノンは女子だった頃は胸が無いことを凄く気にしてたでしょう」

 「私にとってはお腹の出ていることが凄く気になっているのよ」

 「服を捲り上げられた時も死熱病の時もお腹の事が気になって」

 「それに、意地悪して毛布を取り上げてマノンを裸を見たときもマノンのお腹が全く出てないの見て結構ショックだったんだよ」

とレナは恥ずかしそうに言う

 

 「ブッ!ハッハッハッハッ……」

私は思わず大きな声で笑ってしまう


 「酷いわよっ! そんなに笑う事ないじゃないっ!」

 「人が真剣に悩んでるっていうのに……」」

とレナは怒って言う


 「お腹が出ててもレナはレナだよ」

 「私はレナが大好きだから、そんなの全然気にしないよ」

と私が言うとレナは黙り込んでしまった。


 "そういえば、セシルもお尻が大きいのを気にしてたな……"

 "トルス騎士団でも元気にしているかな……"

などと考えていると、辺りが暗くなってきている事に気が付く


 「暗くなってきたね、そろそろ帰るよ」

私が窓の外を見ながら言うと


 「そうね・・・・・・」

レナがそう言うと私をジッと見つめる……暖炉の日がレナの瞳の中で燃えている


 「あれっ……」

私は自分の鼓動が異常に早くなっている事に気付く。

 「何だか、私、変だ……」

そう感じた時には、既にレナを抱き寄せキスをしていた……。


 パチパチと暖炉の薪の燃える音と激しく脈打つ自分の鼓動の音だけがする。


 暫くして、少ししてお互いが顔を見合わせるとレナは

 「……マノン……私、私……マノンとなら……」

レナの瞳は潤み、何かを訴えかけているのが私にもがわかる……


 「……レナ……」

私がレナの腰に手を回す……


 「ガチャ!」

ドアの開く音がする、焦った私とレナは慌てて離れる

 「レナァ~帰ったわよぉ~」

レナの母親の声がする


 二人して何事もなかったように平静を装うとレナが返事をする

 「お帰りなさい、お母さん……」

 「はっ早かったわね……」

レナは平静を装っているが動揺しているのが丸判りだった、昔から正直で素直なレナは嘘を吐くのが下手なのだ。


 「レナのお母さんも帰ってきたことだし」

 「もう、帰るね」

 そうと言って私は、カップに残っていたお茶を飲み終えるとレナにお礼を言ってレナの家を後にする。

 そして、暫く歩くと………鞄を忘れたことに気付き慌てて取りに戻るのであった。


 "こんな、調子ではたしてアカデミ-に入れるのか……"

 勉強の邪魔をしないように息を潜めていた爺は深刻な危機感を覚えるのであった。



 第二十四話 ~ 受験勉強 ~  終わり 


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