第二十三話 ~ 帰還 ~
第二十三話 ~ 帰還 ~ 序章
シルビィ達が王都に帰還してから四日が過ぎようとしていた、町には何事も無く別段することも無い私は町舎で薬を作ったりしている。
以前、町の医者と話をした時に腹痛と下痢の症状を訴える患者が多いことを聞いたので暇なので「エマの書」にあった腹痛と下痢止めの薬も作ったのだが、たまたま長らく腹痛と下痢に悩まされていた町長に試してもらったところ凄く良く効いたらしく、町長の口から物凄くよく効くと町で評判になり町の医者にその製造法を教えたりと退屈はしなかった。
新たな死熱病発症者も無く人々も日常を取り戻してきている。
明日でこの町に来て二週間が経つ、私の役目もそろそろ終わりのようだ。
このまま何事も無ければ村に帰ろうと思っている、その前に女生徒たちの近況が気になるので最後に訪ねてみるつもりでいる。
第二十三話 ~ 帰還 ~
いつものように、教会の鐘の音で目が覚める。
服を着替え食堂に行くと宿屋の主人が食事の支度を終えたところだった。
一人で食事するのにも慣れてきたようだ、死熱病騒ぎの影響でこの町を訪れる旅人は一人もいない。
宿泊しているのはシルビィ達が王都に帰還したので今は私一人だけなのだ。
「あの~大賢者様、もうすぐお帰りになると町長よりお聞きしておりますが」
宿屋の主人が丁寧な口調で聞いてくる
「うん、何事も無ければ、死熱病騒ぎも落ち着いてきたしね」
「私の役目もそろそろ終わりだよ、世話になったね食事も美味しかったし感謝してるよ」
私がお礼を言うと
「そうですか……寂しくなりますね
「一つお願いがあるのですが……」
なんだか言い難そうなので
「世話になったから私にできる事なら何でもいいよ。」
笑顔で言うと
「……その麦芽飴の作り方を教えてもらいたいのです」
宿屋の主人が言う
どうやら、女生徒が家に帰る時に渡したものが女生徒を通じて広まったのとアネットに頼まれて大量に作った物が町に出回り、それを口にした主人はどうしても作り方を教えて欲しいとの事である。
私は、快く承諾し麦芽飴の作り方を教えることを約束した。
村へ帰るのが一日遅くなるかもしれないがどうせ村に帰ったところで急ぎの用も無い。
私が食事をしていると爺の声がしてくる。
「ところでおまえさんに王立アカデミーに潜り込む算段はあるのか」
と爺が聞いてくる
「……」
私が何も言わずに黙っていると
「やはり、何も考えてなかったの」
「まさか、堂々と正体を明かして入り込むつもりか」
爺が呆れたように言う
「それが出来ないから困っているんじゃない」
私が怒ったように言うと
「わしにいい案があるぞ」
「堂々と王立アカデミーに入り込む方法がな」
爺が性悪そうに言う
私には他に代案のないので爺の提案に同意することにした。
食事が終わると宿屋の主人に麦芽飴の作り方を教える、宿屋の厨房には始めから必要なものは全て揃っているので私は作り方を教えるだけで良かった。
それから、爺の悪だくみを実行に移すことにした。
まず、王立アカデミーの入学制度にある各市町長に権限のある推薦制度を利用して推薦状を書いてもらう必要がある。
町舎に行って町長に会い王立アカデミーへの推薦状を書いてもらうのだが、当然、特別推薦ではなく大賢者の身分は隠してでの一般推薦枠でである。
町長には、特別扱いされ偏見の目で見られたくないからだと説明すると推薦状を書く事を承諾してくれた。
これを持って、王立アカデミーの一般入試を合格すれば堂々と正門から潜り込めるという訳である。
「大賢者様が王立アカデミーに行って何かの御研究でも御有りなのですか」
「御研究なさるのでしたらこの町でもよいのでは…」
「必要なものは何でも揃えさせて頂きますので」
「町舎も御自由にお使いくださって結構です」
「出来れば、この町に永住していただいてほしいくらいです」
「町の者もそれを望んでおります」
町長が丁寧な口調で私に提案するが
「本当にありがたい申し出だけど、王立アカデミーという物を見てみたいんだ」
私が申し訳なさそうに言うと
「そうですか……」
「残念ですが大賢者様の御意思がそうであるなら…仕方がないですね」
「推薦状はこれから書きますがお待ちになりますか」
町長が聞くので
「最後に女生徒たちの様子を見に行ってきます、その後でもう一度来ます」
と言うと町長に挨拶をして町舎を出ると女生徒の家に向かった。
一人目の家に着くと玄関のドアをノックすると中から声がして女生徒本人がドアを開けてくれた。
私を見た女生徒は少し驚いたようだったが元気そうだ
「調子はどうかな」
と聞くと
「病気になる前と変わらないぐらい元気です」
「今、母を呼んで来ますと言うと奥に入ってしまった」
暫くすると母親が出て来る
「これは、大賢者様っ、どうぞ中へお入りください」
と言うが
「もうすぐ帰るので最後に様子を見に来ただけですからここで」
私は言うと一番気に掛かることを母親に聞く
「…近所の方々とは…その…」
私が言い難そうに尋ねると
「お心遣い本当にありがとうございます」
「大賢者様が近所の人に直接説明して下さったので親子共々、前と変りなくお付き合いさせていただいております」
笑顔で答えてくれた
「そうですか……」
私は安堵のしたかのように言う
「大賢者様っ!……これを」
そう言って女生徒が顔を赤くして手編みの手袋をくれた
「ありがとう、使わせてもらうね」
と言うと私は手袋を着けた
「病気を治してもらったのと、この前に頂いたお菓子のお礼です」
「あのっ、大きさはどうですか」
不安そうな表情で聞いてくる
「丁度いいよ、本当に私の手の大きさにピッタリだよ」
私が笑って言うと
「よかった、私の胸を触った時の感覚で作りました……」
言うと女生徒の顔が更に赤くなる
「…あっ!…その……あの時は……」
私は申し訳なさそうにすると女生徒は家の中に隠れてしまった
「あの子ったら……」
「本当に……すみません大賢者様……」
母親が笑いながら言う、その様子を見て私は心から安心した。
同じように残りの二人の女生徒の家にも行ったが問題はなさそうだった。
手袋が三つあるので今年の冬は手袋に困らないだろう。
これで憂いなく王立アカデミーに行くことが出来る。
私は、町舎に戻ると町長から王立アカデミーへの推薦状を受け取った後に宿舎に戻る。
この道を歩くのも今日で終わりである、明日には一度村に戻り準備を整えた後で王立アカデミーへ旅立つつもりだ。
宿舎に帰ると部屋に戻り荷物を纏める、町舎の機器は"練成分解"で処分してもいいかとも思ったが町の医師に託すことにした。
この部屋とも明日でお別れだ。
夕食をとるために食堂に行くとテーブルにはこつもより豪勢な料理が並んでいた。
料理を見て驚いている私に
「今までのお礼のつもりです、お召し上がりください」
宿屋の主人が微笑みながら言う
「ありがとう……よろこんで頂くよ」
と私は言うと椅子に座り食べ初める。
……おそらく今までの人生で最高の食事だったと思う
食事を終えて風呂に入りベッドに横になると、今までのことが思い出される……。
不意に爺の声が聞こえてくる
「ところで……お前さん、王立アカデミ-の入試対策はどうすんじゃ」
私に言うので
「そんなの爺に任せるよ」
私がお気軽に言う
「何を言うとるんじゃ!ちゃんと勉強して知識を身につけてもらうぞっ!!」
「それに、今のままの無学・無教養のお馬鹿の脳タリンでは王立アカデミ-ではやっていけんじゃろがっ!」
「ちゃんと大賢者としての最低限の教養は身につけてもらわねばな……」
「今のままの脳タリンでは大賢者の威厳に関わるわい」
爺は私に強く言う
「ひどっ! どうせお馬鹿ですよ……」」
「勉強しても時間の無駄だから勉強なんて、し・ま・せ・ん」
私が嫌みったらしく言うと
「村に帰ったらレナちゃんにそういうんじゃなっ」
爺が意味ありげなことを言う
「爺っ! まさかっ!! 」
私は思わず声を荒げる
「この前に村に帰った時に既にレナちゃんとは交渉済みじゃよ」
「村に帰ったらビシビシとシゴいて貰う予定じゃ」
「レナちゃんはお前さんと違って優秀じゃからの」
「それが嫌なら、指輪の事をレナちゃんにチクるだけのこどしゃ」
「まぁ、わしがチクらんでもその内にバレるじゃろうがな」
爺は意地悪そうに笑いながら言う
爺っ! 最初からそのつもりであの時に村に帰りたいと言い出したんだな。
やられたっ!!。
……爺の奴は初めから私を王立アカデミ-に入学させる気だったんだ。
まぁ、いいか…私も行ってみたいと思ってたし。
今更、抵抗しても無駄だと悟った私はおとなしくベッドに入って眠りに着いた。
いつものように教会の鐘が鳴る。
少し早く目の覚めた私は簡単な荷物を持つと部屋を出た。
宿屋の主人が最後の朝食を用意してくれていた。
私はそれを食べ終えると主人に挨拶をして外に出ると……大勢の人が外にいた。
驚いている私に皆がお礼の言葉を口にする。
私は一人で町を後にし村への帰路に着くのであった。
第二十三話 ~ 帰還 ~ 終わり




