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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第198話 ~ 収穫祭の前休日 ➄  ~

第198話 ~ 収穫祭の前休日 ➄  ~


序章


暗闇と静寂に包まれた廃棄都市ターレンの転移ゲートが突然輝き始める。

眩しい光の中から暗闇の中へと次々と人影が出てくる。


ユーシェンの指揮する"閉門派"粛清部隊である

最後の隊員が転移ゲ-トが出ると転移ゲ-トが停止し辺りは再び暗闇と静寂に包まれる……その直後……

 「散れっ!!!」

異変に気付いたユーシェンの叫びに隊員が瞬時に四方八方に散る

その瞬間、ユーシェン達がいた場所に雷のごとく青白い閃光がはしる

僅かに逃げ遅れた隊員の一人が閃光に包まれる


 「ぎっ!」

悲鳴も満足に上げる間もなく隊員は一瞬で塵となり消滅する


 "あれはプラシオンの術……"

雷撃系の高等攻撃魔術である、超高電圧より大気は瞬間的にプラズマ化し一万度以上の灼熱地獄と化す

 "待ち伏せか……嵌められたな……"

 "間違いなく、向こうにも戦術級以上の能力者がいるな"

ユーシェンは心の中で呟くと"プラシオン"の影響による通信障害で回線に雑音が酷いなか隠密回線で散り散りなった隊員と通信を試みる


  "聞こえるか……誰が殺られた"

ユーシェンの問いかけに隊員の一人が応答する


 "こちら……はカク・ジャンミン特務大尉で……あ……ります"

 "エン・ソンコウ特務……少尉と連絡が……取れません"

 "その他……オン・コウゲン特務中尉は無事で……あります"

 "……トウ・エイソン特務中尉とも連絡は取れております"

 "転移ゲ-トは破壊されています"

先制攻撃を受け仲間の1人を失い、このような状況でもカクは狼狽えることなく冷静に現状を報告する


 "了解した"

 "ここに獲物はいない……各自、打ち合わせ通りに行動せよ"

ユーシェンの命令を聞いた隊員は事前打ち合わせ通りに帰投のために各自が他の転移ゲ-トへと向かう

しかし、これは戦力分散という致命的な過ちであった

敵の全員が格上の"戦略級"であるなどとは想定されていなかったのである



半ば廃墟と化したビルの屋上から様子を窺っている3人の姿が見える

 「かわされたか……」

 「なかなか勘のいい奴だな……」

 「手応えはあった、一人ぐらいは始末できたはずだ」

ソンは隣にいる"閉門派"同士の"サイ・ワンウェイ"特務少佐に少し不快そうに言う


 「向こうもプロ集団です」

 「一撃で片付くような相手ではありません」

サイは感情の無い冷淡な口調で答える


 「貴官は相変わらずだな……」

感情のまるで感じられないサイの言葉にソンは少し呆れたように言う

 「で……奴らの動きはどうかな、セツ中佐」

ソンはサイの隣で目を閉じて精神を集中させている人物に問いかける


 「反応は4名……各自、別行動をとっているようです」

この人物はセツ・ジャンジン特務中佐、探査魔術を得意とする戦略級能力者である

攻撃魔法はあまり得意ではないが防御魔法は強力で相殺中和系を得意とする

因みに、サイは攻撃魔術は火炎系を得意とするが防御魔術は不得意でサッパリである

 「シュ・ユーシェン特務大佐はソン大佐に任せます」

 「残りの雑魚は私とサイで始末します」

セツがそう言うとサイは軽く頷くと2人は一瞬で姿を消した


 「あの2人はセットで行動するのが最良……」

 「さて……私も行くとするか」

ソンは小さな声で呟くと霧のようにその姿を消すのであった




蒸し暑いリゾート都市"ランギロア"にある高級ホテルの最上階の一室

薄暗い光魔灯の光の下でクゥとランファンの2人が抱き合いベッドに横たわっている


 「私は……孤児だった……のよ」

クゥは自分の身の上を話し始める

 「あれは……私が5歳になった時だった」

 「いきなり家に何人もの男の人が入って来て両親を連れ去ったの」

 「私は、怖くて泣いているだけだった……」

クゥは声を詰まらせるように話す


 「クゥ……辛いなら話さなくていいのよ」

辛そうにしているクゥにランファンがそう言うとクゥを強く抱きしめる


 「ランファン……お母さんみたい……」

 「小さい頃、怖い夢を見たりして眠れない時に」

 「お母さんはランファンみたいに私を抱きしめてくれた」

クゥはそう言うとランファンの胸の谷間に顔を埋めスリスリする


 「あんっ! もう……ちょっと、くすぐったいよ」

ランファンはそう言ってクゥの頭を優しく撫でるとクゥは続きを話し始める


 「私は知らない男に無理やり手を引かれ連れていかれた」

 「そして……鉄格子の入った部屋に入れられたの」

 「幼心にも悪い事をした人が入れられる部屋だって分かったわ」

 「3度の食事はちゃんとくれたけどお風呂には入れなかった」

 「両親が必ず迎えに来てくれる……」

 「そう信じて待ち続けた……でも……迎えに来る事は無かった」

ランファンはクゥの声が少し震えているのが分かる


 「もうっ! 話さなくていいからっ!!」

あまりに辛そうなクゥにランファンは慌てて話すのを止めるように言う


 「お願い……最後まで話させて」

 「ランファンには聞いてもらいたいの……」

クゥはそう言うと再び続きを話し始める


 「何日経ったのか分からなくなった頃に、部屋から出された」

 「そして……そのまま、孤児院に入れられた」

 「孤児院には私と同じような子が大勢……いたわ」

 「でも普通の孤児院じゃなかった……」

 「周囲を高い塀と有刺鉄線に囲まれていた……」

 「どう見ても刑務所よ」

クゥの話を聞いたランファンには心当たりがあった


 「アスウィンメモリ刑務所……」

ランファンが呟くように言うとクゥがピクリと反応するのが分る

アスウィンメモリ刑務所とは政治犯や危険思想の持ち主を専門に幽閉する施設である


今から24年前に新生・アル・マノース共和国で起きた政変の事がランファン記憶に蘇る

社会主義者が民主主義者を弾圧・粛清した大事件である

この時、社会主義者のリーダーが今の評議会議長のリャンなのである

弾圧・粛清された親の子供がリャンの配下となり手駒となっているのである

クゥの話にランファンは居た堪れなくなってくる

「本当にもういいからっ!!!」

ランファンはクゥにもう話さなくていいと訴えるがクゥは続きを話し始める


 「表向きは孤児院だけど……」

 「実際は弾圧・粛清した民主主義者やその家族を洗脳する施設だった」

 「反抗する者は容赦なく始末されたわ」

 「私は生き残るために従順な優等生を演じた」

 「そして……"戦略級"の能力者だと判った時に神学校へ移された」

 「あんな所でも私には天国のように思えたわ」

 「18で神学校を出て普通の大学に通い友達も出来た……」

 「大学を出た後は、政府(リャン)の犬になって神学校の教師になった」

クゥの頭にシーとの思い出が蘇ってくる

 "ごめん……シー……"

 "私……本当(マジ)に浮気しちゃったみたい……"

心の中でシーに懺悔をするクゥであった


 「そして……昔の自分と同じような子供に……子供に……」

クゥは苦しそうに言葉を詰まらせる


 「もう……いいのよ……」

ランファンは言葉を詰まらせ泣いているクゥにそっとキスをする

そのまま、クゥの上に体を重ねると服をゆっくりと脱がせる

クゥは抵抗せずにジッとしている

 「忘れさせてあげる……」

ランファンはそう言うと光魔灯の灯を落とし真っ暗になった部屋でクゥの体を貪るように舐め回す

クゥの激しい喘ぎ声が月明かりが優しく差し込む部屋の中に響く

クゥとランファンはお互いの傷を舐め合うかのように何度も何度も求め合うのであった


そして……この夜を境にクゥとランファンは"閉門派"となるのである




第198話 ~ 収穫祭の前休日 ➄  ~



 "まさか……あんな事をするなんて……"

マノンやルイーズとの出張治療を終えて王立アカデミ-の自室に帰ったルシィはゴミだらけの部屋の片隅で困惑していた

 "お尻の穴に……あんなモノを突っ込むなんて……"

 "私に出来るかしら……"

マノンの特大注射器を見た時の恐怖に怯え青褪めた患者の顔が目に浮かぶのだが……

治療を終えた後の患者の幸せそうな表情も忘れる事も出来ないルシィであった……


 "明日も朝から出張治療に行くようだし……"

 "少しでも治療をよく見ておかないと……"



一方、魔法工房に帰り着いたマノンはメイリンと食事をした後で一緒に温泉に浸かっていた。


 "メイリンも随分と変わったな……"

 "この世界の生活に馴染んでくれてるようだし"

何の気兼ねもなくくつろいでいるメイリンを見て安心するマノンであった


 "そう言えば…爺いの気配がないな何処に行ったのかな"

メイリンと喧嘩して図書室を飛び出してから気配が全くないからだ

 "前みたいにパックが動けなくなってるかも知れないし……"

 "後で探してみるかな"

マノンは爺いの気配が全く無いので少し心配していたのであった。


温泉から上がるとメイリンに今後の身の振り方について話す

この世界で生きていくのに必要最低限の事を学ぶまでルイーズの家で匿ってもらうという事を話す

マノンの話を聞いたメイリンは少し考えた後で自分の考えを話し始める


 "私はここがいいわ……"

 "ここの転移ゲート、私にも使えないかしら"

どうやらメイリンは魔法工房で1人暮らしを望んでいるようだ


"んん~どうかな……"

 "メイリンには魔力があるから使えない事は無いと思うんだけど"

マノンはそう言うと少し悩みながら考える

 "一度、試してみる……"

マノンがそう言うとメイリンは大きく頷く


メイリンと転移ゲート室にやって来たマノンは転移ゲートの前に来ると転移ゲートの発動のコツを教える


 "メイリンはトロペと魔力変換炉には行った事があるよね"

 "ここで魔力変換炉のイメージしてみてよ"

メイリンはマノンの言う通りに魔力変換炉をイメージする

すると転移ゲートが動作し始めメイリンの体が光に包まれる


 "そうそう!そんな感じだよっ!"

マノンは転移ゲートが上手く動作しているようなので安心していると閃光が走りメイリンの姿が見えなくなる

どうやら上手く転移できたみたいだと思っていたが閃光が収まるとそこには丸裸のメイリンが呆然と立っていた


 "あれ……どうして……"

呆気に取られている私の方をメイリンが恨めしそう目をして見ている


 "何で……私、丸裸なの……"

メイリンは胸と股間を隠してゆっくりと歩いていくと物陰に隠れる

 "悪いけど何か服……持って来てくれる"

物陰から顔出して私に言う


 "あっああっ…わかったよ"

マノンはそう言って慌てて着替えを持ってくるとメイリンに手渡す

メイリンは物陰でゴソゴソ何しかしているが動きがピタリと止まる


着替えが終わったのかな

マノンは物陰のメイリンに話しかけようとする

 "コレ……何の嫌味なの……"

メイリンの震える声がする


 "へっ……何のこと……"

マノンは何の事がわからずに問い返す


物陰からメイリンが何かを出してく

メイリンが物陰から出してきたのは巨大なレナのブラジャーだった

 "ごめん、慌ててたから間違えて持ってきたみたい"


元・貧乳女子のマノンにはメイリンの気持ちがよく分かるのであった


慌てて代わりのブラジャーを持ってくるとメイリンに手渡す

その後、メイリンの機嫌をとるのに大変なマノンであった



その頃、魔力転換炉の前ではパックが呆然と地面を見つめている

 "あの娘……"

 "転移ゲートを発動しようとしたようじゃな……"

パックの目の前には服とパンツとブラジャーが落ちている

 "仕方がないのう……"

 "持って帰ってやるとするかの"

爺が呟くとパックは地面に落ちている服とパンツとブラジャーを嘴で器用に咥える


 "流石に状態では飛べんの……"

爺はそう呟くと地面に降りたままメイリンの服を咥えて転移ゲートを発動させ魔法工房へと転移するのであった



 "あっ……なんじゃ……"

 "前が見えんっ!"

転移した拍子にメイリンの脱ぎたてパンツがパックの頭に被せってしまったのである

 "なんか……この布、変な臭いがする……"

パックは何とか頭を動かしてパンツを外そうとするがうまくいかない

 "うえっ! 臭くてたまらんっ!"

 "誰かに外してもらわんと"

爺が苦しそう言うとパックはパンツを被ったままフラフラと飛び立つ


 "誰かおらんかーっ!!!"

爺は必死で念話で助けを呼ぶ


 "あれっ……誰か呼んでるの"

 "この声は……あのムカつく不細工鳥……"

爺の必死の叫びはメイリンに届きメイリンは声のする方へと向かう

 "なっ!何やってんのよっ!"


自分のパンツを被ってフラフラ飛んでいるパックの姿を見つける

 "この変態不細工態鳥っ!"

メイリンはそう叫ぶとパックを捕まえようとするがうまくいかない


 "この気配はあの娘か……"

 "すまぬがこの布切を外してはくれぬか"

 "臭くてたまらんっ!"

爺の嫌そうな口調にメイリンの顔が引き攣る


 "臭くて悪かったわねっ!"

 "この変態不細工鳥っ!"

メイリンの物言いに爺もムッとする


 "わざわざ、ここまで持ってきてやったのに何ちゅう物言いじゃ!"

売り言葉に買い言葉、2人はドタバタした挙句にメイリンは頭を机の角に打つけ爺も壁に衝突して仲良く気絶してしまうのであった




第198話 ~ 収穫祭の前休日 ➄  ~



終わり



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