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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第194話 ~ 収穫祭の前休日 ①  ~

第194話 ~ 収穫祭の前休日 ①  ~



序章


 「諸君、すまないが作戦決行は暫く延期となった」

 「作戦決行の日時は未定である」

朝食の後でユーシェンが集まったメンバーに作戦の延期を伝える


それを聞いたメンバーはざわつくが内心は全員がホッとしているというのが本当であった

誰も作戦延期について質問する者は無かった


ユーシェンは集まったメンバーを一通り見廻すと話を続ける

 「厳しい訓練、ご苦労であった」

 「諸君らには、これより100時間の休暇が与えられる」

 「帰郷を許可する……以上だ」

メンバー全員の表情に歓喜が溢れるのがユーシェンの目に映る

しかし、ユーシェンの心は罪悪感に圧し潰されそうであった

 "すまん……これが最後かもしれん……"

この作戦を計画したリャンの本当の意図を知っているユーシェンは心の中でメンバー全員に謝罪するのであった


ブリーフィング・ルームでユーシェンの簡単な現状説明を受けた後にメンバーは解散し各々が故郷へと転移していく

その中には、クゥとランファンの姿もあった

 「じゃあまたね」

クゥはそう言ってランファンに軽く手を振る

そんなクゥをランファンは寂しそうな目で見つめている

あの日の夜から、ここ数日で2人の関係はより親密なものとなっていた


 "どうしたのかな……ランファン……"

 "少し様子が変だな……"

クゥはランファンの様子に違和感を覚える

 「すいませんっ! 忘れ物をしましたっ!!」

 「私は最後で結構です」

クゥは転移ゲートの操作員にそう言うとランファンの方に駆け寄っていく

 「どうしたの……」

クゥの一言にランファンの表情が嬉しさ緩む


 「……」

しかし、ランファンは何も言わずに黙っている

そんなランファンの様子を見てクゥは何かを決心したように転移ゲートの操作員の元へと駆け寄っていくと何かを話している


 「行こうか」

クゥそう言うとランファンの手を握り転移ゲートへと引っ張っていく


 「えっ……ちょっと……」

クゥの突然の行動に困惑するランファンを他所にクゥは転移ゲートの操作員に行先を告げる


 「2人で"ランギロア"にお願いします」

転移ゲートの操作員は行先を復唱すると転移ゲートの操作を始める


 「人数2名、目的地ランギロア……」

 「質量確認よし、転移座標誤差修正範囲内」

 「転移開始」

転移ゲートの操作員がそう言うとクゥとランファンは眩しい光に包まれる


そうして、クゥとランファンはリゾート都市の"ランギロア"へと転移するのであった



第194話 ~ 収穫祭の前休日 ①  ~



 "困ったなぁ……"

 "全部済ませるのに3日はかるかな……"

マノンは王立アカデミ-の自室に戻ると手にした紙切れを見ながらボヤく

 "まぁ……すぐに収穫祭の長期休日に入るし時間は十分にある"

明日からマノンは例の治療をする事をルイーズと約束しているのである


マノンは提出せずにそのままになっていたレポート課題を書き始める

既に課題内容は頭の中でまとまっているので最後に手直しをするぐらいである

レポートを書き始めて2時間ほどすると教会の鐘が鳴る

マノンが窓の外を見ると講義を終えた生徒達が歩いているのが見える


 "こんなものかな……"

 "さてと……ルシィ導師の所へ行かないと"

出来上がったレポートを束ねると机の横のフックに掛けていた茶色の鞄に詰め込む

マノンはルイーズから治療にルシィ導師が同行するという事を聞いており日時の調整を任されているのである

 "ルシィにも異界の門とメイリン事を話しておくか"

鞄を肩にかけると認識阻害の魔術を発動し部屋を出る


 "確か……ルシィは迎賓寮に移ったたとか言ってたな"

マノンは迎賓寮へと足を運ぶ、姿を認識阻害の魔術で消す必要はないのであるが爺の影響で癖になっているのであった


迎賓寮の前に来るとドアをノックする

 "どなたですか"

中からルシィの声がするとドアが開く

 「あれ……誰もいない……」

マノンが認識阻害の魔術を発動しているのでルシィにはマノンの姿が見えないのである

ルシィは気のせいだと思いドアを閉めようとすると


 「待ってぇ!」

何処からか声が聞こえてくる


 「ふぇーーっ!!!」

突然、人の声がしたのでルシィは驚いて尻餅をついてしまい、弾みでメガネが外れてしまう


 「ごめん……驚かせて……」

マノンは慌てて尻餅をついているルシィの傍に駆け寄ると認識阻害の魔術を解除する

 

 「ふぇっ!」

今度は突然、目の悪いルシィは目の前に何かが現れてまた驚いてしまう

マノンは慌てて床に落ちているメガネを拾うとルシィに手渡す

 「大賢者様……」

メガネをかけて初めてマノンだと気付くルシィなのだが……

床に尻餅をついた時にスカートが捲れ上がり大股を広げてパンツが丸見えになっている事に気が付く


 「あっ! ちょっとっ!!」

ルシィは慌ててスカートを直すとゆっくりと立ち上がる

このルシィらしからぬ仕草は明らかにマノンを意識しての事であるのだ

この鈍い2人はお互いにこの事に気付く事は無かった


ルシィの案内で面接室へと向かう

ルシィが自分の部屋にマノンを案内しなかった理由は説明するまでもない事である

ルメラたちは午後の補習講義でいなかった


ルシィに書き上げたレポートを提出すると"異界の門とメイリン"の事を話し始める

話を聞いたルシィは少し驚いたようであったが協力を約束してくれた

次に明日からルイーズと一緒に"例の治療"をする事を話す

ルシィは"異界の門とメイリン"の事よりも"例の治療"の方に興味があるようだった


ルシィはルメラたちの様子と学業の進捗状況を教えてくれる

一応、マノンはルメラたちの教育係なのである

それと、レナのレポート提出が遅れていてこのままだと進級が難しい事、その原因が写本にある事、そして今は自室でレポートの作成に専念しているを知らされる


その話を聞いたマノンは当分の間はレナに魔法工房の図書館の本を貸し出さない事を誓うのであった


そうしていると……マノンのお腹がグゥー"と言う音を立てる

マノンが恥ずかしそうにしているとルシィのお腹も"グゥー"同じように音を立てる

今度はルシィが恥ずかしそうにする

そして、互いに目を合わすと大笑いするのであった


 「時間に余裕があれば一緒に食事に行きませんか」

マノンがそう言うとルシィは少し躊躇っている

ルシィが躊躇っている理由は簡単で今まで食事に誘われた事などないからである

1人で簡単に自室で済ませるというのが普通であり食に興味など全く無いからでもあった


 「………」

躊躇っているルシィにマノンは声をかける


 「認識阻害の魔術を発動して外に出ますから大丈夫ですよ」

マノンは女性導師と男子生徒が2人だけで食事に行くという事に躊躇しているのだと思っている

 "アレットさんとの事もあるし、当然だよな……"

 "やっぱり迷惑だったようだ"

マノンは心の中で呟くのだが……


 "どうしよう……始めて食事に誘われてしまった"

 "しかも……2人きりでっ!!"

ルシィの考えている事とは全く違っているのであった


 「急に誘いですみませんでした」

 「食事の件は、また今度という事で……」

困っているようなルシィにマノンがそう言って椅子から腰をあげる


 「あっ! そのっ!!」

 「ご一緒させて……いただきます」

ルシィが慌てたようにマノンを止めると小さな声で呟くように言うのであった

ルシィ・ランベール、25歳……祖父のニコラ以外の男性と2人だけで食事をするのは初めてであった……


マノンは認識阻害の魔術を発動するとルシィと一緒に王立アカデミ-を出る


 「本当に誰にも気付かれないのですね」

小声でルシィが驚いたように言う


 「姿は隠せても声は消せませんから注意してください」

マノンが小声で言うとルシィは慌てて口を閉じる


マノンは大通りを抜けて塔のある広場へ向かい塔の階段を登っていく


 「あの~どこへ行くのでしょうか」

ルシィは少し困惑している


 「この近辺だと他の導師や生徒に見つかっちゃいますから」

 「しっかりつかまっててくださいね」

マノンがそう言うと転移ゲートが動作して閃光に包まれる


 「えっ……ええっ!」

王都で食事をすると思っていたルシィの予想は見事に外れ……

マノンは慌てふためくルシィを抱えて遠く離れた魔法工房へと転移するのであった


どうせなら、日頃からお世話になっているルシィには美味しい物を食べさせてあげたい

大賢者マノン・ルロワ……食には並々ならぬ拘りがあるのであった……


かくしてルシィは思いもよらない小旅行へ行くこととなるのである



第194話 ~ 収穫祭の前休日 ①  ~


終わり





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