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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第191話 ~ 続・メイリンの異界見聞録 ➄  ~

第191話 ~ 続・メイリンの異界見聞録 ➄  ~



序章


 "あ……ここは……"

早朝に目を覚ましたクゥが薄目を開けて周りを見回す

真横で裸のランファンが寝息を立てている

 "そうか……昨日の夜……"

クゥの脳裏に昨日の夜の事が蘇る

 "こんなにぐっすりと眠れたの久しぶりだな……"

クゥはゆっくりとベッドから半身を起こすと大きな伸びをする

 "何だか凄くスッキリして気分が良いわ"

招集に応じてからの約二週間近く訓練でクタクタに疲れていても何かモヤモヤしてよく眠れず気分も体調も優れなかったのである

それが昨日の夜をきっかけに嘘のように消えて無くなってしまったのである


 "この子のおかげね……ありがとう……"

クゥは気持ちよさそうに寝ているランファンを見ると心の中で感謝するのであった

ベッドの脇の時計を見ると針が朝の6時を指している

 "7時30分から朝食だから……もう行かないと……"

ランファンを起こさないようにそっとベッドから出て脱ぎ捨てられていた下着を着けていると


 "んん……ふぁ~"

ランファンが目を覚ます

 「おはようございます……クゥ少佐……」

ランファンは何だか様子が少し変である

下着姿のクゥを見て昨日の夜の事を思い出してしまったのである


 「クゥでいいわよ……私もランファって呼ぶから」

クゥがそう言うとランファンはニッコリと微笑む

 「そろそろ失礼するわね……」

 「ランファのおかげで凄くスッキリして気分が良いの」

 「感謝してるわ……」

クゥはさっき言えなかった感謝の言葉を口にする


 「そっ! それはお互い様ですっ!」

 「私もそうですから……」

ランファンもクゥと同じようにあれこれと考えてしまい寝付きが悪く夜中に何度も目が覚めたりして心身ともに最悪の状態だったのであるが……

昨日の夜を境に嘘のように心身ともにスッキリとしてしまったのである

 「あのっ! 出来れば……その……なんと申しますか……」

ランファンは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている

当然、クゥにはランファンが何を言いたいのかがわかる


 「私も……その……ランファと同じかな……」

クゥも少し恥ずかしそうに答えるとランファンはベッドから出てくるとクゥに抱きつ


 「それじゃ……そう言う事で……」

そう言うとクゥは照れ臭そうにしながら服を着ようとすると……


 「朝食の時間まで後……1時間30分ありますね……」

 「1回ぐらいならヤれますよ」

ランファンはそう言うとクゥをベッドに引きずり込んでいく

 

 「えっ!……ちっ!ちょっと……」

ランファンらしからぬ意外な行動にクゥは戸惑い焦ってしまう


 「今度は私がヤりますね……」

ランファンはそう言うと小悪魔のように微笑む


 "ランファってこんなん子じゃないと思ってたのに……"

クゥは自分が思い込んでいたのとはまるで違うランファンの行動に驚いてしまう

せっかく付けたブラジャーを捲り上げられ胸を揉まれ乳首を舐め回されパンツに手を突っ込まれると感じる所をピンポイントで攻めまくられる

 "はあっ! あっ! ああっ!!"

 "ランファっ! あんっ! 何のよっ! あはっ!"

 "いいっ!ああんっ! ホントにっ! 初めてっ!あはっ! なのっ!!"

ランファンのあまりのテクニックの凄さにクゥは体を捩らせ息も絶え絶えになり

空間結界られたランファンの部屋の中には今度は死にそうなクゥの喘ぎ声が響きわたる


流石は、技術将校だけの事はありその技術(テクニック)はこんな所にも(イカ)かされるのであった……


結局、二人仲良く朝食の時間に遅刻してしまうクゥとランファンなのであった




第191話 ~ 続・メイリンの異界見聞録 ➄  ~



 "うう~~っ……頭痛い~~"

二日酔いに苦しむメイリンの苦しそうな声がする

王都で飲み過ぎてそのまま熟睡してしまい次の朝のことである


 "これ飲んでください……二日酔いにはいいですよ"

乾燥させた貝を煮込んで薬草と香草で味と香りを調えたスープである

二日酔いにはいいのである


 "ありがとう……"

 "二日酔いなんて何年ぶりかしら……"

メイリンはそう言うと差し出されたスープを啜るように飲む


 "そう言えば……メイリンさんて何歳なんですか"

マノンはメイリンが若く見えるので未成年なのではないかと不安になったのだ


 "私の年齢……24歳よ"

メイリンの年齢を聞いたマノンは吃驚して凍り付いてしまう


 "本当ですか……15歳ぐらいかと思ってました"

マノンは本当にメイリンが15歳ぐらいだと思っていたのである


 "若く見られてるの……それとも幼く見られてるのか……"

 "どっちなのかな……てっ"

 "そう言うアンタは何歳なのよ"

メイリンは二日酔いのせいで少し辛そうに聞いてくる


 "私ですか……16歳ですよ"

私がそう言うと今度はメイリンが凍り付く


 "嘘っ! 私より8歳も年下なのっ!"

 "あっ痛たたたたーーーっ!!!"

吃驚したのが二日酔いの頭に響いたようである


 "新生・アル・マノース共和国の人って長生きするんですか"

マノンは何となくメイリンに質問する


 "そうね……確か平均で男性が80歳で、女性が82歳ぐらいかな"

メイリンの答えにマノンは驚く


 "随分と長生きなんですね……"

 "こっちだと男女ともに50歳から60歳って所ですよ"

 "メイリンさんって子供とかいるんのですか"

マノンはメイリンの歳から子供がいるのではないかと思ってしまう

もしも、子供がいたら何とかして元の世界に帰してあげたいと思うのであった


 "子供はおろか結婚もしていないわよ……"

メイリンは少し不貞腐れたように言うと新生・アル・マノース共和国の婚姻事情をマノンに説明する

子供が生まれずに人口が減少し続けている事、厳格な婚姻統制がある事や高齢化が進んでいる事など隠すことなく全てを話すのであった


 "そうなんですか……"

メイリンの話を聞いてマノンは魔法書庫にあった魔法の書に記載されていた一説を思い出す



  少数の者が幾世代にも渡って交配を繰り返せば

  やがては"種の限界"を迎え絶滅する

  よって、我らは新たなる種へと変異種を創造する

  ものなり



 "メイリンはの事を知っているのだろうか……"

マノンはメイリンにこの事を話そうかどうか迷っていると爺の気配がする


 "どこへ行ってたの"

私が問いかけると爺の声か頭に響いてくる


 "ちと、野暮用でな……"

爺は"異界の門"に封印術を施してきた事を言わなかった

その理由はメイリンが傍に居た事……

そして、マノンが"異界の門"の封印に反対すると判断したからである


この時点では、爺のこの判断は正しかったと言える

マノンはメイリンを元の世界に帰してあげたいと思っており

これは即ちマノンは"開門派"という事を意味するからである



 "それはそうと、メイリンさん体に異変は無いかの……"

突然、爺は何の前振りも無くメイリンに話しかける


 "別に何ともないけど……"

メイリンはスープを啜りながら何事も無いように答える


 "そうか……ならいいのじゃが……"

爺は何か心配事がある様に言葉を濁すようと認識阻害の魔術を解除してメイリンの傍に飛んでいく

 "すまぬが少しばかし体の様子を見せてもらえぬかのぅ"

爺の口調からマノンはメイリンの体に何かしらの問題があるのだと勘づく


 "別の世界に来ているんだから一度、見てもらった方が良いよ"

私は嫌そうな顔をしているメイリンを説得する


 "まぁ……アンタがそう言うのなら……"

メイリンは、お皿に残っていたスープを飲み干すとパックの前に座り込む

 "で……脱げばいいの"

メイリンはそう言うと直ぐに服を脱ぎ始める

 "コレでいいの……"

当然、最後の砦であるブラとパンツは付けたままである


 "随分と脱ぎっぷりの良い娘じゃのう……"

メイリンの脱ぎっぷりの良さに感心する爺であった

パックはメイリンの体の周りをクルクルと回りながら何かを注意深く観察しているように見える


 "今のところは目立った影響はなさそうじゃな……"

 "やはり魔法の書の通り帰りに門を潜っり帰った時に起きるようじゃな……"

爺は心の中で呟く


爺が何か深刻そうに悩んでいるのがマノンとメイリンにも伝わってくる

 "何か言いたいことがあればハッキリと言いなさいよっ!"

爺の様子に痺れを切らしたメイリンが爺に問い詰めるように言う


 "……"

爺は少しの間、何かを考えた後で重い口を開く

 "メイリンさんよ、この地に骨を埋める気はないかの"

爺の唐突な問いかけにマノンとメイリンは呆気にとられる

訳が分からずに呆然しているマノンとメイリンに爺がその訳を話し始める


 "メイリンさんの時間の流れに物凄い誤差が生じておる"

 "異界の門の向こうに戻ると一気に時間修正が始まり"

 "メイリンさんの体は物凄い速さで老化する"

爺の説明を聞いたマノンとメイリンは何に事だか訳が分からない


 "それ……どういうことなの……"

メイリンは動揺しながらも冷静な口調で爺に問うと爺が説明を始める


 "異界の門を潜り途方もない距離を短時間で移動したのが原因じゃ"

 "門の向こう側とこちら側ではメイリンさんの時間の進み方が違っておるのじゃ"

 "どのぐらいの距離を移動したのかは分からぬが……"

 "こちらでの数日間が向こうでは数年に相当するやもしれん"

 "メイリンさんが数十日間をこちら側で過ごして向こうの世界に戻れば"

 "向こうの世界にも戻ったと同時に……"

 "メイリンさんの体は一気に数十年も歳をとる事になる"

爺の言っている事にマノンもメイリンも呆然とするしかなかった


 爺の言っているのは我々の言う"反・ウラシマ・エフェクト"である

 浦島太郎が竜宮城で乙姫様から貰った玉手箱を開いたら白い煙が立ち上りお爺さんになっていたのと同じ現象が起こるのである


 光速を超え短時間で途方もない距離を移動すると移動対象は本来の時間軸から外れ別の時間軸で時間が流れ始める

 移動した先の時間は変わらなくてもそこから元の場所へと戻り本来の時間軸に戻ると同時に一気に時間が修正されるのである



 "要するに……門の向こうの新生・アル・マノース共和国では……"

 "最悪、もう2年経っているかもしれないって事ね……"

爺の説明を聞いたメイリンは意外にも冷静だった


 「それじゃ! メイリンを少しでも早く」

 「新生・アル・マノース共和国へ帰してあげないとっ!」

冷静なメイリンとは対照的に私は焦って言う


 "別にいいわ……私が……"

 "帰っても向こうには何も無いのだから……"

メイリンはすこし悲しそうに言うとその感情が爺と私にも伝わってくる

心配している私の様子を見たメイリンは自分の事を話し始める

 "私に……家族はいない……"

 "一緒に来ていたムーヤンもイーチェンも私と同じよ……"

 "上層部がどうして私達3人を選んだのか……"

 "ようやく分かったわ……"

メイリンの念話から悲しみに満ちた感情が伝わってくる


 "私に両親はいない……"

 "正確に言えば、どこの誰だか分からないの"

 "私達は試験管の中で生まれ瓶の中で成長した"

 "私達が生まれた向こうの研究施設ではね……"

 "私達の事を「瓶詰の赤ん坊」って呼んでいるのよ"

 "変異種になれなかった出来損ない……"

メイリンの告白に私は衝撃を受け思考が停止してしまうのだが爺は違って冷静だった


 "向こうはそこまで追い詰められておるのか……"

 "今更、変異種の研究など手遅れじゃろうに……"

爺の言葉にメイリンは力の無く微笑む


 "そう……アンタの言う通りよ……"

 "どうあがこうと私達の世界は滅びるわ……"

 "未来も活気も無い世界……それが今の新生・アル・マノース共和国よ" 

メイリンの悲しみと絶望に満ちた感情がマノンと爺に伝わってくる

 "今日、王都ガリアンに行って分かったわ……"

 "私たちの世界に欠けているモノが何なのか"

 "今更、気付いても手遅れだけどね……"

いつもとは違ったメイリンの力ない口調に爺が何かを言おうとするが言わなかった


何とも言えない重苦しい空気が漂い始める

 "私……この世界で生きて行きたいと思ってる……"

 "この地に骨を埋めてもいいと思っているわ"

 "この世界が気に入っちゃったみたいなのよね"

メイリンはそう言うと照れ臭そうに笑った


新生・アル・マノース共和国の街のように近代的で秩序正しく整理されゴミ一つ落ちいてない清潔な街よりも、王都ガリアンの無秩序で雑然していてそこらじゅうにゴミが落ちている不衛生な中世の街の方にメイリンの心は強く惹かれたのである


 "そうと決めたのならば……"

 "ワシらも出来得る限りの事はさせてもらう"

メイリンの決意に心を打たれた爺の偽りの無い善意感情が私とメイリンに伝わってくる

 "明日から、この世界で生きて行くための特訓じゃな"

 "まずは、この地の言葉を覚えてもらわんとな"

爺の言葉にメイリンの顔から血の気が引いていくのが分る

爺の善意はメイリンとっては苦痛でしかなかった

助けを求めるメイリンの視線が私に鋭く突き刺さるのだが……

私は気付かないフリをして誤魔化すのであった


かくして、この地で生きて行くことを決意したメイリンに厳しい試練の日々が訪れる事となるのである……



第191話 ~ 続・メイリンの異界見聞録 ➄  ~


終わり



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