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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第184話 ~ 新生・アル・マノース共和国 ①  ~

第184話 ~ 新生・アル・マノース共和国 ①  ~



序章



新生・アル・マノース共和国はマノン達の暮らす恒星系よりも何百光年も離れた別の恒星系に存在する


地球よりもやや大きく若い惑星で一年は387日で1日の長さは25時間である

2つの衛星を月(衛星)を持ち惑星軌道は非常に安定しており、大規模なメテオ・インパクトを受けていないので地軸も垂直でズレていないので季節がない


惑星の陸地面積は約30%で独立した7つの大陸があり熱帯・亜熱帯に位置する4つの大陸にはティラノサウルスのような大型獣から小型のラプトルまで多種多様で獰猛な捕食獣が生息し空にはプテラノドンのような大型の猛禽類が飛び回っているという状況で、とてもではないがひ弱な人類が安心して暮らせるような環境ではなかった


気温の高い高温多湿の惑星であるため地表の大部分が熱帯・亜熱帯気候で降水量が非常に多いが赤道付近の2つの大陸は高温のために砂漠化している


平均気温は高く約30度であり赤道付近の気温は60度を超えるという環境で移住してきた旧・アル・マノース共和国の人々にとっては過酷な環境であった


しかし、惑星の南極部に位置する一つの大陸は温帯から冷帯気候であり大型の捕食獣が生息しない上に豊富な水資源と植物・水産資源があり食糧事情は非常に良かった




そこで、旧・アル・マノース共和国の人々は大型の捕食獣が少なく気温が低く湿度の低い南極部に位置する最も小さいこの大陸を移住先と決め移住を始める


 "မြေသစ် ……新たな大地"と名付けられた大陸はオーストラリア大陸の半分に満たない大きさである


大陸の南側は岩だらけの断崖絶壁の険しい海岸線が続き内陸部は険しい山岳地帯で農耕に不適な上にサーベル・タイガーやグリズー・ベア、グレイ・ウルウ(この世界ではさほど危険ではない)などの捕食獣が少数ながら生息していることもあり人々が安全に暮らしているのは北側海岸付近の平地のあるごく一部である


この地に定住を決意した旧・アル・マノース共和国の人々は強固な魔法結界と堅固な城壁に守られた"ローム"と呼ばれる結界城塞都市を次々と築いて行くのである

やがて、それらの都市は転移ゲートで繋がれコロニーを形成していき現在の形となるのである


各都市の郊外には田園地帯が広がり食料の生産を効率的に行っている

季節が無いので年中を通していくつもの品種改良された植物を栽培し牧畜を行い安定した食料の供給を可能にしている

また、鉄や銅などと言った文明生活を支えるのに必要な鉱物資源もそれなりにあり移住してきた200人ほどの旧・アル・マノース共和国の生き残りは500年後には40万人を超えていた


未知のウィルスや細菌などの病原体による大量の死者や気候変動や大規模な自然災害などに何度も遭いながらも順調にその数を増やしてゆき3000年後には総人口は1200万人に達していた


当然、北側のゲルマ帝国と同じように子孫を残すための魔術的な人体改良が何度も加えられているのだが、旧・ゲルマ帝国とは決定的に違っているところが1つだけある


それは、子孫に魔力を温存しておいたことである

その理由は、過酷なこの世界で魔力を捨てるという事は"剣と防具"を同時に捨て去るという事になるからで生き抜くためにはどうしても魔力を温存せざるをえなかったからある


しかし、これが3000年後に深刻な事態を招くこととなるのである

移住より3000年を超えてから徐々に人口が減少していく、子供が生まれなくなってきたのである

新生・アル・マノース共和国の人類は早々に生物として"種の限界"を迎えたのである


移住してきた200人ほどの旧・アル・マノース共和国の生き残りの人々は自らの遺伝情報を基に幾千年にも渡り何度も何度も改良を加えて生殖能力を保ってきたのであるがそれが限界に達したのである


人口が減少し始めて直ぐに少子高齢化社会となり僅か300年足らずで加速度的に人口は減少し続け、現在は人口は最盛期の半分以下の500万人までに減少している

現在の新生・アル・マノース共和国は日本の国など足元にも及ばない深刻な超少子高齢化社会となっているのである

年を追うごとに減っていく生まれてくる子供の数で新生・アル・マノース共和国の将来の見通しが付く


……そう、彼らには時間が無いのである



第184話 ~ 新生・アル・マノース共和国 ①  ~



 "ここは……どこだろう……"

医務室のベッドの上でムーヤンが目を覚ます

 "私はいったい……"

ボヤけてハッキリとしない目で辺りを見回す

 "医務室……"

そう呟いたムーヤンの脳裏に"門の外"での記憶が一瞬で蘇る


 "メイリン隊長はっ! "

 "イーチェンはっ! "

チーム仲間の事が気がかりでベッドから飛び起きる

ムーヤンの心臓は激しく脈打ち苦しくなるぐらいに呼吸は激しく額から嫌な汗が滲み出る

 "2人は、あの後どうなった……"

混乱している自分を何とか落ち着かせるように深呼吸をする

徐々にムーヤンは冷静さ取り戻す

 "そうだった……メイリン隊長は門の外に残り……"

 "イーチェンは私を連れて門を潜ったのか……"

そう呟きベッドから降りようとするとベッド横のテーブルにタブレットの石板が置かれている事に気付く


 "確かこれには……"

ムーヤンは呟きながらベッド横のテーブルにタブレットの石板を手にすると操作を始める

石板にはパスワードと指紋認証による強力なロックが掛けられておりムーヤン本人か軍の情報局でなければ解除は難しいという代物である

 「တည်ရှိမှု! 有ったっ!」

ムーヤンは思わず声に出してしまう

恐る恐る石板をなぞるように操作すると石板の上には立体フォログラムが再生される


 投影された立体フォログラムは門を潜り外に出てから録画し続けていたフォログラムであった

フォログラムにはパックが転移してくる瞬間やマノンとの会話が記録されていた

 「ဒါကို နားလည်ပါတယ်!!! これならわかるぞっ!!!」

ムーヤンは震える手で石板を操作する

 

 「初めまして、マノン・ルロワと申します」

 「တွေ့ရတာဝမ်းသာပါတယ်၊ ငါ့နာမည်က မနွန် ရီရို ပါ။」


 「遠い所からおこしいただき、お疲れでしょう」

 「အဝေးကလာပေးလို့ ကျေးဇူးတင်ပါတယ်」 


 「魔法工房にご案内いたします」

 「မင်းကို မှော်အလုပ်ရုံကို ငါလမ်းညွှန်မယ်။」


ムーヤンは情報局のデータベースに接続しマノンの言葉を自動翻訳で解析したのである

多少の翻訳不良はあるもののほぼ同じ意味での翻訳であった

 「အိုဘုရားရေ...」

 「なんてこった……」


 「ငါတို့ဘက်က လုံးဝနားလည်မှုလွဲနေတာ」

 「完全に俺たちの早合点だ……」

マノンの言葉の意味を知ったムーヤンが絶望したかのように呟く

 「ငါ မင်းကို မပြောရင် မကြာခင်」

 「早く上に伝えなければ」


この立体フォログラムとマノンの言葉が上官であるユーシェン大佐に伝えられる

そして、その日のうちに評議会議長のリャン議長の知るところとなるのであった





場所が変わって、ここは夜中の地方都市"シャンヨウ"の代表議員の"シー・ハン"の家である

閑静な住宅街の庭付きの一軒家に一人暮らしのはずなのだが……


 「随分と派手な事をしたものね……」

 「あの爺に目を付けられると、後々厄介な事になるかもよ」

 「まぁ……貴女らしいけどね」

薄暗い部屋のベッドの中からシーとは別の女性の呆れたような声が聞こえてくる


 「そう言わないでよ……クゥ……」

普段とは違う弱気なシーの声がする

 「あっ! ちょっと!」

 「あんっ! ああっ!! あはっ!」

 「はぁっ! はぁっ! あっあっあっああっ!!」

シーの激しい喘ぎ声がする


 「普段は強気な女なのに……」

 「ベッドの中だとこんななのね」

意地悪そうに言うクゥの声が聞こえてくる

彼女の名前は"クゥ・シン"……"シー・ハン"の大学生時代からの付き合いで恋人でもある


シーと同じ29歳、身長は175センチこの世界の女性としてはかなりの長身である

ショートカットの黒髪の似合うアスリートのような容姿に大きな胸と引き締まったウエストにヒップライン、スタイル抜群のイケメン女子である


 「そう言う貴方も本当に性格悪いわね」

 「一応は神聖な神学校の教師のくせに……」

シーが嫌味ったらしく言う


 「仕方ないでしょう……」

 「それに、神学校っていても実際の姿はシーなら知ってるでしょうに」

 「職業柄、私は適正者以外の男とはお気楽に付き合えないんだし……」

 「貴方にも適正者はいないし……」

 「お互いにこっちの人だから、後1年……仲良くやりましょう」

クゥは少し寂しそうに何かを悟ったかのように言うと、再びシーの激しい喘ぎ声がする




新生・アル・マノース共和国では少子化対策のために厳格な婚姻管理が行われており、適正者同士の"交わり"が半ば義務化している

ただ、互いに拒否権が与えられており相手がどうしても嫌な場合は断る事が出来るのである

但し、30歳の誕生日を迎えると拒否権は剥奪されるが肉体的な性交渉の義務は無く"体外受精"も選択肢としてあり、それを選択する女性も少なくはない


ガリア王国とは違い魔術が健在な新生・アル・マノース共和国では医療魔術による手厚いケアが受けられるために高齢出産も可能である




 「でも……あの話は本当だったのね……」

クゥが信じられないという顔をして言う、"あの話"とは門の外の話である

こちらの世界に移住して既に3500年と言う歳月を経ており"異界の門"とそれにまつわる話は神学校の教師のクゥですら信じていなかったような半ば伝説上の神話となっていたからである


 「本当よ……」

シーは小さな声で呟くように言うとクゥも小さく頷く

 「でもね、門の外は凄く危険なのよ」

 「能力値700000とか化け物みたいな連中がいるの」

シーが深刻そうに言う


 「なっなっ700000っ!!!」

 「それってホントに人間なの」

マノンの能力値を聞いてクゥは驚きの声を上げる


 「今の評議会は"開門派"と"閉門派"に真っ二つに分かれてる」

 「私は"閉門派"よ、絶対に門は2度と開かせない」

 「危険すぎるわ……」

 「何としてでも"異界の門"を封印する」

シーはそう言うと小さなため息を吐く

 「コレって極秘なのよ」

 「分かっているとは思うけど……誰にも言わないでよね」

シーは驚いているクゥに念を入れるかのように言う

 「それと、浮気はダメよっ!!!」

シーの強めの声がする……クゥは女子にモテるのである

独占欲の強いシーはクゥが他の女と付き合ったりヤったりするのは我慢ならないのである


 「分かったわよ……」

クゥが仕方なさそうに言うのであった

 「その代わりに……シーにはタァ~プリと相手してもらうからね」

クゥの言葉に一瞬シーの表情が引き攣り強張る



 「すっ少しは手加減してよね……」

ヤル気満々のクゥの目を見て怯えたようにシーが言う


 「ダァ~メ~」

クゥはそう言うとシーの唇を塞ぐ

ベッドから再びシーの激しい喘ぎ声が聞こえてくるのであった






第184話 ~ 新生・アル・マノース共和国 ①  ~


終わり


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