第177話 ~ 2人だけの暮らし 二日目 ➄ ~
第177話 ~ 2人だけの暮らし 二日目 ➄ ~
序章
ここは、南側の魔力転換炉の遺跡……
鬱葱とした森の中に土砂に半分以上埋もれ蔦が絡みついた石の大きな門がある
大きさはフランスのパリの凱旋門より少し小さいぐらいである
3000年以上も放置され薄汚れているがこれと言った外傷は全く無い
旧・南大陸アル・マノース共和国の生き残りの人達が残した異界へと通ずる"異界の門"である
その門が薄っすらと緑色に輝き出すと門の中に黒い空間が出現する
その中から3人の人らしきものが姿を現し黒い空間から歩み出る
全身黒尽くめで現代の我々の世界の特殊部隊のようなかっこうであるが銃ではなく3人とも其々が違った形状の白い石棒を携行している
3人の頭らしき一人が辺りを見回している
身長170センチほどで細身で腰から60センチほどのサーベルのような白い石棒をぶら下げている
「ဒါက အစပြုရာပြည်လား။」
「အလွန်ကောင်းသောပတ်ဝန်းကျင်」
そして……聞き覚えの無い言葉を口にする
「ဖြစ်ကောင်းဖြစ်နိုင်သည်」
もう一人が手にしたタブレットほどの大きさの石板をジッと見ながら言う
身長は175センチほどで細身で腰には短剣のような白い石棒を差している
「အံ့ဖွယ်တစ်ခုပါပဲ။」
最後の1人が何か言うと2人も頷く
身長は180センチ以上でがっしりとした体格、背中に1メートル以上もある長い白い石棒を背負っている
「အခု ဘာလုပ်မလဲ။」
そして何か質問しているかのような身振りをする
「ရှေးဟောင်းစာရွက်စာတမ်းများတွင် အပျက်အစီးတွေကို သွားပါ။」
頭らしき1人が何か言うと3人は歩き出し森の中へと姿を消していくのであった
第177話 ~ 2人だけの暮らし 二日目 ➄ ~
ここは王都の繁華街、マノンとカルラは王都の大通りを歩いている
「何か、必要な物とかないの」
「サボンの村じゃ手に入り難い物とか」
私はカルラに話しかける
「んん~」
カルラは少し考えこむ
「そうね……服も靴も買ってもらったし」
「後は……その……」
カルラは少し言い難そうにしている
「何……」
私が問いかけるとカルラは小さな声で"下着"と言うのであった
「ああ~」
確かに言い難いだろうと思うマノンであった
カルラの願い通りに王都でも有名なご婦人方御用達の専門店に足を運ぶ
男子禁制のこの店は店員も客も全て女性である
その店名もズバリ"女の城"である
……女体化しておいてよかったと思うマノンであった
店に入ると多くの女性たちが下着を選んでいる
女性ばかりなので試着室には仕切りなどは無く風呂場の脱衣所のようになっており多くの女性が裸になり気に入った下着の試着品を付けている
我々の世界では衛生管理の問題もあり下着の試着などありえないことであるのだが、衛生管理の基準が低いこの世界では普通に試着が行われている
この世界の人々は男女ともに元々、人前で裸になる事をそんなに恥ずかしがらない
当然、普段は男のマノンはこの店に来るのも入るのは初めてである
"なんか……凄く緊張するな……"
"それに……凄く罪悪感が……"
心の中で背徳感に苛まれる元・女子のマノンであった
物凄い数の下着がサイズ別に整然と並べられている
展示品や試着品も数多く置かれていて流石"女の城"だなと感心するマノンであった
「凄い量ね……」
「流石は大陸有数の都市だけの事はあるわね」
カルラは感心したかのように呟くと下着をあれこれと見て回っている
私は何もする事がないのでボ~ッとしていると……
またもや若い女性店員が近付いてくる
"あっ……なんかこれさっきの服屋さんと同じような……"
などとマノンが心の中で呟いていると案の定、店員の言葉巧みな売り込みが始まる
それも仕方のない事で……とにかくマノンは目立つのである
身長が180センチあるイケメン女子が目立たないはずがないのである
実際に店に入った時から店内の女子の視線を一身に浴びているのだが本人は全く気が付いていない
「これなんかどうでしょうかっ!」
「お客様には絶対にお似合いですよっ!!」
「一度、試着なされてはっ!!!」
「最近話題の新素材の亜麻布でできています」
何故か、女性店員の鼻息と目付きが凄い……
しかも店員が手にしているのはレースが付いた黒色のかなりエッチな上下セットの下着である
しかも、生地が薄く透けているのが分る
「あっ……その……」
「私は付き添いなので……」
店員の迫力にやや引き気味に試着を遠慮するマノンてあったのだが
「いいじゃない、試着してみれば……」
横からカルラがニヤリと笑って口を挟んでくる
"カァ~ルゥ~ラァ~"
"面白がってるなっ!!"
私は心の中でニヤついているカルラに恨みの言葉を呟く
結局、私はレースが付いた黒色のかなりエッチな上下の透け透けの下着をつける破目になるのであった
私は試着室へ行くと仕方なさそうに来ている魔装服を脱ぎ始める
当然、周りの女性の視線を一身に浴びているのだがマノンは全く気が付いていない
「これでいいの……」
「このパンツもブラ少しきついよ……」
私は下着を付け終えると案の定、乳首やアソコが透け透けなうえに、マノンの規格外の超・ナイスバディに今にもはみ出しそうな胸とお尻を手で押さえる
「……」
カルラも女性店員も無言で口を開けたまま呆然と私を見ている
「えっ……なにっ……どこか変なのっ!」
私は女体化が上手く行っていなかったのかと焦る
「こっ! これほどとはっ……」
カルラは手にしていたブラジャーを口惜しそうに握りしめると床に倒れ込むように項垂れる
そう……マノンの超・ナイスバディを目にしたカルラは女性としての完全敗北に完膚なきまでに打ちのめされ打ちひしがれているのだ
それは、店内にいた女性たちも同じであった
カルラが面白半分でマノンにエッチな下着を着けさせたことが結果として歴然たる戦力差を見せつけられ墓穴を掘る破目になったのである
引き締まった無駄のない肉体、スラリと伸びた長い手足、細く括れたウエスト、大きくて形が良いうえに重力に負けることなく上を向いたバスト、引き締まったヒップ……全女性があこがれる絵に描いたような理想体型がそこにあったのだ
おまけに超イケメン女子である
その姿は真に"女神の降臨"であった……
「すっ凄いですっ!」
「これなら、どんな殿方でも一瞬で悩殺ですっ!!」
「その気があれば女子でもイチコロですよっ!!!」
店員は神に祈るかのように両手を合わせてウットリとした目で私を見ている
マノンが店員の迫力に焦っていると周りの女性たちも自分の体を凝視している事に気付く
「えっ……あの……」
流石のマノンも恥ずかしくなる、慌てて両手で胸と股間を隠す
着ていた魔装服は店員が持っているのでリュックの中にあるさっきの店で買った服を引っ張り出すと慌てて着る
深紅のブレザーにプリーツの入った黒のスカートである
しかし……その姿はベル〇イユの薔薇のオ〇カル"男装の麗人"であった……
さっきの趣味に走ったショップの店員の見立て目利きは確かだったのである
"とにかく、ここから抜け出さなければ……"
私は認識阻害の魔術を発動させるのだが……
ここまで多くの人の視線を一身に受けていては認識阻害の魔術はその効力を発揮できるはずもなく……
結局、レースが付い黒色のたかなりエッチな上下の透け透け下着を買う事となるマノンであった
そのお値段……500ガリア・フラン(40000円)であった……
因みに、カルラの下着は上下セットが2組で200ガリア・フラン(16000円)であった
この世界でもこの手の女性の下着は高価なのであった
代金を払うとカルラの手を引いて足早に店を後にするマノンであった
因みに、この時代の衣服は下着も含めて手作業で裁断・裁縫されるために我々の量販店(ユ〇クロ等)の衣服に比べて大変高価てある
教会の鐘がカーンカーンと鳴り響く
「あっ……もう5時だ、そろそろ帰らないと」
私が教会の方を見てそう言うとカルラは少し悲しそうな顔をする
「そうだね……もう暗くなっちゃうし」
「それに……そのかっこうじゃ……」
「マノン……凄く目立ってて……」
そう言うとカルラは私をジッと見る
カルラに言われて始めて自分が目立っているという事に気付くマノンであった
"何だか……コレット様の気持ちがわかるわ……"
"もしかして……私にもそっちの気が……"
"いやいやいやっ! ないないないっ!!"
カルラは周りの視線に気が付いて少し焦っているマノンを見て心の中で呟くのであった
「それにしても……普段に比べて随分と人が多いな」
平日にもかかわらず多くの人が行き交っている事に疑問を抱くマノンの耳に誰かの会話が偶然に入ってくる
"シルビィ様も無事にご出産なされた事だし……"
"これで、ガリア王室も安泰だな……"
その言葉にマノンの体は凍り付く
"えっ!"
"どういうことっ!!"
マノンは心の中で動揺して叫ぶのであった
第177話 ~ 2だけの暮らし 二日目 ➄ ~
終わり