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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第176話  序章  ~ 外伝 ~

第176話  序章  ~ 外伝 ~



ガリア王国には王国各地に116家の貴族が存在する

人口180万人のガリア王国からすれば少ないと言える


ガリア王国の身分制度の基本は概ね公家5階級と武家2階級に分かれる



 ~ 公家5階級 ~


グランドデューク(大公もしくは大公爵)……王都周辺の地方領主(城主)

デューク(公爵)……辺境の地方領主(城主)

マーキス(侯爵)……国王に仕える家

アール(伯爵)……王都周辺の地方領主に仕える家

バイカウント(子爵)……辺境の地方領主に仕える家


ここまでが貴族で完全世襲制である



 ~ 武家2階級 ~


バロン(男爵)……王国正騎士

ナイト(騎士)……王国騎士


王国正騎士は世襲制であるが王国騎士は登用制度により性別を問わず全てのガリア王国国民に王国騎士となりえる権利がある



リリアーヌのテリエ家は国王に仕える家柄でありマーキス(侯爵)である

同じ国王に仕える家柄でありマーキス(侯爵)であってもその経済格差は大きくテリエ家は下級に属している

身分としては上位に位置するが経済的にはさほど裕福ではない

江戸時代に言う"武士は食わねど高楊枝"の言葉が当てはまる


因みに、セシルのクレージュ家はバイカウント(子爵)であるが元・王国正騎士の出である事もありバロン(男爵)に近い家柄である

身分は低いが直轄の所領を有するので経済的には非常に裕福である

セシルは、列記としたお金持ち貴族のお嬢様なのであるが、地方の辺境の貴族は平民となんら大差なく生活をしている


アレットのヴィオネ家は古参の王国正騎士の家系であり父親のヴァーレルはバロン(男爵)の称号を持っており、それなりの役職(王国正騎士長)に就いているので経済的にも裕福な方である




テリエ家のような国王に仕える家の下級貴族がのし上がるための最も手っ取り早い手段が上位の家や裕福な家と血縁関係を結ぶことである

そのために2つの家が1つの家になる事も珍しくなく徐々に吸収合併されるような形でガリア王国の貴族家数はその数を減らしていく事となっている

人口180万人のガリア王国からすれば116家の貴族は少ないと言える


貴族間でのいわゆる政略結婚は常識であり貴族の若い男女に恋愛の自由は全くなかった

そのために300年という長きにわたり"儀礼制度"という形式をとっていたのであったのだが……


シルビィ王女の駆落ちと言う衝撃的な出来事、国王がそれを黙認した事などが今まで溜まりに溜まっていた"望まない交わり"に反旗を翻す者が続出し事実上、建国より300年に渡ってガリア王国の貴族階級に連綿と受け継がれてきた"交わりの儀"の風習は終焉を迎え"儀礼制度"は崩壊することになる


これもマノンが起こした革命の一つであり、シルビィ王女の駆落ちと言う物語のような衝撃的な出来事は多くのガリア王国の貴族の女性の心だけでなく大陸中の女性の心を捉えたことは言うまでもない



 「ねぇ……リリアーヌ……」

 「卒業したら……どこか遠くで一緒に暮らさない……」

ベッドの中でメラニーがリリアーヌの耳元で囁くように言う


 「……」

リリアーヌは何も言わずに黙っていたが目からは涙が止めどなく溢れているのであった


 「ごめん……無理なこと言っちゃって」

リリアーヌの涙を見てメラニーがすまなさそうに謝る


 「メラが謝る事なんてないわ……」

リリアーヌはそう言うとメラニーに抱き着いてキスをする

 「今度は私の番よね……」

メラニーの耳元でリリアーヌは意地悪そうに囁く


 「えっ……なんのこっ……」

メラニーが言葉をリリアーヌの唇が塞ぐ

 「んっ! んぐぐぐっ!!」

リリアーヌはメラニーの口を塞いだままメラニーの感じやすい所を優しく撫でるように触ったり揉む

 「うっ! ううっ!」

 「あっ! はぁっ! ああんっ!!!」

 「はぁっ!! あふっ!! あああっああっ!!!」

次第にメラニーの喘ぎ声が大きくなっていく

当然、その声は隣の部屋に届いている……



 「……また、ヤってるの……」

 「まぁ……もうすぐ、あの二人も卒業だし……」

 「これが最後のヤり収めなのかもね」

隣の女生徒が少し寂しそうに呟くのであった



朝になり、リリアーヌとメラニーの寝ているベッドに窓から眩い朝日が差し込む

リリアーヌがゆっくりとベッドから起き上がるとメラニーも目を覚ます

裸のままでリリアーヌはベッドから出ると机の引き出しから"儀礼の書"が入った封筒を取り出すとメラニーの目の前で真っ二つに破り捨てる


 「リリ……」

突然の行動に言葉を失うメラニーを見てリリアーヌが優しく笑みを浮かべる


 「メラ……ちゃんと責任取ってよね」

リリアーヌはそう言うとベッドの上で呆然としているメラニーに飛びつく

早朝から、隣の部屋にメラニーの喘ぎ声が聞こえてくるのであった



 「……」

早朝から御盛んな2人に隣の女生徒は開いた口が塞がらないのであった


"全てを捨てる"そんなリリアーヌの決意を他所に事は意外な方に進んで行く……

神が2人に味方したのである


リリアーヌの2つ年下の弟が上級貴族のご令嬢のハートを射止めたのである

当然、父のモルガンは気はそちらの方に行ってしまいリリアーヌの事などどうでもよくなってしまった


無事に王立アカデミ-を卒業をした2人は共に導師となり女学校への赴任を命じられる

リリアーヌは王都から東に150ゲールほど離れたリーゲと言う地方都市の女学校の導師として、メラニーは王都の女学校の導師としてであった


2人は当初から王都を出て行くと心に堅く決めていた

メラニーは王都の女学校の導師を赴任を辞してリリアーヌの赴任先であるリーゲに共に移り住むことを決意する


そして、女学校の導師として赴任するためと言うのを口実にリリアーヌは実家に出家を申し出る


既にリリアーヌの事など眼中にないモルガンは"好きにすればよい"の2つ返事でそれを許すのであった


リリアーヌはリーゲで女学校の導師となるとテリエの名を捨てメラニーの姓であるソニエールを名乗るようになる

これは、リリアーヌのテリエ家との絶縁を決意したという意味でもあった

事実、リリアーヌは王都に生涯一度も戻る事は無かった


かくして、リーゲに小さ家を借りリリアーヌとメラニーの生活が始まる

メラニーは暫くの間は専業主婦をしていたが持ち前の料理の腕を生かして屋台を出す

サンドイッチのような簡単なテイクアウト専門店だったが味の良さが評判となり順調に業績を伸ばし2人の生活は安定し夢のような幸せな時間が訪れる


大きな転機が訪れたのは2人が30歳になった時であった

街の教会の神父から身寄りのない姉弟を養子にしないかと願われたことである

2人は話し合いの末にこの姉弟を養子として迎い入れる

姉のフィラは5歳、弟のアベルは3歳であった


母方が子供を養育することが多いこの世界では父親がいない事など大きな問題となるような事は無く2人ともリリアーヌとメラニーの愛情を受けて順調に育ち姉のフィラは19歳で出産、弟のアベルは18歳で家を出て家庭を持ち独立する


全く血の繋がりの無い家族ではあったが、それ以上の絆はありリリアーヌは57歳でメラニーは59歳で2人とも最後の時を大勢の家族に見守られながら平凡であったが幸せなその生涯を終える事となる



その一方でテリエ家とモルガンは上級貴族にのし上がったものの、成り上がりの下級貴族の新参者に対する上級貴族たちの目は厳しく孤独な人生を歩むことになる

リリアーヌの弟が若くして病死すると周りの目は更に厳しくなり、モルガンはやがて酒に溺れるようになっていく

そして、泥酔し足を滑らせて転倒し石の床で頭部を強打し意識不明となり48歳でこの世を去る事になる


その亡骸はまともに供養される事なく墓標も無い共同墓地に埋葬され墓前に花の一輪すら手向ける者は一人もいなかった

周りの誰もがモルガンを上級貴族(家族)だとは認めていなかったのである


かくして、テリエ家は事実上断絶しガリア王国の貴族は115家となるのであった

ガリア王国の貴族社会ではこのような事はよくある事で珍しくはなく幾度となく繰り返されてきたことである……



血の繋がりよりも心の繋がりが家族として本当の意味で大切であるという絵に描いたような典例であった

 我が国で言う"生みの母より育ての母"の諺の通りである



第176話  序章  ~ 外伝 ~


終わり


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