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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第174話 ~ 2人だけの暮らし 二日目 ③ ~

第174話 ~ 2人だけの暮らし 二日目 ③ ~



序章



夜の女子寮の二人部屋……

 「一体どこにいるの……」

リリアーヌがポツリと呟く


 「私も他の生徒に聞いてみたんだけど……」

 「皆、ここ2日ほど姿が見えないって言ってたよ」

メラニーがリリアーヌに言うと少し間を置いて

 「どうしてもマノン君じゃなきゃダメなの……」

メラニーがリリアーヌに問いかける


 「……」

リリアーヌは俯いたまま何も言わずにモジモジシテいる


 「……もしかしてだけど……」

 「リリはマノン君のようなのが好みのタイプなの……」

メラニーが少し目を細めて問いかける


 「……」

さっきと同じように、リリアーヌは俯いたまま何も言わずにモジモジシテいるのだが……

リリアーヌの目の動きが不自然な事と頬が少し赤くなったことをメラニーは見逃さなかった


 「……そうなんだ……」

メラニーはそう言うと小さなため息を吐く

 「私は女だからリリに子供を作ってあげられない」

 「……でも……私は……」

メラニーは途中で言うのを止めると少し悲しそうにする


同性間での恋愛はそのどちらかが異性に興味を持った時に終わりを告げるものなのだ……メラニーはその事をよく理解しているのである

つまり、これはリリアーヌとの関係の終わりを告げるという事でもある

 「リリアーヌも私も……もうすぐ卒業だし……」

 「ちょうどいいかもね……」

メラニーは涙目になり震えるような声で言う



 「メラ……そうじゃないのよ……」

悲しそうなメラニーを見てリリアーヌが少し慌てて呟くように言う

 「確かに……マノン君はメラに何処となく似ていて……」

 「……その……好みのタイプなんだけど……」

リリアーヌはそう言うと大きく息を吸い込む

 「本当の理由は、マノン君が"大賢者の弟子"なんだからなのよ……」

リリアーヌはそう言うと実家とその内情の事を話し始める


リリアーヌの話だと、リリアーヌの父であるモルガンは出世欲の強い人物で自分の娘のリリアーヌに"大賢者の弟子"であるマノンとの間に出来た子を自分の出世に利用しようとしているという事……

それにモルガンが当初、リリアーヌに"儀の礼"を申し込ませようとした人物も自分よりも格上の金持ち中流貴族で15歳も年上の御曹司だった事……

その御曹司が貴族界でも有名などうしようもないクズ野郎だった事……

そして、リリアーヌの実家のテリエ家はモルガンの過度な出世工作で多額の賄賂を使い借金を抱え経済的に貧窮している事などなど……


 「そうなんだ……」

 「だから……マノン君なんだ……」

メラニーが力ない声で呟く


 「ごめんね……何も言わなくて……」

 「家の恥だから言えなかったの……」

 「それに……こんな事……メラだけには知られたくなかったのよ」

リリアーヌは悲しそう言うとメラニーがギュッとリリアーヌを抱きしめると強烈なキスをする

 「んんっ!」

メラニーは、いきなり強烈なキスをされて息苦しそうにするリリアーヌをそのままベッドに押し倒すと大きな胸の谷間に顔を埋める

 「ちょっと……メラ……」

リリアーヌは少し恥ずかしそうにする


 「リリ……」

メラニーはそう言うとリリアーヌの上着を脱がせ始める


 「メラ……」

リリアーヌは抵抗もせずにじっとしている

メラニーが下着(ブラジャー)を捲り上げると大きな乳房がプルンとこぼれる

 「いつ見ても奇麗なオッパイだね」

そう言うとメラニーは乳首に吸い付くともう片方の乳房を優しく揉み始める


 「あっ……メラったら……大きな赤ちゃんみたい」

リリアーヌは体を捩らせながら喘ぐような声で言う


その日は、リリアーヌの激しい喘ぎ声が両隣の部屋に聞こえてくるのであった



 「ほんと……毎晩、毎晩、御盛んね……」

両隣の部屋の生徒は毎日のように石壁の向こう側から微かに聞こえてくる2人のアノ声に呆れたよう同じ言葉を呟くのであった



第174話 ~ 2人だけの暮らし 二日目 ③ ~




マノンはカルラを抱きかかえるとサボンの温泉の転移ゲ-トを作動させる

眩い閃光と静寂……

 「えっ……何なの……」

 「ここは……」

カルラは何が起きたのか分からずに困惑している


 「ここは、大賢者パトリック・ロベールの魔法工房だよ」

私は困惑しているカルラに話しかける


 「大賢者パトリック・ロベールって……」

 「広場に建ってる銅像の人……」

カルラは信じられないという表情で私に問いかけて来る


 「そうだよ、あの(恥ずかしい)銅像の人だよ」

私は笑いを堪えながらカルラの問いに答える

 「あっちだよ……」

私は困惑しているカルラの手を握ると自慢の温泉へと向かうために絨毯の乗る


 「えっ!!!」

 「じっ!絨毯が勝手にっ!」

カルラは音も無く独りでに床を滑るように動く絨毯に吃驚して怯え私の二の腕に物凄い力でしがみ付いている

 "こんなに驚いたのはカルラが初めてだな"

私はそう思いながらカルラの肩に手を回す


暫くすると絨毯は温泉のある部屋の前で止まる

 「ここだよ」

 「魔法工房の自慢の温泉」

私がそう言うとカルラは恐る恐る絨毯から降りる


 「凄い……本当にこんな所に温泉がある……」

カルラは日本の高級な温泉旅館の露天風呂のような温泉に目を見張る

マノンの手により少しづつ改修されているのである

 「素敵な温泉ね」

カルラはそう言うとボンヤリと温泉を眺めている


 「入ろうか……」

私がカルラに話しかけるとコクコクと何度も首を小さく縦に振るのであった



2人して温泉に浸かる

 「はぁ~」

2人して同時に同じ声を出す

 「ぷっ!ははははは……」

2人して同じように笑う


2人して暫く無言で温泉に浸かっているとカルラが私に話しかけて来る

 「ここってどこなの……」

カルラは不思議そうな顔をして問いかけて来る


 「ここは……ヘベレスト山脈にあるウィニー山の山腹の中」

私がカルラの問いに答える


 「……」

カルラは目をパチパチさせながら何か考えている

 「ええっ!ヘベレスト山脈にあるウィニー山って……」

 「サボンの村からどれだけ離れてるのよ」

カルラはどうやら状況が分ってきたようだ


 「そうだね……約600ゲ-ルってとこかな」

私は気にすることも無く言う


 「600ゲールって……」

 「早くても一月はかかる距離よ……」

カルラは吃驚しすぎて呆れたような口調で言う

 「サボンの村から一瞬で来れるのね……」

カルラは自分の常識や想像をはるかに超えた現状に投げやりな口調で言う

 「……まぁ……よくよく考えてみれば……」

 「マノンって……"大賢者様"何だものね」

 「完全に忘れてたわ……」

ボソッと呟いたカルラの言葉に少し傷つくマノンであった


 「そう言えば……"ジルやクーラン商会"の時もそうだったよな」

 「私ってそんなに威厳(らしく)ないのかな……」

残念ながら、その通りである……カルラの言っている事は事実であり正鵠を射ている

マノンは自分の立場の弱さに少し寂しく、そして悲しく思うのであった


マノンは歴代の大賢者史上、最大最強の力を持ち大きな功績を残したのにもかかわらず……その威厳と風格の無さも歴代の大賢者史上、最大最強であった……



温泉の心地よさに二人仲良く微睡んでいるとカルラが私の前にゆっくりと近付いてくる

 「ねぇ……マノン……」

カルラはそう言うと私の膝の上に載って首に手を回しギュッと抱き着いてくる

 「何だかこうしていると……」

 「すごく心が安らぐわ」

カルラの言葉にシルビィの姿が重なって見えてくる


 「そう……」

私はそう言うとカルラの頭を優しく撫でる

時間がゆっくりと流れていく……

 「カルラ……」

 「あれっ……」

よく見ると寝てしまっているようだ

このままだと2人仲良くのぼせてしまうのでカルラを起こそうとしたが……

あまりにも気持ちよさそうに寝ているのでカルラの脇に両腕を通すとゆっくりと持ち上げる

 "うっ……結構……重いっ……"

マノンは心の中で呟きながらなんとかカルラを温泉から引き上げるとお姫様抱っこする


裸のままで温泉の部屋を出るとそのまま休憩室のベッドに寝かせタオルで体を拭いて毛布を掛ける

 "ゆっくりお休み……"

カルラの耳元で小さな声で呟くと部屋を出る

温泉に戻り服を着て図書室へと向かう

マノンは、カルラに簡単な昼食を用意するつもりなのである

 


始めは、食べ物など全くなかった魔法工房だったのだが……

お客が多くなった事もありいつの間にか図書室の一角には食材や調理器具が一通り揃っているのであった

食材の多くは保存食であり元々長持ちするものなのであるが、工房の現状維持能力により更に食材が長持ちするのがありがたい


元々、食いしん坊で食に対する拘りの強いマノンは、どうして食べ物が腐るのかに以前から大きな疑問と興味と腹立たしさを持っていた

腐りやすい生の食材に対して長持ちする保存食は何らかの処理を施すのだが、これがどうして食材を長持ちさせるのかを密かにこの魔法工房の図書室で熱心に研究していたのだ


マノンの意地汚いと言っても良いほど食いしん坊で食に対する拘りのは恐ろしい程の探求心をもって凄まじい速さでその原因を究明し対策を考え出していた

……その一つが瓶詰の食材である

既に、煮沸加熱した食材を同じように煮沸加熱した容器に密封すれば腐らないという事を発見していたのである


この発見により魔法工房の図書室の一角に設けられた特設キッチンには瓶詰の豊富な食材が並ぶことになる


これが細菌という世紀の大発見に繋がる事になるとは今のマノン本人は全く気付いてはいなかったのであった

同時にこの世界にとっては瓶詰と言う革命的な食料の保存法にも気付かないのであった


この時点ではマノンは食い物が長持ちするという事に大満足していたのである


マノンの意地汚いと言っても良いほどの食いしん坊で食に対する拘りは両刃の剣でもある……

それは、桁外れに大きな原動力となりえる反面、欲望を満たせば次を望まない無欲さが細菌という世紀の大発見と瓶詰という革命的な食料保存法の普及を遅らせることになったのである



筆者が爺のようなウンチクを垂れている間にマノンは次々と料理を作っていく

マノワール村にいた頃は料理など全くしなかった(イネスにさせてもらえなかった)マノンなのだが今は立派なレストランのシェフ並みである

こんなマノンをイネスが知ったら驚きの余り腰を抜かすことであろう……


 「うんうん、こんなものでいいかな」

マノンは、テーブルの上に並べられた料理に満足そうに頷く

テーブルの上に並べられた料理はレストランのランチ並みである

 「さてと……カルラを呼びに行くか」

私が図書室を出ると毛布を体に巻き付けたカルラがポツンと立っていた

 「えっ! カルラ……」

私が吃驚してカルラの名前を呼ぶとカルラはゆっくりと近付いてくる


 「はぁ~良かった……」

カルラは、私の傍に来ると安堵のため息を吐く

 「もうっ! 何処に行ってたのよっ!」

 「目を覚ましたら知らない部屋に一人だけで……」

 「すごく心細かったんだからね」

カルラは泣きそうな声で私に言うのだった


 「ごめん……食事の用意してたんだ」

私がそう言って図書室のテーブルの上に並べられた料理を見せる


 「すごい!コレ全部……マノンが作ったの」

カルラはレストランのランチのような料理を見て驚いている

 「マノンって料理も出来るのね……」

カルラの中でマノンのポイントが大きく上がるのであった

この世界でもデキる男の評価は高いのである



カルラが着替えてから2人で食事を始める

 「これ何……」

始めて見る料理にカルラは興味津々のようである


 「コレは……シラクニアのスープ料理だよ」

 「真っ赤で見た目は良くないけど美味しいよ」

マノンはあえて自分のオリジナル・レシピだとは言わなかった


 「これは……」

カルラは見た事の無い料理の事を次々と質問してくる

マノンは大陸のあちこちに行ってその土地の料理を食べ上手い物は密かに調理法も学んでいたのである

コレも単に、マノンの意地汚いと言っても良いほど食いしん坊で食に対する拘りが本人も気付かぬ間に身に付けたマノンの特技の一つでもある


マノンは料理の腕前も歴代の大賢者史上、最大最強であった……


カルラはマノンが用意したランチをペロリと平らげてしまうのであった

……最後に出されたお茶だけは……

そう、例のオージャオ村の激マズなお茶である

これにはカルラも顔をしかめる……

 「マノン……これ……何なの……」

余りの酷い味にカルラが口をすぼめるようにして問いかけてくる


 「不味いでしょう……」

私は顔をしかめるカルラを見て笑って言う

 「でもね、このお茶……凄く体に良いんだよ」

 「ガリア王国の辺境にあるオージャオ村って所のお茶なんだけど」

 「このお茶を毎日飲んでるオージャオ村のお婆さんは75歳なんだけど」

 「でもね、30歳前半にしか見えないんだよ……」

私がそう言うとカルラはすぐさま一気にお茶を飲み干すのであった

女の人は同じなんだなと思うマノンであった


そんな私を見てカルラが少し恥ずかしそうな表情になる

 「美味しかったわ……」

 「マノンって料理が上手なのね」

カルラは感心したように言っているのだが……

 "マノンがこんなに料理が上手だなんて……"

 "しかも、私のより遥かに美味しいじゃないの"

 "うっうっう~これからマノンに料理を作るのが恥ずかしいよ~"

カルラは心の中で叫ぶのであった


 「ねぇ……少し付き合ってくれないかな……」

私は、顔を赤らめて俯いているカルラに話しかける


 「えっ……」

カルラは突然の誘いに少し驚いたような声を上げる

私は席を立ちカルラの傍に行くとカルラの手を取る


 「行こうか……」

私が優しく話しかけるとカルラは小さく頷くと椅子から腰を上げるのであった



第174話 ~ 2人だけの暮らし 二日目 ③ ~



終わり


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