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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第172話 ~ 2人だけの暮らし 二日目 ① ~

第172話 ~ 2人だけの暮らし 二日目 ① ~



序章


昼過ぎの王都ガリアンに教会の鐘が一斉に鳴り響く

シルビィ王女の出産を知らせる鐘である


王宮では国王のレオナールが宮廷医のカミーユから報告を受けている


 「陛下、立派な女の子にございます」

 「シルビィ王女、お子様共に元気にございます」

カミーユは現状を報告しただけで、出産に立ち会った者達が体験した事は報告しなかった

 "産婆どもの言っている事は、後日に詳しく事情を聞く事としよう"

 "陛下に報告するのはそれからでもよかろう……"

カミーユは心の中でそう呟くのであった

それに、自分が実際に体験していない事であり、にわかには信じられなかったからでもある


 「そうか……そうか……」

そう言ってレオナールは何度も嬉しそうに頷くのであった



教会の鐘の音を聞きつけた市民が広場に続々と集まってくる

王宮からの使者が来るのを待っているのである


多くの人々でザワつく広場に馬に乗った使者がやって来る

使者が馬から降りて手にした書を開くとザワついていた広場が一瞬で静寂に包まれる

広場の前に立つと大声で詔を叫ぶように書を読み始める




  "本日、昼過ぎシルビィ王女にあらせられましては無事に姫君を出産っ!" 

  "シルビィ王女、姫君共に壮健っ!"

  "本日より3日間はこれを祝して休日とする"

  

  "以上っ!"




使者は再び馬に跨ると広場を去っていく

広場に集まった人々の間から歓喜の声が上がる

そんな中、使者の言葉を呆然と聞いている少し薄汚れた旅人がいた

そう……バロー導師である


苦労してオージャオ村に赴いたものの結局、阿膠は手に入らず

諦めて王都に帰り着いたばかりなのである


 「私は……いったい何のためにあのような地へ赴いたのだ」

長旅で疲れ果てたバローは力ない声で呟くのであった


教会の鐘の音はアレットの屋敷にも届いていた

 「何かあったのかしら……」

アレットは大きなお腹を抱えながら窓際にゆっくりと歩いて行くと外を見る

ヴァーレルが慌てて帰ってくるのが見える

 "なんだろう……"

アレットは少し不安そうに呟くとヴァーレルが慌てて部屋に入ってくる


 「どうしたの……そんなに急いで……」

 「何かあったの……」

息を切らしながら血相を変えて部屋に入ってきたヴァーレルの姿を見てアレットは不安になる


 「シルビィ王女様がご出産なされた」

 「女の子だそうだ……」

何か重大な事があったのかと思っていたアレットはヴァーレルの言葉に少し拍子抜けな気分になる


 「そう……」

アレットは別に驚くこともなく返事をする

ヴァーレルが息を切らしながら血相を変えて急いで家に帰ってきたのには理由があった

そう……シルビィ王女のお相手がマノン・ルロワであるというハッキリとした確証が得られたからであった


ヴァーレルは息を調えるとアレットの方を見る

その目から何やら深刻な事があるという事をアレットは感じ取っていた


 「アレット……話しておきたい事がある」

深刻な口調のヴァーレルの言葉にアレットは目を細め頷くのであった

 「お前の腹の子は……シルビィ王女様の御子と異母姉弟(妹)だ」

ヴァーレルの言っている事が何を意味するのかアレットすぐには理解する事ができた


 「それ……本当なの……」

アレットの問いかけにヴァーレルは黙って首を縦に振る

 「そう……」

アレットはとりたてて驚きもせず意外と冷静だった

ヴァーレルは慌てもせずに落ち着いているアレットを見て我が娘ながらその胆の据わった態度に慌てふためいていた自分が恥ずかしくなってくるのであった


 "我が娘ながら、本当に胆が据わっておるわ……"

 "こいつならば余計な心配などいらぬな"

ヴァーレルは心の中で呟くと小さな声で己の小心を笑うのであった




第172話 ~ 2人だけの暮らし 二日目 ① ~



サボンの村に朝日が注ぐ、ベッドの中でマノンが目を覚ます

 "あ~もう朝か……"

朝日を掌で遮ると寝ぼけ眼でボンヤリと部屋の中を見回す

少し離れたところでカルラが毛布に潜り込んで寝ている

 "昨日は……凄かったな……"

 "あの薬(エイペックの骨薬)って……"

 "服用量が少しでも多いと大変なことになる……"

マノンは少し腰を屈めたまま死にそうな声で呟く……

裸のままベッドから出ると床に落ちているパンツを拾い上げると念入りにパンツを調べる

 "大丈夫なようだな……"

マノンはそう呟くとそそくさとパンツを穿く

昨日の夜にカルラに無理やりパンツを引きずり降ろされ脱がされた時に"ビリッ"と言う不吉な音がしたのである

 "ほんとに強引なんだから……"

まるで女子のような言葉を呟くように口にするとベッドの横の床に落ちている自分の服やカルラの下着や服を拾い上げる

 "まぁ……何にせよ、これで心配なさそうだな"

 "今日、一日ようすを見る必要もないか……"

マノンはそう呟くとベッドの上で寝ているカルラの方を見る……

そして、大きく伸びをすると服を着る、カルラの下着と服を奇麗に折りたたみベッドの横に置くと物音を立てないようにそっとドアを開け部屋を出て行く


カルラの部屋に戻ると置きっぱなしになっていたリュックサックの口を開けるエイペックの骨薬の入った小瓶を取り出しテーブルの上に置く

 "カルラに5粒も飲ませたのが不味かったかな……"

 "1粒にしておけばよかった……そうしたら……"

 "一回ヤられるだけで済んでたかもしれなかったな……"

マノンは顔を赤くすると自分の股間に視線を移す

 "……まぁ……元気な事は良い事だから……"

マノンは心の中で呟くとリュックサックから手帳とペンを取り出す



 "親愛なるカルラへ"


 "熱病の方は、もう大丈夫そうなので帰ります"

 "この薬は滋養強壮・精力強壮剤です"

 "畑仕事などの肉体疲労時に一粒飲むと良いです"

 "必ず、また来ます"


   "マノン・ルロワより"



マノンは手紙の上に重し代わりにエイペックの骨薬の入った小瓶を置くと部屋を出ようとする

 "必ず、また来るからね……"

マノンは心の中で呟くと部屋のドアを開ける

 「へっ……」

ドアの外には丸裸のカルラが金峯山寺仁王門の金剛力士像の如き形相で仁王立ちしていた


 「マノン……どこ行くの」

大きく目を見開きギロリと視線をこちらに向ける

 「約束……忘れたの……」

小さな声で呟くように言うと目からポロポロと涙がこぼれ出す

 「起きたら、マノンがいなくて……私……」

カルラはそのまま蹲ると泣き出す


 「ごめん……」

私には、それ以外の言葉はなかった


 「温泉……」

カルラは小さな声で言う


 「分かったよ……」

 「温泉に行こうか……服……着て」

私はそう言うってカルラの手を引くと……

カルラが私の手をグッと掴みそのまま部屋の中のベッドに引きずり込まれる


 「あれっ……」

いきなりベッドに引きずり込まれ呆然としている私にカルラがニヤリと笑う

 「あの……カルラさん……」

カルラの目の奥にメラメラと燃え上がる地獄の業火が見える……

逆に、私は背筋に極寒の寒さを感じる


 「カルラっ!ちょっと待って!」

 「こんな朝早くから……」

私は必死でカルラをい冷めようとするが……


無理だった……

 「ひぃぃぃぃーーーーっ!!!」


マノンの死神にでも鉢合わせしたような悲鳴にならない悲鳴が早朝の静かなサボンの村に小さく響く


ベッドの横の床に無残に真っ二つに破けたマノンのパンツがヒラヒラと落ちる


 「あひっ!」

 「あうっ!!」

 「あっ!あっ!あっ!」

 「ああっ!!!」

 「あはっ!あっ!あっ!あっ!」

 「あひーっ!!!!」

 「あひーーっ!!!!」

清らかな朝日が降り注ぐ静かな山間のサボン村にマノンの死にそうな喘ぎ声が微かに聞こえる



 「朝っぱらから、どっかの(うち)で家畜の豚でも盛ってんのか……」

カルラの猛烈な攻めに死にそうなマノンの喘ぎ声は、村の住人からは人の声ではなく家畜の豚が盛っているようにしか聞こえないのであった



後日、王都に帰ったマノンは爺から"エイペックの骨薬"は滋養強壮・精力強壮剤壮剤としてだけではなく……

服用時の状況や数量しだいでは、超強力な"媚薬効果"がある事を知らされる


薬の正しい服用がいかに重要なのかを身をもって思い知るマノンであった



"レナに飲ませるのだけは、どんなことがあっても絶対に止めよう……"

"……命に係わる……"

ただでさえ激しいレナがあれ以上に激しくなったら……

本気で腹上死を恐れたマノンは心に堅く堅く誓うのであった



因みに、マノンがこのエイペックの骨薬を処方した女性がカルラの他にも二人いる

1人はシルビィ……もう1人はルイーズの母のフェリシテである


そして……その後、ルイーズには妹が出来る事になるのであった……



セルジュもマノンと同じような目に遭ったことは言うまでもない……






第172話 ~ 2人だけの暮らし 二日目 ① ~


終わり


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