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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第150話 ~ マノンにとっては平穏な日々 ➅ ~

第150話 ~ マノンにとっては平穏な日々 ➅ ~



序章



マノン達がオージャオ村へ行っている頃……

王立アカデミ-の貴賓寮ではルメラ達が暑さに苦しんでいた

本格的な夏を迎えた王都ガリアンの昼間の気温は30度近くになる

当然、4人ともパンツ一丁で乳丸出しである……最近では、パンイチのこの姿が宿舎での普段の姿となっている

暑くなってからは王立アカデミ-の講義も午前中だけにしている4人であった


 「あじぃぃぃ~」

死にそうな声でルメラが呟く

 「マノンの野郎……何処行きやがった」

 「どこ探しても居やがらねぇ……」

ここ数日、マノンが居ないので冷却魔法をかけてもらえずに蒸し風呂のような貴賓寮の居間で暑さに耐えるしかないのである


 「今、ルシィ導師が水風呂の用意をしてくれています」

 「ルメラ様もう少しの辛抱です」

エルナが今にもパンツを脱ぎそうなルメラに言う


 「皆さん、水風呂の用意が出来ましたよ」

ルシィの声が聞こえてくる


 "待ってましたっ!"と言わんばかりにルメラ達4人は風呂場の方へと急いで向かうのであった


最高気温が24度程度のシラクニアで生まれ育ったルメラ達にとっては王都ガリアンの暑さは脱水症状や熱中症を引き起こしかねない温度である

医師であるルシィはその事に気付いており、毎日、最も気温の上がる昼過ぎに水風呂を用意しているのである

大きな湯舟を水で満たすのは一苦労だがエレ-ヌも手伝ってくれるので何とかなっているのである


また、日中の強烈な日差しによる肌の日焼けもルメラ達にとっては火傷の症状を引き起こす危険性もあり注意が必要なのである


そんな事情からルメラ達が日中に屋外に出歩けるのは午前中か夕刻だけである

その代わりに寒さには非常に強いのでガリアの民ならば震え上がるような極寒の真冬でも平気で外を出歩く事が出来るのである


 「ふへぇ~極楽極楽~」

パンツを脱ぎ捨てて肩までどっぷりと冷たい水風呂に浸かったルメラが気持ち良さげに言う


 「ルメラ様……オヤジ臭いですよ」

そんなルメラを見てユーリアが言う


 「いいじゃないですか……」

 「そう言うユーリア様も冷たい水に浸かった時に……」

 「おばさん臭い声を出してたじゃないですか」

アイラがユーリアの方を見て言うとルメラも頷く


 「にしても……この暑さいつまで続くんだ」

ルメラが浴室の天窓の上空で燦燦と輝く太陽を見て呟く


 「そうですね……後1ヶ月って言った所でしょうか」

ルメラ達の様子を窺っていたルシィが言う


 「あっあっあっ……後1ヶ月っぅ!!」

ルメラ達4人は絶望したように叫ぶのであった

この暑さのせいで4人の気力と体力は擦り減り、マノンとの"交わり"に対する欲望も減衰している事にもルシィは気付いているのであった


 "このまま行けば4人仲良く何事も無く帰ってくれそうね"

水風呂に浸かって寛いでいる4人を見ながら呟くルシィであった


ジェルマン導師総代からルメラ達の事を任されている事もあり、マノンと何か間違いがあれば大変な事になってしまうかもしれないからだ


ルシィにとって厄介なのはマノンには全くその気は無く、逆に保護対象のはずのルメラ達の方にその気が満々とあるという事てあったのだが、ガリアの暑い夏がルシィに味方してくれたのであった

 "ありがとう……太陽さん……"

浴室の天窓の上空に燦燦と輝く太陽に心から感謝するルシィであった


……が、ルシィの考えは甘かった……

自分達の気力と体力、"交わり"に対する欲望の減衰に気付いていたルメラ達は密かに王立アカデミ-とガリア王国に留学の延長を求めていたのであった


そして、その要望は受け入れられルメラ達の留学期間は半年延長されることとなるのである

夏が過ぎ秋となり気温が下がるのと反比例するかのようにルメラ達の気力と体力、"交わり"に対する欲望は以前にも増して復活していく事となるのである




第150話 ~ マノンにとっては平穏な日々 ➅ ~




 「ふぁぁ~よく寝た~」

マノンは布団から半身を起こすと大きな伸びをする

隣ではレナが気持ちよさそうに寝息を立てている、反対方向に振り向くと

マリレ-ヌがとんでもない格好で寝ている

 "マリレ-ヌさん……もしかして……"

 "寝相が悪いの……"

私は掛け布団を蹴り飛ばし大股をおっ広げて大の字になって寝ているマリレ-ヌを見て呟く

上着のボタンは外れ下着が捲れ上がり小さめ胸が丸見えになっている……

更にズボンとパンツもズリ下がり大事な所が見えかけている


流石にこのまま放置するのは拙いと思いマリレ-ヌの傍に近付くとマリレ-ヌの目が開く

 "起きた……"

私が優しくマリレ-ヌに問いかける


 "あ……あ……うん……"

寝ぼけ眼でマリレ-ヌが答えると自分の姿に気が付く

「あっ!ちょっとっ!! これはっそのっ!!」

マリレ-ヌは自分の恥ずかしい姿に気付き焦って必死で身なりを整える

 「見られちゃったわね……私、寝床が変わるとこうなっちゃうのよ」

私の方をチラ見しながら恥ずかしそうに言う


 「そんな事どうでもいいよ……私もそうだから」

私は何事も無かったかのように笑って言う


 「マノン君って本当に……」

マリレ-ヌは何かを言いかけようとすると急に顔色か悪くなる


 「どうしたの……マリレ-ヌさん」

マリレ-ヌの顔色が急に悪くなったので私は変に思い後ろを振り向くと……

鬼の形相でレナがこちらを睨んでいた


 「ひいっ!」

レナの物凄い形相に私とマリレ-ヌ思わず悲鳴を上げて後ずさりする

 「おっおはようございますっ!」

そんなレナに私とマリレ-ヌは焦って挨拶をする


 「ああ……おふぁよう……」

だがレナは、その憤怒の如き表情とは真逆のような気の抜けたような声で挨拶をする


 「はへぇ……」

私とマリレ-ヌは予想していたのとはあまりにも違うレナの対応に戸惑う

 「ぷっ!」

思わず私が吹き出すとマリレ-ヌも同じように吹き出してしまい二人で大笑いしてしまう


 「えっ……何がおかしいの」

暫く、ボォ~としていたレナの表情が変わってくる

 「何々……何なのよっ! 」

何が可笑しいのか分からないレナは、慌てて自分の顔や身なりを確認する

 「もうっ! 何がそんなに可笑しいのよっ!!」

遂にレナは気分を害して怒ってしまうのであった


後でレナに事情を話すと顔を真っ赤にして必死で言い訳をするレナであった

これは、女性によくある寝起時の低血圧によるものである


昨日の残り物で簡単に朝食を済ませると私と爺は"エイペック"探しに出る事にする

険しい岩場で女性には危険だという爺の忠告を受けてレナとマリレ-ヌの二人にはここで待機してもらう事にする


ロープなどの道具の入ったリックを背負い家を出るとサラヤタとラナハヤが玄関先で椅子に座り農作業をしていた

 「これから"エイペック"探しかい」

ラナハヤが私に話しかけてくる

私が返事をするとラナハヤは立ち上がり切り立った断崖の方を指さす

 「あの辺りで"エイペック"を見たよ」

 「あの岩場には"エイペック"の好物の草が生えているんだ」

 「待っていれば必ず草を食べにやってくるはずだ」

 「あの岩場に行くにはあの道を通って行くといいよ」

ラナハヤはそう言うと家の裏手の細い道の方を指さした


 「ありがとう、感謝します」

私はお礼を言うと家の裏手の細い道を登り始めた


 「一人だけで、大丈夫かね……」

サラヤタがラナハヤに心配そうに話しかける


 「……一人で"エイペック"を捕まえるのは……」

 「まず……無理だろうな……」

ラナハヤは少し心苦しそうに言うとサラヤタも頷くのであった



私はゆっくりと急で細い岩だらけの道を歩いて行く

30分ほど歩くとラナハヤが指し示した岩場の断崖の上に到着した

 「凄い場所だね……」

切り立った断崖に大きな岩が所々に飛び出していて、そのわずかな隙間に草が生えている


 "なるほど……いかにも"エイペック"の出そうな場所じゃの"

爺が感心したかのように言うとパックが私の肩から飛び立つのが分かる

 "奴は用心深いからの、お前さんも認識阻害の魔術で姿を隠せ"

 "それに、匂いにも敏感じゃから風下の方に身を隠すがよい"

 "儂は上空から奴が来るのを監視しておる"

 "見つけたら連絡するが……儂が合図するまでは身を隠したままにするのじゃ"

そう言うと爺の気配が完全に消える


私は爺に言われた通りに認識阻害の魔術で姿を消し風下の岩の隙間に身を隠した


あれから3~4時間は経つが爺からの連絡は無い……静まり返った岩場には風の吹く音と草の葉の揺れる音だけがする

 "退屈だなぁ……眠くなってきたよ……"

 "それに……トイレ(小の方)がしたくなってきた"

私は辺りを見回し岩場の隅で用を足していると……いきなり爺の声が聞こえてくる


 "お前さんっ! 出よったぞっ!"

 "ちょうど、お前さんのいる真下の岩場じゃ"

 "草を食うのに動きが止まっている今がチャンスじゃ"

突然の爺の叫び声に用を足している途中だった私は焦る


 "今、ちょっと待ってっ!!"

私は出すモノを出し終わっていないで動けないでいる


 "早くせんと、すぐに何処かへ行ってしまうぞっ!"

爺が物凄く急かせてくる


用を足し終えると断崖の岩の間から真下の岩場を覗き見る……

"エイペック"が草を食んでいる様子が見える

私は獲物に正確に雷撃を加えるために、目測で大方の距離を把握する

大きく深呼吸をして魔術を発動する

 "ドンッ"

大きな雷鳴が轟くと峡谷に轟音が反響する

それとは正反対に草を食んでいた"エイペック"は音も無く岩の間に倒れ込んだ


 "やったぞっ!"

爺の歓喜に満ちた声が頭に響いてくる

何とか"エイペック"を仕留める事が出来た私は緊張の糸が切れその場にへたり込んだ


 "どうやって……ここまで獲物を引き上げようか……"

私は崖の下、約20メートルほど下の岩場に横たわる"エイペック"をどうやってここまで引き上げるか悩んでいる


 "ロープの先に輪を作り、儂がそれを下まで咥えて降りる"

 "エイペックの足にロープの先の輪を引っ掛けるから"

 "合図したらお前さんが引き上げるがよい"

爺がそう言うとパックはロープの先の輪を咥えて崖下に降りていく、暫くすると爺の声が聞こえてくる


私は、近くの大き目の岩にロープを掛けるとその岩を支えにして少しづつ"エイペック"を引き上げる事に成功した

 "ふぅ~何とか引き上げられたよ"

私は一息ついて安心したように言う

引き上げられた"エイペック"はオスの成体で体重は50キロ近くある大物であった


 "一息付いているところ悪いがの……"

 "今度は、コレを担いで降りねばならんぞ"

 "早く解体せねばエイペックが傷んで薬効が無くなってしまうぞ"

横たわっている大物の"エイペック"を見て爺が私に言う


 "一度、持ち上げて見るよ"

私はそう言うと"エイペック"の前後の足首を掴んで持ち上げようとする

 "おっ重いっ!"

予想以上の重さに驚いてしまう……

 "こんなの抱えて足場の悪い急な山道を歩くのは無理がある"

私が悩んでいると爺の自信ありげな声がする


 "大丈夫じゃ! お前さんにはとっておきがあるではないか"

私には爺が何を言っているのか全く分らない

 "性転換するのじゃよ……"

 "男の体より女の体の方が遥かにパワフルじゃからの"

そう言って爺が高らかに笑う


疲れるし、お腹が減るので嫌だが"エイペック"を一刻も早く持ち帰るには仕方がない

久しぶりに女体化すると何だか体の感覚が変な気がする

さっきと同じように地面に横たわっている"エイペック"の前後の足首を掴んで持ち上げる

 "あれっ……そんなに重くない……"

爺の言う通り女の体の方が遥かにパワーがある事を実感するのマノンであった


かくして、大物の"エイペック"を難なく担いで急な山道を降りて行くのであった




第150話 ~ マノンにとっては平穏な日々 ➅ ~


終わり




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