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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第141話 ~ 大賢者・マノン・ルロワ ⑩ ~

第141話 ~ 大賢者・マノン・ルロワ ⑩ ~



序章


ここは、ダキア王宮の奥深くにある祭礼の間……

巫女の白装束に身を包んだアメリーが占術を始める準備をしている

今、ここにいるのはアメリーとコレットの二人だけである


本来は、お付の者達と神官たちが全てを準備してくれるのであるのだが……

今回は姉のコレットに頼まれて(脅されて)の本来は禁止されている私的な占いであるためにアメリーが一人で全てを準備しなければいけないのである



アネットやアメリーの場合はトランス状態に陥る事によりその能力を発揮する事が出来る

能力者によりその手法は様々であるが、アメリーは泥酔することでその能力を発揮する

要するに酒を飲みまくり泥酔して意識がなくなる時に未来予知能力が発揮されるのであった


アレットのような吞兵衛には天職であるが、そうではないアメリーには嫌な行事でもある

 "嫌だな……"

アメリーは心の中で呟く、その理由は体に悪い上に余り酒に強くないので次の日に二日酔いで苦しむことになるからである



 「それでは、始めます」

アメリーはそう言うとワインの入った壺を両手で持ち上げるとグビグビと物凄い勢いで飲み干していく


 「相変わらずのスゲエ飲みっぷりだなぁ」

アメリーの飲みっぷりにコレットの口調が以前の粗暴な言葉遣いに戻ってしまう


そう……本人は全く気付いていないが、じつはアメリーはトンデモない酒豪なのである

2リットルワイン壺が3本ぐらい空いたところでアメリーの様子が変になってくる

 「あっ……そろそろ来るな……」

コレットは泥酔したアメリーを見て嫌そうな顔をする

そうしていると、泥酔したアメリーがフラフラしながらコレットの傍に近付いていく


 「コレット姉さまは……残念ですっ!」

 「凄っく美人だし……スタイル良いし……」

 「それに……爆乳だしっい……」

 「なのにぃ……どうして女にしか興味が無いんてしゅかぁ~」

そう……絡み酒……アメリーは酒癖が悪いのである


 「ああ~もうっ!鬱陶しい奴だなぁ~」

泥酔してベッタリとくっ付いているアメリーを振り払おうとする


 「そんなに嫌がらなくてもいいじゃないでしゅか」

 「わらひだって一応は女の子なんでしゅよ……胸は無いでしゅけろ」

段々とアメリーの言葉遣いが変になってくる


 「ぼちぼち……だな」

自分にベッタリとくっ付いて離れようとしないアメリーを見て呟く

 「ひっ! 何しゃがんだっ!!」

いつの間にかアメリーはコレットの胸に顔を埋め、両手で胸を揉み回している

 「馬鹿野郎!神託はまだかよっ!!」

コレットはアメリーに問いただす


 「ご貧託……って……」

そう言うとアメリーは自分の胸を見て死にそうな顔をするといきなり上半身を曝け出す……巫女の時は下着を着けていないのである

 「見れくらさいよっ!」

 「この胸……真っ平らでしゅよ……」

アメリーは自分の胸をスリスリと撫でると急に様子が変わる



 「コレット、汝の求める者は……」

 「これより1日後、この王都モダンテの港に現れる」

そう言い残すとアメリーは意識を失って音も無く床に倒れた


 「ありがとう……アメリー……」

コレットはそう言うと床に倒れているアメリーを抱きかかえる

 「……でも……ホントに乳が無いな……こいつ……」

泥酔しているアメリーのペッタンコな胸を見てコレットしみじみと呟くのであった


かくして、コレットは王都モダンテの港に私利私欲で兵を配置するのであった

そう……マノンを捕らえて我が物とするそれだけのためにである……


何も知らないマノンはアメリーの神託通りに王都モダンテに現れることになる




第141話 ~ 大賢者・マノン・ルロワ ⑩ ~



食事を終えるとカルラがワインを持ってくる

木のコップにワインを注ぐと私の方に差し出す

 「沢の水で冷やしてあるのよ」

そう言うともう一つのコップにもワインを注ぐ

 「飲んで」

私に飲むように勧めると自分もワインをゴクゴクと飲み干す


 "もしかして……カルラって酒豪なのかな……"

私は心の中で呟くと、少しカルラに恐怖感を覚えながらもワインを口にする

 「コレは……美味しい……」

冷たい沢の水で冷やしたワインは凄く飲みやすかった


 「私は……この一杯でいいわ」

そう言うとカルラはコップを片付けてしまう

 「さてと……マノン、"レナ"って誰っ……」

カルラの言葉に私は全身から血の気が引き、せっかく回り掛けた酔いが醒めていくのを感じる


 「……」

コップを手にしたまま凍り付いている私にカルラがワインを注いでくれる

 "……カルラには、正直に話そう"

私は心の中でそう呟くとレナの事を話し始める……

幼馴染である事、同じように王立アカデミ-の生徒である事、そしてレナとの関係についても隠すことなく全てを話すのであった


因みに、他の事(女関係)は一切口にはしていないマノンであった


 「そうなの……」

カルラは少し悲しそうな顔をする

 「それだけ……」

そう言って私の顔をジッと見るとカルラはニヤリとする

 「まぁいいわ……これ以上は聞かない事にするわね」

焦っている私の心を見透かしているかのように笑うのであった

 

 "完全に見抜かれている……"

私は心の中でそう呟やいていると爺の声が聞こえてくる


 "時が来れば全てを話すがよい"

 "あの娘は、それを受け入れてくれるじゃろうよ"

そう言い残すと気配は消えた


ワインの壺が空になる頃には夜も深まり辺りは真っ暗になる

 「そろそろ帰るね」

私がそう言うとカルラは家の外を見て呟く


 「今日は空に雲が掛かって真っ暗よ」

 「泊って行けば……ベッドも4つもあるし」

 「予備のお布団もあるから安心していいよ」

不安そうにしている私を見てカルラが説得するように言う


 「……そうだね……そうさせてもらうよ」

私はカルラの家に泊まる事にする……本当はワインの飲み過ぎで宿屋に戻るのが辛かったのである

 

私はカルラに案内されて二階の一室に泊めてもらう事にする

この家に以前住んでいた住人の部屋とベッドは奇麗に掃除されていてマノワール村の自分の部屋よりも遥かに清潔なのであった


ワインの酔いも手伝ってマノンに睡魔が襲ってくる

ベッドな潜り込むと直ぐに夢の世界へと旅立つのであった


 "んん~"

 "ぐにゅ、ぐにゅ、ぐにゅ……この感覚は"

マノンはゆっくりと目を開けると目の前には見慣れたものがあった


 「ちょっと……カルラ……」

私は少し寝惚けた声でカルラに話しかけるが返事が無い

 

 "スーッ……スーッ……"っとカルラの寝息が聞こえてくる

 「あれっ……本当に寝てるんだ……」

後で分かった事だが、カルラは下戸で酒の類が全くダメなのだそうだ

ワインをコップに一杯ほど飲んだだけでぐでんぐでんに酔っぱらってしまう

始めにコップに一杯しかワインを飲まなかったのもそのせいなのである

そんな事など知らない私はカルラが夜這いにでも来たのかと勘違いする


 「ちょっとカルラ起きてよ」

私はカルラを軽く揺さぶり起こそうとするが全く反応が無い


 「んっんん~マノン~」

寝惚け声でそう言うと物凄い力で抱き着いてくる、私の顔がカルラの大きな胸の間にすっぽりと埋まってしまう


 「ふぐっ! ほげっ!!」

 「くっ苦しい……息が出来ないっ……」

窒息しそうになり、もがきながらやっとカルラの胸の谷間から抜け出す

 「はぁはぁはぁ……危うく窒息死する所だった」

死にそうな私を他所にカルラは気持ちよさそうに寝ている

 "なんか……殺意が湧いてくるな……"

以前、レナに同じような事をした時のレナの気持ちを味わうマノンであった


マノンはカルラの体を擽る

 「あっ……あっ……」

カルラは小さな声を上げで体を捩らせる


 "なんか……面白いなこれ……"

マノンは寝ているカルラを擽り続ける


 「あっ……あんっ……」

カルラは同じように小さな声を上げて体を捩らせる

こんなしょうもない事をしているとカルラが目を覚ます

 

 「あっ、起きた」

 「一人で自分の部屋に戻れるかな」

私は虚ろな目をしたカルラに問いかける

 「来てくれたのね……マノン……」

そう言うとカルラは起き上がり私に抱き着くと強烈な口付けをする

カルラはマノンが夜這いをしに来たのだと勘違いしたのである


 「ふっふぐっ! んぐぐぐぐ!」

あまりの強烈な口付けに息が詰まってしまう

 「どうしたのカルラっ!」

私は慌ててカルラを見ると目が死んでいる……と言うより視点が合っていないのがわかる

 "コレは……トランス状態に近い目付き……"

 "カルラに意識はあってないのと同じ状態だ……不味いぞっ! "

 "このままだとカルラは己の本能・欲望のままに行動する"

マノンがそう思った瞬間にカルラは再び私に抱き着くとそのままベッドに押し倒す

 「しっかりしてっ!!」

私はカルラに必死で話しかけるが反応が無い


あっという間に、服を脱がされ丸裸にされる……

 「あっちょっと待ってっ!!!」

私の抵抗も虚しく最後までヤられてしまうマノンであった


行為が終わった後で気持ちよさそうに寝てしまったカルラを横に私は呆然としていた

 "どうして……本気で抵抗しなかったのだろう"

 "その気になれば簡単にカルラを正気に戻せたはずなのに……"

私は自分自身に問いかけていた、すると爺の声が聞こえてくる


 "それはな、お前さん自身がこうなる事を心の奥底で望んだからじゃよ"

 "どうしてなのかは、お前さんも気付いているはずじゃよ"

爺の言っている事は何となくわかるマノンであった


 "それより……ずっと見てたの……"

私が爺に問うと爺は黙り込む

 "爺のエッチっ!"

私が少し不貞腐れたように言うと爺のスケベそうな声が聞こえてくる


 "若い者は良いのう~"

そう言うと爺は楽しそうに笑いながら気配を消してしまった


 "ホントに……あのエロ爺……"

私はそう呟くと横で寝ているカルラの方を見る……

すごく気持ちよさそうに寝ているカルラの寝顔を見ているうちに私も寝てしまうのであった


窓から差し込む朝日で目を覚ますと、私の横でベッドから半身を起こし呆然としているカルラの姿が目に映る

 「おはよう……カルラ」

私がカルラに挨拶をするとカルラは何が何なのか分からない表情でこちらを見る


 「どうして私……マノンのベッドにいるの」

どうやらカルラには昨日の夜の事が完全に記憶にないようである

 「何だったの……昨日、夢は……」

カルラは昨日の事は夢だと思っているようだったので、私は昨日の事を話すことにする


私の話を聞いたカルラは恥ずかしさで顔が真っ赤になり布団を被ってしまった

 「何て言ったらいいのか……」

 「私って最低な女よね……酔った勢いで……」

 「イベリアの上級貴族のブタ野郎と同じじゃないの……」

布団の中からカルラの泣きそうな声が聞こえてくる


 「そんな事ないよ……」

 「だって……その……その……」

 「私はカルラの事が大好きだから……」

 「多分、温泉で初めて会った時からだと思うよ」

私がカルラに本当の気持ちを話すと布団からカルラが顔を出す


 「ホントにホント……」

涙目で私に言うので私はにっこりと笑う


 「ホントだよ」

その言葉を聞いた途端にカルラの表情が明るくなるのがわかる


 「そろそろ、朝食にしようか」

そう言って私がベッドから出ようとするとするとカルラが私の手を掴む

 「えっ……」

私の脳裏にセシルの顔が浮かんでくる

 "あっ! コレは……"

と思う間もなく布団の中に引きずり込まれる


 「ねぇ……マノン……しよっか!」

 「今度は、ちゃんとねっ!」

そう言うとカルラは私にギュッと抱き着いてくる


私は、朝から二度のお勤めを果たす事になるのであった……


朝食を食べてカルラと二人で宿屋のおじさんとおばさんにカルラが話をしたいというので会いに行く


カルラが事情を説明するとおばさんはとても喜んでいた、二人ともカルラは一生一人でいるのだろうと思っていたからである

そして、カルラは自分たちの子供と同じ、もし子供が出来れば孫も同じなので自分達に全ての世話を任せて欲しいと言うのであった


心の底から本当に喜んでいる、そんな二人とカルラに私は何も言えなくなってしまう

 「必ず帰ってきます」

その一言が私の心からの気持ちであった


おじさんとおばさん、それにカルラと私の四人で昼食を食べる

新しい家族が出来たような錯覚に陥るマノンであった


 "何かここに証を残したい"

私はそんな衝動に駆られると、何処からか爺の声が聞こえてくる


 "ならば……転移ゲートをこの村に置くがよい"

 "さすらば、いつでもこの村に行き来できよう……"

そう言うと爺の声は聞こえなくなる


リュックを背負い宿から出て行く私を三人が見送ってくれる

私は何度も振り返りながらこの村を後にするのであった


暫くすると、パックが私の肩に降りてくる

 "さてと、転移ゲートのマーカーを置くとするかの"

 "どこが良いかな……お前さん……"

爺の突然の提案に私は驚く


 "転移ゲートって……"

よくわからずに混乱している私に爺が説明をしてくれる


双方向性の本格的な転移ゲートではなく、位置を知らせるための発信機のような物で、魔法工房で転移ゲートの本体を作りマーカーの場所に直接送り込み転送設置するそうである


 "そうなんだ……だったらあそこがいいな"

私はそう言うと温泉のある岩場へと向かう、そして、爺の指示通りに転移ゲートの本体を送り込む場所に魔力を注ぎ込む


 "これでよかろう……"

爺の確認を取ると私は温泉を後にしてペントンの港へと向かうのであった




第141話 ~ 大賢者・マノン・ルロワ ⑩ ~


終わり




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