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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第134話 ~ 大賢者・マノン・ルロワ ➂ ~

第134話 ~  大賢者・マノン・ルロワ  ➂  ~



 序章



  マノンと別れて森の中に入っていった爺は木陰に身を隠しマノンの様子を窺っている3人の不審な人影を見つける……3人とも腰には剣を携えている

 "先程の気配はこ奴らか……"

 "邪な気は無さそうじゃな……"

爺がそう呟くと認識疎外の魔術を発動する、パックは木陰に潜む3人の真上の木の枝にゆっくりと舞い降りる

3人の会話が微かに聞こえてくる


 「誰だ……」

1人が少し慌てて言う


 「不味いな……」

もう一人が焦ったように言う


 「このまま見過ごすわけにもいかんな」

最後の一人がそう言うと残りの二人も顔を見合わせ頷くと腰に吊るした剣の柄に手を掛ける

その様子を見た爺はパックを3人のいる目の前の木の枝に飛び移らせると3人に眠りの魔術を発動させる


 「あれ……」

 「何だこれは……」

3人は強烈な睡魔に襲われそのまま眠ってしまった


 "これでよいか……"

 "すまぬが、暫く眠っていてもらう"

爺は熟睡している3人を見て呟く

 "さてと……次は……"

そう爺が呟くとパックは森の奥へと飛んで行く、暫く飛ぶと森が途切れ広大な海原が目に入る


大きな岩がゴロゴロしている岩場に小舟が一隻引き上げられ二人の漕ぎ手らしき人が傍にいる

そして。海岸の少し沖合に大きな1隻の船が停泊しているのが見える

 "ガレー船……2本マスト、2段櫂船か……どこの国の船かの……"

 "んん……ここからでは国籍を示す旗が見当たらぬな……"

爺がそう呟くとパックは軍船の方に向かって飛んで行き船縁の欄干に止まる

船の全長は40メートル程あり、この世界では標準的な大きさの軍船であるが立派な装飾が随所にみられる

そして、船の船首にはバリスタ(据え置き式の大型弩砲)などが据えられている


大勢の漕ぎ手が船上のあちらこちらにハンモックをつるし休憩している

 "やはり軍船か……何故このような所に……"

爺は少し嫌そうに呟いていると2人の兵士の会話が耳には入ってくる


 「姫様にも困ったのだな……」

 「お忍びとはいえ毎回毎回、一人であのような場所へ行くなんて」

背の高い兵士が困惑したかのように言う


 「姫には腕の立つ護衛が3人付いているんだ、心配ないさ」

背の低い兵士が心配なさそうに言う


 「それに、毎度のように勝手に国境を越えてもいいのか」

 「そのうちガリアの連中に見つかって揉めるんじゃないか」

背の高い兵士が不安そうに言う


 「それも、心配ないよ……ここだけの話だが……」

 「ガリアの方には話は通してあるってさ……船長がそう言ってたよ」

背の低い兵士は辺りを気にしながら小さな声で背の高い兵士の耳元で言う


 「……」

背の高い兵士は無言で何度も頷いた

 「そうなんだ……話は替わるが……」

 「以前から、気になっていたんだが……」

 「なんで国境を越えてまで、わざわざこんな人気のないところまで来るのはどうしてなんだ……」

背の高い兵士が背の低い兵士に尋ねる


それを聞いた背の低い兵士は辺りを見回して近くに誰もいない事を確認する

 「これも、ここだけの話だぞ……」

背の低い兵士は念を押すと背の高い兵士の耳元に顔を寄せ小さな声で話す

 "アメリー王女は……その……なんだ……"

 "胸が無いだろう……だから……その……"

 "人気のない所で人目を気にせずにゆっくりと湯に浸かりたいらしいんだ"

背の低い兵士が言い難そうに言う


 "ああ~確かにペッタンコだからな……"

 "あそこまでペッタンコなのも珍しいよな……"

 "姉君のコレット様は爆乳なのに……どうして……"

 "まぁ~コレット様は性格がアレだがな……"

そう言うと背の高い兵士は納得したように何度も頷く


二人の兵士の会話にマノンの顔が脳裏に浮かび上がり思わず吹き出しそうになる爺であった……

 "なるほどな……この船に国籍を知らせる旗が無いのはそのせいじゃな"

爺はそう呟くと兵士が腰に吊り下げている剣の柄に紋章が入っている事に気付く

 "剣に絡みつく二匹の蛇……"

 "あの紋章は……ダキア王国のものじゃな……"

 "ピオ-ネ山脈を越えればすぐそこか……"

 "この足の速いガレー船なら2時間もかからぬな……"

爺はそう呟くとパックは空高く舞い上がり、マノンのいる洞窟の温泉へと飛んでいのであった




第134話 ~  大賢者・マノン・ルロワ  ➂  ~




 「えっ……ホントにっ!」

私は、爺からアメリーがダキア王国のお姫様かもしれないと聞かされて少し驚いている

 「どうしてこんな所まで、わざわざお忍びで来るのかな」

私が不思議そうに言うと爺がそれに答える


 「それはじゃな……」

爺が船の上で兵士から聞いた事を話し始める


 「うっうっ……」

爺の話を聞いた私は思わず共感の涙を流してしまう

 「分かる……分るよアメリー……」

私の目から止めどなく同情の涙が溢れてくる

 "ごめんね……邪魔しちゃって……"

私は心の底から真摯にアメリーに謝罪するのであった



 暫く火照った体を冷まし休息を取った後で私は再び険しい山道を下りリゾラムの村へたどり着く、相変わらず湯治客で賑わっている

 何処の宿も宿泊客でいっぱいで泊まる事は出来なさそうだ


 "仕方ないな……帰ろうか"

私が少し残念そうに言う

 

 "このまま帰るのもなんじゃ……"

 "少し足を延ばしてダキア王国へでも行かんかの"

 "お前さんは一度も行った事が無かろうに……"

 "それに、ダキア王国のサボンと言う村にはの……"

 "大陸でも、そこにしかない珍しい泉質の温泉があるのじゃ"

 "どうじゃ~"

爺の誘惑に私はあっさりと屈服してしまうのであった



 ダキア王国……ピオ-ネ山脈を越えた大陸南端の西側にあるピオ-ネ三ヶ国で人口25万人の最も小さい王国である

 国土の広さは日本の四国の3分の1ぐらいである

 この国を統治するのは、国王バルバート・エラルド7世であり王女が二人のみで王子はいない

 国王バルバートは非常に信心深く、真面目な性格であり、国民からの支持はピオ-ネ3ヶ国の中では最も高く国の治安も非常に良いが決して豊かな国ではない


 ダキア王国の王都はモダンテであり、ピオ-ネ山脈を水源とするタール川の河口に広がる堆積地に築かれた都市で、この都市とその周辺に全人口の約8割の20万人が集中して居住している

 人口が集中するのはこの国の地形に起因する、国土の7割が山岳地帯であるために山と海の間にある数少ない平地に人が集中するからである



 平地が少ないために農耕には適さないが、その代わりに水産資源と森林資源に非常に恵まれ漁業と林業が盛んである

 主食は小麦を原料とするパンではなく山間部でも栽培の容易なこの地方に自生していた芋であり蒸かして潰したものを薄く延ばし焼いたものでポテと呼ばれるものである

 鉱物資源として錫に恵まれ産出量は大陸の9割を占める、その他にも鉄、銅、金、銀なども少量ながら産出する


 豊かな国ではないが治安が良く住み心地が良いために他国からの移住者も少なくはない……


 

 「ここがダキア王国の王都モダンテか……」

始めてみるダキア王国の王都モダンテに少し感動するマノンであった

 「建物が木と土で出来ているんだね」

 「凄く質素だけど整然として清潔な感じがするし雰囲気もいいね」

 「イスパニア王国の王都トレリアとは雰囲気がまるで違う」

 「凄くいい感じがする」

石造りの建物に慣れたマノンの目には異国情緒あふれる異国の街に映る

そんなマノンに爺はウンチク話を始める


 「平地が少なく人の住めるところもそう多くは無い」

 「決して豊かな土地ではないから昔から人々はお互いに助け合ってきた」

 「ここら辺はシラクニアと同じじゃな」

 「木材と壁材に使う海藻は豊富にあるからそれで家を建てておる」

 「良質な石材に乏しい土地柄じゃから木と土の文化じゃな……」

爺は一通りダキア王国のウンチクを話し終えると目的の温泉の事を話し出す

 「目的の温泉は、ここから西に約20ゲール離れたペントンと言う港町のすぐ隣のサボンという村にある」

 「小さな村じゃが……いい所じゃよ」

爺の弾んだ口調からもペントンやサボンという町がいい所なのだという事が伝わってくる


 「それじゃ……行こうか」

私は西に向かって意気揚々と歩き始めると爺が慌てたように話しかけてくる


 「お前さん……歩いても行けん事は無いが……」

 「山道で険しいうえに上り下りの連続じゃ……船に乗っていく方が良いぞ」

爺の忠告通りに私は90度向きを変えると、港のある南の方に歩いていくのであった


しばらく歩くと広場が見えてくる……

そして、そこにはお馴染みの恥ずかしい銅像が建っていた

 「こんな所にも爺の銅像があるんだね」

銅像を見ながらその横を通り過ぎるとパックが首をコキコキと動かしいてる

 「どうして、黙っているの」

パックの不審な動きに違和感を覚えた私が問いかける


 「……まぁ、大したことではないがの……」

 「この国の建国の父である初代国王とは知り合いでの……」

そう言う爺の口調は昔を懐かしむかのようであった

 爺はそれ以上は話そうとしなかったし、私もそれ以上は敢えて聞こうとはしなかった


港に着くと大小の多くの船が停泊しているのが見える

港の入り口には王立の海運事務所があり案内所が設けられている

 案内所でペントン行きの船の事を尋ねると船の速さにより高速・特等から通常・三等までランクが船にあるようである

(電車の超特急から各駅停車の鈍行と同じような料金体制である)

 ダキア王国は地形的に陸路の整備が難しい分、海路は非常に発達しているのである


 私は最も早い高速・特等で乗船券を買う事にする、価格は片道料金のみの設定しかなく100ガリア・フラン(8000円)であった

 目的地のペントンまで約2時間程だとという事である、良い風があれば1時間余りで到着する場合もあるとの事だった 


 一般の船の漕ぎ手が連続して漕ぎ続けることのできる時間が約2時間程度であるので基本的に目的地までひたすらに漕ぎ続ける高速船の場合は一回の航海は2時間が限度という事になる

但し、漕ぎ手が1段櫂の一般商船より多いアメリーの軍船のような2段櫂など場合などは別である

 要するに……(船の料金=船の速さ=漕ぎ手の数=人件費)という事になる



 乗る船は決まっておらず、今日中に出港する高速船ならば空きがあればどの船に乗っても良いそうである

 ダキア王国は経済的にもガリア王国とは繋がりが深く同じ貨幣を使っているので大変便利である

 「随分と安いね……」

私は予想していた金額の半値ぐらいだった事に驚いている


 「ダキア王国はガリア王国に比べて物価がとても安い……」

 「それは、国がさほど豊かではないという事じゃが……その分生活は楽じゃの」

 「金銭的に額が大きければ良いという訳ではないという見本じゃな」

爺はそう言うと肩に乗っていたパックがいきなり飛び立ち港の上空を旋回している


 "何しているのかな……"

パックは暫くの間、港の上空を飛んでいると降りてきて私の肩に止まった


 「何してたの」

私が爺に尋ねる


 「リゾラムの温泉で会った……えっと……」

 「なんて言ったかの……乳の全く無い……」

 「胸無しのペッタンコ王女……」

爺はアメリーの名前が思い出せないようである


 「アメリーだよ……」

 「それと……胸の事は言わないであげてよ」

私は他人事とは思えずに爺に釘を刺すのであった


 「そうそう、アメリーじゃったの」

 「そのアメリーの船がないかと探しておったのじゃ」

 「停泊しておったら、偶然にバッタリ遭遇するかもしれんからな」

 「大丈夫じゃ、アメリーの船は見当たらんようじゃ」

爺は安心したかのように言うとパックは港の埠頭の辺りをしきりに気にしている


 「どうしたの……他にも何かあるの」

私が爺に尋ねる


 「埠頭の先の方の辺りに何やら兵士らしき者がいたのでな……」

 「それが、ちと気になったものでな……」

爺がそう言っていると周りの人々の様子が騒がしくなってくる

私の隣で何やら話をしている人の会話が耳に入ってくる


 "……どうやら……コレット様のようだぞっ!"

誰かが少し慌てたように言う


 "本当かよ……俺たち男は極力、目立たないようにしないとな"

 "あの男嫌いの王女様に目を付けられたら大変だ"

 "変に視線でも合わそうなら……"

 "どんな難癖付けられる事か分かったもんじゃない……"

もう一人の誰かが怯えたように言う



隣の人の会話に聞き耳を立てていると埠頭の方から誰かがやってくるのが見える

周りの人々が引き潮のように道を開けているのがわかる

 "随分と困った人のようだね……"

隣の人の会話からコレットとか言う王女様が一癖も二癖もある人物だと直感する


 "そうじゃの、儂等もそこらへんに目立たぬように控えるとするか"

私は爺の言う通りに道は端の方に身を寄せると周り人と同じように身を低くして行列が通り過ぎるのを待つことにする


 今から考えれば、あの時に"認識阻害の魔術"を発動して姿を消しておかなかったことを後悔することになる


鎧の軍足の足音が段々と大きくなってくるのがわかる、私は視線を下げたままでじっとしている……


"カシャ"っという音と共に私のすぐ傍で軍足の足音が止まる……何だか嫌な予感がする

下に向けた私の視線に地面に映った人影か見える


 "どうしよう……"

爺に助けを請うと爺のすまなさそうな声が聞こえてくる


 "すまぬ……儂の責任じゃ……"

 "魔力不足で認識阻害の魔術が切れてしもうた……"

爺の言葉に私の額に冷や汗が滲みでてくるのがわかる

恐る恐る顔を上げると……そこには、もの凄い美人で爆乳の女性が仁王立ちしているのが目に入る

年齢は二十歳前後、身の丈は170センチ程、金髪のロング・ストレート、引き締まったウエストに大きなお尻……

身に着けている豪華な服装からこの女性がコレット王女だと容易に察しが付く

後ろには少なくとも二十人の騎士が控えている全員が女騎士のようである


 「おいっ! お前っ!! その肩のオウムは何だっ!!!」

とても王女とは思えないような粗雑で乱暴な言葉遣いである


 「こっこれは私のペットのオウムにございます」

 「名前はパックと申します」

私は少し震える声で答える


 「オウムの名など聞いてはおらぬわっ!」

不機嫌そうに大声で怒鳴ると私の周りにいた人々が蜘蛛の子を散らすように逃げていく

 「そのようなペットを引きつれて私の前に控えるなど非常識にもほどがある」

 「そのオウム、この場で始末するなら今回は大目に見てやる」

あまりに傲慢で非常識な言葉に私の堪忍袋の緒は限界に達しつつあった


 「残念ながらそれは出来ませぬ」

 「例え、一国の姫とはいえ無下に生けるものの命を奪う権利はございませぬ」

私は怒りを押さえて冷静に答える


 「私の命令よりオウムの命の方が大事かっ!!!」

 「私の命に逆らった罪、その肩のオウム共々その命をもってつぐなうがよいわっ!!!」

大きな声で怒鳴ると後ろに控えていた騎士が剣を次々に抜く……

急に辺りが騒がしくなり人々が逃げ惑う


 "やれやれ……こんな事で人の命を奪おうとするか"

 "お前さんっ! 死なない程度に容赦なく痛めつけてやるがよい"

 "但し、この女騎士共に責はない適当に相手してやるがよい" 

流石の爺も頭にきたようで声が怒りに震えているのがわかる


 「どこからでもかかってくるがよい」

私はそう言うとゆっくりと立ち上がり腰の魔剣を抜く


 「愚か者め、私の前で自ら剣を抜くとはな……」

 「こ奴は、私の前で剣を抜いた殺してもよいぞ」

コレットは鼻で笑うかのように騎士たちに命ずると騎士たちが一斉に斬りかかってくる


 "手加減、無用っ!!!"

爺の言葉に私は初めて本気を出す、パックは私の肩に乗ったままである


 "ビシッ! バシッ! ベシッ! "

「ひいっ! あんっ! あうっ!」

小気味の良い音と若い女の悲鳴が埠頭に二十回ほど響きわたり静まり返る


 ほんの数分で二十人程の女騎士は容赦のないマノンの手加減なしの尻叩きをくらい地面に這いつくばりもがき苦しんでいる


 予想もしない光景に"えっ"と言う顔をしたコレットが呆然と立ち尽くしている


 「残るは……」

私はそう呟くとゆっくりとコレットの方に近付いて行く


 「こっ! この無礼者っ!!!」

 「私はこの国の王女なるぞっ!!!」

後ずさりしながら威勢のいい事を言っているが足が小刻みに震えているのがわかる


 "どうしよう……爺……"

コレットの処遇に困った私が爺に尋ねる

 "こういった、わがままな子供のような奴にはお仕置きが一番じゃ!"

 "この場でスカートを捲り上げパンツを引きずり下ろし……"

 "泣いて許しを請うまで、その生尻を叩いて叩いて叩きまくってやるがよい!!!"

私はニヤリと笑うとコレットに近付く


 「ひぃ!」

小さな悲鳴を上げて地面に尻もちをついたコレットを抱え上げると、お母さんが悪さをした子供の尻を叩くような態勢にする


そして、スカートを捲り上げパンツを引きずり下ろすと大きくて丸い白いお尻が丸出しになる

 「きゃぁっ! 何すんのこの変態っ! 」

コレットは必死に抵抗するが鍛え上げられたマノンの鋼の肉体が叩き出す筋力の前になす術もなかった

 

 「覚悟はできておりますな……」

私はコレットに冷酷に問いかける


 「何が覚悟よっ! この変態男っ!! 」

どうやら……コレットはマノンの事を男だと思っているようだ

この一言はマノンの心に僅かに残されていた慈悲の心を完全に消し去ることになる


 "ビシッ! バシッ! ベシッ! "

マノンの情け容赦のない平手打ちがコレットの剥き出しのお尻に炸裂する


 「あひっ! うっ! ひんっ! 」

コレットはあまり痛さに断末魔の悲鳴を上げる

 「お願いっ! もう止めてっ!」

半泣きで懇願するがマノンの平手打ちは容赦なくコレットのお尻を叩き続ける

静まり返った港に尻を叩く音とコレットの悲鳴だけが響き渡る

 「あっ! うっ! あはっ!」

コレットの悲鳴が段々と小さくなっていくのがわかる

30発ぐらい引っ叩いたところでコレットは大人しくなり動かなくなる


 "お前さんっ! もういいじゃろう……"

 "この辺で勘弁してやってもよかろう……"

少し慌てたような爺の声が聞こえてくる

私はコレットのお尻を叩くのを止める、マノンの筋力で叩きまくられたコレットのお尻は真っ赤になり腫れあがっている

奇麗な顔は涙と鼻水に塗れ手足が僅かに痙攣している


 "少しやり過ぎたかな……"

悲惨なコレットの姿を見て私は少しだけ反省する


 私は、真っ赤に腫れあがったお尻を丸出しにして地面に倒れているコレットに話しかける

 「もう、2度とこんな乱暴な事はしないと誓うかい」

私の言葉にコレットは涙目で小さく頷く

 「ならばもうよかろう……」

私はそう言うと真っ赤に腫れあがったコレットのお尻に手を当てて治療魔法を発動  する

真っ赤に腫れあがっていたコレットのお尻は徐々に赤みが取れ腫れが引いていく


 今まで感覚がなくなるぐらいになっていたお尻の感覚が元に戻っていくのを感じたコレットは小さな声でマノンに話しかける

 「あなたは、いったい……何者なのですか……」

私は何も言わずに地面に寝そべっているコレットの傍に跪くと羽織っていたローブを脱ぐ……

鍛え上げられた肉体と大きな胸、縊れたウエストを見たコレットの目付きが変わる

 「お……女の体……」

 「あなたは……女性なのですか……」

コレットはかなり驚いたようで目を見開き私の体をジッと食い入るように見つめている

私は、スッと立ち上がるとそまのの立ち去ろうとする


マノンはただ単に、自分が女であることを示したかったのである

要するに、男と思われていたことを根に持っていたのである



大勢の人が周りを取り囲んでいたことに気付く……皆、声も出せないぐらい呆然とこちらを見ている

 "コレは……やっちゃったかな……"

 "イリュージョンの魔術とか使って何とかならないかな……"

私は爺に問いかける

 

 "やらかしてしまったの……"

 "流石に、これだけの大人数だと厳しいの……"

 "ここは、トンズラするしかないようじゃのう"

私の問いかけに爺が諦めたように言う


 私は大きく息を吸い込むと

 「あっ!!!」

海の方を指さして大声を上げる、その場にいた全員が海の方に視線を向ける

その隙に認識阻害の魔術を発動しその場を立ち去るのであった


 かと言って、マノンがサボンの温泉を諦めたわけではない……




第134話 ~  大賢者・マノン・ルロワ  ➂  ~


終わり


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