第十三話 ~ セシルの決意 ~
第十三話 ~ セシルの決意 ~
~ 序章 ~
ガリア王国で騎士になるには2つの道がある。
一つは元々から騎士の家系でありその 後継者が家督を継ぐ場合、そして、もう一つは騎士ではない家系の者が騎士になる場合の登用試験である。
しかし、登用試験で騎士になった者は一代限りであり、騎士としての地位を継ぐことは出来ない事になっているが著しい功績が認められた場合は例外的に後継者が家督を継ぐ事が認められる場合がある。
(日本の江戸時代の武士ような感じである)
騎士の家系の者は元から騎士への道は開かれているが、そうでないものは非常に狭い門を潜り抜けなければならない事になる。
騎士になるには騎士としての資質、つまり一つは騎士としての人格そしてもう一つは剣の才能である。
基本的に騎士は男子がなるものだが、特例として女性でも騎士に叙されることが可能である。
女騎士の職務としては王侯貴族の婦女子の身辺警護や女子学校での武術訓練の指導などが主なものとなり実戦に出る事はまずない。
女騎士の場合は、他に幾つかの条件を満たさなければならない事になる。
王侯貴族の身辺警護に付くためにそれなりの家柄と品格が必要となってくるのである。
年に2度の登用試験があり、それに合格した者が各地方都市の置かれた軍の騎士団に仕え一人前の騎士となるのである。
(因みに女騎士の合格者は極めて少なく王国で年にほんの2~4名ほどである)
女性が騎士登用試験を受けるには厳しい条件を満たさなくてはならず受験する事でさえ難しいといえる。
セシルはその条件を満たしており、元騎士の家系でもあるので念願の今期の登用試験を受ける事が出来るようになったのである。
女騎士登用試験の受験、その報を受け取ったセシルが初めにマノンに報告しに行ったの当然であった……試験場所はマルティーヌ女子学校である。
当然、クラス代表のマノンはそれに付き添う事となったのである。
因みに、この時代は一般家庭から騎士を輩出することは大変な名誉であり、この試験を受けられること自体も相当な名誉でもある。
~ セシルの決意 ~
朝9時にマルティーヌ女子学校へ騎士団の試験官が来る事になっている。
人員は5名でポルトーレ方面軍所属の男騎士が3名と女騎士が2名である。
ポルトーレ方面軍の駐屯地はマルティーヌ女子学校のあるサン・リベール郊外の街道の要所であるトルスという地に所在している。
兵士約200名、騎士15名で編成されている。
(騎士は士官・下士官のような存在である)
「もっ……もうすぐ来るのね」
ガチガチに緊張したセシルが震えた声で言う
「そんなに緊張していは普段の力が出せないよ」
「もっとリラックスして……」
私はセシルの肩をポンと叩くと
「えっ……ええ、そうよね」
セシルは引き攣った表情で私を見る
そうしいてると。馬の足音が聞こえてくる……
「きっ来たわっ!」
セシルの声と表情からは今にも死にそうなぐらい緊張しているのが分かる。
5人の騎士は平時の簡素な革の鎧を着用している、重い鋼の鎧は戦地でのみ着用する、普段から着用するような代物ではないのである。
セシルと父親のジルベールと私の他に担当導師のオレリアと学校長のアレットそしてサン・リベール町長のファルブスの6人が同席する。
これは試験が公平に行われたかを見届けるためでもある、同じく5人の騎士の内4人は立ち合い人である。
5人の騎士が私達の前に整列すると、一番位の高そうな騎士が立会人の紹介を始める。
私の隣から順に2名が我がトルス騎士団のたった2名の女騎士のレボラとコンティーヌ……そして、向こうの……むさ苦しい2名、太っている方がドミニク、細いのがエドモンドだ……
何とも言えない自己紹介に皆、笑いを堪えるのが大変そうだ。
そして、私はポルトーレ方面トルス騎士団の団長エルネストだ、本日の試験の監督を務めさせていただく……。
見た目は30代後半で長身、ロマンスグレーの短髪、そして頬に大きな傷、なかなか渋みのある風貌である。
名前だけで多くを語らないのはいかにも騎士らしい物言いだ。
そのためか、普段は長話の学校長も町長も長い舌を巻くしかなかった、これが長い挨拶を省くための行動ならば、このエルネストという騎士団長はなかなか気の利く奴だと爺は思った。
「今回の受験者は既に他の条件を満たしているので、試験は剣技のみである」
「それでは、剣技の試験を執り行う」
「我が軍団の女性騎士2名と手合わせを行ってもらう」
「刃引きした真剣を用い突き技は禁じ手とする」
「各試合時間は3分、どちらか一方から1本取るか、最後まで立っていたら合格だ」
「それでは受験者は防具を身に着けるよう」
そう言うとエルネストは私の方に視線をやる……視線を移すと他の4人の騎士も明らかに私を見ているようだ。
"何かありそうな予感がするわい"……爺のこの予感は見事に的中することになる。
革の防具を身に付け、剣を携えてセシルが出てくる……明らかに緊張してガチガチなのが分かる……。
"こりゃあ、いかん"そう感じると爺はスッとセシルの傍に近寄っていく。
「しっかりせいっ!」
「鍛錬した通りにやればなんとかなる」
「己を信じ最善を尽くせ」
爺はそう言うとセシルの大きなお尻をバシッと叩いた。
「ひっ!!」
小さな悲鳴を上げるとセシルは爺を見て
「はいっ!」
セシルに笑みが戻った
その様子を見ていたエルネストが私に微笑みかけると試合開始の檄を飛ばす
「はじめっ!」
最初の相手はレボラという女騎士、年の頃は20代前半ぐらい、身の丈165センチほどのがっしりした体付きに黒髪のショートヘア、なかなかパワーがありそうだ。
あくまで剣の才能を計るための試合、相手を倒すことが目的ではないがレボラの打ち込みは相当に激しくセシルは防ぐだけで精一杯なのがわかるが、試験対策の打ち合わせ通りに上手にレボラの打ち込みを防いでいる。
爺はセシルが登用試験を受けるにあたって短期間での鍛錬では正騎士から一本取るのは難しいと判断し登用試験にある3分間の防御の規定に重点を置いた戦い方をセシルに指南している。
2分ほどするとレボラの打ち込みに変化が現れる、単発技から連続技へと変化させたのだセシルは一気に追い詰められる事になるが打ち込まれフラ付きながらも必死で防いでいる。
「止めっ! そこまでっ!!」
エルネストの声が響くとレボラの剣を収めてセシルに軽く礼をするとセシルもそれに応え礼をした。
何とかエボラの打ち込みを防ぎ切ったセシルに私と父親のジルベールが駆け寄る
「セシル~」
半泣き状態のジルベールにセシルは
「大丈夫よ……お父様……」
そう言ってはいるものの明らかに消耗しているのが分かる
「セシルさんや」
「相手の攻撃をまともに受けて防いでいるだけでは消耗する」
「相手の力を上手く利用して受け流す事も練習したはずじゃ」
私はセシルにそう言うとセシルの目に輝きが戻る
「そうだったわね……」
「私……完全に忘れてた……」
「ありがとう……マ……」
セシルがお礼を言う間もなくエルネストが檄を飛ばす
「試験開始っ! 両者前へ……」
「はじめっ! 」
今度の相手はコンティーヌという女騎士だ、年頃は17~20、身の丈170センチほどの細身で肩にかかる程度の金髪の髪、中々の美人さん、しなやかでスピードのありそうな感じがする。
……"はて……どこかで見たような……あっ! 以前、儂が倒した女騎士かも……"
爺がそんな事を考えている間にもセシルはまたもや打ち込まれている、騎士相手に女子学校の生徒が戦っているのだから当たり前のだが、今度は相手のスピードに防御が追いついておらず、少なからずダメージを受けているのが分かる。
"このままでは持たんな……"
爺はセシルか倒れるかもしれないと思ってしまう。
一方、セシルは激しいコンティーヌの打ち込みに何とか対応しようともがいていた……。
"どうしようもない……ここまでなの……"
セシルは絶望感に襲われる、段々と意識が遠退き目が霞んでくる……
僅かにコンティーヌの打ち込んでくる姿が見える。
"もう……ダメかも……ごめんね……マノン……"
その時、一瞬コンティーヌの顔がマノンに見える。
"あははは……幻覚まで見えてきたわ……ここまでね"
そう諦めかけて剣を軽く構えた時に振り下ろそうとしたコンティーヌの剣が当たり剣筋が狂う。
それを見ていたエルネストと他の騎士の表情が変わる。
"あれっ……今の感覚……マノン……なの"
ハッキリとしない意識と感覚の中でセシルにはコンティーヌの姿がマノンに見える
すると不思議にマノンと練習した時に身に付いた感覚が戻ってくる。
少し驚いたような表情のコンティーヌは再びセシルに打ち込もうとするが全く力のこもっていないセシルの剣に太刀筋を狂わされ思うように打ち込めない。
「この子……急にどうしたの」。
コンティーヌは焦りを隠せない
「止めっ!」
「ここまでっ!!」
「登用試験終了っ! セシル・クレージュっ合格っ!」
そうエルネストが宣言すると周りから拍手が起きる……。
マルティーヌ女子学校から騎士の登用試験に合格するのは滅多にない事なのだ。
前回合格者は16年前に1人出ただけである。
「あははは、私……合格しちゃったわ……嘘みたい」
そうセシルが呟くと父のジルベールが涙と鼻水を垂れ流しながらセシルに抱きつく
「お父様……汚いよ……」
力ない声でセシルが言うとその傍らで見ていた爺に
「ありがとう……マノン……全部あなたのおかげよ」
セシルはジルベールを突き放すとマノンに抱きついた、そして
"大好き……愛してるわ……"
セシルは小さな声で囁いたが周囲の歓声にかき消され爺には上手く聞き取れなかった。
「感動の途中で申し訳ないが、君がマノン・ルロワさんだね」
不意に爺を呼ぶ声がする、振り向くとそこにはエルネストとコンティーヌが立っていた。
「君に少し相談があるのだが……」
そうエルネストが言うとコンティーヌが爺に
「私の事、覚えてる、この前に貴方に見事に打倒されたわ」
「もう一度、貴方と手合わせしたいの……お願いできる」
コンティーヌは真っ直ぐなる目で爺を見つめている。
"んん……困ったの……"
爺が悩んでいると、エルネストが爺に話しかけてくる。
「マノンさん、是非とも君の剣を見ておきたいのだ」
「私からもお願いするよ」
二人に頼まれては断る事は出来ないと感じた爺は
「はい……未熟ではありますが」
そう言うとコンティーヌの目が輝きだす。
爺は防具を身に付けると剣を取る……。
防具を身に纏い剣を持ったマノンの立ち姿にエルネストは目を見張る……。
その堂々たる姿は完璧なまでに騎士そのものであったからである。
「はじめっ!」
エルネストの合図と共にコンティーヌは物凄い勢いで斬り込む、本気の一撃である。
しかし、爺は剣を軽く構えるとコンティーヌの剣に軽く剣を当てすんなりとかわす。
「おおっ!」
それを見ていた"むさ苦しい2名のドミニクとエドモンド"が驚きの声を上げる。
"この娘、本当にただの女子学校の生徒か"
間近でそれを見ていたエルネストは今の爺の剣さばきに熟練した騎士の剣の冴えを垣間見たからだ。
コンティーヌは全身全霊で打ち込みをかけるが爺には全く届かない。
「それでは、コンティーヌさん……」
「今度はこちらから打ち込ませていただく……」
爺はそう言うと剣を構え直す、コンティーヌの背中に悪寒が走った,その瞬間
「えっ!」
コンティーヌは自分の目を疑った、目の前のマノンが消えたのだ
気が付くと爺は既に間合いに入り込んでいる
「嘘ッ! いつの間に」
焦って間合いを取るとまたもや爺の姿が無い……
「えっ! 何処に行ったのよっ!」
その瞬間に
「バシッ!」
という音と共にコンティーヌのお尻に激痛が走る
「うっ!」
「痛ったあああぃーーーっ!」
「あっあっ! 痛っ!痛っ! マジ痛いっ!!」
コンティーヌの悲鳴が響く……
剣を地面に落とすとお尻を押さえて飛び跳ねる。
その姿を目の当たりにしたセシルはマノンとの剣術の鍛錬でお尻を叩かれまくった事を思い出し"ホントに痛いのよね……あれ……"とコンティーヌに同情してしまう。
「こっ、これまでっ!」
「マノンさんの勝っ!」
エルネストは笑いを堪えるようにしてマノンの勝利を宣言する。
周りの皆も笑いを堪えるのに必死である。
暫く笑いを堪えていたエルネストは急に真顔になると
「マノンさん、今度は私と手合わせ願えるかな」
と爺に申し出る……他の4人の騎士に緊張が走る
「どうかな……マノンさん……」
再びエルネストが問いかけてくる。
"どうしたものか……こ奴は相当な腕の持ち主じゃな……"
"さっきの娘のようにはいかんだろうな……"
爺は暫く沈黙すると
「わかりました」
そう答えるとエルネストは不敵な笑いを浮かべると
「こちらこそ、お手柔らかにお願いしますよ」
そう言うとコンティーヌが落とした剣を拾い上げると構える、爺も同じように剣を構えた。
ざわめいていた周囲の者達も黙り静寂の時間が訪れる。
エルネストは剣を構える爺を注意深く観察する。
"なんなのだ、この感覚は……"
実戦経験のあるエルネストには爺の発する気に戸惑いを隠せない。
"この娘、本当に何者なのだ……"
"考えていても仕方があるまい、一度、試してみるか"
そう心で呟くとエルネストは躊躇なく爺の間合い飛び込んだ。
"ほほ、なかなか思いっきりの良い奴じゃの"
そう呟くと爺は自らもエルネストの間合いに飛び込んた。
"なんとっ! 今度はあえて間合いを詰めるか"
"この娘、本当に実戦経験があるのかもしれん"
そう感じた瞬間にエルネストは気付かぬうちに本気になっていた、爺はエルネストの目を見るや
"心の切り替えも早いようじゃな"
"ならば儂もそうでなくてはならぬな……"
エルネストも爺の目つきが変わったことに気が付く
"先程とは違うな……今まで本気では無かったと言う事か"
"本当に底知れぬ娘だな……"
エルネストは手加減なしの本気の一撃を繰り出すが爺にあっさりと弾かれてしまい逆に懐キリギリに踏み込まれたうえに反撃まで受けてしまう。
上手く剣で防いだもののその心中は穏やかではなかった。
"参ったな……並みの王国正騎士より遥かに格上だな……"
"こりれ程の剣技、何処で誰に教わったのだ"
"……もしかして……いや……まさか……"
爺の並外れた剣技にエルネストは焦りを隠せない。
そなん2人の試合に周りの目はくぎ付けになっていた、特に騎士の4人は驚きの余り開いた口が塞がらない。
ドミニクが呆然として
「マジかよ、本気の団長と互角に打ち合ってるぞっ!」
ドミニクのその言葉に
「いや……あの長身の娘の方が上を行っているんじゃないか」
エドモンドは信じられないという表情でいうとコンティーヌが
「そんな……あの団長が剣で女子学校の生徒に押されるなんてありえないわっ!」
目の前の現実を否定するようにコンティーヌが声を荒げる……
その傍にいたレボラがコンティーヌを落ち着かせようとする。
4人が動揺するのも無理はない、エルネストは王国でも5本の指に入ると云われるほどの剣の使い手なのだ。
それほどの剣の使い手がただの女子学生に押されているのだから……。
騎士の4人と同じように動揺している者がもう一人……そう、セシルだ。
マノンが剣術が得意な事は分かっていたが騎士団長と互角に打ち合えるほどとは思ってもいなかったからだ。
"マノン、凄いわっ! もう、貴方が女でも男でも関係ないわっ!!"
この時にセシルは完全にマノンの虜になってしまったのである……。
そして、セシルはマノンに自分を捧げる事を固く決意するのであった……。
因みに、レナは思いを秘めるタイプたがセシルはそうではない……レナとは真逆のタイプである。
対峙する2人はこの後始末をどうすべきかを考えていた。
エルネストはその名誉にかけても負けるわけにはいかない……。
一方で爺はどう上手く負けるかを考えていた、この時点で爺は既にエルネストの技量を見抜いており、後はどう抜いた剣を収めるかであった。
エルネストは深く息をすると精神を落ち着かせる。
"相手にとって不足無し……ならば全身全霊を以て望むだけのこと"
そう決意すると剣を構え直す、それを見た爺は
"こ奴、腹を括りよったか……ならば。儂もそれに応えるのみ"
大陸史上最強の剣士、大賢者パトリック・ロベールが遂に本気を出したのだった。
その気の強大さは常識を超えるものがある、騎士としてのエルネストの体はその気を確実に捉えていた。
"何なのだ……この異様な感覚は……"
"背筋に寒気が走り、全身の毛が逆立ち鳥肌が立つ"
ふと、エルネストに17年前の記憶が蘇る……そして、ゲルマニア帝国のガリア王国侵攻の時に対峙したゲルマニア帝国の剣豪レオン・ウェルナーの姿とマノンが重なる……。
"なるほど……そう言う事か……"
"これは、どうあがいても勝てぬな……"
"皮肉なものよ……このような形で再戦の機会が訪れようとはな……"
全てを悟ったエルネストの穏やかな表情に気付いた爺は……
"ここらが潮時か……"
そう悟った爺は、こっそりと魔法を使う……
「バキッ」
という音がすると爺の剣が根元から折れる
「あ~あ~、これではこれ以上、打ち合うのは無理ですね」
爺はわざとらしく言うとエルネストに向かって頭を下げると、余りに突然の事にエルネストは茫然としている。
「そうだな……剣が折れてしまっては……」
そう言う笑みを浮かべ爺に向かって剣を捧げ敬礼をした、その姿に呆然とする4人の騎士……
何故ならば騎士が剣を捧げ敬礼するのは自分の使える主か、もしくは格上の者に対してだけである。
つまり、エルネストは自らマノンが自分より格上だと認めた事になるのである。
こうして波乱の騎士登用試験は終わりを迎えた、帰り際にエルネストはマノンの耳元でこう囁いた。
「大賢者殿によろしく」
そう言い残すと馬に乗り帰っていった。
エルネストの勘ぐりは正解ではないが誤ちでもなかった……マノンを大賢者の弟子だと思ったのである。
その後、セシルはサン・リベールのトルス騎士団駐屯地でコンティーヌの付きの騎士見習いとなる事が決まった。
入団は1週間後、からくも旧シラクニア王国軍のマノワール村への到達と同じ日になるである。
その後日、セシルと父親のジルベールはマノンの家を訪れお礼と言って多額の金品を持参したが私と父のアルフレッドが不要だと拒否するが引き下がらず、結局は私と父のアルフレッド、セシルと父親のジルベールの飲み会になってしまった……。
酒豪3人を相手に下戸で普段から酒を全く嗜まない爺も飲まされ、酔っぱらってしまう……。
朝起きるとベッドでセシルの胸に顔を埋め2人で裸で抱き合って寝ている事に気が付いたが記憶がまるで無い……。
セシルが目覚めた時の"昨日の夜は凄かったね"の一言に焦る。
が……セシルの言う凄いは、酔っぱらった私がセシルを脱がせ自分も脱ぐと父のアルフレッドやセシルの父のジルベールもいっしょにパンツ一丁になって踊り狂ったそうだ……。
どうやら……儂には脱ぎ癖があるようだ……以後、酒の飲みすぎには細心の注意が必要だと爺は 心に誓うのであった。
そんな事があったにもかかわらず父のアルフレッドやジルベールはよほど楽しかったらしく、この2人とセシルは何かにつけて私に酒を飲まそうとするようになったが、妹のイネスの目が光っているので今のところは上手く逃げられている……イネスに感謝である。
これがきっかけで我がロルワ家とセシルのクレージュ家とは家族での付き合いとなったが酒宴の後始末をする母のセリアと妹のイネスにとっては迷惑な事だろう。
当然、一連の出来事はレナには極秘である……。
第十三話 ~ セシルの決意 ~ 終わり