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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第126話 ~  平原の村  ➀  ~

  第126話 ~  平原の村  ➀  ~



 序章


マノンがリドウへ旅立つ頃……

迎賓寮ではルメラ達はユーリア以外、上半身裸で暑さと痒さに苦しんでいた


 「たまんねーな、この暑さ」

 「パンツも脱ぎてぇー」

上半身裸で乳丸出しのルメラが死にそうな声で言う


 「流石にパンツを脱ぐのは……」

同じく上半身裸で乳丸出しのエルナがルメラの方を見て言う


 「まぁ、レナさんから頂いたお薬のお陰で汗疹の方は良くなりましたし」

 「パンツを脱ぐのはもう少し我慢してからの方がいいのではないかと」

テーブルにぐったりとうつ伏せになったルメラを見てユーリアが言う


 「でも、ユーリアは暑くないの」

1人だけブラを付けたままのユーリアを見て同じく丸出しアイラが言う


 「暑くないわけないでしょう」

 「騎士としての最低限の体裁は保たないと」

ユーリアは凛とした表情で言うとアイラがユーリアの方を見る


 「ブラとパンツ姿でそんな事言ったってね……」

呆れたようにアイラが言うユーリアは黙り込んでしまった


そして、会話が途切れる……

暑さの中でルメラ達が溶けたようにぐったりとしているとルシィがやってくる


 「思った以上に酷い有様ですね……」

ルメラ達の余りの惨状に呆れたかのように呟く

 「皆さん……お風呂に水を張ったので水浴びでもどうですか」

ルシィの言葉に4人が一斉に振り向く


 「ホントか!」

ルメラが目を輝かせて泣きそうな顔で言う


 「本当ですよ」

ルシィが笑って言うと4人は一斉に立ち上がると浴場へと走っていった



 暑さに苦しむルメラ達を見ていたルシィは井戸の水を一人で運んで水風呂を用意していたのだった

 暫くすると、風呂場の方からルメラ達の子供のようにはしゃぐ声が聞こえてくる……

 その嬉しそうな声を聴いているだけでルシィの苦労は報われ疲れも感じられなくなっていくのであった


 その後、ルメラ達は自分達で井戸の水を汲み水風呂に入るようになったのであった

 




 第126話 ~  平原の村  ➀  ~





週末、マノンはパックを肩に乗せバイユーの街を歩いていた

 へベレスト山脈の西の麓に築かれたガリア王国で最大の金鉱山がある鉱山都市バイユーの街には人口2万人ほどが暮らし、その防衛のためにノルトン騎士団が置かれている


 セシルが王都で王国騎士の任命式の時に出会った女性騎士"クリステル・ベアール"が所属している騎士団である


 中規模の都市であるが街の大通りには商店が軒を連ね賑やかで活気があるように見える

 整然とした街並み、その清潔さや人々の表情からも治安も良く経済的にも余裕があることが窺えるのであった


 "良い街だね"

大通りを歩きながら爺に話しかける

因みに、すれ違う人々が奇異の目でマノンの肩に乗っかたパックを見ているのだがマノンはそんな事は全く気にしなくなっていた


 "黄金の取れる所じゃからの"

 "羽振りは良いじゃろうな"

爺がそう言うと肩のパックは辺りを見回している

 "黄金が採れている時は良いのじゃがの……"

爺の言葉は、私にはどこか悲しげに聞こえるのであった


 町の人にドリウの事を尋ねると地図の通り南に歩いて2時間もかからないと教えてくれる……

 私は、歩いてドリウに向かうのであった


  王都へと向かう道路は石畳が敷かれ綺麗に整備されているが、リドウへ向かう道は土のままの田舎道で路肩には草が生え、所々に凹みのある凸凹道であった

 "酷い道だね……"

穴凹を避けるように歩きながら私が呟く


 "まぁ、地方の農村への道……こんなもんじゃろう"

マノワール村も地方の農村だが、ここまで酷くはない

 "それよりも雲行きが怪しくなってきたようじゃ"

 "一雨、来るかも知れんぞ"

爺がそう言うと肩のパックが空を見上げる……

空には、どんよりとした雲が広がりつつあった


 2時間近く歩いていると藁ぶき屋根が見えてくる……どうやら、リドウの街(村)に着いたようである

 典型的な辺境にある田舎の村で瓦ぶきの家は見える範囲には一軒もない、豊かではないが長閑でどこか懐かしい感じのする村である


 道に誰かが倒れているのが見える、私は慌てて傍に近付くと12~13歳ぐらいの女の子だった


長い金髪に細身で身長は155センチぐらい、道路の凹みに足を取られたようだ

女の子の傍らには杖が落ちており足の不自由な子なんだろうと察しがついた

こんな酷い凸凹道では足を取られて転倒しても仕方がない

 「大丈夫」

私が声をかけると女の子はビクッと驚くのが分かる

 「怖がらないで、怪しい物じゃないよ」

私がそう言うと女の子の手を握って立ち上がるのを手伝う


 「どなたかは存じませんが、ありがとうございます」

女の子はお礼を言うと私の方に顔を向ける


 「!」

私は女の子の目を見て視点が変であることに気付く

 「もしかして……目が見えないの」

私の問いかけに女の子は悲しそうな表情をすると首を横に振る


 「いいえ、見えなくはないのですが……」

そう言うと女の子は、おぼつかない手付きで私の差し出した杖を手にする

 「殆ど見えないんです」

 「助けていただいたので、お礼にお茶の一杯でも……」

杖で道路の状態を確かめながらゆっくりと歩き出す


よく見ると女の子は足に擦り傷があるのが分かる

 "この程度なら……魔術で簡単に治療できる"

と思った時にアレットの言葉が脳裏によみがえる

 "あまり目立つような事しちゃダメよ……"

私は少し躊躇いつつも魔術での治療を踏み止まるのであった



女の子の家に向かう途中の畑には既に亜麻の姿はなく羊が散歩をしている

 "少し遅かったかな……"

私の残念そうに呟く


 "まだ、少しぐらいなら残っておるやもしれん"

 "この子の両親にでも尋ねてみるのもよいじゃろう"

爺がそう言うと女の子が一軒の家の前で立ち止まる



時より出会う村の人々ものんびりとした気さくな人かばかりでロザリーと私に声をかけ挨拶をしてくる

流石に、私の肩に乗っかったパックには少し驚いてはいるようだが……



 「ここです」

女の子が立ち止まった家はこの村では比較的立派な家であった


 「ロザリーっ! 」

 「心配したのよ、何処へ行っていたの!」

女の子を呼ぶ女性の声と共に母親らしき女性が出てくる、金髪の長い髪、身長は160センチほどの細身でナイスバディ、歳は30代前半のようで目鼻立ちの整った美人である

 「この人は……」

見覚えのない私を不思議そうに見ると女の(ロザリー)に尋ねる


 「道で足を取られて動けなくなっている所を助けていただきました」

 「お礼にお茶の一杯でもと思いお連れいたしました」

ロザリーがそう言うと母親らしき女性が私に挨拶する


 「そうですか……」

母親らしき女性少し不思議そうな顔をしているのか分かる

そして、その視線が自分の肩に向けられている事に気が付く

 

 「肩に乗っているのはペットのオウムです」

 「名前はパックって言います」

私はパックの事を説明すると母親らしき女性は少し困ったような顔をしていた


 「娘を助けていただき感謝申し上げます」

 「私は、この子の母親のエレオノール・バイヤールと申します」

そう言うと深々と頭を下げる

 「むさ苦しい所ですがどうぞ……」

エレオノールはそう言うと私を居間に案内する、そして勧められるままに椅子に座る


ロザリーもそうだったが随分と礼儀正しい人達だなと私も爺も感心するのであった



そうしているとエレオノールがお茶とお菓子を運んでくる

 「どうぞ、大したおもてなしも出来ませんが」

エレオノールはそう言ってお茶とお菓子をテーブルの上に並べてくれた


 「ありがとうごさいます」

 「私は、マノン・ルロワと申します」

私はお礼を言うとお茶を口にする、変わった香りと味がするがハーブティーのようだった

 次にお菓子を口にする

 "これは……"

お菓子ではなく香辛料を塗した燻製肉のようだ

 "美味いっ!"

私は心の中で叫んでしまう


 「お気に召しましたか」

私の表情を見たエレオノールが少し微笑んで言う


 「この燻製肉……とても美味しいです」

 「それに、このお茶も今まで飲んだことのない物です」

私が感心したかのように言う


 「気に入ってもらえて幸いです」

エレオノールはそう言うとお茶と燻製肉の事を話してくれた


 お茶はこの土地に昔から伝わるハーブティーで畑の片隅に自生しているエキナセアという植物が材料だそうである

 燻製肉はこの地方に越冬にやってくる渡り鳥を家畜化した(合鴨)の燻製だそうである

(マジで、この燻製肉は絶品である)


私が燻製肉の美味に浸っているとエレオノールが話しかけてくる

 「こんな、辺境の村に何かご用ですか」

不思議そうな表情で私に問いかける


 「じつは……」

私は亜麻の茎を求めて王都からこの村を訪ねてきたことを話す


 「亜麻の茎……ですか」

 「そんな物のために、わざわざ王都から……」

私の答えにエレオノールは口を開けたままで唖然としている


 「亜麻の茎を分けてもらえないでしょうか」

私が唖然としているエレオノールに問いかける


 「おおかた処分してしまいましたが……」

 「少しなら畑の隅に残っていると思います」

 「後で案内いたしますので、ご自由にお持ちくださって結構です」

そう言うエレオノールは少し笑っているのだった



そんな私とエレオノールの会話を聞いていたロザリーが話しかけてくる

 「マノンさんて王都で何しているの」

興味深そうに尋ねてくる


 「私は王立アカデミ-の学生なんだよ」

 「専攻は薬学科、亜麻の茎は少し試したい事があって必要なんだ」

私がそう言うとロザリーは暫く何かを考えている

 「王都ってどんな所、王立アカデミ-ってどんななの」

ロザリーはとても興味深そうに聞いてくる

 

 私は、出来る限り王都ガリアンと王立アカデミ-の事を詳しく話す

 ロザリーは次々と疑問に思った事を問いかけてくる

 そんな、ロザリーを見ていると好奇心旺盛な子なんだなと感心してしまう


 ……が、段々とロザリーの顔が、王立アカデミ-のある導師の顔に見えてくる

 "これって……ルシィ導師に似てない……"

私が少し困った顔をしているのに気が付いたエレオノールはロザリーを窘めると少し不機嫌そうな表情をして話すのを止めた


そんな、ロザリーをエレオノールは笑ってみているのであった

 「ご承知の通り、あの子は生れつき目が不自由ですから……」

 「幼い頃より、思うように出歩くこともままならない身……」

 「そこに好奇心が旺盛なものですから……」

 「今日も、無茶をしたのでしょうね」

少し笑いながらエレオノールは言うがその瞳は悲しみを湛えていた


 

 お茶を飲み終えた後、エレオノールの案内で畑の隅に残っていた亜麻の茎を手に入れる事が出来た


亜麻の茎を紐で束ねると畑の横の納屋へ運び込む……

"エマの書"によれば本来は10日程水に浸し腐らせてから残った繊維を取り出すのだがそんな時間がないので、後でこっそりと魔術で繊維を取り出すつもりなのだ

そうしないと、一人で王都まで亜麻の茎を何束も持ち帰るのは無理だからだ


 「これだけあれば、下着を作るぐらいなら十分かな」

 「ありがとうございます」

私はエレオノールにお礼を言うと亜麻の茎の入った袋を背負い村を出ようとすると急に雨が降り出す


 「ああ……降ってきちゃったよ……」

空を見上げて私が言う


 「うちで雨宿りしていかれてはいかがですか」

 「ロザリーの話し相手でもしてあげていただければ幸いです」

エレオノールは私の方を見るとそう言って微笑んだ


 「お世話になります」

私はそう言うと頭を下げた


急いで帰り、家に入ると雨は激しくなる

 「とうとう、本降りになっちゃったよ……」

 「今日中にバイユーに戻りたかったのに」

私が激しく降る雨を気にしながら言う


 「雨が上がっても、道が泥濘んでとても歩けません……」

 「何せ……道が道ですから……」

エレオノールが私の方を見ると言う


 「どうしよう……困ったな……」

私が困り果てているとエレオノールが私に話しかけてくる


 「大したおもてなしはできませんが……」

 「ここで一晩、お泊りしていかれますか」

 「部屋だけは多いものですから……」

そう言うと困っている私を見てエレオノールが微笑みかける


 「いいんですか……」

私は少し遠慮して言う


 「先ほど申し上げた通り、ロザリーの話し相手をしてくだされば……」

そう言うとエレオノールは居間にいるロザリーの方を見る


 「はい……私にできる事であれば」

私がそう言うとエレオノールは嬉しそうな表情を浮かべた


こうして、私はリドウの村に一泊することとなった



  第126話 ~  平原の村  ➀  ~


   終わり


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