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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第124話 ~  平穏な日々の始まり?  ➂  ~

第124話 ~  平穏な日々の始まり?  ➂  ~



序章



 マノンの"性フェロモン"事件も落ち着いた頃には短い春が終わり初夏を迎えつつあった


 "春の種蒔休日"で故郷に帰ってた生徒たちも戻り、王立アカデミ-は平常を取り戻していた

 

 マノンはレナと話した結果、ルシィ導師には自分の体の事を話すことにする


 マノンの見事な胸を見た時のルシィは顔面蒼白となりその場にへたり込んでしまい力なく笑う姿はレナの時とまるで同じであった


 ただ違っていたのは、その後で事情を説明を聞いてマノンはただ胸が大きくなって女性のような体つきになっただけで男性である事に変わりはないと知ったときである


 ルシィはムクッと立ち上がると私を見て不敵な笑みを浮かべる


 "まずいっ!! これはっ!!! "

私の心の非常ベルが鳴り響くが時すでに遅し……


案の定、私は好奇心に駆られ我を忘れたルシィに取り押さえられる

ルシィの怪力に抗えるはずもなく……


体を隅々まで調べられ、大切な所まで容赦なく触られ悶絶させられた後でルシィの質問責めに会う事になる


 南側の魔力変換炉での出来事を細かく話してようやく納得してもらえた頃には朝になっていたのであった



 その際に、ルシィから留年する可能性があるという事を聞かされたマノンはその後、全ての講義に出席し必死になって出席日数を稼ぐ事となるのである


 そして、休日には魔法工房で"魔法の書"を読み漁り旧世界の事を調べるのであった


爺は南側の魔力変換炉の遺構に頻繁に通うようになっている

何か、気懸りな事があるのかも知れないようだが……魔力数値が少し高いらしく

 "これ以上、乳が大きくなったら困るじゃろ"

そう言って未だに私には来るなと言うのである



 勿論、魔法工房にはレナも一緒に来るのであるが何故か随分と消極的であるのが不気味である……


 何事も無く毎日が過ぎ、この惑星の季節の移り変わりの特徴である短い春が過ぎ夏へと急速に季節が変わりつつあるのであった





第124話 ~  平穏な日々の始まり?  ➂  ~




 「暑いっ!」

迎賓寮のリビングでルメラが声を上げる

北の寒い国で育ったルメラ達にとってはガリア王国の夏は耐え難いのであった


 とは言っても、気温は最高でも30度には達しないのであるが……現在は25度程度である

 大陸最北端のシラクニアは北極からの強い寒気が上空に流れ込むために真夏でも精々22度ぐらいなので既にルメラ達にとっては既に未体験の暑さなのである

 ルメラ達の感覚からすれば気温25度は我々の35度越えのような感覚である


 この惑星に住まうものは動植物も含めて寒さには非常に強い耐性を持つが、その反面暑さには弱のである



 そういう事情から、既に下着姿のルメラ達4人にエレ-ヌとレナが少し呆れたような顔をしてみている

 ちなみに、迎賓寮は四方を高い塀に囲まれているので外から覗かれることはない

 

 「お前ら、暑くないのか」

 「上着を1枚だけ脱いだだけだろ」

ルメラは、普段とさして変わらない様子で普通にしているエレ-ヌとレナに交互に目をやる


 「まぁ……暑い事は暑いけどね……」

 「流石にブラとパンツだけになるほどじゃ……」

エレ-ヌがあられもないルメラの姿を見て言う

 「それにさ……これから、もっと暑くなるよ……」

ルメラの言葉にルメラ達4人は絶望的な表情になる


 「もう……裸で暮らすしかないな」

ルメラがポツリと言うと他の3人は無言である


 「あはははは、さすがにそれは無いでしょ」

エレ-ヌが笑ってルメラ達を見ると何か考えているように見る

 「まさか……本気……」

エレ-ヌが引きつった表情になる


 「講義の時はともかく……ここでならいいんじゃないの」

アイラが真面目な顔をして言うとユーリアとエルナも小さく頷く


 「……」

エレ-ヌは無言でレナの方を見る

エレ-ヌの無言の訴えにレナは少し困った表情になる


 「そ、そうね……今度、マノンに相談してみるわ」

 「マノンだったら何とかしてくれるかもしれないわ」

エレ-ヌの視線に圧されたレナは自信なさそうに言うのだが


 「そうだよなっ!」

 「マノンの野郎なら……」

ルメラは期待に満ちたような表情で言うと他の三人も期待に満ちた表情をしているのであった


 信用があると期待されてしまうのはこの世界でも同じである



 しかし、当のマノンも暑さに悩まされているのであった

 胸にぐるぐるに巻いた布のせいで胸が蒸れて湿疹(汗疹)が出来てしまい痒くて仕方がないのである

 講義の時に痒くなっても胸に巻いた布のせいで掻く事が出来ずに苦しんでいるのである


 「ああーーっ!」

 「痒いっ!!」

講義を終えて自分の部屋に戻ってきたマノンは上着を脱ぎ捨てると胸に巻いた布を毟るように取り自分の胸に出来た湿疹に薬を塗る


 「はぁ~」

シラクニアで作った肌荒れ用の薬がとても良く効くのである

 「それにしても……困ったな……」

 「ノエル君はこんな時はどうしていたのだろう」

マノンは改めてノエルの凄さを思い知るのであった


 「この布じゃだめだ……」

 「もっと通気性と発散性の良い布じゃないと」

マノンは上半身裸のままでベッドに座り込むと何かいい物はないかとを考える

すると、"コンコン"とドアをノックする音がするとレナの声が聞こえてくる


 「マノン、いる」

ドアの外からレナが話しかけてくる


 「いるよ、鍵は掛かっていないから」

私がそう言うとドアの開く音がするとレナが部屋に入ってくる


 「マノンっ! 何て格好してるのよっ!」

 「誰かに見られたらどうするのよっ!」

上半身裸でオッパイ丸出しの私の姿を見てレナが声を荒げる 


 「そんなに怒らないでよ……レナ……」

 「これ見てよ……」

 私は胸に出来た汗疹をレナに見せる


 「ああ……そういう事ね」

レナはどうして私が上半身裸なのかを容易に察したようである

 「でも、ドアの鍵ぐらいはかけた方がいいわよ」

 「それと、窓のカーテンも忘れずに閉める事」

そう言うとレナはドアの鍵を閉めて窓を閉めてのカーテンを閉じようとする


 「ちょっと待って」

 「カーテンはいいけど窓は開けておいて」

 「パックが入れなくなっちゃうから」

私が慌ててそう言うとレナは窓を半分だけ占めてカーテンを閉じた


 「どうしたのレナ」

私はレナの急な訪問に何か困った事でもあったのかと思ってしまう

すると、レナはルメラ達の事を話し出す


 「なるほどね……」

 「シラクニアは寒い国だから、仕方がないと思うよ」

 「でも、裸はね……」

ルメラなら本当に裸で生活しそうな気がしてくる

 「私も、この有様だしね」

私はそう言うと自分の胸に出来た汗疹に目をやる

 「レナは平気なの」

いつもと変わらないレナに疑問を投げかける


 「平気なわけないでしょう」

 「私もマノンと同じよ、おっ……」

レナは顔を赤くすると途中で言うのを止める


 「レナもそうなの……」

私は黙り込んでしまったレナに話しかけるとレナは小さく頷いた

 「もしかして……レナも……」

 「良い薬があるから塗ってみれば」

私は肌荒れの薬の入った小瓶をレナに手渡す

 「あっ! 塗る前にどんなのか見せてくれる」

 「別なもの(症状)かもしれないから」

私がそう言うとレナは少し躊躇っていたがシャツを脱ぐとブラも外し大きな胸を両手で持ち上げる


 「ここが……」

レナは顔を真っ赤にして下乳を私に見せる

(本当は、下乳以外にも汗疹で苦しんでいるのだが言うに言えない所なのである、魔法工房でもレナが随分と消極的なのもこの汗疹のせいなのである)


 「うわぁ~これはひどいね……」

レナの下乳に帯状に出来た真っ赤な汗疹を見て私は驚くように言う

 「よく我慢できるね……」

見るからに痒そうな汗疹を見て私が言う

よく見るとレナの大きな胸には谷間の部分にも汗疹が出来ているのが分かる

 「薬を塗ってあげるね」

 「これだけ酷いと沁みるかもしれないけど直ぐ治まるからね」

私がそう言うとレナは小さく頷く


レナの胸に薬を塗ると少し沁みるのかピクリと反応するのが分かるが汗疹の部分に薬を塗り終える


 「これ、良く効くわね……」

 「全然、痒くなくなったわ」

レナは驚きを隠せないでいる

 「この薬、きっと凄く重宝されると思うわよ」

レナは薬の入った小瓶を眺めながら言う


 「何か、通気性が良くて蒸れない素材を探してみるよ」

私は胸が大きいのは大変だなとつくづく思うのであった

 「見つかったら言うね」

私の言葉にレナに期待の表情になるのが分かる


 「楽しみにしているね」

 「ルメラ達にも伝えておくからね」

そう言うとレナは服を着ると薬の入った小瓶を手に部屋を出ていくのであった



 生息圏の限られたこの惑星の人類は衣類を作るにあたって手に入る素材はそう多くない

 概ねコットン素材、ウール素材、皮革素材の三種類に限られているのである

 そして、この大陸で一般的に繊維と言えばコットン(綿)とウ-ル(羊毛)の二種類だけでシルク(絹)やリネン(亜麻)などは知られていないのである


 寒い土地柄ゆえに防寒性の高い衣類は発達し種類も多いが、風遠しの良い清涼性の高い衣類はさほど発達しなかった

 その為に、ガリア王国のマノンの故郷ポルトーレなど暖かい地方では夏場になると薄手の綿布の服一枚で過ごすことが当たり前のようになっているのだが王立アカデミ-ではそうはいかないのである


 ガリアの南国育ちのマノンやレナでも辛いこの時期……寒い国からやってきたルメラ達にとっては拷問にも等しい季節が到来しつつあるのであった


 

 レナが部屋を出て行ってからも上半身裸のままでベッドの上に座り込み、どうするかを考えていると……

 ふと、以前に完全読破した"エマの書"の事が脳裏を過る……

"たしか、あったはずっ! "

私は心の中でそう叫ぶと机の引き出しの奥に大切に仕舞ってあった"エマの書"を取り出すと心当たりのあるページを開く

「あったっ!!!」

私は思わず歓喜の声を出してしまう


 「リネン(亜麻)か……」

 「聞いた事のない植物のようだな」

 「この植物から採った繊維が、通気性、吸湿性、放湿性に優れ耐久性がある」

 「肌触りが良く、寝具や下着などの素材に良い」

 「一年草で寒冷地に自生しているのか」

このように"エマの書"に書かれている

 「これだな……」

そして、"エマの書"には亜麻から繊維を取り出す加工方法に始まり布に織り上げるまでの工程が詳しく記載されているのであった



 暖かい地方の出身者であるマノンは聞き覚えのない植物の名前であるが、比較的冷涼な地域のガリア王国の北部やゲルマ帝国では普通に栽培されているのである

 ただ、繊維が目的ではなく実から採れる油(亜麻仁油)を採取するために栽培されている

 亜麻仁油は木製品や革製品の仕上げに重用されているのであるが、茎から上質な繊維素材が採れる事を知らないので茎の部分は捨てられているのであった


 「丁度、今頃が収穫期か……」

 「早く言って行って確保しないと捨てられてしまうな」

早急に亜麻の一大栽培地であるガリア北部のノルトラント地方のドリウと言う街へ亜麻の茎が捨てられてしまう前に出向く必要性に迫られる事態となった

 (因みに、日本の北海道などでは7~8月ぐらいである)


 かくして、マノンは亜麻を手に入れるためにガリア王国の北部へと足を運ぶこととなるのである



第124話 ~  平穏な日々の始まり?  ➂  ~


終わり



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