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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第123話 ~  平穏な日々の始まり?  ➁  ~

 第123話 ~  平穏な日々の始まり?  ➁  ~



 序章  ~ 爺の午後の暇つぶし ~



 女生徒の話を聞き終えた爺は認識疎外の魔術を解除し男子宿舎の裏手にある高い木の枝に止まり翼を休めていた

 "今日は、あ奴は帰ってこんじゃろうし……"

 "もう暫く、その辺をフラフラしようかの……"


爺がふと前を見ると男子宿舎の窓の正面にある木なので部屋の中がよく見える

部屋の中に2人の男子生徒が何やら楽しそうに話をしている姿が見える

 "何やら、楽しそうじゃのう"

爺は何の話をしているのか気になったので部屋の中の2人を注意深く観察する

 

 テーブルの上にいくつもの長剣と短剣が置かれているのが見える

 1人の男子生徒が長剣を手にすると剣を抜く、もう1人の男子生徒が興味深そうに見ているのが分かる

 "……ああ……刀剣好きの生徒じゃな……"

 "儂もあの位の年の頃は剣や鎧が好きじゃったからのう"

遥か昔に過ぎ去りし若かりし頃の思い出に暫し浸る爺であった

暫くの間、爺は剣を手に語らう男子生徒を微笑ましく見守るのであった


すると、手にした剣を机の上に置くと2人の男子生徒はいきなり抱き合い濃厚な口づけを交わすとベッドに倒れ込むと……

 "へっ……"

予想もしなかった男子生徒の行動に爺は凍り付く

 "なんじゃとっ!!! "

驚きのあまりパックは木の枝から落ちそうになる、窓の中には禁断の光景が繰り広げられている

 "こっこれは……"

 "邪魔せん方がいいの……"

爺は心の中で呟くとその場を飛び去るのであった



校舎の外れの大きな木の枝に止まると一息つく……

 "まさか……あのような展開になるとは……"

 "まぁ……春じゃからのう……"


春の陽気の中で木の枝に止まり、暫く呆然していると背後に何かの気配を感じる

 "何者じゃ"

パックが気配のある方向に振り向くと一匹のオウムがこちらをジッと見ている

 "なんじゃ……御同輩(オウム)か……"

爺がホッとしたように呟くと、そのオウムがこちらに向かって飛んでくると隣に止まりお尻を振り振りする

 "……?"

爺は何が何なのか分からない、そうしているとそのオウムは自分のお尻を擦り付けてくる

 "もっもしかしてっ!!"

 "儂はメスなのかっ!!"

爺は今初めて自分がメスのオウムであることに気が付く

パックがメスのオウムであることはマノンも爺も全く気にもしなければ知りしなかったのである

(因みに、これはオスのオウムの求愛行動である)


 "ちっ、ちっ、ちょっと待たれよっ!!! "

すり寄ってくるオスのオウムに爺は慌てふためき必死で逃れようとして飛び立つとオスのオウムもも飛び立ち追いかけてくる

 "これは何とかせねば……"

爺は認識疎外の魔術を発動すると茂みに身を隠す、オスのオウムはその辺を飛び回りパックを探していたが暫くすると何処かへ行ってしまった


 "はぁ~やれやれ、何とか逃げ切れたわい"

安堵の声を出し一息ついく

 "そのうち儂も卵を産むのじゃろうか……"

爺はポツリと呟くのであった

すると……何処からか声が聞こえてくる


 "なんじゃ……この声は……"

認識疎外の魔術を発動したままで爺は声の方に枝伝いに近付いていくと男女生徒が茂みの中で励んでいるのであった

 "……春じゃからのう……"

爺はそう心の中で呟くと見ないふりをしてその場をそっと去るのであった


 春の訪れは、この世界の生物の生殖時期の訪れでもあるのである……無論、人類も例外ではない

 

 



第123話 ~  平穏な日々の始まり?  ➁  ~



 マノンが南側の魔力変換炉の暴走を食い止めてから一週間が過ぎた

 マノンの胸は一向に小さくなる気配はなく、マノンも胸に巻いた布切れに慣れ息苦しさをあまり気にしなくなっているのであった



 マノンは遅きに失した理想のナイス・バディを何とか上手く誤魔化していた


 ……が……しかし、マノンの体が変調をきたしていたのは外見だけではなかった


 いつものように、講義を受け食堂でレナ達と食事を取り、時よりルメラ達の様子を見ながら普段通りの生活をしているマノンであったのだが……

 どうも、廻りの視線が以前とは違っているような気がするのであった


 その事はレナやエレ-ヌも薄々気が付いていたが、それはマノンが"大賢者の弟子"であるからだと思っているのであったが……



 しかし、それは間違いであった


 そんなある日、エレ-ヌは数名の男子生徒たちの会話を偶然に聞いてしまう


 「なぁ……」

 「俺、最近変なんだ……」

男子生徒Aが思い詰めたように言いだす


 「どうしたんだ……」

 「どこか体の具合でも悪いのか」

心配そうに男子生徒Bが言う


 「そんなんじゃないんだ……」

男子生徒Aが呟くように言う


 「俺達でよかったら、相談に乗るぜ」

男子生徒Cが男子生徒Aの肩を手で軽く叩いて言う


 「……」

男子生徒Aは少し躊躇していたが悩みを話し出す

 「俺……最近、"マノン・ルロワ"の事が気になって仕方がないんだ」

 「どうしても、頭から離れないんだ」

 「こんな事、今までなかったのに……」

 「もしかして……俺、その気があるんじゃないのかって」

男子生徒Aの話を聞いた男子生徒BとCはお互いに顔を見合わせる


 

この会話が耳に入ったエレ-ヌは息を殺して聞き耳を立てる

 「どういう事……」

 「もしかして……マノン君って男子生徒にも……」

エレ-ヌの頭に腐女子の妄想がリアルに浮かんでくる

 「確かに、最近のマノンってどこか色気を感じるわね」

エレ-ヌもマノンに何処となく色気を感じていたのである



 そんな、エレ-ヌの耳に男子生徒たちの続きの会話が入ってくる


 「……お前もか……」

 「じつは俺もな最近になって"マノン・ルロワ"から……」

 「その……なんだ……色気を感じるんだ」

男子生徒Cが小さな声で躊躇うように言うと、それを聞いていた男子生徒Bも頷くき話し始める



 「二日前の講義の時に偶然、隣の席になったんだ」

 「そしたらな、俺は……"マノン・ルロワ"から……」

 「なんだか……"甘い香り"がしてくるんだよ」

 「偶然、目があった時に心臓がバクバクしたんだ」

男子生徒Bも自分にその気があるのではないかと思っていたようだった


 「お前たちもなのか」

何処か安心したように男子生徒Aが言う


 「俺は、あいつの後姿に何処となく女を感じるんだ」

 「特に腰から尻にかけての曲線が……そそるんだよ」

 「俺……マジでイケるかもしれない」

男子生徒Cが恥ずかしそうに言う


 男子生徒たちの会話を聞いたエレ-ヌの表情がだらしなく緩む

 "ついに、この時か来たか"

エレ-ヌの心の声が歓喜の叫び声を上げるのであった……


 因みに、マノンに色気を感じている男子生徒は他にも数多くいるのだが誰も自らの心に仕舞い込み、その事を口にしないだけの事である

 マノンが女体化している事を知ればどうなるかは想像に易い……



 そう……これは、マノンの体から無意識に発散される"性フェロモン"のせいなのである

 この世界では、春になり繁殖期を迎えるのはオウムだけではない人類もそうなのである


 爺の"秘薬・ナイスバディの素"は我々で言う女性ホルモン剤のような働きがあるのである

 魔力変換炉で膨大な魔力を浴び続けた結果、マノンの体に残留していた"秘薬・ナイスバディの素"はその効力を最大限に発揮し続けているのである


 今やマノンは王立アカデミ-中の男子にとっては女王蜂の如き存在となりつつあるのであるが本人は全く気が付いていないのであった……



 当然、エレ-ヌがこんな面白い話を黙っていられるはずもなく……


 その日の午後にはレナを初めルメラ達の耳にも入っているのであった


 ルメラ達はともかく、この話を聞いた時のレナの表情がどんなものであったは想像にお任せする


 

 「……ってエレ-ヌが言ってたのよ」

急に部屋を訪ねてきたレナから男子生徒たちの会話の内容を聞かされたマノンは呆然としている


 「バレてるのかな」

私は女体化しているのが男子生徒たちにバレているのか気懸りになる


 「大丈夫よ……会話の状況からみてバレてはいないわ」

 「暖かくなって薄着になってきたからかな」

レナが私の身体を診察するようにジッと見る

 「そっそうね……確かにウエストとお尻のラインは……」

私のウエストとお尻を見てそう言うレナの顔は何故か引き攣っているのであった

その理由は言うまでもない……


 「エレ-ヌやルシィ、ルメラ達には私の体の事を話した方がいいかな」

私の問いかけにレナの表情が少し曇る

 「ルシィ導師には話すのはいいけど……」

 「エレ-ヌとルメラ達にもう少し様子を見てからの方がいいと思うわ」

少し考えた後にレナが言う、私もその方がいいような気がするのであった


そうしているとオウムのパックが窓から入ってくる

 「どうしたんじゃ……二人揃って深刻そうに」

その場の雰囲気を感じ取った、爺は私に話しかけてくる


私は爺に事の次第を話すと爺は何かを確信したかのように小さな唸り声を上げる

 「んん~」

 「"秘薬・ナイスバディの素"の影響かの……」

 「お前さんが女性として魅力的と言う事じゃよ」

 「元々、あの秘薬は女子が意中の男を誑かすのが目的じゃからの」

爺の言葉に私は何とも言えないような表情になる


 「今更、魅力的な女性になっても仕方ないよ……」

 「下にはしっかりとアレが付いているんだし」

私は絶望的な口調で言う


 「繁殖期の一時的なものじゃから」

 「この時期が過ぎれば男子生徒共も落ち着くじゃろう」


 「二人で何を話しているの」

爺と念話のできないレナには事情が全く分からない


 「爺の話だと、これは時期的なものらしいよ」

 「時期が過ぎれば治まるみたいだよ」

私はレナに話すと納得したようだった……当然、隠し事である"秘薬・ナイスバディの素"の事は一言も話さなかったマノンであった



 因みに、レナも今のマノンに妙に色気を感じている事は言わなかった


 一週間程すると男子生徒たちも以前ほどマノンの事が気にならなくなっていた


マノンも以前のように周りからの視線を感じなくなっており、爺の言う通り"繁殖期"が過ぎつつあるのだと思うのであった


 マノンに色気を感じている女生徒は意外に多かったという事をレナが知るのは数週間先の事である



 第123話 ~  平穏な日々の始まり?  ➁  ~



 終わり


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