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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第十二話 ~ 嵐の夜に ~ 

 第十二話 ~ 嵐の夜に ~


  ~ 序章 ~


 マノン達の住んでいる惑星は太陽である恒星を中心にやや楕円軌道を描いて周回している。

 惑星自体は地球よりも僅かに小さく一年は360日、1日は24時間足らずで地球より少し短い周回サークルである。

 

 この惑星の特徴は地球とは違い地軸が傾いていないので気候はハッキリとしており赤道付近が最も暖かく両極部に向かうにつれ気温が下がっていくようになっている。

 本来であれば季節は無いのであるが、楕円軌道を描いているために太陽に最も近付くと気温が上がり夏に、遠ざかると下がり冬になる特性がある。


  また、月のような衛星を持たないので惑星軌道もやや不安定である、そのために数千万年に一度の間隔で環境が急変動し動植物の大絶滅が起きている。


 現在は半球凍結状態のために惑星の気温は低く赤道直下のガリア王国でさえ真夏でも30℃を超える事は無く、冬は厳しく極寒期の夜には-10℃以下まで下がる。


 因みに、マノンの暮らすポルトーレ地方が大陸で最も温暖である。

 大陸最果ての極寒の地であるシラクニア王国に至っては-40℃以下まで下がる事も珍しくはない。

 

 季節の寒暖差は大きく、その移り変わりが非常に速いのも特徴である。

 また、人間も含めこの惑星の動植物は急激な環境変化の適応能力に非常に優れ特に耐寒に優れているのも特徴である。

 そして、急激な季節の変わり目には特有の突発的な嵐が良く起こるのである……。



 ~ 嵐の夜に ~


 猛烈な風と雨、セシルがマノンの家に来て帰る少し前に"秋の嵐"が来てしまったのである。


 止みそうにない嵐にセシルは困り果てていた。

 「どうしよう……これじゃ帰れないよ」

戸惑うセシルに私の父アルフレッドが声をかける

 

 「この天気では危険だから、今夜はうちで泊っていきなさい」

そう言うとセシルは少し私の方をチラ見すると


 「……お世話になります……」

とアルフレッドに頭を下げた……じつはセシルは今まで一人で他の家に外泊した事など一度も無いのである。


母のセリアが私とセシルにタオルとお湯の入った桶を持ってくると

 「とりあえず、二人ともこれで体を綺麗にしてきなさい」

そう言うとタオルと桶を手渡してくれた、そしてセシルには着替えも

 「それと、セシルさん、これマノンの服だけど……」

 「少しサイズが大きいかもしれないけどね」

私の服を受け取るとセシルはなんだか恥ずかしそうだった。


 二人で階段を上り私の部屋に案内する

 「むさ苦しい所だけど、どうぞ」

 ドアを開けるとセシルは部屋に入り辺りを見回している。


 「意外と……普通ね……」

 セシルは何故か意外そうだった……。

 セシルのマノンの部屋のイメージとしては剣術に使っている剣の一本ぐらいはあると思っていたからだ。


 「そう……かな……」

爺はどう対応していいのか困っていたのだった。


 「とりあえず、サッパリしよう」

そう言うとセシルは平然と服を脱ぎだす、少し慌てる爺に

 「何してるの、ルロワさんもさっさと脱ぎなさいよ」

戸惑う私の事など全く気にせず全裸になってしまった。


 "仕方があるまい……"爺も服を脱いで裸になるとセシルがこちらに近付いてくる……。

 引き締まった四肢に形の良い適度な大きさの胸、初めて見るセシルの裸体は凄く綺麗だった。

 「背中、拭いてあげる」

そう言うとセシルは、桶にタオルを浸して絞ると私の背中を拭き始める。

 「ロルワさんは私の師匠だからこれぐらいはしないとね」

 「でも……ロルワさんって……本当に胸……無いのね……」

セシルのしみじみとした口調に何故か爺の心は痛むのだった。

 「でも……腰から下は凄く綺麗だわ、羨ましいぐらい……」

 「特にお尻のラインは本当に理想的だわ……」

 「私とは大違い……」

いつものセシルとは少し違った様子だった。


 「今度は私がセシルさんの背中を拭くよ」

私はセシルの背中を拭き始めると


 「あっ……痛っ!」

セシルが小さな声を上げる


 「えっ……背中が痛いの」

セシルの声に驚いて拭くのを止めると


 「最近、ちょっと筋肉痛なのよ」

セシルが少し恥ずかしそうに言うので


 「セシルさん、体を拭いた後でベッドに横になってくれるかな」

私がそう言うと少しセシルが驚いたように


 「べットにですか……」

少し恥ずかしそうにしているようだが

 「はい、わかりました」

セシルは小さな声で答えた……


 体を拭き終えるとセシルは裸のままベッドに仰向けに横になると頬を赤らめて目を閉じる……爺はそんなセシルに

 「あの……服を着てもらえんじゃろか……」

爺の言葉にベッドに仰向けで横になっているセシルの顔が更に真っ赤になっていくと、おもむろに起き上がりそそくさと服を着ると再びベッドに仰向けで横になった……。

 「セシルさん……うつ伏せになってもらえるかな」

爺がそう言うとセリアは再び無言で身を起こすとうつ伏せになったセシルに

 「少し痛いかもしれんが」

爺がそう言ってセシルの背中に手を当てるとビクッとなるのがわかる

 「体の力を抜いて楽にして……」

そう言うと私(爺)は背中から腰に掛けてマッサージを始める


 「あっ……あんっ……ああっ!」

セシルが小さな声を出して身悶えする


 「随分と疲れが溜まっているようじゃな……」

 「少し、痛いかもしれんが我慢してくれ」

 「それに、若いからと言って無理すると後が辛いぞ……」

説教じみた事を言いながらセシルの足、腕、など疲れが溜まっていそうに所をマッサージしていくセシルの息遣いが荒くなっていく……。

 「はぁはぁ! あっあっ! あんっ! うっ! ああっ!! そっこっいいいっっ!!!」

セシルの怪しい声が段々と大きくなっていくので流石の爺も

 「あんまり大きな声を出さんでくれんかの…… 家の者に変な勘違いされるわい」

少し困ったように言う……そして

 「最後はここじゃな……」

セシルの悩みの種の大きなお尻の頬の部分をマッサージし始めると


 「あっ……そこっ……気持ちいいっ!」

セシルの快楽に打ち震える声に、何だか爺は照れ臭くなってくるが……


 "それにしても本当にデカい尻じゃな……"

目の前のセシルの見事なお尻を見て思う爺であった。


 かくして、生まれて初めてのお手軽コースの約45分間の全身マッサージを受けて快楽に悶絶して果てているセシルに爺は

 「どうじゃ……少しは楽になったじゃろ」

と問いかけるがセシルは真っ赤な顔をしてコクリと頷くのが精一杯だった。


 "ああっ……これ癖になる"と心で呟くセシルであった。

 幸いなことに、セシルの喘ぎ声は嵐の風と雨の音にかき消され家族には聞こえることはなかった。


 それから、家族と一緒に夕食を取ることとなるのだが……父のアルフレッドがセシルにワインを進めたのがいけなかった。


 「それじゃ……少しだけ頂こうかな」

そう言うとセシルは木の器にワインを注いでもらう

 「あ~いい香り……ポルトーレのワインは甘い香りがするのよね」

ソムリエのような事を言いながらワインを口にすると一気に飲みしてしまった。


 「おおっ! いい飲みっぷりだっ!!」

父のアルフレッドが笑いながら言うと空いた器にワインを溢れんばかりに注ぐ

 「さあっ、ドンドンいこうか」

父は少し酔いのまわっているのもありセシルにワインを勧めるとセシルは遠慮するかのように


 「あのっ……私はそんなには……飲めないので」

などと言ってはいるが表情は露骨に凄く嬉しそうだった

 「それじゃ……」

というと、またしても一気に飲み干してしまう

 「ああっ! いいわっ!! やっぱりポルトーレのワインは最高よっ!!!」

セシルの言葉に気を良くした父は更にワインを注ぐと


 「気に入ったよっ! 流石はジルベールの娘さんだっ!」

 「飲みっぷりも気持ちいいぐらいだし、マノンが男なら"交わりの儀"を申し込むところだよ」

 (嫁に来いと言っているようなもの)


 そう言うと豪快に笑い空いた器にワインを注ぐ……空いた器には直ぐにワインを注ぐのはポルトーレ地方の酒の酌の作法のようなものだ。


 かくして、父とセシルの二人だけの宴会は始まった……数時間後には空のワイン壺がテーブルの周辺に散乱していた。


 そのまま、酔いつぶれた父を部屋に運びベッドに放り込み、今度は涎を垂らして地ベタに転がっているセシルを抱きかかえ姫様抱っこで二階へ連れて行き、そのまま私の部屋のベッドに寝かせるとセシルはゴロンと寝返りを打つ……。

 "やれやれ……困った娘じゃの"

 "これではせっかくの美少女が台無しじゃ……"


 大きめの貫頭衣の裾は捲れ上がり大股を広げパンツ丸出しのセシルの姿に、爺は心の中で嘆くと幸せそうに寝息を立てるセシルに毛布を掛ける。

 "……誰かさんと同じような寝相じゃな……"

 "それに、この娘には剣の才能もあるようじゃしな"

爺はそう心の中で少し嬉しそうに呟くのであった。


 自分のベッドをセシルに譲ってしまったので今の絨毯を部屋の床に敷くと予備の布団と毛布を母から貰って寝ることにした。


 嵐は夜中を過ぎても収まらず"ゴォー"っとう音と"ザーザー"という雨の音が聞こえてくる。


 "風と雨の音が煩くて寝つきが悪いの……"

爺がそんな事を考えていると


 「ルロワさん……起きている」

とセシルの声がする


 「起きてるよ、セシルも風と雨の音で眠れないの……」

そう私が返事をすると


 「今日は……ごめんなさい……」

 「少し、調子に乗り過ぎちゃった……」

セシルは申し訳なさそうに謝る。


 「セシルさん……大丈夫なの……あんなにお酒飲んじゃって」

爺が心配そうに言うと


 「あの程度なら、全く問題無いわよ……」

 「少し休めば元通りよ……」


セシルの言葉に唖然とする爺は

"この娘……筋金入りの酒豪じゃな……人は見掛けによらんものだな"と感心しているとセシルが真剣そうな口調で爺に問いかける


 「ロルワさんは騎士にはならないの」

突然なセシルの漠然とした問いに


 「騎士か……今はそんな気は無いよ、それと私の事はマノンでいいよ……」

爺が答えると


 「そうなんだ……マノンなら絶対に良い騎士になれると思うのに」

セシルの残念そうな口調に爺は


 「セシルさんはどうして騎士になりたいの」

 「ただ騎士に憧れてなりたいというのなら……」

騎士に憧れるセシルに話すのには爺は少し躊躇ったが話すことにした


「セシルさん、世間では騎士は"人の鏡”などと呼ばれてはいるがの」  

「……よほどの事がない限り女騎士は実戦に出る事は無いとは思うのが……」

「事と次第によっては何処の誰かも知れぬ人を殺めなければならんこともある」

「こんな事を聞くのはなんじゃが……もしも、そうなった時にセシルさんは迷う事無く人は殺める事が出来るかの」

爺がシビアな質問を問いかけると少しの間を置いてセシルは


 「わからない……」

 「そんな事、考えても無かった……」

 「マノンって私より遥かに騎士の事を理解しているのね」

 「だから、騎士にはならないのね……」

 マノンの兄が戦死している事を知っているのもあるのかセシルの声が少し震えているように感じた、爺は少し質問がシビア過ぎた事を後悔する。

 

 「儂は……私はセシルさんはそんな時でも決して人を殺めるような事は無いと考えておる」

 「だから、心配なのじゃ……そうすると逆にセシルさんが命を落とす事になりかねん」

 「本当に良い騎士に求められるのは高潔な人格や優れた剣技だけではない」

 「何の為にその命を捧げるのか、そしていかなる時にもその志を貫き通すだけの強き精神それこそが騎士の真の強さなのじゃ」

 「セシルさんは何にその命を捧げるのかの……」

 「騎士でもない私がこんな偉そうなことを言っても何の説得力も無いがの」

そう言うと爺は少し笑った。


 「……マノン……って本物の騎士みたいね……」

 「マノンがもしも……男の子なら……私……」

セシルは途中で言うのを止めると、ここへ来る途中でレナと話したことの記憶が蘇ってくる……。

 ああ~私も"許されぬ恋"に落ちちゃうのかな……そう心の中で呟くのだった。


 その後、会話が途絶えると嵐の風と雨の音を子守歌にセシルも爺もいつの間にか眠りに就いていた。

 そして、朝なり目覚めた頃には嵐は過ぎ去り穏やかな日差しが部屋の窓から差し込んでいた……。


 私が起き上がるとセシルも同じように眠そうな顔をしてベッドから半身を起こす

 「おはよう……マノン……」

 そう言うと微笑むとマノンを見る……セシルのマノンを見る眼差しは昨日とは少し違っていたことに爺は全く気付かなかった。


 「おはよう……セシルさん」

爺は普通に挨拶をするだけだったが、セシルの目に映るマノンは昨日とは全く違って見えているのだった。


 "やっぱり……私、マノン……に恋しちゃったのね"

 マノンの顔を見ているだけで早まる自分の鼓動に嘘は吐けなかった。

 

 私が文字通りの"賢者タイム"の眠りに就いている時の出来事らしい……。


 ……しかし、こんな平穏な日々は長くは続かない……。

 すぐそこまで旧シラクニア王国軍が迫ってきているからである。

 まだ、その事を知る者はこの村にはいない……。


第十二話 ~ 嵐の夜に ~ 終わり

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