第110話 ~ 王国騎士セシル・クレージュ ④ ~
第110話 ~ 王国騎士セシル・クレージュ ④ ~
序章
王都での幻獣騒動の調査の結果を受けて王宮では重鎮による緊急会議が開かれていた
いつもの通り面子、国王のレオナール、王都騎士団長のラザール、最高司祭のクロードの3人である
「幻獣は飼育されていたものなのだな」
王都騎士団長のラザールの報告を受けた国王のレオナールが険しい表情をする
「まず、間違いないでしょう」
「幻獣の出現した近くの倉庫内に幻獣を飼育していたと思われる檻などが発見されております」
ラザールの報告に国王のレオナールが顔をしかめる
「ゲルマニア帝国の仕業なのか」
レオナールの問いかけにラザールは少し躊躇いながらも小さく頷く
「恐らく……ゲルマニア帝国が関係していると思われます」
「が……故意ではなく事故の可能性が高いと……」
ラザールの言葉にレオナールが目を細める
「事故か……」
レオナールは小さなため息を吐くと考え込む
「何にせよ、犠牲者が一人も出なかったのは不幸中の幸い」
最高司祭のクロードが安心したように言うと話を続ける
「私が聞いた話では幻獣は誰かに倒されたと聞き及んでおります」
「それも、一瞬のうちに一太刀であったと……」
クロードの言葉にレオナールとラザールは"ああ~"という表情をする
「大賢者か……」
レオナールがポツリと呟くように言うと3人は顔を見合わせ力ない笑いを浮かべるのであった
しかし、当の帝国の監視者は笑っていられる状況ではなかった
この事件により、自分達の身にガリア王国の調査の手が及ぶかもしれない
しかも、このような不祥事が本国に知られるようなことになれば引責は免れないからである
帝国の監視者が自らの保身のために何らかの行動を起こすのは当然のことであった
第110話 ~ 王国騎士セシル・クレージュ ④ ~
眩い閃光に目を閉じていたセシルがゆっくりと目を開けると……
「今の、何だったの……ここは……」
セシルは何が起きたのか分からずに動揺している
「何にあれ……」
目の前にそそり立つ立派な建物を見て驚きを隠せない
「セシル……ここは、大賢者の魔法工房だよ」
私はそう言うと動揺しているセシルの手を優しく握る
「大賢者の魔法工房……」
「どうして……マノンが……」
「まさか……マノンが……」
セシルの表情が体が固まり青ざめていくのが分かる
「そうだよ……私が"大賢者"なんだよ」
固まっているセシルに私は優しく真実を伝える
「そうなの……剣の腕前が凄いのも当たり前よね」
セシルはそう言うと気の抜けたようなため息をついた
以外にもセシルは大賢者という肩書に物怖じする事も無く、私の言葉を疑う事も無かった
しかし、そんなセシルを見て私は悩んでいた……
"こんな事ばかりしていいのかな……"
私の目には、目の前にそそり立つ立派な魔法工房が我々の世界で言うならば田舎の畑の真ん中にポツンと立っている"お城ホテル"のように見えてくるのであった
"歴代大賢者の皆様……ごめんなさい……"
私は心の中で歴代大賢者の皆様に対する罪悪感に苛まれ謝罪し懺悔する
因みに、マノンは罪悪感を感じているがその必要はない
何故なら、マノンに自覚は無いのだが……これはマノンのDNAに深く刻まれた"大賢者の遺志"がそうさせているからである
魔法使いとしての資質を備えた子孫を残そうとするのは"大賢者の遺志"として当然の事なのである
という事は当然、同じように"歴代大賢者の皆様"も相当数の女性をここに連れ込んでいるという事である
そんな事実を知らないマノンは申し訳ない気持ちで魔法工房へと入っていく
物怖じしないセシルも流石に動く絨毯には驚いて少し怯えているようだった
私の目にはセシルが長旅と騎士拝命の儀式などで少し疲れているように見える
「温泉にでも入らない」
私がセシルに問いかける
「温泉……そんなものまであるの」
セシルは呆れたような顔しながらも驚いているようだ
「こっちだよ」
私はセシルを自慢の温泉に案内する
セシルは温泉を見つめながらも入ろうとはしない
「どうしたの……」
セシルの態度を不審に思った私が問いかける
「……」
セシルは困ったように黙り込んでしまう
「……あの……」
なにか理由があるようだが言い難そうにしている
「じつは……股ズレが酷くて」
セシルの話では王都までの長旅で10日間も馬に跨って乗っていたのて酷い股ズレになってしまったようだ
(因みに、遠方から王都にやってきた新任騎士は男女を問わず、ほぼ全員が同じように酷い股ズレに悩まされている)
ここ数日で少しはマシになったようだが、とても温泉なんかには入れそうにない状態らしい……
「そうなんだ……」
私はセシルが温泉に入らな理由を知ると
「治せるかもしれないよ、見せてくれる」
セシルに股ズレを見せてくれるように言う
「えっ……」
場所が場所だけにセシルは慌てている
マノンに変な気はないのだが……
「……はい」
慌てていたセシルだが暫くすると冷静になり服を脱ぐと後ろを向く
立派なお尻の割れ目から太腿の内側が赤くなっているのが分かる
「結構……酷いね」
セシルの股ズレを見て私が言う
「これでも、随分と良くなったのよ」
セシルは小さな声で少し恥ずかしそうに言う
「ここに仰向けに寝てくれない」
私がそう言って温泉の横の長椅子を指さすとセシルは小さく頷き仰向けになる
「ちょっと、我慢してね」
私はそう言うとセシルの両足首を掴み股を広げる
「あっ! ちょっと待ってっ! 」
でんぐり返りで股を広げられ、大事なところが丸見え状態の姿になってしまったセシルはあまりの恥ずかしさに思わず声を上げてしまう
「これなら何とかなるよ」
慌てふためいているセシルを他所に私は股ズレの部分に優しく撫でるように触れる
「あっ! ああんっ! 」
何とも言えないセシルの喘ぎ声が温泉に響く
「終わったよ……」
私はセシルに言うが返事がない
「はあっ! はあっ! はあっ! 」
セシルは息を荒くしてぐったりとしている
いきなり恥ずかしいポーズをさせられたうえに大事な所を撫でまわされたのだから、セシルにそんな余力が残っているはずもないのだった
「もう……いきなり何するかと思えば……」
「いくらなんでも酷すぎますよ」
「これでも一応は、うら若き乙女なんですよっ! 」
「いきなりあのような所をあのようにされたら……」
暫くしてから落ち着きを取り戻したセシルはマノンにむくれたよう言う
そして、セシルは恐る恐る温泉に入る
「痛くない……」
「凄い……本当に治ってる……」
股ズレした部分が全く痛まない……完全に治っていることに驚きを隠せないでいる
「ごめん……」
私はそんなセシルにすまなさそうに謝る
「まっまぁ……これで、温泉に入れますし」
「安心してヤることヤれまっ……」
セシルは慌て途中で言うのを止める
「……」
2人とも黙り込んでしまい気まずい空気が流れるが……
それを打ち消すようにセシルが口を開いた
「そっ、そう言えば私、少し前にトロペの温泉に行ったんです」
「その時、トロペの温泉でマノンの夢を見ました」
「まるで現実のような夢でした」
セシルはトロペの温泉での出来事を話し始める
私は一瞬、ドキッとする
"セシル……それは夢じゃないんだよ"
私は心で呟く
"本当の事を話した方がいいのかな……"
私が悩んでいると何故かアレットの声が聞こえてくる
"いい夢なら夢のままでいいんじゃないの"
私は思い出に浸るセシルの表情を見て事実を話すことを止めるのだった
二人仲良く温泉に浸かりながら昔話に花が咲く……
剣の特訓でお尻を叩かれまくった事、嵐で帰れなくなった事、嵐の夜に話した事、マノンの実家でワインを飲み過ぎて醜態をさらしてしまった事……
そして……騎士団の入団試験の事……
「私……本当にマノンに感謝しているの……」
「そして……あの時、私はマノンの事が本当に好きになってしまった」
「マノンに私の全てを捧げようと誓ったの」
セシルは自分の思いをマノンに伝えると優しそうに微笑む
「ありがとう……セシル……」
私にはこれ以外に他の言葉が見つからなかった
温泉にゆっくりと浸かりながらリラックスしたセシルは大きく息を吸うと
「マノン……私にあなたの子をお授けください」
その言葉と表情、そしてその瞳は純粋な輝きを放っていた
そんなセシルに私は残酷ともいえる事を話さなければならない
そう……子供が極めて出来難いという事である
「セシル……話しておかなければならないことがある」
只ならぬ私の様子にセシルの表情が不安そうになる
「セシル……じつは私は一般女性との間には子供が極めて出来難いんだ」
私が不安そうにしているセシルに事実を話す
「はぁ~」
セシルは何故か安堵の溜息を吐く
「なんだ……そんな事なの……」
「私はてっきり、断られるのかと思たわよ」
「そんなの、出来るまでヤればいいだけじゃない」
「頑張ってねっ! マ・ノ・ンっ」
セシルの言葉がレナの言葉と重なる……
もしかしてセシルもレナと同じ類の……
私の背筋に悪寒が走り血の気が引いていくのが分かる
「どうしたの……マノン……何か変よ」
「急に顔色が悪くなったような気がするんだけど」
「温泉に入り過ぎてのぼせたの」
セシルは心配そうに私を見ている
「なっなんでもないよ」
「長湯し過ぎたかな……もう上がるよ」
私はそう言うと温泉を出るとセシル同じように温泉から上がる
「それじゃ……マノン……」
セシルは恥ずかしそうに私に何か言おうとする
何を言おうとしているのかは超鈍感なマノンにも容易に察しがつくのであった
「うん……」
私は不安に駆られながらもセシルの思いを受け入れるのであった
かくして、セシルは目出度くその思いを果たすことになるのであった
第110話 ~ 王国騎士セシル・クレージュ ④ ~
終わり