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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第101話 ~  大賢者の災難(女難第二波の到来)  ④  ~

第101話 ~  大賢者の災難(女難第二波の到来)  ④  ~


      序章



 ガリア王国の王国騎士はガリア国王に騎士として任命されることを以って正式に王国騎士となる


 王国騎士の任命式は"騎士の儀"と呼ばれ半年に一度の割合で王都の聖・パトリック教会で執る行われる


 それに合わせて王国各地から新たに王国騎士に任命される者たちが続々と王都へとやってくるのだ

 

 因みに、ガリア王国の騎士には二階級あり王国騎士と王国正騎士の二つがある

 王国騎士はセシルのような新たに騎士として登用された者や騎士の家系の後継者たちである

 それに対し、王国正騎士は王国騎士の中から選抜された者たちで国王直属の騎士となる、所謂(いわゆる)、エリート騎士である

 王国正騎士の任命式はガリア王宮の国王の"謁見の間"で多くの重鎮たちの前で執り行われる


 任命される騎士の数は通年で王国騎士が二十名程度、王国騎士は五人程度である


 ヴァ-レルが王立アカデミ-に引き連れてきていたのは、この新たに任命された王国正騎士たちである



 場所が変わって……ここは、ポルトーレ地方のサン・リベ-ル郊外のトルス騎士団の駐屯地……


 セシルはこれから王都へと向かう

「それでは、行って参ります」

見送りに来たエルネスト達に出立の挨拶を済ませると馬に跨る(またが)

セシルはたった一人で誰の付き添いも無しに二週間の長旅に出るのである


これも試練の一つなのであるが、セシルにとっては心嬉しい試練であった

晴れて王国騎士になり、マノンにも会えるかもしれない


革の鎧に身を包み馬の両脇のサドルバックには騎士の証たる剣、長旅の荷物を入れてある

そして、エルネスト団長から頂いたトルス騎士団の部隊文様の入ったマントを(まと)っている


 「道中、気を付けてな」

エルネストの言葉に


「はい、お見送り感謝いたします」

しっかりと返事をするとセシルはゆっくりと馬を歩かせる


 セシルの懐にはマノンの父アルフレッドがセシルの父ジルベールと酒に酔って交わしたマノンとの"交わり"を許す、という内容の覚書の秘密兵器を忍ばせていることはトルス騎士団の誰も知らないのであった


 かくして、マノンに波状攻撃の如く女難が襲い掛かるのであるが……


 しかし、後のマノンにとっては、これら全てが人と人との繋がりとなって広がり

 ……そして、良き思い出ともなるのである





 第101話 ~  大賢者の災難(女難第二波の到来)  ④  ~




 私はレナとルメラから流れてくる異様なオーラに焦っている……

 "爺っ! 何とか……えっ! 居ないっ!!"

ほんのさっきまで私の肩に停まって休んでいたパックの姿が見当たらない

 "逃げたなっ!……"

私は老練な忍びの如く、なんの気配も悟られず姿を消した爺に恨めしそうに心で叫ぶ

すると、何処からかルメラを呼ぶ声がする

 

「ルメラさんっ……ここにおられたのですか」

「探しましたよっ!」

息を切らしながらエレーヌが駆け寄ってくる

「あれっ、レナとマノンじゃない」

「こんなところで何してるの」

エレーヌは少し驚いたように言う


「何というか……」

「その……偶然にばったりと出会ったんだよ」

私がレナとルメラを気にしながら言う


「ふぅ~ん……」

どうやら、エレーヌは今の状況を瞬時に理解したようだ

「レナ、ルメラさん、もう時間も遅いから」

「マノンも宿舎に帰ってねっ」

エレーヌはそう言うと私に"任せてっ"と言わんばかりの目で私を見る


"ありがとう……"私もエレ-ヌに感謝の気持ちを込めて目で返事をする


私はしばらくの間、この修羅場をなんとか乗り切れたことにホッとして放心状態になっているのであった



 エレーヌに連れられたレナはルメラと一緒に来賓者用宿舎に来ていた


 豪華な来賓者用宿舎に少し驚いているレナにエレ-ヌが話しかける

「突然だけど……今日から私、ここに移るのよ」

エレーヌの突然の引っ越し宣言にレナは動揺を隠せないでいる

「私、ルメラさん達の世話役に指名されちゃってね」

「ここでルメラさん達と一緒に生活することになったのよ」

レナは、エレーヌの説明に納得したかのように頷くが……


「ルメラさん達って!」

「他にもいるのっ!!」

レナは何となく嫌な予感がする


「……あと、3人……」

「3人とも……女子よ……」

エレ-ヌはレナから目線を逸らすと申し訳なさそうに言う


「……」

レナは無言だが、その表情は"やっぱり"と言っていた


 エレーヌが宿舎の居間に入ると、そこにはユーリア、アイラ、エルナの3人が待機していた

 

 エレ-ヌと一緒に入ってきたルメラが視界に入ると3人ともホッとしたような表情になる


「ルメラ様っ! 何も言わずにこんな時間に一人で出歩かないでくださいっ!!」

少し怒ったようにユーリアが言う


「ごめんな……」

ルメラは済まなさそうに謝る

「マノンの奴、やっぱりここにいやがったぜっ!」

ルメラの言葉にユーリア達3人はお互いに視線を交わすと小さく頷く


ルメラの口調がさっきとは全く違うことにレナは少し驚いたが不思議と違和感を感じなかった

……そう、レナも何となくルメラの本性を見抜いていたのである



「で……そちらの方はどなたですか」

レナが気になっていたユーリアがエレ-ヌの方に視線をやる


「レナ・リシャ-ルさん……」

「さっき話した……マノンの幼馴染さん」

エレーヌがレナの事を紹介するとレナもペコリと軽く会釈をする

「レナ、そして……この3人がルメラさんのお供の方達」

「ユーリア・ハルヴァリさん」

「アイラ・ハールスさん」

「エルナ・エスコラさん」

エレーヌが3人をレナに順番に紹介するとレナは再び軽く会釈する



「この方が……マノンの……」

ユーリア達3人はレナをジッとみている


そう、レナを品定めしているのである

"美人ね……それに、スタイルもいいわ"

"それにしても……胸が……大きいっ! "

3人ともほぼ、同じような評価を下すのであった


 当然、レナもユーリア達3人を品定めしているのであった

"……ユーリアさんって、素敵な人ね……"

そう、レナにとってユーリアは何処か女子だった頃のマノンを彷彿とさせるのだった

"後の2人は……普通女子ね……"

レナの評価は適切であった



そんなレナの事を見ていたルメラが突拍子もない事を言う

「レナさんてマノンとどういう関係?」

ルメラらしいストレートな質問にレナは動揺を隠せない


「どっ、どういう関係って……幼馴染よ……」

レナは平静を装っているがバレバレである


当然、レナの様子からルメラ達4人にはマノンとの関係が容易に想像がついた


「……そういう事なんだな……」

ルメラがポツリと言う

「あんな遅くまで2人で何してたんだか……」

レナはルメラの視線から目を逸らすが顔が真っ赤で目が泳いでいる

「ズバリ、ヤってんだろっ!」

ルメラの関心を突く一言にレナの顔は更に赤くなる


"やっぱり……"

ルメラ達4人は心の中で同じことを呟くのであった



「だったら、話は早ぇーなっ」

「コソコソするのは性に合わねぇから、ハッキリと言うぜ」

「俺たち4人はマノンと"交わる"ためにここまで来た」

ルメラのストレートな発言にエレ-ヌも他の3人も慌てるが……

レナは全く驚いてはいなかった

さっき、宿舎の前でルメラがマノンに飛びついた時に大体の状況が分かってしまったからだった



「あの……レナさん……」

恐る恐るエレ-ヌがレナに声をかけるがレナは何も言わない


「ルメラさん……」

レナは突然、ルメラに話しかける

「マノンって恐ろしいほど鈍いわよ」

「それに女なんかになんの興味もないわよ」

「そのくせ、女にモテるわよ……」

「だから……苦労するわよ……それでもいいの」

レナの言葉にルメラ達4人は"あ~分かるわ~"という表情をする

「何故だか分からないけど……」

「貴方達とは上手くやっていけそうな気がするわ」

レナはそう言うとルメラ達に微笑みかける


そんなレナにエレ-ヌは只々驚くばかりであった


これだけでレナとルメラ達4人はマノンを通じて仲良くなるのである

"まぁ、これでいいか……"

納得しつつも、不思議なものだなと感心するエレ-ヌであった



 その後で、レナはルメラ達の口からマノンがシラクニアで何をしていたかを知ることになる

 そして、女子心を全く理解しないマノンの事をネタにして5人は旧知の友の如く仲良く語らうのである


 そんな中……"私だけ、仲間外れのな……"と少し疎外感と孤独感を感じるエレ-ヌであった。


 そしてもう一人、完全に忘れ去られた者がいた……そう、ルシィである

「随分と賑やかね」

「エレーヌ、上手くやっているようね」

時より微かに聞こえてくる楽しそうな話声と笑い声にルシィは安心するのであった




第101話 ~  大賢者の災難(女難第二波の到来)  ④  ~


   終わり




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