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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第100話 ~  大賢者の災難(女難第二波の到来)  ➂  ~

第100話 ~  大賢者の災難(女難第二波の到来)  ➂  ~


           序章


 ここはガリア王宮のシルビィの私室である

 マノンの子を身籠った事が分かり、妊娠悪阻(つわり)も酷かったシルビィは私室で暫く休養をしている


 シルビィが大賢者の子を身籠った事は極秘とされ、今は極一部の者にしか知らされはいない


 国王のレオナールは信頼のおけるクロードなどの側近と共に、各国への今後の対応をどうするかに追われていた


 そんな中、事実を知るアネットの心境は複雑だった

 ベッドで苦しそうにしているシルビィを見ていると……

 "あの、クソ野郎は知っておくべき"だと考えていたからである


 そんな、アネットの様子を見ていたシルビィが話しかける


「アネット……」

「マノンには何も伝えなくていいのよ」

少し蒼ざめた表情でそう言うと力なく笑う 


「でっ、ですが……それではあまりにも」

「シルビィ様とお腹のお子様が報われません」

「これではまるで……内密出産ではありませんか」

アネットは目に涙を溜めて言う

(この時代、王族の内密出産というと望まれない子を産む事を意味する)


「良いのです……」

「それが最善なのです」

微笑みながら言うシルビィの表情には何の迷いも感じられなかった


「わかりました……シルビィ様……」

アネットはそう言うしかなかったのであった

"シルビィ様……本当に良いのですか"

何度も何度も心の中で呟くように問い返すアネットであった



 それから数日後……ごく最近に跡取りが病死して途絶えた古参貴族のジラール家のクレイマン・ジラールと言う既に病死した人物がシルビィの相手としてでっち上げられることになるのである


 シルビィは名前すら知らない相手であるのだが、シルビィとこれから生まれてくる子供にとっては内密出産という不名誉は避けられる事となった。

 





第100話 ~  大賢者の災難(女難第二波の到来)  ➂  ~




 マノンは、魔法工房の休憩室で目を覚ました

 隣には裸のレナが静かに寝息を立てている


"昨夜は凄かったな……"

マノンは心の中で呟くとベッドから降りようとする

「うっ!」

マノンの腰を激痛が襲い足元がフラ付く

「あれっ」

「もしかして……これは……」

「以前に爺の言っていた……」

マノンは以前に爺に言われた事が脳裏をよぎる

"自分の腰は自分では押せんぞっ……"


マノンはゆっくりし立ち上がり腰を屈めたままで床に立つと少しづつゆっくりと腰を伸ばす

「うっうっうううっ~っ」

マノンは爺臭い小さな呻き声を上げながら背筋をピンと伸ばし、次に仰け反るようにしてストレッチ体操をする

「はぁ~、かなり楽になった」

小声で呟くと、レナも目を覚ます


「あ……おはようマノン」

少し寝ぼけ眼のレナがベッドから起き上がろうとする

「ひぃっ! こっ腰がっ!!」

レナは腰を押さえるとベッドに再び倒れ込む

「まっマノン……私の腰どうしたのかしら」

悲痛な表情で私に問いかける


「……レナ……」

「どうもしていないよ……」

「レナ……俯せになってごらん」

私がそう言うとレナはモゾモゾとベッドの上を蠢くように俯せになる


「少し痛いけど我慢してね」

そう言うと私はレナの腰をグッと指で押す


「あっ! ああっ! ああんっ!!」

レナは堪らずに喘ぎ声を上げる



裸なのでレナの大きなお尻が目に留まる

"そう言えば、セシルの腰を押した時もこんなだったな"

"セシル……元気かな……"

そんな事を考えつつ私は数分の間、レナの腰をゆっくりと押し続ける

もうすぐ、そのセシルが王都に遣ってくるなどとは思ってもいないマノンであった


「どう……楽になった」

私の問いかけにレナはベッドから恐る恐る立ち上がる


「うんっ! 全然痛くなくなったよ」

「マノンってホントに凄いね……」

レナは少し感動したかのように言うと

「どうしちゃったのかな、あんなに急に腰が痛くなるなんて」

レナは不思議そうに考え込んでいる


そんなレナに私は少し恥ずかしそうに小さな声で腰痛の原因を伝える

"やり過ぎたんだよ……"

私の言葉にレナの顔が真っ赤になる


「そっそうなの……」

「その……私ったら……」

原因を知ったレナはあまりの恥ずかしさに動揺を隠せずにいるのであった


私は上着を羽織るとレナにも上着を掛ける

「ここの温泉は、この手の類には効能があるよ」

そしてレナの手を握ると温泉へと向かうのであった


その頃、オウムの爺は実験室のベッドの上で時より居眠りをしながらマノンとレナが来るのを待ち続けているのであった



私は、レナと二人で温泉に入りながら昔のように雑談をする

まだ、私が女子でマノワール村にいた時のような感覚が蘇ってくる


「レナっていつから私の事が好きだったの」

私の問いかけにレナは俯くと黙り込む

「別に無理して答えなくていいよ」

私がそう言うとレナはフッと顔を上げる


「いつからかは自分にも分からないわ……」

「気が付いていたら好きになっていた……」

「それだけよ……」

私は何となくレナの答えに納得する

自分にも、シルビィやアレットの事があるからだった


 しかし、マノンは少し勘違いをしている……以前、爺が言っていたようにレナの好きとマノンの好きは違うのである


 マノンが愛というモノを知るのはもう少し後の事になる


 少しの沈黙の後でレナが私の方をジッと見る

「マノンが女子だった頃、私の事どう思っていたの」

レナの問いかけに私も黙り込み俯いてしまう

「マノンも無理して答えることはないのよ」

私と全く同じレナの対応に少し恥ずかしくなり、思わず後ろ頭をボリボリと掻いてしまう


 そんな私を見てレナがクスッ笑う

「マノンは女子でも男子でも変わらないのよね」

「私にとっては、普通の女学生でも大賢者様でもマノンはマノンなの……」

レナの優しい口調に私は何故か癒やされるような気がする


「私は、レナの事が羨ましかった……」

「レナに憧れていたのかも知れない」

「長い綺麗な金色の髪、白い肌、大きな胸……」

「レナは私の理想の女の子だったんだ」

私の素直な言葉にレナは"ふぅ~ん"という顔をする


「"……だった"なのね、つまり過去形ってわけね」

「だったら今はどうなの」

レナの核心を突いた問いかけに私は少し焦ってしまう


「そっそれは……それは……」

「無理して答えなくてもいいんだよね」

私は顔を引きつらせながら言う


「だぁ~めっ!」

レナは意地悪そうに私の方を見て言う


「……大人の女(人)……」

私は小さな声でぼそっと言う


「大人の女(人)……ね……」

呟くようにレナはそう言うと少し嬉しそうな表情になる

「そうなんだー、ちゃんと女として見てくれているのね」

レナはそう言うと私をギュッと抱き着つく

「これからもよろしくねっ!!」

意味有り気なレナの言葉に何故か背筋が凍るマノンであった


その後、朝食を軽く済ませてレナは再び読書に明け暮れ……

私は、爺の待つ実験室へと向かう


「やっと、来てくれたか……待ちくたびれたわぃ」

そう言うとパックは私の傍へと飛んでくる


「このオウムの体の一部に魔石を埋め込める砂嚢(さのう)という部位が有っての……」

「お主の力で小さな魔石の粒を砂嚢に埋め込んでもらいたいのじゃ」

「どうかの……」

爺の提案に私はパックの体を念入りに調べる


「砂嚢って言うのこれ……」

マノンが爺に問いかける


「砂のようなものが入っているじゃろう」

「貝の殻とか砂とかが詰まっていてそこからミネラルを吸収しておる」

「この前に飲み込んだ魔石もここに入っており偶然に留まっておる」

「出来るかの……」

爺の期待に満ちた口調に嫌とは言えないマノンであった


「大丈夫なの……」

私はパックの体の事を心配して問いかける


「大丈夫じゃ」

自信たっぷりの爺の言葉に私はパックの体に魔石の粒を転移することを約束する



「砂嚢の壁面から少し外して頼む」

「魔石で埋め尽くされるとミネラルが吸収できなくなるでの」

爺の細かい注文に応えるように少しづつ魔石の粒をパックの体へと転移させていくマノンであった


 この細やかな作業には、3時間近い時間と目眩がするほどの集中力を必要とするのであった


 体内の高純度の魔石から魔力の供給を受けることによりパックの中の爺はそれなりの魔術を発動する事が出来るようになるのであった

 爺の泣くほどの歓喜の声に私も少し涙が出てくるのであった


 因みに、魔術を発動すれば魔石は魔術の規模に応じて消滅するので魔石は補充する必要がある



「そろそろ帰るとするかの」

爺の言葉に私も頷く


実験室を出て図書室へと向かう、予想通り(うず)高く積まれた本に埋もれるようにしてレナは読書に明け暮れているのだった

「レナ、そろそろ帰ろうか」

私がそう言うとレナは本を読むのを止めてこちらを向く


「うん、これ読み終わったら……」

そう言うとレナは再び本を読み始めた……

結局、レナが本を読み終えるまで2時間近く待たされる羽目になってしまうのであった


 魔法工房から王都の広場の塔へ転移し王立アカデミ-の宿舎へ帰り付いた頃には日も暮れ辺りは暗くなっているのであった


 レナと一緒に宿舎の前に来ると何人かの人影が見える、ゆっくりと近づいていくと……


「マノンっ!」

私を呼ぶ大きな声と共に誰かが物凄い勢いでこちらに走ってくる


「ん……誰っ?」

私は暗闇の中をこちらに向かって走ってくる人影に目を凝らす

「えっ!……ルメラなの……」

私は我が目を疑う


「会いたかったぞっ! マノンっ!!」

そう言うとルメラは私に向かって飛び込んでくる


「えっ!」

私があたふたしている間にルメラは私の鳩尾(みぞおち)に飛び込んだ

「ぐへっ!!」

ルメラのボディ・アタックにむせかえる


その状況をレナは呆然と見つめている

「マ~ノ~ン……その人(女)……誰~なの」

まるで亡霊のように立ち尽くすレナ……その目には嫉妬の炎が燃え上がろうとしているのだった


私は、あまりの恐怖に声も出ずに身も心も凍り付くのが分かる



「ようっ! マノン」

ルメラはそう言うと円満の笑みを浮かべる

そして……隣で呆然と立っているレナの方を見る

"この人(女)がレナっていうマノンの幼馴染だな"

ルメラはエレーヌからレナの事を聞いて知っていたのだった

「レナ・リシャ-ルさんですね」

「おっ、私はシラクニア第一王女のルメラ・オールステットと申します」

ルメラらしくない丁寧な挨拶に私は目をパチクリさせている


「はっ初めましてレナ・リシャ-ルと申します」

レナもきちんと挨拶をする


二人はお互いを頭の天辺から爪先までじっくりと見定めているのがマノンにも分かる


レナはルメラを見て

"この子……凄く可愛い、まるで妖精みたい"

"肌も白くて綺麗な銀色の髪……それに、胸も大きいし……"

"間違いなくマノンの理想のタイプだわ……"


一方のルメラは

"この女、なんて……デカい乳してやがんだ!"

"綺麗な長い金髪に白い肌、オマケにすげぇ美人じゃねーかっ!"

"こりゃ……マノン好みにちげーねな……"


お互いが顔を見合わせるとにっこりと微笑む

そして……お互いに最強のライバルと認識した瞬間であった


同時に、マノンの女難の始まりでもあったのである……




 第100話 ~  大賢者の災難(女難第二波の到来)  ➂  ~


     終わり


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