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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第九十九話 ~  大賢者の災難(女難第二波の到来)  ➁  ~

  第九十九話 ~  大賢者の災難(女難第二波の到来)  ➁  ~ 




   序章



 ここは、王都から遠く離れたサン・リベール郊外のトルス騎士団の駐屯地……


 騎士見習のセシルは騎士団長のエルネストに呼び出されていた 


  セシルは団長室の扉の前で生唾をごくりと飲み込むとドアをノックする

 「セシル・クレージュっ! お呼びにより出頭いたしましたっ!」

  セシルはドアの前で少し緊張した大きな声で出頭を報告する


 「入り給え」

 部屋の中からエルネストの声が聞こえてくる

 緊張のあまりギクシャクとした動きでセシルが部屋に入る


「そんなに、硬くならなくてもいい」

そう言ってエルネストは少し笑うと、急に真面目な表情になる


セシルはエルネストの表情が急に変わったことに気付き緊張する


「セシル・クレージュっ!」

「本日付けを以って騎士見習の任を解く」

エルネストの言葉にセシルの顔から血の気が引いていく


 "まさか……騎士不適格なの……"

セシルの頭の中は真っ白になり絶望が渦を巻く


 蒼ざめたセシルの表情にエルネストは言葉を続ける

「セシル・クレージュっ!」

「王都での"騎士の儀"を以って正式に王国騎士を拝命することを……」

「ポルトーレ方面トルス騎士団長アルト-・エルネストの名において命ず」

エルネストの言葉にセシルは放心状態になる


 絶望の淵から驚喜の絶頂へ、地獄から天国へ、セシルにとって長年の夢が叶った瞬間だった


「本当ですか……」

セシルの小さな震える声にエルネストは円満の笑みを浮かべる


「おめでとう……」

「今日から君は"王国騎士"だ」

エルネストの言葉にセシルの目から涙が溢れ出す


「ありがとうございます……」

今のセシルには、これが精一杯の言葉だった


そして……セシルがそっと閉じた瞼に浮かんだのはマノンだった

"ありがとう……マノン……"

"貴方に出会わなければ騎士にはなれなかった……"

"私も王都に行くわね……"

セシルは心の中でマノンに話しかけるのであった



 レボラ、コンティーヌ、ドミニク、エドモンドの四人も共に喜び……

 当然、その日の夜は宴会となるのであった

 ドミニクは飲み比べ対決を再び挑みまたしても完敗するのであった

 酔ったレボラにお尻を撫でまわされながらもセシルにとっては生涯最高の一日であった


 更に、その報を受け取ったセシルの父のジルベールは歓喜すると直ぐにルロワ家に向かう

 そして……私の父アルフレッドと共に宴会を始めるのであった


 その時に、アルフレッドとジルベールの間で私とセシルの"交わり"が勝手に取り決められるのである


 私の父のアルフレッドから"交わり"の許しが出たことは、セシルにとっては王国騎士になれたことと同じぐらい嬉しかった出来事であった

(当然、父のアルフレッドは酔った勢いで軽く口約束してしまっただけである)


 かくして、これより二週間後にセシルも王都にやってくるのである






  第九十九話 ~  大賢者の災難(女難第二波の到来)  ➁  ~ 




 マノンがレナと共に魔法工房の温泉に入っている頃、エレーヌはルメラ達四人をアカデミ-の宿舎へと案内をしていた


 旧・特別推薦生が使っていた豪華な専用宿舎は、現在は来賓者専用の宿舎になっている


 宿に到着すると導師総代のジェルマンとルシィが出迎えてくれる

 ルシィとエレ-ヌがルメラに軽く挨拶をする


 「遠路遥々、お疲れでしょう」

 「この宿舎には風呂もございますゆえ……」

 「まずは、ごゆるりと長旅の疲れを癒やし下され」

ジェルマンはそう言うとルシィの方に目をやる

 「この者がルメラ様達の宿舎での責任者にございます」

 「用向きがあれば何なりとお申し付けを」

ジェルマンはルシィを手招きする


「初めまして、ルシィ・ランベ-ルと申します」

「王立アカデミ-の導師をしております」

「専攻は医学です」

ルシィは自己紹介しルメラに挨拶をする


"おっきい人だな……"

"オレのオヤジと変わらないんじゃねえか……"

"それに……美人でスタイルいいじゃねえか……"

"こりゃ、うちの国なら男共にすげえモテるな……"

ルメラはルシィをみて心の中で感心している



 自然環境の厳しいシラクニアではルシィのような(頑丈)そうな女子が好まれる傾向にあるのだ


 因みに、大陸の国々によって女子の志向は異なっており


 ガリア王国ではレナやルメラのような白い肌と大きな胸の女子が好まれる傾向にあり、ゲルマニア帝国では軍事国家であるが故にユ-リアやシルビィのような凛とした女子が好まれる傾向にある


 ピオ-ネ三国は古くからの三女神信仰もあり、豊満な肉体を持つ大地の恵み豊穣の女神"デルメア"、控えめな肉体を持つ英知の女神"ミネルア"、鍛え上げられた肉体を持つ救いの女神"ルノン"のような容姿の女子が好まれる傾向にある





「私はルメラ・オールステット、シラクニア第一王女です」

「いろいろとご迷惑をおかけするかもしれませんが、以後お見知りおきを」

ルメラが柄にもない挨拶を済ませると他の三人も自己紹介を始める


「ユーリア・ハルヴァリであります」

「アイラ・ハールスよ」

「エルナ・エスコラです」

三人が順番に挨拶を済ませる


ルシィが四人を来賓者専用の宿舎に案内する、エレーヌも同行する


「凄く立派な造りですね」

「王立アカデミ-の宿舎は全てこのような立派なものなのですか」

ユ-リアが豪勢な造りの来賓者専用の宿舎を見てルシィに問いかける


「いいえ、一般学生の宿舎はこれよりも遥かに狭く質素な造りですよ」

「ルメラ様達は留学生ですが来賓者待遇ですし、あいにく女子の宿舎には空きがありませんので」

ルシィが答える


「そうですか」

「この宿舎には他に生徒はいますか」

ユ-リアはルシィに問いかける


「いいえ、ルメラ様達四人と世話役のエレーヌの五人のみです」

ルシィがそう言うとエレ-ヌは"えっ"と言う表情になる


"お爺様……そんな話聞いていないよ"

と思いながらもこの場では口にはしなかった


 既にエレーヌの私物は全てルシィの手により、この来賓者寮に移されていることもエレ-ヌは知らないのである


 かくして、その日のうちにエレ-ヌは一般女子寮から来賓者寮へと引っ越しすることになるのであった



 四人は割り当てられていた各個室に荷物を運び入れると風呂にでも入ろうかということになった

 豪華な造りだけの事はありさほど広くはないが、7~8人が入れるほどの立派な浴室も備えられてある


 エレ-ヌも一緒に入ることとなってしまうのだが、そこでの裸のお付き合いがエレ-ヌとルメラ達4人の距離をグッと近づける結果となる


 5人で浴室に向かうと浴槽にはお湯が入れられ暖かな湯けむりを上げていた

 何かの薬草の匂いが微かにする薬湯の湯のようである



 5人はゆっくりと服を脱ぐとお互いに視線を交わす

 初見での女子同士の裸体チェックである……



"この子、オッパイでかっ!"

"……まぁ……レナほどじゃないけど……"

ルメラの裸体を見たエレ-ヌが心の中で呟くその一方で


"乳も尻も、まぁ……普通だな……"

エレ-ヌの裸体を見たルメラも同じような事を考えているのであった



5人は浴槽に浸かると"はぁ~"っとため息を吐く……すると

「薬湯か…マノンを思い出すな」

「風呂も薬湯もマノンの置き土産だからな」

お湯に浸かるとルメラが思い出すかのように言う


「そう言えば、マノンって温泉好きって聞いたことあるわ」

エレーヌも思い出したかのように言う


「そうですね……」

「それに……マノンは薬草の他に医術にも詳しいですよね」

ユ-リアも思い出すかのように言う


「確かに……」

「死ぬかもしれない重病でも治しちゃうからね……」

アイラが感心するかのように言うと、その横でエルナも頷く


4人の言葉と表情にエレ-ヌの直感が働く

「……もしかして……4人ともマノンの事が好きなの」

エレ-ヌの呟くような問いかけに4人とも顔が赤くなる

「ふ~ん、そうなんだ……」

エレ-ヌは確信する


「そうですわ」

ユ-リアは堂々とした口調で言うと

「私たち4人はマノンの子供が欲しいと思っております」

「出来れば、その手助けをエレ-ヌ様にお願いしたいのです」

ユ-リアの単刀直入な言葉に流石のエレーヌも二の句が継げなかった


"マノンの子供って……"

"それってマノンとの交わりをお膳立てして欲しいって事でしょう"

"そんな事したら……"

"私、確実にレナに悶絶死させられるわよ"

エレ-ヌの脳裏に目の笑っていない笑顔のレナの顔が浮かび上がる

"どうしよう……"

エレーヌは苦しい立場に立たされることになってしまった


そうして、エレーヌはルメラ達4人の本当の目的も知ることになるのである



 そんな事など露知らず……その頃。マノンは魔法工房で爺のオウム(パック)と一緒に魔石を使っての魔力増幅に精を出しているのであった




第九十九話 ~  大賢者の災難(女難第二波の到来)  ➁  ~ 終わり


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