第21話…山賊襲来
見張りやったので、午前中は仮眠…
馬車の揺れは気になるけど、クロエが膝枕してくれた…
イヤァ~至福の時とはこのことかぁ…
超安眠できました。
Bランクのクソ野郎ども、死刑は見逃してやるよ…
仮眠が終わり、お茶を飲んでゆっくりしていると、周りがあわただしくなる。
「オッズがやられた。山賊かもしれねぇ、警戒しろ」
どうやら、100メートル先行していたBランクの1人が、倒されたみたい。
わたしは馬車の中から状況を確認している。どうやら囲まれたみたいだ。
場所は山中だけど、周りは開けている、運動場くらいの平地だ。大人数での襲撃にはもってこいだ。
馬車の後方に移動して、さらに情報を集める…
先頭のオッズは弓でやられてる。弓矢持ちが複数いるのか。厄介ね…
未来予測なら正対していれば10メートルくらいは反応できる。視覚外からだと、距離関係なく、喰らってしまう。
「ロード、エネミーサーチ」
いるな、3人か、先に無力化しないと、厄介ね。
Bランクがあたふたしている。目視で12人くらいいるからね…
まぁ、確実に負けるだろうな…
マルコが馬車から降りて、山賊の頭目らしき男に近づいてゆく。交渉するのか?
中々肝が据わってるじゃん。
でも、それは悪手だよ…
交渉を成立させたいのなら、戦力を拮抗させないとね…
ひょっとして、Bランクの戦力を読み間違えてるとか?まさかね…
と、その前に…
「ロード、エアフロー・マップ」
>ウインドディレクション・ウインドスピードをマッピングします
>>マッピングに成功しました
「エネミーサーチとデータを共有」
>>データの共有に成功しました。
「ロード、エアフロー・オートマチックコントロール」
>>エアフロー・オートマチックコントロール実行しました
そよ風がルビィの横を通り過ぎてゆく。ルビィの腰あたりから、子指の先くらいの黒い球が10数個、空に舞ってゆく…
空に舞った物体はユラユラと茂みの方へ向かい、消えていった…
…
「ま、まて、よく考えてくれ…ぎゃぁぁぁ!」
やはりね、マルコそれは自身の判断ミスだ。
「護衛のみなさ~ん。依頼主は死んでしまいましたぁ。このまま引き下がれば、逃がしてあげますよぉ」
だろうね、わざわざ危険をおかす必要はない…
最小の損害で最大の利益を得る。さて、Bランクは…
速っ…
もう逃げ初めてる…
馬車の中を確認。レイラは既に檻から出ている。ナイス判断。
「レイラ、ナイフは使える?レイラはここに残ってクロエとシルビーを守ってあげて」
「う、うん。アンタはどうするのよ」
「あたし?ちょっと悪者退治かな…」
「大丈夫なの?…わかった。クロエとシルビーには指1本触れさせないわ」
「レイラ、外に出て戦う事があったら、このベールを付けて戦って」
「うん。ルビィ…気をつけてね…その…死んじゃったら、許さないんだからねっ!」
はいぃ!いただきましたっ!
口元がユルユルになる…
なんたる至福よ…
馬車の位置から風下を確認…ちょうど集まってる所だな…
その場所にゆっくり歩いて行く…
女冒険者がニタニタしながら、山賊の集まっているいる方にゆっくりと歩いている…
なんとシュールな光景なんだろうか…
山賊の頭目が手を上げる…
首をかしげながら、手を上げ下げしている…
それが、『矢で射れ』の合図なのかな?笑えるわ…
「囲め!」
あらあら、それも悪手よ…
「お嬢ちゃん、その針みたいなので戦うつもりかい?」
エペの事を言ってるのね
「あぁ、今は使わないわ…」
山賊達は余裕の表情だ。剣をしまっている奴が何人かいる。傷つけないで、後でいいことしようとでも、思ってるのかな…
いい感じで囲まれたわね。そろそろかな…
――――――――
気高き風の乙女よ
大気より集い我が声に応えよ
邪悪を滅する矛となり
我が身を守る盾となれ
舞えよ、舞姫!
ロード、エアフロー・コントロール
――――――――
>エアフローマップを最新のデータに書き換えます
>術者のニューロンと結合します
>>エアフロー・コントロールは操作可能な状態です
>>前半の詠唱は理解することができません…
…だまれ!…
これは趣味なんだよっ…
AIのバージョンアップ繰り返したら、突っ込み入れるようになった…
「こいつ、なに1人でブツブツ言ってんだぁ?」
…聞こえないようにだよっ!…
微風がルビィの横をすり抜ける。ルビィが腰に付けている箱を開けた。微風にさらされ、箱に入っている黒くフワフワした物が、外に舞い散る。
ダウンだ。ダウンは風に乗って一面に広がった。
ダウンは水鳥の胸元からわずかに取れる羽毛で、タンポポの綿毛のようなものである。しかし、なぜ黒色なのだろうか…
ダウンはルビィの周りをフワフワと回り始め、徐々に広がってゆく…
ダウンは周りを囲んでいた山賊達にまとわりつくように広がった
ダウンが物に当たった瞬間、わずかに黒い微粉末が拡散している
「ぐぁぁ」「ぐぇっ」「ぐぼぉぉ」
「がぁぁ、目が、目がぁ」
その場で倒れる者、目を押さえて悲鳴を上げる者、その場で嘔吐する者、痙攣して倒れる者…
阿鼻叫喚とはまさにこの様を言うのだろう…
広がったダウンは、渦を巻きつつ収束し、ルビィの腰の箱に戻って収まった…
「ごめんね、今すぐ楽にしてやるからね…」
苦しがっている山賊を足で仰向けにして、手に持ったナイフで心臓を突き刺した…




