第2話…奴隷商
まずは城内探索だね。
色んなものを見てみたいな。
街の中は刺激にあふれている、何気ない商店さえも、感動で満たされる。あっという間に時間が過ぎてゆく。3時間くらい散策した辺りだろうか、ふと呼び止められる。
「すみません、ちょっとよろしいか」
2人の男に呼び止められる。
1人は中肉中背、着ている服は仕立てはいいが、趣味が悪い、悪く言えば下品。
笑顔を装っているが、目が笑っていないタイプだ。
もう1人は、用心棒だろう。巨躯で筋肉質、服もきちんとしている。
ぶっちゃけて言えばヤクザ2人組、幹部とその付き人と言った感じだ。
嫌な予感がしたが、無視して立ち去るわけにもいかない。
「はい、なんでしょうか」
「私、奴隷商レーガスのドーズと申します」
はい、直感ドンピシャ、見るからにそんな感じですよ~。
「契約師スキルをお持ちの、南ルビィさんとお見受けします」
え?この国の個人情報管理ザルかな…
たかだか3時間で個人情報出回ってるのかなぁ…
「少し驚かれましたか、無礼をお詫びします。
私ども職業柄、契約師に関する情報は独自の情報網を通じて情報を得ています」
―イヤイヤ、独自の情報網って、衛兵に袖の下渡してるだけだよね…
少し警戒をあらわにしている私に対し
「落ち人様が奴隷商に対して、よくない感情を抱いているのは重々承知しております」
「ですが私どもの奴隷商は公国の認可を経て、取引をさせて頂いています」
「1度話だけ聞くのも悪くない選択だと思います。この世界の常識についても、他では聞けない話も、沢山ありますので」
確かに…私が今、1番欲しているのが情報なのよね…
普通では聞けない情報がある可能性が高い。蛇の道は蛇と言うし…
安全を担保して、相手の1番ほしがっている物をチラつかせる。
抜け目のない相手だ…
「わかりました。話をうかがいます」
公国の認可という一言が決め手だった。
案内されたのは、オープンなカフェテリア。
クローズドな空間よりも、安心感がある。
こちらが不安がっていた事を考慮しての選択なのだろう。粋なはからいだ。
軽食をとり、軽い雑談をして、話は始まった。
いわゆるランチョンテクニックというヤツだ。緊張も不安もなく、すんなりと相手の話が耳に入る。やはりただ者ではない。
こちらの簡単な情報を聞き、相手がしゃべり始める。
小1時間くらいだろうか、この世界の常識、必要な情報が整理されて伝わった。
どれも有益な情報ばかりだ、それから奴隷商へのスカウト話に移っていった。
要約すると
・毎月の基本給50万
・契約1人あたり約20万
・月の契約者の平均は20人
・宿泊無料、3食付き、連絡が取れるのであればどこに住んでも構わない。
・休みは事前に言えばいつとっても構わない。
大体こんな感じ。貨幣は円に換算した。こちらの貨幣はまだ慣れていないから。
契約は1人10分位らしい。
思わず引いてしまうほどの好条件!
1日10分労働で年収約5,400万!!
商業ギルドでも契約師は募集しているが
出来高制で1契約あたり5万が相場らしい。
そもそも、商業ギルドでは契約師を使った契約は少ないようだ。
後で確認してみるか。
契約師のスキル、半端ないな…
辞めるときも3ヶ月前に言ってくれれば、構わないとのこと。
公国に契約師として申請するので、安心と言っていた。
とりあえず、話だけ聞いて、その日は宿屋に宿泊した。
奴隷商に宿泊するのが安全と言っていたが、やはり少し抵抗感がある。
翌日商業ギルドで話を聞いたが、概ね奴隷商が言っていた内容と変わらなかった。
契約師を使った商用契約は、まれなケースでかなり高額の契約にしか使われない。
悩みに悩んだが
とりあえず、短期で奴隷商に勤め、嫌なら辞める。
これが現状の最適解だと思った。