第二章 『異世界転移』
「「「やめろぉぉおぉっ」」」
俺は悪夢にうなされていたかの様に、飛び起る。
すると、そこにはあの白い空間が広がっていた……。
「なんだ、またここか……あの男達はどこに……」
現実なのか夢なのか。
どちらにしても耐え難いこの状況に、頭の中はぐちゃぐちゃだ。
「えらい目にあったねぇ~」
俺は、声の聞こえた方を睨みつける。
そこには靄の様な物がかかり、姿をはっきりと見ることは出来ないが、確かに何者かが立っていた。
「「「お前は誰なんだ!!」」」
と、俺はその者に怒鳴りつけたが、そんな自分と先ほどの男達の姿が重なり、吐き気がした……。
そんな俺の問いに、構う事なくその者は話を続ける。
「きみ~、さっきは僕の話も聞かないで異世界転移しちゃうんだから、困っちゃうよ~」
「い、異世界転移!?何を言っているんだ?」 その者が、あまりにも当たり前かの様に言うので、聞き逃しそうになったが、聞き逃してはいけない言葉に慌てて体が反応する。
「あぁ~。あときみには異世界転移お決まりの特殊魔法を授けておいたよ!!」
「ちょ、マジで何いっ」俺の言葉に被せる様に、その者は話を続ける。
「その魔法はね~【ライ・エイド】って言うんだけど、君の寿命が短くなるにつれて、強くなる魔法だよ♪」
さっきから訳の分からない事ばっか言ってんなよ!!と言ってやるつもりだったが、喋る事は叶わず、なぜだか、どんどん意識が薄れていく……。薄れゆく意識の中で、その者が俺に話し掛ける。
「まぁでも、使い勝手がいいもんじゃないから、気を付けてね~。それじゃあ異世界転移、楽しんで~♪」
そのふざけた言葉を聞き届け、俺の意識は完全に途絶えた。
そして今……俺の意識は戻っている。
それなのに、瞳を開けられずにいた。
明らかに夢ならもう覚めてもいい頃だと思うが、俺の頬に伝わる冷たく柔らかみの無い感触は、自室の布団のそれとは似ても似つかないからだ……。
おまけに体の至る所が、痛みで悲鳴を上げている。
だが、いつまでもそんな事を考えていても仕方がないので、勇気を出して瞳を開ける。
「はぁーーー」瞳に飛び込んだ景色に、深いため息をつく……。
鉄の棒が均等に配置された壁、部屋の隅のバケツのトイレ、奥の方で目を光らせる看守、そこはまさに牢屋と呼ぶほかなかった。
どうやら俺は、男達にボコボコにされて牢屋に閉じ込められたみたいだ……。
そして、あの靄野郎の言っていた事が本当なのであれば、これは夢ではなく異世界転移……現実だ。
にわかには信じ難いが、このリアルすぎる出来事を考えると、納得せざるを得ない。
だとすると、俺に授けたとか言っていた、特殊魔法やらなんやらの話も本当なのか……そんな事を考えていると、奥にいた看守がこちらに近寄り、話かけてきた。
「おぉー、やっと目を覚ましたか!!お前とんでもない事やっちまったみたいだなぁ」にやけた顔をしながら看守の男が言う。
「本当に悪気はなかったんだ……頼む許してくれ、ここから出してくれ!!」俺は牢屋から出たいあまり、偽りの謝罪をした。
「悪いが。そんな事私に言われても、私にはどうすることも出来ない。そしてもう一つ、お前はここら一帯を束ねる領主様に、これから……処刑される」看守は、真っ直ぐ冷たい眼差しをこちらに送りながら、言う。
「「「処刑!?ただ寝ていただけで??……ありえねーだろ!!」」」
俺は感情を表に出し、叫ぶ。
「まぁ、それだけやべー事をしたって事だ。この村の住民でも、あの神聖な場所に無断で入れば罰せられる……諦めな」看守はそう言うと、持ち場に戻ってしまった。
「クソッ!!」
何で俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ……そんな事を思っていると、ふと魔法の事を思い出す。
そうだ魔法だ!!魔法を使えばいいんだ。
靄野郎の言っていた事が本当なら使える筈だ……使い勝手のいいもんじゃないとは言っていたが、そんな事は今気にしている場合ではない。
「【ライ・エイド】」
俺は、恐る恐る唱えた。
その瞬間。俺の周りに円を描く様に、魔法陣が浮かび上がる。
「おいおい、マジかよ……」俺はあまりの驚きに、唖然としていると。
魔法陣が周囲の色を変えるほど光り出した。
それはもう綺麗としか言い様の無い光で、辺りを包み込んだ次の瞬間。
雷鳴と共に、俺の体から赤黒い雷の様な物質が放たれ、ドゴォォォンと言う音を立て、突風で大量の粉塵が舞い、視界を失う。
「ゴホッゴホッ……ま、まじで出来ちゃったよ……」
次第に粉塵が晴れ、事態を理解する事になる……どうやら俺は、魔法で牢屋ごと木端微塵にしてしまったようだ。
何が使い勝手が悪いだ、流石に威力強すぎだろ。
粉々になった牢屋を見渡していると、奥にいた看守が倒れているのが目に入る。
俺は瞬時に最悪のケースを想像し、体の血の気が一瞬で引いていくのを感じた……。
急いで看守に近づき、恐る恐る看守の生死を確認する。
「よかったぁ……」どうやら気を失っているだけみたいだ。
完全な不可抗力だったとはいえ、人殺しになってしまうところだった。
にしてもこの魔法、なんて力だ……。
そんな事よりも、取りあえずはこの場から逃げなくてはならない。
また捕まれば、今度はどんな目に遭わされるかなんて想像したくもない。
「「「だいじょうぶかぁ!!何があったんだ、誰かいないのかぁ!!!」」」
事態に気づいた他の看守達が近づいてくる。
「ヤバい、バレた……」
そして俺は気づくと走り出していた、走って、走って、走った。
「ゼェ、ゼェ、ゴホッゴホッ……」
もうずいぶん遠くまで来た、追われている感じもしない。
無我夢中で走ってきたので、ここが何処か分からないが、村から出れた事は確かだ。
「はぁー、取りあえず助かった……もう一歩も走れん……」
逃げ切ったその喜びから、ふぅーと肩の力をなで下ろそうとしたその時。
「「「やめてください!!!」」」
と、恐怖に震える女性の叫び声が、少し奥に見える大岩の陰から聞こえる。
正直走り疲れて、もう一歩も走ることなど出来ないと思っていたが、俺の体は自然と声の聞こえた方に走り出していた。
『作者のいといちと申します』
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