第一章 『余命宣告』
「ん~、真人くん君は……身体中に癌が転移している、そして寿命は長くて後……半年だね」
そんな残酷な宣告で俺の物語が幕を開けようとは、この時はまだ知る由もない。
俺の名前は時半真人、八重歯がチャームポイントだ、少し背が低いのは残念だがついこの間二十歳になったばかりの、ピチピチのナイス・ガイだ。
ピチピチ……ナイス・ガイには違いは無いが、今の俺はピチピチではないかも知れない。
時を遡る事、一時間前……
「まなとー、今日病院の結果分かる日でしょ?ちゃんと支度終わってるのー?」
「わかってるよ母さん、今やってるっ」扉一枚隔てた平和な日常の会話の様だが、俺は内心気が気でない……それは母さんも同じ気持ちだろう。
と言うのも、俺は高校を中退してから今まで真っ当に仕事に励んできたが、ここ最近体の調子が悪い。
特に夜遅くまで起きてる訳ではないのに、目の下のクマが日に日に濃くなっていく、それに加え原因不明の吐き気が一日何回も俺を襲う。
自身の若さもあり、そこまで俺はこの体調不良を気にはしていなかったが、母さんがどうしてもと言うので、病院を受診した。
そして今日、後一時間も経てば、この体調不良の原因が分かるのだ。
大して気にしてはいなかったが、実際に病院を受診して今日結果が分かるとなると、大したことは無いだろうが意外と緊張するものだ。
「母さん、じゃあ行ってくる」そんな少しの緊張を悟られないよう不格好な笑みを浮かべて言う。
「しっかり診断結果聞いてくるのよ。緊張しないで気を付けていってらっしゃい」母さんに緊張してる事を見破られ、俺は恥ずかしくなり急いで家を出た。
病院に着くと医師の口から信じがたい言葉が飛び出す。
「ん~、真人くん君は……身体中に癌が転移している、そして寿命は長くて後……半年だね」
ん?この人は今何て言ったんだ、俺が癌……余命半年……この人は何を言っているんだ。
医者は話を続ける。
「君の気持ちは分かる、だから冷静に聞いてほし……」だが俺の頭には、それから一切話は入っては来なかった。俺に突き付けられた現実を、受け入れたくなかったのだと思う。
気づくと俺は公園のベンチに座っていた。どれぐらいの時間が経ったのだろう……。
辺りは薄っすらと暗くなり、家と家の隙間から黄金色の光がこちらを照らしている。こんな状況なのに不思議と涙は出なかった、悲しみと言うよりも、絶望と言う言葉がお似合いだからかもしれない。
スマホを見ると母さんからの電話の着信が何件も入っていた。
その着信履歴を見て目頭が熱くなる。
そろそろ帰らないと母さんが心配するな、そう思ったその時。
「ぅおえぇぇえ……」また吐き気が俺を襲う。
この吐き気は病から来るものなのか、はたまたこの現実を拒む体の拒絶反応なのか、今の俺には分からない。
そんな吐き気を抑え家に帰ると、心配そうな顔をした母がこちらに近寄ってくる。
「診断結果大丈夫だったよ、少し働きすぎだってさ、栄養剤の点滴を打ってもらってたから、遅くなっちゃた」母さんが喋り出す前に、いずれ分かる噓をつく。
こんな嘘をついてはいけない事ぐらい俺にだって分かってはいるが、あんな心配そうな顔をする母さんに、本当の事を言う事は出来なかった……。
「そうなの……なら良かった。本当に心配したんだから、夕飯はどうする?」
母さんの安心して喜ぶ姿を見て、余計に本当の事を言える気がしなくなった。母さんに夕飯は要らないと告げ、俺は現実から逃げる様に自室の布団に包まる。
今日はもう寝よう……。
そうは思ったが、簡単に眠りにつけるハズもなく、俺は布団の中で長い時間自分が起きているのか、眠りについているのかも分からない、そんな曖昧な意識を彷徨っていると、どこからか聞きなれない声が聞こえた気がした。
俺はこの曖昧な意識を断ち切る様に、瞳を開ける……。
そこに広がった景色には、目が霞むような真っ白な何も無い空間が広がっていた。
そこには確かに何者かが立っているが靄の様な物がかかり、姿をはっきりと見る事は出来ない。
俺はその光景を見て、やっと眠りにつくことが出来たと確信し安心した。
するとその者が俺に向かって「君は……。」と何か話しかけようとしたが、俺の意識は遠のき……深く暗い意識の底に落ちていくのだった……。
騒がしい。
怒鳴り声の様な音、水を掛けられた様な衝撃、体が濡れているかの様な気持ち悪い冷たさで目が覚める。
最悪の目覚めだ……。
瞳を開けると、そこには中世のヨーロッパの様な見覚ある筈の無い景色と、今にも殴りかかって来そうな剣幕でこちらを睨む男達。良く言えば歴史のある、悪く言えば古臭い服装をした男達だ。
そして、最悪なことに俺の体は何処かに縛り付けられているようだ……。
俺は、もう一度瞳を閉じて……何なんださっきから訳の分からない事ばかり、これは夢にしても出来が悪すぎる。
まさに悪夢だな、と頭の中で先ほどの白い空間の事、今自分の置かれている現状を嘆いていた。
ドスッ……。
右頬に重たい衝撃が走る。
「ぐわっ」
俺は殴られていた。そしてその痛みのリアルさに、これは夢じゃないと恐怖で震えた。
「聞いてんのかお前っ!!お前は何者なんだ、なんであんな場所で寝ていたんだ!!しかもそんな奇怪な服装をして!!!」
皆が一斉に怒鳴っているため聞き取るのが大変だが、取りあえず皆同じ様な事で怒っている様だ。
正直、何がどうなっているのか分からないのはこっちの方だ!!と怒鳴り返したい気持ちをグッと堪えて、ここは下手に。
「すいません、何がどうなっているのか本当に分からないんです。どなたか状況を説明しては頂けないでしょ……」
ドスッ……今度は左の頬を殴られた。
「ぐぁあぁぁぁあぁ……な、なん、で、こ……こんな酷い事するんだよ……」
余りの激痛に言葉を詰まらせながらも俺は気丈に振る舞う。
男達の話を聞くと、俺はこの村の人達がとても大切にしている神聖な場所で、イビキをかいて寝ていたらしい。
そして今、何でそんな事をしたのかを問われている。
そんな事を問われても、俺は自分の部屋の布団で確かに寝ていたのだから、答えられる筈がない……。 下手な事を口走り、また殴られては体がもたないので沈黙していると
「お前の名前は何だ?」とやっと答えられる質問が来たので食い気味に、「時半真人」と答えた。
「お前、やはり馬鹿にしてるな。なんだそのふざけた名前は、もういい」
と言うと男達全員で俺をボコボコにした。
薄れゆく意識の中で、この理不尽すぎる状態を恨み、ふざけているのはお前らだろ、と心の底から思ったが俺の意識は途切れ気を失った……。
『作者のいといちと申します』
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