iv章
由賢は大切な友達だ。だからこそ縮めにくい距離感がある。お互い侵犯になりそうで。由賢は情熱も能力も兼備していて、過度なくらい謙遜だ。「あはは…」と笑う姿に、世も知らない優しさが現れている。背は高いのに行動はなんて小さくて注意深いのか。
そんな様子は可愛いけど、最近はだんだんもどかしく思えてきた。普段も視線をあまり合わせない彼女だけれど、わざと視線を逸らすことが増えた。教会に余計に呼んでしまったのか。正直その雰囲気は外部からは混ざりにくかったのだろう。
いや、本当にぎこちなくなったのは何週間前の下校道、由賢が急に倒れたその日からだった。高級車から白ずくめの男が現れて「予想剽窃」を主張したという話は、信じがたいが、信じるしかなかった。だって由賢はうそをつくとすぐばれるから。今、私を避けているように。
いや、本当に避けていたのは、彼女の前で心にもない話ばかりしていた私の方かもしれない。
「ヘリムさん、社長いつ戻るかわかる?」
練習室のそば、素朴さが過ぎる事務室に独り、魂が抜けた表情で座っている洪惠臨代理に訊いた。
「知ーらない! 電話にも出ない! 一生戻るなー!」
「ヘリムさんが電話かけなかったんじゃなくって?」
「うるっさい!」
酔っぱらったように叫びながら、〈うるさい〉という10年前のK-Popを歌い出す彼女。
ようやく入れたソウル(Seoul)所在の芸能事務所に週に一回は必ず通っている。社長は作曲家でもあって、上るたびに彼のディレクト通りに何度も録音をした。社長の指示は繊細で、自己主張が強く、同じ小節を二か月以上、ほぼ何百テイクも取った挙句、やっとデビュー曲が完成した。問題は、コンセプト・スタイリングから始め、写真に、舞台の予約までした後、映像の撮影を目前にして、急にデビュースケジュールが崩れ、社長が夜逃げしたということだ。そして、その失踪日時と、由賢の前に高級車が現れたという日は、一致する。
「cuz your life~ cuz your mind~♪」
「ヘリムさん」
「?」
「私が歌ったやつ、韓国でマジでヒットしそう?」
「んなわけあるかよ!」
彼女は断言した。
「韓国でビヨークを程よくパクった曲がヒットするはずあるかよ!」
「ヘリムさん…、月給出てる?」
「ううむ…、たぶん退社しないとまずいかもしれないね」
「出たらまた連絡してね?」
由賢が作曲した曲とメロディーが重なってデビューが不発した新人が私だと知れば、あの子の性格上、自己責任でもないのにすごく気まずそうにしてるだろう。そうなることが不憫だから黙っていたけど、実は私自身からだまそうとしたのではないだろうか? 私だってあの子の失策じゃないとわかってても、状況と責任を混同して彼女にムキになったのではないだろうか? 由賢はいつも自分が才能がないだのなんだの言ってるけど、実際に有意義な成果が出ているのはあの子だよ?
社長が由賢のところに言って何を言ったのかは知らないが、とにかく由賢はその事実を知ったようで、私が最初にとった曖昧な態度のせいで彼女が苦しんでいるとすれば、結局私が堂々となるしか方法はない。
復讐の相手は確かにせよ。




