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鮭様大好き♡秀吉絶対ぶっ潰す!  作者: みたらし丹後
最上家細うで繫盛記
22/66

21.弟

〇大崎重雄〇

「ささ助左衛門殿。一献。」

 銚子を氏家定道殿に差し出す。


「やっ!これは(かたじけな)い。」

 トクトクトクと白く濁った酒が、定道殿の盃に注がれる。

 定道殿が、喉を鳴らし。その盃をくいっと飲み干す。 

 

 旨そうな濁酒(どぶろく)じゃわい。

 飲みたい。が楓の体(四歳児)で、飲むわけには、いかんのう。

 じっと定道殿が、飲む様子を見つめていると。定道殿が、返杯を返してくる。


「ささ。滋野様も一献。」

 ニカっと良い笑顔で、銚子を差し出してくる。定道殿。


「定道殿。われは今生の前より、酒は好きでな。目がないほうです。しかし。」

 胸に手を当てながら答える。

「五つ児に飲ませるわけには、いきません。楓殿が成人なされた暁には、助左衛門殿。存分に酌み交わしましょうぞ。」


「誠にもって。返す言葉もありませんな。」

 定道殿は頭を掻きながら、答える。

「ワシも楓が、成人するまで。死ねませんな。滋野様と一献交わすまでは、生き延びて見せますからな。」


 (さわ)やかな。春風(しゅんぷう)のような御仁(ごじん)である。


「左様です。叔父上。滋野様への盃は、ワシが受けましょう。」

 定直殿が盃を差し出し。定道殿と酌み交わす。


「楓。お前は本当に、家族に恵まれているな。」


『そうだね。感謝しないと。』

 

 楓と心で、会話していると。定直殿が、耳打ちしてくる。他の者の目を気にしている様子で、周りに目配せをしている。

「滋野様。医術には、やはり精通されておられますか?」


「はい。薬祖神様の娘御様の、御使(みつか)いですから。」


「では、後ほど()ていただきたい。者がおります。何卒良しなに・・・。」

 耳打ちしながら、頭を下げる定道殿。


(うけたまわ)った。」

 誰の診察か分からんが、医業はワシの畑だ。定直殿の縁者なら、しっかり()てやらんとな。


◇◇◇


 朝餉の後。家人に手伝ってもらい。神棚に、四方那草姫(よもなくさひめ)御神札(おふだ)を祭る準備が整った。家人全員に居間と、廊下に集まってもらった。

 家長の定直殿を筆頭に。大叔父の定道殿。用人。侍女。女中。下男。総勢28名の大所帯である。神棚の前に祭壇を立てて。三方(さんぽう)に先ほどの朝餉の一部。米や酒などを載せた。


「皆さん。これより。神棚に神様を祭ります。軽く礼の姿勢をしてください。茂助(もすけ)よろしいですか?」


「はい。お嬢様。」下男の茂助に「四方那草姫命(よもなくさひめのみこと)」と書き込んだ木札を、神棚の(やしろ)の中に入れてもらう。大社造りの神棚は、その構造上。後ろから、御神体を入れるしかない。裏の木枠を(はず)す作業は、かなり難しい。器用な者が必要なのである。


「カタン」と裏を外し、器用に中に木札を納める。茂助。


 急遽。お八重や侍女達に、作ってもらった。巫女服に身を包み。浅く一礼。三歩前へ。一礼。二拝。

()神床(かんどこ)に仰ぎ(まつ)る 掛けまくも(かしこ)四方那草姫命(よもなくさひめのみこと) 産土大神等(うぶすなのおおかみたち)の大前を(おろが)(まつ)りて (かしこ)(かしこ)みも(まを)さく・・・」


 祝詞(のりと)を奏上しながら。四方那草姫(よもなくさひめ)に念じる。


『のじゃ~~。随分と早い呼び出しじゃの。・・・おおう神棚できたのか。』


「約束通り造ったよ。あと(ほこら)も近日中にな。で。お前さん2年経ってたの知ってたな?」

 姫に言葉で、詰め寄る。


『当たり前じゃろ。自力でわれの神域に入ってきた者に。いちいち細かい話などせんのじゃ。』

 くっ!悔しいが。正論だ。


「・・・その話は後でな。とりあえず今ここにいる者28名に。お前さんの託宣(たくせん)(くだ)してもらいたい。定直殿の腹切(はらき)りを止めた時みたいにな。」


『お安いご用なのじゃ。で?何と言えばよい?』


「われは四方那草姫(よもなくさひめ)である。そちに福を授けようぞ。・・・・こんな感じで頼む。」


『分かったのじゃ。』


 暫くすると。礼をしている全員がビクリとしたり。辺りをキョロキョロと見回したり。中々良いリアクションを見せ始める。


「皆さまお(たいら)に!四方那草姫(よもなくさひめ)様の神託(しんたく)が、(くだ)されました。姫神様は皆さまのことを我が子のように、ご案じ召されてます。姫神様の御慈悲(おじひ)恩寵(おんちょう)に感謝しましょう。」

 

 皆。目に涙を溜め深く拝礼した。

 よし、掴んだな。


『奉納すまんなのじゃ。早速フウといただくのじゃ。もう良いかなのじゃ?』


「あともう二つ。一つは、楓の母君(ははぎみ)が、大和まで、薬師如来詣(やくしにょらいもう)でに行っておるのだが、夢枕(ゆめまくら)にでも立って。帰るように伝えてくれんか。[楓は目が醒めましたよ。]とでも言ってな。」


『むう・・。神使いちょっと荒くないかなのじゃ。』

 薬師如来と聞いて、機嫌が急降下する。よも姫。


「そうそう。プレミアムお子様ランチ。」


『ゴクリ。なんじゃその気品 (あふ)れる名は?』


「あとプリンアラモード。これらは貴人用の特別な食事でな。次回はそれらを饗応(きょうおう)しようかと。思ってたんだが。」


『なんじゃみずくさい。われと大崎殿の仲ではないか。喜んで伝えるのじゃよ。で。もう一つは?』


「楓の加護って。疫病(えや)みや怪我にも利くのかの?」


『そうじゃよ。疫病(えや)み。病に利く。怪我は治りが、早くなるが、致命打を受けると普通に死ぬのじゃ。』


「なるほど。では今病などで、死んでは困るもの。定直お雅夫妻。定道殿。楓の弟御。用人の岡田弥太郎。そして下男の茂助。この六名にも同様の加護してもらえないかの?」


『分かったのじゃ。で。次いつ来るのじゃ?』


「2年後に伺おうと思っとるよ。よろしくな。」


『ぷれみあむお子様らんちと、ぷりんあらもーど。忘れるでないぞ。』


「ああ。分かったぞい。」


 こうして祭事は終了した。


◇◇◇


「滋野様こちらへ。」

 定直殿に案内されて、お雅さんの妊婦部屋だった。奥の間に通される。

「定直殿。お城への出仕(しゅっし)は、よろしのですかな?」

 通される途上。気になったので、聞いてみた。


「本日は休ませてもらいました。大事な事なので。」

 どうも定直殿の顔色が、優れない。心配事のようだ。


 奥の間に。乳児が寝かされている。羽毛布団にくるまれていて、2年前を思い出した。


「この子は道丸(みちまる)。氏家家 中興(ちゅうこう)の祖である。氏家 道誠(みちなり)様より名を頂戴した。ワシの子であり、楓の弟であります。」


『私の弟。道丸ちゃん。』楓が即反応する。


「三日前より。熱が治まらず。最上家の薬師(くすし)(さじ)を投げる次第にて。」


「あい。分かりました。全力で()ます。」ぜえぜえと息を苦しそうに、呼吸する。道丸殿を観察しながら。答える。


 まず道丸殿の視診(ししん)触診(しょくしん)。顔から首にかけて発疹(ほっしん)。体までは進行していない。道丸殿の口腔をそっと開けて観察。口内にコプリック斑なし。額に手を当ててみる。高熱だ。脱水状態も酷い。

 麻疹(ましん)発疹期(はっしんき)だ。ワクチンは当然ない。体温を下げて、水分を補給しよう。


「定直殿。道丸殿の看病をした方は、誰ですか?」


「お八重が付き切りで、見てくれました。」


「お八重殿をここへ。」

 直ぐにお八重がきた。


「八重にございます。滋野様。」

 道丸殿を心配そうな顔で見ながら。挨拶する。お八重。


「お八重殿。貴女は麻疹(はしか)(かか)った事がありますか?」


「はい。幼少のみぎりに。」


「定直殿は、如何ですか?」


「ワシも(わずら)いました。まさか!道丸も!」

 慌てる定直殿。


「定直殿。お(たいら)に。では、この後。道丸殿の世話は、お八重殿と私と麻疹(はしか)(かか)ったことのある。家中の者のみで、行います。」

「道丸殿は麻疹(はしか)です。進行しています。この状態を放置していたなら。危なかったでしょう。」


「なんと!麻疹(はしか)であったか!」

 愕然とする定直殿。

 お八重は手を口に当てて。ヘタヘタとそこに座り込む。

 この時代の麻疹(ましん)は治療法が確立しておらず。合併症や高熱で、死亡率が高かった。


『うあああん!道丸ちゃん!死んじゃう!死んじゃうよ~!』

 楓が大号泣である。


「楓落ち着け。死なんし。死なせんよ。お前が中で大泣きすると。道丸殿の治療が遅れるぞ。」


『うん。分かった。御爺様よろしくお願いいたします。』

 グスグスと嗚咽(おえつ)しながら。耐える楓。


 さてと。

「お二方。どうされた?まるで訃報を聞いた。者の顔ではないか。われは滋野善盛(しげののよしもり)である。薬祖神の娘御様の御使いですぞ。この家の宝。道丸殿を助けます。さあ!腑抜(ふぬ)けている場合ではない。手伝っていただきたいことが、山ほどありますよ。」


「はい。」

 定直殿は気を取り直し。お八重はすっと立ち上がった。


 まず。お八重に桶一杯のお湯と。桶一杯の井戸水。塩と水あめを用意してもらった。

 麻疹に罹患(りかん)したことのある。女中2名にも手伝ってもらい。道丸の両わきの下(腋下)に、井戸水で冷やした。手ぬぐいを挟む。これを繰り返し行う。

 続いてお湯を椀に移して、そこに一摘まみの塩と水あめを入れて、よくかき混ぜる。水あめが溶けたところで、指先を入れて味見をする。

 ふむ。子供は甘い方が、よく飲む。痩せてるしよかろう。

 更に水あめを足して、かき混ぜた。

 

 お八重に道丸の上体を起こしてもらい。銚子に入れた塩水あめ水を、そっと口に注ぎ込む。

 はじめ水の感覚を口内で拒んでいたが、甘い味に気が付いて

、次第にこくりこくりと喉を鳴らして、飲み始めた。


◇◇◇


 治療を開始して。約2時間が経過した。熱が下がり。落ち着いてきたので、お八重たちに任せて。居間へと向かう。

 居間の神棚に一礼して、姫神に念を送る。


『なんじゃ。お食事中なんじゃが。』

 もきゅもきゅと咀嚼する音が、聞こえてくる。


「すまんな。さらにロイヤルミルクティーも(きょう)しよう。」


『ありがたい。で。』


「楓の弟御の加護は、どの位で効いてくるのかの?」


『もう効いてるのじゃ。明日には平癒(へいゆ)なのじゃ。体冷やして。水飲ませたのは流石じゃの。』


「見てたのか。」


『一応神じゃからの。加護した者の様子は、全て見える。』


「・・・いや恐れ入った。手数かけた。すまなんだな。」


『どうじゃ。恐れ入ったかなのじゃ。』

 フンスと姫が鼻息を上げて、通信が切れた。

次回投稿は02/28の予定です。

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