16.浦島ショック
新章開始です。
〇氏家楓〇
四方那草姫の神域から、離れる時が来た。
よも姉ちゃんが、本殿の南側を向き。一回 柏を「ぱん」と打つ。
「ブゥゥゥン。」と低い低音が鳴り響き、青白い雷のような光と共に外扉が、南西に出現する。そして。
「バタン。」と扉が開く。
「たった2年じゃったが、楽しかったぞ。次は30年以内にまた遊びに来て給れなのじゃ。」
「え?2年?」爺さんと私の言葉が、重なる。
「はよ渡れ!扉が閉まるのじゃ。」「閉じたら1年開けられぬぞ。」
よも姉ちゃんに急かされて、あわてて扉をくぐる。
たった2年って何?どういうこと?
◇◇◇
眼が開く。暫く「ぼー」っと景色を眺める。既視感のある景色。板の模様。あっ私の部屋の天井だ。でも天井なんか黒くない?
ああ帰ってきた。
起き上がって、部屋の中を見る。あれ?なんかオカシイ。部屋に巨大な仏壇が、置いてある。そして。
「臭い!何ここ!?めっちゃ臭~い!」っと鼻を押えて絶叫する。
部屋中燻製と、いぶりがっこと、タバコのやにをブレンドしてまき散らしたような臭いが、充満している。
たまらず、部屋の外に飛び出す。
この神域にいた2日間で、私の部屋どうしちゃったの?大改悪!!激的ビフォーアフターですよ。火災でもあったのうち?
廊下から周りの様子を、キョロキョロと眺めるが。特に周りは2日前と変わっていない。
もしやと思い。クンクンと寝間着の袖を嗅いでみる。
「ブワっ!クサ!」手の甲や腕の肘まで、捲り上げクンクンと嗅ぎまくる。
私全身から、異臭放ってるんですけどお!!
昨日お風呂入ったんですけどお!
何これ!?体臭なの!?加齢臭や腋臭が可愛いレベルだよ。燻製娘って呼ばれちゃうよ。
『落ち着け小娘!』
あっ爺い!ちょっと説明しろよ!責任者呼んでこいよ!裁判起こすぞこらあ!って爺い?また戻ったのね。
いやいやいや!神域の外で爺いと、脳内会話したことなんてない!なんなの!?一体全体なんなのよ!!
『ひっぱたくぞ!クサヤ娘!』
!!クサヤほどじゃないです~。あ~とっても傷ついたんですけどお。
ハラスメント受けちゃいました。
スメハラですよ~。謝罪と賠償を要求したいんですけどお。・・・そんなに臭い?
『落ち着いたか、安心しろそれほどは臭くない。』
あ~よかった。しかしなんで爺さんと。心の中で会話できるのさ。やっと分離できて、清々したのにさ。加齢臭まで始まるんじゃないか。と不安ですよ~。ついでに変態エロまで移ったら救いようないじゃない、出歯亀爺さん。
『やかましい!スメハラは受けた者が、訴えるハラスメントじゃい。このうんこ臭娘!』
う!!今んこ臭娘って言った?言ったよね?
上等じゃい!出てこいやこらあ!奥歯ガタガタ言わせたろかい!!
脳内の爺さんと、わちゃわちゃ口喧嘩していると。
ガシャン!と何かが割れる音がして、そちらを見ると。女性が廊下に座り込んでいる。辺りには、お盆と割れた瀬戸物が、散乱している。
えーと・・。ああ、お清だ。
お清?大きくなってない?主に胸が?
座り込みながら、目に涙を溜めている。胸が大きくなってるお清?に近づいて。
「お清?お清なの?」と話しかける。
お清(仮)はコクコクと頷いて、立ち上がろうとするが、立てないらしい。
「ひ・・姫様。よ・・よくぞ・・お目覚めに。」
泣きながら、こちらを見る。お清。頬から、ぽたりぽたりと涙が滴っている。
こんな娘だっけ?と思いながら。お清の背に手を当てて、さすりながら。
「どうしたの?大袈裟だよ。確かに2日寝てたら、みんな心配するよね。」
お清は、顔を左右に振り。
「姫様2年で、ございます。2年の間お目覚めになられず。弟君様がお生まれになり。奥様は、今、姫様の快癒祈願の為。大和の薬師寺に、参られております。」
「な・・・なんだってー!!」
◇◇◇
〇氏家定直〇
屋敷より、急報がお城に届いた。
我が家の用人の岡田弥太郎が、血相を変えてお城に駆け込み。ワシに取り次ぎ願いたし。と申し出てきたと奏者より、取り次ぎがあった。
「今は、殿との打ち合わせである。待たせておけい。」
ワシが奏者に告げる。
「否とよ。」
義守様が、それを止める。
「殿。お示しが付きませぬぞ。」
殿を諫める。
「何な。氏家家の大事は、我が最上家の大事よ。よいよい岡田をここへ。」
暫し後、弥太郎が通されてきた。緊張しているのが、よく分かる。
「ご・ご尊顔を拝しまして、恐悦至極に存じます。」
殿に平伏した弥太郎の額より、ツーとひとすじ汗が垂れる。今は3月である。それほど暑くはない。冷や汗であろう。
詮ない事よ。ワシに取り次ぐつもりが、殿の御前である。
「うむ。伊予守。」
義守様がワシに振る。
「はっ!して弥太郎。如何した?」
殿に軽く一礼して、弥太郎に訊ねる。
「はい!楓様がお目覚めに。」
「なんと!!。」
弥太郎の急報に、愕然とする。
「し、して楓の様子は如何に?」
「はい。すこぶる健壮にて。お清を伴い、用人部屋まで歩いて参られました。」
2年と4か月に渡り、寝床に臥せていて。普通に歩けるわけがない。やはり神仏の加護を、受けていると言う。お雅の言も誠であるやもしれん。
「ほう、件の娘御であるな。巷で噂になっとる。余の耳にも届いておるぞ。」
殿が扇子をパチンと鳴らす。
「玄蕃からも聞き及んでおる。猪肉を配り、脚気を治したとな。薬師如来の再来と目されとるとも。」
「は。恐悦に存じます。如来様のご再来など、恐れおおい事にて。」
「謙遜するでない。まあ良い、今日は開きぞ。落ち着いたらな、その娘御をな、一度連れて参れ。」
「かしこまりました。」
お城を後にし、弥太郎と共に屋敷へ向かう。
楓と話したい。聞きたい。2年と4月に渡り、繋げなかった父娘の絆を深めたい。弟を見せてやりたい。いろいろな思いを募りながら、家路へと急ぐ。
〇氏家楓〇
お清を伴い、用人部屋に行く。歩く私を見た家人は驚愕して、屋敷は蜂の巣をつついたような、騒ぎになった。
侍女筆頭のお八重は、その場に座り込み。手を合わせて号泣して、用人の岡田弥太郎は、登城中の父へ、急報に走る。
猛烈な空腹を覚えて、湯漬けを用意してもらい。お八重にお願いして、お湯を用意してもらう。
湯浴み着に着替えて、今入浴中である。
「は~。生き返る。お清ありがとうね。この2年世話かけちゃったね。」
お清に湯浴みを手伝ってもらい。おおよその2年の経緯を聞いて、湯船に浸かっているところである。
「姫様は、そのお食事もほぼ召されずに、お通じとお小水もなく。それどころかそのお体より、清々しい香りを部屋中に漂わせられてました。全くお世話できなくて、清は悲しゅうございましたよ。」
香り、清々しい、あっ。
ふとフウお姉ちゃんの姿が、目に浮かんだ。
「でも目覚めた時。私臭かったよ。」
「あれは、寝たままで血色も良く。食事もお水も取られない姫様を生き神さまと、崇めるものの噂が広がり。近隣の山伏や祈祷師が噂を聞きつけて、こちらに押し掛けました。」
「護摩焚きや、末香を焚きしめ、一切姫様に触れてはならぬ。と100日か200日後には快癒するであろう。と、お殿様から祈祷料をせしめて、ホクホク顔でした。」
「ほう。」
お清が、私を見て「ヒッ!」と軽い悲鳴を上げる。
おそらく。こめかみに青筋を立てて、目つきが悪くなっているのだろう。
私のDEATH NOTEに、祈祷師と山伏を書き込む。
いぶりがっこの恨み。忘れんぞう。おのれ。憎い。許さんぞ。許さんぞ。
よも姉ちゃんの真似をしていると、「ぱしっ」っと頭を叩かれる感じがした。
『やめんか。あほう。』
このあと爺いに、正論で論破され、滅茶苦茶説教された。
鮭様登場カウントダウン開始。
02/17誤字改行修正




