00.プロローグ
初投稿です。よろしくお願いします。
「キンコーンキンコーン・ピピピピッ・ピピピピッ・・。」
聞きなれたベッドサイドモニターの音がする。
うん?
眼が開かない・・・。
ワシは寝てるのか?
意識がはっきりせんな、濃い霧の中を彷徨い歩いているような感覚だ。
ベッドサイドモニターのアラームピッチが、上がっている。
「キ・キンコーン!キ・キンコーン!ピピピピピピッ!ピピピピピピッ!」
ここはICU(集中治療室)なのか?
「親父!」
「おじいちゃん!おじいちゃん!」
息子と孫の声がする。
・・・・・ああ・・思い出した。風呂に入って意識が暗転したんだったな・・・。
卒中か梗塞か・・・。
酒を飲み過ぎたか・・・。
不思議と何も苦しくない。
思えば充実した人生だった。
整形外科医として、活躍する場をいただいて40余年。
医師会の副会長も務めて、先年には紫綬褒章を授与された。
妻には先立たれたが、息子はワシと同じく、医師となってくれた。
思い残すことはない・・さてさて十万億土とやらに、旅立ってみるか・・。
不意に「キーン」と甲高い金属音がして、眼を閉じているのに、明るい真っ白な衝撃が、全身を突き抜けた。
もうベッドサイドモニターの音も息子達の声もしない。
静寂な世界だ。
大崎重雄享年78歳。
脳卒中であった。
02/13改行修正。