怯える午後の話し合い
朝になり、目が覚めゆっくりと体を起こすミク。ぼーっとしていると、ミクが起きたのに気づいたリコが声をかけた
「ミク、おはよう」
「おはようございます……」
リコに返事をしながら、ベッドから降りソファーに座るミク。クルミとモモカもミクが起きたのに気づいて、モモカが温かいお茶を淹れはじめた
「体調悪い?大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
みんなでお茶を飲んでいると、リコが少し困った顔でミクに話しかけた
「ミク、あのね。さっきレグスさんが来て、後でミクの本を調べたいって言ってて……」
と、リコが話をしていると、黙り込んでしまったクルミとモモカ。三人の様子に、心なしかミクも少しずつ落ち込んでいく
「ダメって言いたいところなんだけど、そうもいかないから……私達も一緒にいくから」
「……はい」
「レイさんも来るって言ってたから、あまり無理はさせないからね」
「……はい。大丈夫です」
モモカの話にも、落ち込み気味に返事をするミク。すると、突然リコが立ち上がり、ミクの手を引っ張って歩きはじめた
「朝ご飯食べに行こうか。今日はパンケーキ食べよう、ねっ。ミク!」
「……はい。ありがとうございます」
お昼ご飯の後、魔術練習場に集まったリコ達。隊員達の姿はなく、部屋の真ん中にはレグス、少し離れた壁に背もたれているレイの姿があった
「体調はいかがかね?」
レグスから少し離れて立ち止まったミクとリコ達に、レグスが機嫌よくミクに話しかけると、急に声をかけられ一瞬ビクッとなり体が強ばったミクは、あたふたとリコ達の顔を見はじめた
「えっと……あの……」
「おや、嫌われたかな?」
ミクの様子を見て、クスッと笑うレグス。その様子を見たリコがボソッと呟いた
「だってねぇ……」
「ちょっとリコ……」
呟いたつもりが意外と練習場に響いたリコの声に、慌ててリコの口を塞ぐクルミ。リコの話した内容に、レイは深いため息ついて、レグスは笑い、笑ったままミクの所に近づいていく
「すまないが、君の持つその本を読みたいんだ。少し貸してくれないかい?」
と、レグスがミクが大事そうに抱える本に指を指す。だが、ミクはそれに反するように、顔を横に振って、本を渡さないように更に大事そうに本を抱えた
「でも……この本は大切な本だから」
「そうだね。その本は、お母様からの大切な本だって聞いたよ。それじゃあ、もう一つの本を借りてもいいかね」
「……絵本をですか?」
絵本も渡したくないミクは、本と重ねて持っていた絵本を隠そうと、隣にいたリコの背中にミクごと隠れた。その姿に、ふぅ。と小さくため息ついたレグスが、ミク達の様子を見ないふりをしていたレイの方に向いて、声をかけた
「ではレイに聞くが、その絵本というのは読んでもいいのかね?」
「ええ、構いません。一度、魔力や変わった所は見当たらないと検査して出ていますしね」
レグスの質問に機嫌の悪そうに答えるレイ。その返事にレグスは笑い、リコ達は心配そうにミクを見る
「えっと……あの……」
リコ達の視線に戸惑うミクのそばに、少しずつ近寄っていくレグス。その気迫に、更に戸惑いうろたえるミクは、本を片手に持ちリコの服をつかんで、顔を見られないように隠れた。そんなミクに、レイと話していた雰囲気とは違い、レグスがミクに優しく声をかけた
「大丈夫、その本を汚しはしない。すぐ返すよ」