教室で突然、欲望ゲームが始まった
あなたに欲望はありますか?
欲望のまま読んでください。
この世界は欲望にまみれている。
クズばかりだ。
欲しいものがあれば、無理やり奪う奴もいる。
人のことを考えずに、他者に迷惑をかける奴だっている。
そんな奴がいなくなれば、この世界はきっと平和になるに違いない。
と、矢野真は授業中にスマホをいじりながら考えていた。
「……授業つまんな」
スマホの画面を見ていたら、あっという間に授業は終わっていた。
すると、入れたはずのないアプリが勝手にインストールされている。
欲望ゲーム?
興味本位で押してみる。
「なんだ、何も起こらないじゃないか」
だが、異変はすぐに起きた。
「おい、あかねーぞ!」
クラスメイトの一人が教室から出ようとしても、扉が開かないらしい。
それだけじゃ無い。
教室全ての扉が開かない。
教室内は一瞬でパニック状態だ。
『お静かに』
いきなり、声の低い大人の男性が放送した。
『私はグレーです。この教室にあなたたちを閉じ込めたのもこの私です』
「お前は一体、誰なんだ!」
クラスメイトの一人が声を荒げる。
『その質問にはお答えできません。今からあなたたちにはあるゲームをしてもらいます』
「ゲーム!?」
『はい、そうです。その名は、欲望ゲームです』
欲望ゲーム。まさか、さっきの?
「なんだよ、それは!」
教室内が一斉にざわつき始める。
『お静かに』
ざわつきは止まらない。
『はぁ、だからうっせーガキは嫌いなんだよ』
「!??」
『おっと、失礼しました。それでは、まずは練習から行きましょうか』
これから一体、何が始まるんだ?
『そうですね、まずは、田中君』
「は、はい!」
突然の指名に、普段大人しい田中でさえも動揺していた。
『あなたは最近、クラスの女子の私物を盗んでいるのにハマっているらしいですが、何が目的ですか?』
え?
衝撃的な言葉にクラスがざわつく。
「え?あ、いや」
じゃあ最近、雪野さんのリコーダーがなくなっていたのもこいつのせいなのか?
『白井さんのリコーダーを吹くのが最近のマイブームらしいですねー。なんとも欲望まみれな』
「最低」
クラスの女子からは罵声が聞こえる。
雪野さんも泣いていた。
「ち、違う!僕はそんなことしてない!」
『そうですか。じゃあ、さよなら』
「きゃあああああああああ」
次の瞬間、田中は死んだ。
『自分の欲望を認めないから、そうなるんですよ』
なんだよ、これ。
『これで練習は終わりです。皆さん、今から本番なので気合を入れましょう』
本番ってなんだよ……。
『まぁ、本番って言っても、やることは変わらないですけどねー』
じゃあ、田中はただの見せ物にされただけかよ。
『次の人はー』
クラス内の緊張が走る。
『白神君でーす』
白神。
あいつは、頭脳明晰、運動神経も良く、性格もいい。
そんな奴がここで死ぬわけがない。
『白神君は普段は真面目なフリしてるけど、遊びまくってるよねー』
遊びまくってる?
『実際、このクラスには何人、君と付き合ってる子がいるかな?』
「お、おい、何で、それを?」
まさかあの白神までもが。
「私だけ愛してるって言ってくれたのに……」
一人の女子が泣き出した。
「最低」
他の女子も一気に白神を煙たがる。
「ち、違う!こいつらとは付き合ってるなんかいない!」
「嘘までつくなんて……」
『見え見えの嘘で欲望丸出しですね』
「まっ、待って、落ち着け!」
『落ち着くのはあなたの方ですよ?さよなら』
田中と同じように白神も消えた。
『まぁ、まぁ。皆さんそんな睨まないでください。次はさっきからずっと怯えている白井さんにしましょうか』
まさか、雪野さんが当たるなんて。
最悪だ。
『あ、そうそう。このゲームの死なないコツは正直でいることです。嘘はいけませんよ』
嘘さえつかなければ、死なない。
雪野さんはまだ怯えていた。
『白井さーん、この前のテスト、急に点数が良くなってましたよね?まさか、カンニングしたんじゃないんですかー?』
「え、あれは、その……」
「……雪野さん!」
僕は思わず声を出してしまった。
「正直に答えた方がいい」
『あなた何、口出してるんですか。殺しますよ?』
「……やってみろ」
『……』
『まぁ、いいでしょう。よかったですねー、殺されなくて』
『さあ、白井さん。質問は終わってませんよ』
終わった。
ここで雪野さんは死んでしまうかもしれない。
「あ、あれは、べ、勉強の成果が出たから」
『……正直ものですねー』
雪野さん、やっぱり君は凄いよ。
『皆さんも正直者の白井さんを見習いましょう』
ん?このゲームの攻略法って。
『では、次はー』
「みんな!」
『はぁ、またあなたですか』
「こいつの言うことをバカ真面目に聞く必要なんてないんだ。黙っていれば、みんな死なない」
僕の声にクラスが同情した。
「そ、そうだな!」
『……あなた馬鹿ですか?話さなかったら、ゲームが成立しないでしょう?黙っている奴は殺しますよ?』
バン!
大きな音が響いた。
何故だ、黙っていれば死なないはずなのに。
『山田君は馬鹿ですねー。まんまと罠に引っかかっちゃって』
!???
『死にたくない欲望から、今こいつは喋ろうとしたんだよ。見事にあなたは裏切られましたねー』
クラスが一瞬で凍りついた。
山田が死んだ。
「きゃあああああああああ」
どうすればいい?
クラスメイトがどんどん死んでいく。
怖い……。
『まぁ、黙りたければ、黙っていてもいいですよ。一生この教室から出られないだけですからねー』
このゲームの攻略法が何かあるはずだ。
みんなを死なせずに、この教室から出る方法。
『では、次の人はですねー。吉田さんにしましょうか』
吉田さんは、この学校で一番頭が良くて、いつも教室の隅で本を読んでいる。
『吉田さんは昨日の放課後、何してました?』
「……え、あ、べ、勉強です」
『そうですかー』
ーねぇ、岡田君!林田さんと別れて私と付き合ってよ!ー
ーえー、駄目だよー
ーいいじゃん!ー
ーうーんー
ーどうせ、あんな女、何の魅力もないんだから。私の方が魅力あるよー
ーそうだな。あいつには最近飽きてきたしー
ーやったー!岡田君、大好き!ー
「……え、な、何で?」
『こんなメールまでしといて、まだ誤魔化すんですか?』
「おい!何だよこれ」
林田さんが怒った。
「ち、違うの!こ、これはーー。」
バン!
吉田さんが死んだ。
『この吉田って奴、とんだ最低野郎ですねー』
「……岡田君?」
「めぐる、これは違うんだ」
「……嘘、だよね?」
「……もちろん」
『はい、岡田が死ぬまで、さーん』
「めぐる……」
『にー』
「愛してるよ」
「うん……」
『いーち』
「……んなわけねーだろ、このくそアマー!」
バン!
岡田が死んだ。
「……最低」
『この岡田っって奴も、ほんとくそやろーですねー』
グレーは笑いながら言った。
その笑みまでもが怖かった。だけど、どうしようもできない。
あぁ……。
クラスメイトが死んでいく。
「……おい!」
『……はぁ、またあなたですか』
「どうすれば、みんな死なずにゲームをクリアできる?」
『ヒントをくれと?』
「あぁ……」
『だからさっきから言ってるでしょ?正直になればいいと。みんな、欲望にもっと正直にならないと』
「……どう言う意味だ?」
『そのままの意味ですよ』
そう言って、グレーはまた、ため息をついた。
『はぁ、まだ人はだいぶいますねー。なんか、飽きてきちゃった』
「……え?」
『これにて、ファーストゲームは終了でーす。よかったですねー、みんな生き残れて』
「……でも、最後の一人になるまでって」
『あー、あれはこのゲームが最後まで終わるまでの話ですよ。次はセカンドゲームでーす!』
欲望ゲームはまだ始まったばかりだった。
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