トラの威をかすキツネ_4(終)
キツネは、男の子に言いました。
「なんで、女の子をまもらないで、しあわせにしないで、きずつけたの?」
男の子は、どうしてキツネがそんなことをきいたのか分からないようでした。男の子は笑いながらこたえました。どういうこと?悪いことをしたヒトを、やっつけてるだけだよ。
キツネはほんの少しだけかなしいひょうじょうになると、大きくいきをすい、声ではなく、男の子の体ににちょくせつひびくような「力」で、つげました。
--貸した力を返してもらいます。私の言葉を忘れるまで。これが期限です。
男の子が気づいたときには、キツネと会うまえのばしょにもどっていました。目のまえには女の子と女の人がいます。やっつけなきゃ。男の子が女の子をなぐりました。しかし、なにもかわりません。いつもなら、なぐられた人はきぜつしたり、とおくへとばされます。おかしいと、もういちどなぐりかかろうと女の子をおさえたとき、女の子があばれました。あばれた女の子の手が、男の子のかおにあたりました。どんなことをされてもけがをしないはずなのに、頭がくらっとしました。
男の子は、よろめきながら、なにかがおかしいと、自分のうでを見ました。キツネからもらったうわぎがありません!こんらんしている男の子は、とつぜん、体がうきました。あばれても、なにもかわりません。
「ひとまずいっしょに来てもらうよ」
なんと、男の子はけいさつかんにもちあげられていました。男の子は、いろんな人をなぐったり、お金をうばったりしていたので、けいさつもうごいていたのでした。それでも男の子はあばれつづけました。ぼくは悪くない!女の子が悪い!ぼくは悪くない!キツネがだましたんだ!キツネが悪い!
こうして男の子は、力がなくなり、大人になっても、おこったりわめいたりし、すべて人のせいにする人になりました。はじめこそキツネにだまされたのかとしんぱいする人がいましたが、男の子はそんな人にさえ、おまえが悪いんだ。と、ひどいことをしていたため、男の子をしんぱいする人もしんじる人もいなくなってしまいましたとさ。