ギッシュって役に立つかも?
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「ふぅ、結構作ったな」
時計を確認すると17時近くだった。製作に集中していて時間の経過に気が付いていなかった。
「早く帰らないとな」
俺を待たずに先に夕食を済ませてくれれば良いのだが、何故か俺待ち状態になってしまうので、急いでモッチョ商会へ行き奥の部屋まで行ってアイテムボックスから今日の分を大量に渡した。素材と製作品だけで150点はあった。アイテムボックスの容量は200なので、さすがに作りすぎたかなと後悔。たまたまモッチョが居たので1か月後にランド国へ行くことを告げた。
「では私も拠点をランドへ移す準備をしておきましょう」
「ファッ、なんで?」
「ファング殿と私はパートナーでしょう?」
「だから何で?指輪あるから連絡とれるし大丈夫っしょ?それにランドにもモッチョ商会の支部あるんじゃない?」
「ファング殿と居たほうが良いと視えたのです。それに私の直感もそう告げているのです」
こいつ、金に関しては鋭いなと感心する。それに、俺にとっても商会のトップが居た方が融通も利くし便利なので、これ以上何も言うことはないな。
「そうか、ではいつものように頼むよ。あと税金とかきちんとやってくれているんだよね?」
心配事の税金など法律問題も確認する。
「もちろんです。ファング殿に迷惑がかかることは一切ないように動いています」
動いていますって怪しいんだけど・・・
「商売上、色々とやっているようだけど、俺の素性とか調べたり、後をつけたりするとどうなるか分かっているよね?」
今はLvが低く、強くないけど何となく怖そうに言っておく。
「もちろんです。君子危うきにと言うではありませんか。私見ですがファング殿は目録相当の実力。私の知るかぎり製作職で、そのランクに到達しているものは5国の中でも200人も居ないでしょう。実力を隠しているのも、この街の製作ランクに合わせての事かと」
「!!!」
鋭いなモッチョよ。だが、それもあるが、俺は国が発行するランクには興味は無く、むしろLvなんだよね。ランクなんて国が認める鑑定師が指定した物を作って認められれば発行されるもので大して意味はないと思っている。それにカンストした者が居ないこの世界に誰が最終の指定品を教えてくれるのやら。
MMO時代にはLvを上げて一定のLvに到達するとランククエが発生した。そのお題をクリアすることでランクが上昇しランクに合わせたレシピが開放され製作可能となる。だが今のこの世界にはそのようなシステムは無く、MMO時代に開放したすべてのレシピが俺の製作手帳に記載されていた。
「多分ですがファング殿はランド国周辺の街ではなく、王都へ行くのではありませんか?」
当たり。こいつ名探偵〇ナンか!怖いわ。
「・・・・」
一応うなずく。
「であれば、王都の流通品に合わせるとしたら、素晴らしいものが出来ると考えてもおかしくはないです。その商品を扱ってみたいと思うのは商人であれば誰しも思います。」
「そうか分かった。だったらお願いがあるのだが聞いてくれるか?」
「私共に出来ることは何でも致しましょう」
「そうか、ならば情報が欲しい。ダンジョンの情報だ。」
俺が冒険者だということをモッチョは知らない。まだ正体を知らせるには早いと思ったからだ。だから素材情報が欲しいということで、モンスター情報を聞くことにした。それならば怪しまれないだろうと判断した。
「低Lvダンジョンから順に3ダンジョン分のモンスター情報を集めてくれ」
「そういうことでしたら、お任せください。素材買い取りもやっているのである程度情報は集まると思います」
「では頼んだ」
「かしこまりました」
握手をして外に出て人気のない場所まで行く。
「さてと、御飯だね!ちょっと遅くなっちゃったかな・・・」
さくっと変装を解いて急ぎ宿屋へ向かう。
「ただいま、ごめん遅くなって」
扉を開けながら謝る。案の定、俺待ち状態であった。時計を見ると19時だった。意外と時間がかかったようだ。
「レッドさん、お待ちしておりました。今日は私が夕食を担当しました。お口に合うといいのですが」
リーズが元気に言ってくる。シチューのいい香りがする。
「すごくいい香りがするね。食べるのが楽しみだよ。それとみんな待たせてごめん」
荷物を降ろしテーブルの前で再度謝った。
「兄貴ぃ、そんなの誰も気にしてないっス。それよりも早く椅子に座るっス。」
ウッドが急かしてくる。これは相当待っていた雰囲気だな。スマンと思いすぐ座る。リーズが手際よく配膳し終えるとみんなが俺をみる。
「ん、あれ、食べないの?」
「この食材もレッドが用意してくれたものよ。私達、神は信じないけどレッドの事は信じているの。だから何か一言欲しいかなって」
俺も神は居るとは思っているが信じてはいない。神とはすべてに対し不干渉な存在と思っているからだ。神に祈ったところで助けてはくれないから俺は全力でみんなを守ると決めている。
「じゃ、明日も楽しく生きていこうぜ。いただきます」
「「「「いただきます」」」」
鶏肉、ジャガイモ、ニンジン、玉葱、アスパラが入ったシチューにフランスパンと大豆ひじきの煮込み。旨かった!みんなの嬉しそうな顔を見ているだけで幸せだ。
「リーズ!美味しかったよ。ご馳走様でした」
「あ、はいぃ、喜んで頂けて嬉しいです」
リーズは真っ赤になりながら答える。
食後の片付けを手伝おうとしたがハブられた。俺はそんな事はしなくていいそうだ。手が空いたのでリティ達の装備調整をすることにした。ウッドから始まりリティス、月花、リーズと行った。今回は俺の製作レベルも上がっていたので少しの時間で調整を終えることが出来た。その後みんなを集め、明日の予定を伝える。
「まず明日は、リティス組が最初に<壺>を攻略に入る。一応安全のため俺たちのPTも一緒に入り後方から視察する。だが一切手を出さないから無茶はしないように」
リーズが手を挙げたのでうなずいて促す
「インスタンスダンジョンだからレッドさんたちは一緒に入れないのでは?」
もっともな質問だ。前回はなぜ一緒のダンジョンに入れたのかいまだに理由が分からないままだが・・・
「それはリーダー同士が手を繋いで入れば大丈夫みたいだ」
俺も初めて知った時は驚いた。そりゃ手を繋ぐってコマンドなんてなかったしなぁ。この情報源はモッチョだ。商人がダンジョンに入る場合に使うと言っていたのだ。
「そして1日で1回攻略するように。それが出来れば近いうちに1日で2回攻略できるようになる。目標は1日3回攻略だからな!!Lv18になるまで一緒に行く。そこまで行けば余程のことがない限り大丈夫だと判断した。」
なぜならLv18になれば装備も更新できるし、さらに生存率も上がるからだ。俺の説明を聞いたリティス隊に迷いは見られなかった。迷いのあるチームはいつか失敗する。失敗から失敗の連鎖が起こるのは珍しくないのだ。間違いなくリティス達は強くなると確信した。
「あと、みんながLv20になったらフルPTで<壺>を攻略する。これは今後のために相互理解を深める内容だ。簡単に言うと仲間の動きを目ではなく気配?感覚?を感じて連携を行うための訓練。ハンドサインで合図を送っていては間に合わない場合もあるだろう。そういうときの保険だ。」
そんな保険など使う日がこないといいが念のためです。生還率100%なんて存在しない。ならば限りなく100%に近づけるのが俺の仕事だ。98%だから大丈夫ではなく2%も仲間が死ぬ可能性があるのだ。こんなに怖いことはない。並行世界があれば、どこかで2%の確率で仲間が死んでいるのだ。そんな世界の自分にはなりたくない。
「こんな感じだがなんかある?」
特に無いみたいなので明日に備えてお開きとなった。
で、いつものようにみんなが寝るのを待ってから、採集と製作のレベル上げに行こうとしたとき、コンコン、と扉をノックする音がする。誰かと思い扉を開けるとサーラが居た。
「どした?」
「ちょっと話があるから私たちの部屋に来てもらっていい?」
何だろう?良いよと伝えついていくことに。
部屋にはルルとシズクがベッドの上で座って待っていた。
「話ってなにかな?」
サーラもシズクも黙っている。見かねてルルが。
「最近レッドとの時間が無いような気がするにゃ。だから今日はこの部屋で寝て欲しいにゃ」
直球だな。言われてみれば、やることが多すぎて昔ほど一緒にいる時間が少なくなったとは思っていた。それにウッドの言葉にもあったが皆不安なのだ。現状そこまで急いでいないので、今日の採集・製作のレベル上げはキャンセルすることにした。
「そうだな!今日は昔のようにみんなで一緒に寝るか!」
みんなが笑顔になる。となると話は早くて、みんなベッドから布団を床に降ろして並べた。保育園のお昼寝みたいに雑魚寝である。なんか安心するんだよね。でも何だろうこれ、みんなが幅寄せして身動きが取れない。幅寄せっていうかルルなんかうつ伏せで寝る俺の背中で寝てるし。でも良いか、久しぶりにみんなの可愛い寝顔を見てリフレッシュ出来た。
私事ですが、電子の海に旅立ってしまった3話分ですが何とか思い出しながら書きました。
何とか立ち直りましたが、ノートPCの請求におびえる毎日です。