瘴気
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「今日はお客さんが沢山いらしたので奮発しましたわよ」
ベラさんがそう言って料理を並べている。
「レッドさん、私たちも頑張りましたわ」
「そうね、リティちゃん凄く料理の腕が上がって、お母さん驚いちゃったわ。これも愛かしら?」
「もう、お母さんっ!」
「相手は誰なんだい?」
「リティの相手は大変だと思うなぁ」
「お父さんとお兄ちゃんも!」
「そうですよねぇ」
「レッドさんまで・・ひどい・・・」
「うそうそ、ごめんね。お詫びに何かしてあげるから許してよ」
「もう、本当ですよ?」
泣いたり、悲しんだり、喜んだりと、リティスの色々な顔が見られただけでも来たかいがあったな。
「約束するよ。何か考えておいてくれ」
「はい!」
「私は何にしようかな?」
「もう!お母さんっ」
みんな笑っている。家族っていいよな。本当に眩しい位に輝いている。
夕食の片付けが終わり、外で一休みしているとリティスが横に腰かけてきた。
「レッドさん、今日はありがとうございます」
「俺の方こそ有難う。久しぶりに家族団欒が味わえて良かったよ。良いな、家族って?」
「はい、レッドさんのおかげです」
「俺じゃないよ、リティスの家族が素晴らしいんだよ。家族全員がリティスを応援している。俺はその人たちを悲しませないために全力でやっていくよ。これからもよろしくな」
「はい、私はレッドさんとずっと走っていきます」
リティスが俺の肩に寄り添ってくる。
「星がきれいだな」
「そうですね」
――――!!!
異様な気配を感じる。
家の中に居たみんなも飛び出してくる。
「リティス、何か知っているか?」
「いえ、こんなこと初めてです」
「兄貴っ!」
「わかってる。とりあえずお兄さんに話を聞いてみよう」
家に入りお兄さんに話を聞いた。
「こんなに早く出てくるとは・・・・予定ならあと15年は出てこないはずなのですが」
詳しく聞く。
「この魔物は40年周期で西の森の瘴気溜まりから出てきます。その時期は国からの討伐隊が来てくれるのですが・・・何が・・・」
前回出てきたのがリティスの生まれた年か。知らないわけだ。
魔物はキマイラ、Lv60単体。これなら俺達で行けるな。ただ、瘴気が気になるな。問題は棚上げして、とりあえず討伐しに行かなければ。
「みんな、行くぞ」
全員が頷く
「危険です。ここは国へ討伐要請を出しますので避難しましょう」
「そうだ、あいつを甘く見るとひどい目にあうぞ。前回も沢山の死傷者が出たんだ」
「リティちゃん、危ないことはしないで」
「私なら、大丈夫です。ね、レッドさん?」
「もちろんだ、俺が全力で守る!と言っても皆さん信用できませんか?」
「・・・・わかりました。その代わり私も連れて行ってもらえますか?」
俺がリティスを見ると頷いた。
「戦闘時は安全な場所まで下がってもらいますが良いですね?」
「はい、それでいいです」
外に出て戦闘職へ着替え馬を呼びだす。
カインさんはリティスの後ろに乗ってもらった。
急ぎ村から西へ進み海岸線に近づくと、窪地に瘴気溜まりとキマイラが見えてきた
「リティス、お兄さんはお前の馬で離れているようにしてくれ」
「はい!」
精霊、人形を呼び出し、オマケを起こす。
「何よぉ・・・って魔物居るじゃない!あたしも着替えないと」
あたふた用意してリーズのポシェットに避難する。
「みんなキマイラはブレスが主だから、それにさえ気を付ければ大したことはない」
みんなが頷く
「それとマヒの追加効果があるから雷系のブレスには要注意だ」
「「「りょ」」」
「リティ!初段は俺が受ける、それ以降適度にスイッチしていくぞ」
「はい、レッドさんに合わせます」
「よし、俺のファーストアタックが戦闘開始だ。ブレスがあるので固まらないように!」
「「「りょ」」」
「いくぞ」
戦闘が始まった。
「なんだ、あれは、あれがリティなのか・・・・あのリティがあんなにも・・・」
(わが主は強いです)
「君は話せるのか?」
(普通は話せませんが、主と同じ波長だからでしょうか)
「そうか、兄として驚き、嬉しく、羨ましくもあるよ」
(あなたも力があると思いますが)
「今のリティを見たら自信を無くしたよ。間違いなくリティは私より才能があるということを確信した」
(そうですか。私に乗られることが出来るだけでも相当な潜在能力があると思うのですが)
「そういってもらえると助かるよ。でも私はリティとは違う形で進むと決めているんだ」
(どういった?)
「錬金や医学、農業などそういった分野でみんなを助けたいんだ」
(そうですか、それも世界の真実へ至る道でもありますね)
「今まで自信がなかったけど、その言葉で自信というか確信が持てたよ。ありがとう」
(いえ、そろそろ、戦闘が終わりそうです)
(一応召喚を使ってみよう。なんでもいいから呼び出して一撃入れるぞ)
(((りょ)))
全員が幻獣を呼び出し、一撃を入れる。
「なんだか夢を見ているようだよ。桁が違いすぎる」
(主たちは未だ全力を出していません)
「もう、笑うしかないな・・・」
戦闘が終わり、安全を確認したところでカインさんがこちらに向かってきた。
「お待たせしました。練習も兼ねていたので少し長引いてしまいました」
「レッドさん、お気に為さらず。それよりも素晴らしい戦いを見せていただきありがとうございます」
「リティ、兄としてお前を誇りに思う。小さい頃、お前の中に見た能力は本物だったようだ。リティは気が付いていなかったようだが、私の見抜く力は本物だったみたいだね」
「だからお兄ちゃんは私を?」
「そうだよ」
「お兄ちゃん、私もう迷わないから」
リティスの中で何かが変わった。今までよりも輝きを放っているように見えた。
「さてと、瘴気溜まりをどうにかしないとな。また同じ事の繰り返しは面倒だな」
と思案していると
「少し私に調べさせていただいても?」
俺が頷くとカインさんが瘴気に近づいていく。
「どうやら、地面から噴き出しているわけではないようですね。空間の亀裂・・・いや違うか、それとも中心部分に何かが・・・と考えるのが正解か・・・」
何か考えがまとまったのかこちらに戻ってくる。
「レッドさん、あの瘴気を浄化できますか?」
俺は、シズクと月花を見た。
どうやら出来るらしい。
「出来るけど、また噴き出てくるんじゃないですか?」
「それを確かめたいのです。無駄になるかもしれないですがお願いできますか」
俺は、シズクと月花に浄化してもらうよう頼んだ。
複雑な効果が入り混じっているため浄化に時間がかかったが終わったようだ。
中心には1mほどの球体の水晶が浮かんでいたが所々にヒビが入っていた。
「レッ君、浄化中に気が付いたけど、中央の瘴気と同じ成分だと思う」
となると、あれは中央から何らかの原因でこちらに飛んできたと考えるのが普通だな。
「シズク、教えてくれてありがとな」
みんなで水晶に近寄ってみると破片が落ちていた。カインさんがそれを回収している。
「それ大丈夫ですか?」
「多分、大丈夫です。瘴気は水晶の中心部から少量出ているくらいで破片からは感じませんので」
よし、この件も含め後でモッチョ氏に相談しよう。
俺達は一旦その場を離れることにした。
のんびり書いていきます。




