運動しろよ
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えぇ、ちゃんと0時前には帰りましたよ。
帰り道のホテル街の誘惑には負けませんでしたから。
その日から、デートと工房の日々を過ごして港町シュモアに着いたのが1ヶ月後。
岩ばかりだったので海がとても新鮮だった。潮の香りも心地いい。
「海っていいっすね」
「だろ、今度サーフィンしようぜ」
「何すか、それ」
「海の上を板に乗って滑るんだよ」
「何か面白そうっすね。板って、どんな素材な・・・うわ」
この国は地震が多かった。
噴火に対しての対策は整っていたので安心はしている。火山性温泉だから仕方ないのだが、どうも違う気がした。
港町に来たため中央の障壁が良く見え地震があるたびに障壁の瘴気が揺れ動いていたのだ。
震源は間違いなく中央の障壁の方だった。
「地震多いな。何もないといいけど・・・」
「そっすね」
「そうだ、モッチョ氏に聞いたんだけど、美味しいカレーがあるらしいんだよ。サーフィンの話もしながらどうだ?みんなも行くだろ?」
「「「「うん」」」」
モッチョ氏曰く、海運カレーと海運バーガーが有名で、どちらも運気が上がると言われているようだった。
バーガーはテイクアウトにしよう。
店に到着してメニューを眺める。
海運カレー ライス調整可 以上
メニューには一品のみ、男らしいではないか。
注文しようと思っていると、獣人のイケメンがこちらに近づいてきた。
「これは素晴らしいお嬢さんたちだ。君達これから僕と食事なんてどうだい?」
いや、俺と食事にきているんだって・・・
「はぁ?これから食事なんだ、邪魔しないでくれ」
「君も僕には劣るが多少イケメンに近いというのは認めよう。だがしかし超絶イケメンの僕には劣る。劣っている君が、たくさんの超絶美女を連れているのはおかしい。何か弱みを握っているに違いない。僕が彼女たちを解放しようではないか」
まったく・・・前半部分は多少当たっているが意味不明なこと言ってるな・・・
「他を当たってくれ」
はぁ・・楽しい昼食が台無しだろ。
「僕が君たちを解放してあげよう。心配しなくていい、すぐに終わらせる」
ちょっと女子組何黙ってるのさ・・・勘違いしていますよとか、弱みとか無いですとかあるでしょ?
「いや、何か勘違いしているようだと思うけど?」
一応代弁してみたが
「君も男なら僕の勝負を受けるんだ!」
はぁ?勝負って何、おいしいの?
ダメだ、コイツ自分の世界に入ってるわ。
俺は立ち上がり、店の主人を見て確認を取る。
「あーはい、ではおねがいしますね」
棒読みで返す。
「フッ、いくぞ!超絶イケメンパーーンチ!」
凄いネーミングの技で襲い掛かってきた。
うーん・・・遅い・・・これがLv差というものか・・・
超絶だけに超絶遅い・・・くだらない事を考えつつ、顔すれすれで避けて死なない程度に鳩尾に一発叩きこむ。
「グフッ、・・・」
ワンパンでした。
店の従業員に無事外へ放り出されたようです。
「さて食べようぜ」
「「「「はーい」」」」
隣の海運バーガー屋さんでは、テイクアウトで包んでもらい外に出るとイケメンは居なくなっていた。
それから、カフェでお茶をしてから宿屋へ戻った。
宿屋へ帰るとモッチョ氏から呼び出しがあった。
何か動きがあったのかもしれないので急ぎ向かうことにした。
「モッチョ氏、何か動きがあったのか?」
勢いよく入ると
「いえ、何にも」
「え、何か急いでいるっぽかったじゃん?」
「あぁ、階段上り下りしていて息が上がっていたんですよ」
ギッシュ・・・・運動しろよ・・・・
「あれですよ、運動したら負けですからね」
清々しい顔で言ってくるが、今から成人病に気を付けないと大変なことになるぞ・・・
「はぁ、そう?・・・でもほら将来さぁ・・・」
いや、もう言うのは止そう。
「そうそう!動きはないのですが、新たにスカウト?した冒険者がいるのでご紹介をしようかと」
何か含みがあるが気にしない。
モッチョ氏と一緒に新人の待つ部屋をマジックミラー越しに見ることが出来る隣の部屋へ向かったが俺のテンションはガタ落ちした。
モッチョ氏が紹介してくれた冒険者が昼間のイケメンだったのだ・・・・いや違った超絶イケメンだったよね。
「俺、帰っていいかな?」
「ちょ、ちょ、ちょとお待ちを。面識がおありで?」
「あるも何も、昼間そいつに絡まれたんだよ」
イケメンはフレサンジュさんと嬉しそうに話している。
「なんと・・・そんなことが。コヤツはモッチョ商会に多額の借金がありまして、初級に入り浸り金が無くなると冒険者で稼ぎまた初級へと繰り返していましてね」
駄目なやつじゃん・・・スカウトって言うか借金を返済させるために拘束したんでしょ・・・
「冒険者の腕は良いと思うのですが、金と女に目がないという。ですが金には正直な奴で、その点では信頼できる奴かと」
まぁモッチョ氏が雇うなら異議はないけどね。俺は判断をモッチョ氏に丸投げした。
狼族で竜騎士、名はケイ。こいつの装備は作りたくないけど、将来の為に我慢しよう。
どんな待遇で雇うのかモッチョ氏に確認すると
「クラリスが成果を上げ始めているので、次の広告塔として考えています。他のメンバーもすぐに決まる予定です」
さすがモッチョ氏だな。今回の人選は難ありだが着々と計画が進んでいる。
とりあえずモッチョ氏に任せることにした。
のんびり書いていきます。




