ドワーフって・・・
50
コンコン。
「レッド様、ウッド様お迎えに上がりました」
ライラさんがお迎えに来たようだ。
「ウッド、いくぞ」
「了解っす」
「んもう、どこ行くのよ?」
「みんなの装備を作りに工房だけど?なぁウッド」
「そうっす。遊びに行くわけじゃないっす」
「レッ君、私も一緒に行きたいの、駄目?」
シズク・・・そんな上目使いで言われると揺らぐでしょ・・・
「シズクさんが行くなら私も行きます」
「月花が行くなら私も」
「じゃぁ私も」
「私も」
「私も」
ダチョ〇倶楽部か!それにそれではオチが無いだろ・・・
「遊びじゃないからなぁ、夕方には帰ってくるからみんなで外食に行く、でどう?」
「分かったわ。夕方には必ず帰って来てね」
あれ、サーラさんが聞き分けいいぞ・・・?
何か企んでいなければいいのだけれど・・・
「じゃそれで、行ってくるわ」
「「「いってらっしゃい」」」
俺とウッドはライラさんの用意した馬車に乗り込んだ。
一方、女子組は・・・
「では、皆さん、これよりレッド攻略会議を始めます」
「サーラさん、良い提案だわ。先程あっさりと引いたときは落胆しましたが、これで納得しました」
とリティスが言う
「そうですね、私もリティスさんと同意見です」
月花も賛同する
「時間も勿体ないので進めましょう、では私から報告します・・」
俺が居ない部屋で女子組による攻略会議は進んでいったようである。
一方
「兄貴、あっさり出てこれたっすね」
「そうだな、助かったよ。仕事なのになぁ?」
「そっすよ。女子たちは何やってるんすかね?」
「女子力磨いてんじゃね?」
「俺が言うのもあれですけど、みんな十分というか、超級の美人っすよね」
「だな、俺も同意見だ」
「なのに、女子力磨くってなんなんすか?」
「わかんね」
「兄貴・・・罪っすね」
「why?」
「いいっすよ。俺達には優先順位があるんすよね。でもカンストしたら?」
「まぁ、その時はねぇ・・」
馬車が止まったので、ウッドと一緒に変装した。今日はウッドもフルフェイスの仮面を被っている。・・・ちょっ・・ウケル。
「では、こちらへどうぞ」
ライラさんに案内された先には小さな工房があった。広さは・・・と中を覗くと20畳くらいだった。
「ガイさんは?」
「多分奥の部屋に居るかと思いますので呼んできます」
すると、奥から声がする。
「兄者、とりあえず見てくれるだけでいいんだ。頼む」
「ボッシさん、私からもお願いします」
「ライラさんと言ったか?また来たのか、あんたも懲りねぇなぁ」
「ガイよ、お前がそこまで言うからには本物なんだろうな?」
「それは、間違いない。兄者の考えが一変することだけは確かだ」
「わかった、でも一度きりだぞ。いいな?」
「ありがとう兄者」
どうやら話は終わったようだ。足音でこちらへ向かってくるのが分かった。
「ガイ、お前が言うから来てみたら、こんな細い奴が装備作れるわけないだろうが」
「兄者は外の世界を知らなすぎる。俺も最初はそうだった。だけど人族でも、エルフでも俺達と変わらず素晴らしいものを持っている。頼むから一品だけでも製作を見てくれ」
「そうは言っても、ここにはロクな道具なんぞないわ。それでも作れるというのか?」
ガイとライラが俺を見てきたので、問題ないと頷く。道具も大事だがそれだけじゃないんだよ。それを分からせてやる!
(兄貴、凄いの作って驚かせるッス)
(あぁ、こういう頭の固い奴には物を見せるのが一番だしな。やってやるよ)
俺は本気を出すために、道具で落ちる能力分を補うためにステUP食材を食べた。
「ほれ、見てみろ。細いのが何か食べとるぞ。本当に大丈夫なのか?」
いちいちいちいち・・・うるさいおっさんだな・・・みてろよ、レジェンドの上のレジェンドレアを作ってやるよ!
「では、工具を借りるが良いか?」
「ふん、やってみろ」
あー腹立つ。
「では、はじめるぞ」
どうやらボッシの工具はロクなと言っていたが手入れはきちんとしていた。自分の仕事道具を手入れできない奴は論外である。冒険者もそうだ。自分の身を守るものを手入れしないのは自殺行為だ。これはすべてに言えることだと思う。俺は同じ製作者でも工具を大事に扱わない奴には負ける気がしないのだ。
まずは素材作りから始め、次に芯となる本体を打ちまくった。最初は横目で見ていた程度だったが、今では食い入るように見ている。
「・・・いったい何を・・」
黙ってみていろ、お前の価値観ぶっ壊してやるから。
本体の芯を打ち始めて5時間が経過して、やっと形になってきた。道具のせいか作業がなかなか進まない。10時間を超えてやっと芯が鍛え終わった。ガイさんとライラさんは近くの宿屋で休んでいた。魔力も不足してきたのでMPポーションをがぶ飲みした。
次に刃の部分の芯を鍛え始めた、こちらも終わるまでに10時間かかった。このころにはウッドも宿屋で休み始めた。ボッシだけは休まずずっと作業を見ていた。
さらに刃の部分と持ち手の部分の融合だ。両方の芯を融合させるのに希少金属のアダマントを使用する。二つをアダマントで包み込み打ちまくる。この打ち込みですべてが決まるので油断は出来なかった。3日間打ち込みようやく形になった。
「こ、これは、槍なのか・・・」
「黙れ」
気が散るので一言。
意外と大人しくなってくれた。
最後は装飾だ。形になった槍をさらに細かく叩いていき1日たったところで完成した。
完成した時にはみんなが揃っていた。丸4日かかってしまった。俺の工具であれば2日で終わっただろう。
「完成した。ロンギヌスの槍インフィニットだ」
槍自体がほんのりと光を発し持ち手の部分からは赤い霧のような靄が出ていた。見るからに呪われた武器っぽいが大丈夫だ。
誰も何も言わない。
「ん?完成したぞ?」
おかしい・・・拍手も無し?
「あれ、レジェンドレアなんですけど?」
みんな口をパクパクさせている。ウッド・・・お前もか!
「あれ・・ライラさん?」
「ハッ!失礼しました。少々お待ちください」
どうやらモッチョ氏に連絡を入れているようだ。ボッシはずっと槍に見入っていた。少し疲れたし休むかと思っていたらモッチョ氏が駆け込んできた。
「ファング殿!ライラから連絡を受けて急ぎ馳せ参じました所存です」
なんか日本語おかしいよモッチョ氏・・・
「いや、張り切って作ったら誰も何も言ってくれないのさ」
「して、物は?」
「これ」
「・・・・・」
お前もか!
「モッチョ氏?」
「あいや、失礼・・・それにしても・・・・」
もう帰ろう・・・
「すまなかった!!!」
そこには土下座しているボッシが居た。
「すべては俺の狭量によるものだ。自分で世界を決めつけていた。お前をみて・・いや、ファング殿の作業を拝見して・・ってあのファングか!・・・・」
どうやら俺がファングって知らなかったらしい。
「俺はお前の工具であれを作った。それの意味が分かるか?」
「もちろんだ、です」
「それで、どうする気だ?」
「私にもファング殿の技術を教えてください。どうかお願いします」
「条件がある」
「どのような?」
「一つはここでの作業内容を公表するな、秘匿すること。もう一つは酒をやめること」
「もちろんです、誓います。どうかお願いします」
モッチョ氏を見ると、ライラさんに指示を出していた。
「では、こちらの契約書にサインをお願いします」
「ボッシさん、裏切ったらわかりますね。私はガイに嫌な命令はしたくありませんのでお願いしますよ」
モッチョ氏なんか怖いよと思い顔を見ると、ギッシュな笑顔でこちらを見たので少し安心した。
「もちろんだ、俺に道を示してくれたファング殿に泥を塗るつもりはない」
「では、契約完了となります。こちらは写しとなりますので大事に保管してください」
事務ってるライラさんはカッコ良いな、クールビューティーってやつだ。
「ファング殿、あれはどうしましょう・・・」
モッチョ氏が困ったように言ってきた。
「あぁ、あれね・・・絶対市場には出せないしな・・・いつか仲間になる槍使いにあげるから大事に保管しといてくれる?・・それとも分解する?」
「と、と、とんでもない。警備が厳重なグラスの倉庫へ輸送し保管したいと思います」
「じゃ、よろしくね。あと、作るのに4日かかったんだけど、やっぱり1週間教えないとダメ?」
「出来れば・・お願いしたいのですが」
「うーん・・・分かったよ。うちの女子組が怒っていると思うんだけど良い案あるかな?」
「であれば、ガイアには有名な温泉があります。ボッシの酒抜きもありますので2泊3日で温泉旅行に行ってみては如何でしょう。馬車などの手配等すべてこちらで済ませますので」
「それなら、機嫌直してくれるかもね。それで頼むよ」
「かしこまりました」
さすがモッチョ氏。困ったときはモッチョ氏に頼むのが一番だね。
温泉かぁ・・・湯船に浸かりながら飲む風呂酒・・・格別だな。
源泉で茹でた玉子にトウモロコシ・・・旨いんだよなぁ。
塩を舐めて、日本酒をクイッと飲む・・・ウマァーですよ。
・・・って、待てよ、日本酒あるのか?
「モッチョ氏、一つ聞きたいんだけど、純米酒ってあるのかな?」
「もちろんですよ。満足されること間違いないです」
よし!問題ないな。
温泉が楽しみだ。
やっと50部まで来ました。
読んでくださっている方に感謝です。
これからものんびりと書いていきます。




