ダンジョン攻略完了
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シズクがリティスのメンバーを回復しながら、自己紹介が始まった。
「改めて、私がリーダーで戦士のリティス、ダークエルフです」
でしょ、ダークエルフだと思ったよ。と自分の予想通りに満足。さっき怒っていたでしょって?切り替え早いんでノーカンですよ。
「どこから来たにゃ、グラスかにゃ?」
自己紹介を提案したルルが積極的に話しかけていた。
「わたしたちはランドから来ました」
ほほぅ、他国の人と会うのは初めてだ。
「わざわざ何で他国のダンジョンへ来たのかな?ランドにもダンジョンあるんじゃないの?」
俺の知らない世界なので、情報収集は必須。今後の為に色々と聞いておこう。
「レッド様のおっしゃる通りなのですが、ランドには適正Lvのダンジョンがないため仕方なくこちらまで参りました。ギルドの依頼だけでは、なかなかLvが上がらなくて・・」
あれ、様って聞こえたようだが、まぁいいや。
「へぇ、そうなんだ。適正Lvが1番低いところのダンジョンってLvいくつ?」
「Lv18のダンジョンがあります。<迷いの森>というダンジョンです」
ナイス!ほかに情報もないので次はそこへ行こう。
「そこの情報あとで教えてくださいな!」
自己紹介などそっちのけで情報が聞きたかったが大人な俺は約束を取り付けるだけにとどまった。
「ではこのダンジョン攻略後にでも」
「りょうかい!」
もうウキウキである。次に身長120cmくらいの子が挨拶。
「おいらのジョブはシーフでホビット族のウッドと言います。以後よろしく。」
鼻の下に指を這わせて良い笑顔で言っている。お前はガキ大将かと思ってしまったが口には出さない。それと以後よろしくってなんだ?昔のゲームに、そんな感じのセリフあったな。
「兄貴のおかげで助かったっす。ありがとっす」
兄貴ってなに?と思いながら
「礼ならシズクに言っとけよ。あいつが助けてあげたいって俺に言うからさ。だよなシズク?」
俺はシズクの方を向いて言うと、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。実際には言っていないが、目で俺に訴えていたのだから間違いではないはず。
シズクは最初に孤児院で会った時から、あまり話さなかった。じゃなくてほとんど言葉を発しなかった。今はかなり話すようになってはいるが、如何せん声が小さい。でも、何となくだが今ではシズクの考えていることが皆分かるようになっている。
「シズクさん、ありがとうございます。私は呪術士でホビット族のリーズです。兄の失礼な態度をお許しください」
どうやらウッドの妹のようだ。
「間に合って良かった・・・」
シズクが他人に話すなんて珍しい。それだけでも助けて良かったと思う。大収穫だな!
「お前たちは兄弟なのか。よく似てるなぁ」
と率直な意見を言ったのだが
「「似てません、ねーっす」」
二人そろって否定。そういうところが似てるんでねーの?
「わ、私は僧侶で名を・・・月花と言います。猫耳族・・です。ルルさんとは・・・同族になりま・・す」
最後に立ち上がれないほどに衰弱している獣人が必死に話し始める。体に傷がないので多分というか間違いなくMP切れだろう。俺はアイテムボックスからMPポーションを渡す。
「!!、こ、こんな高価な・・・ものは受け・・取れ・・・ません」
いや、受け取れし!自分で作ったからタダだし。フラフラじゃないか、自分のステータス理解しろよと言いかけたがやめる。特にヒーラーはPTの要でもある。大抵PTが崩壊する時はタンクかヒーラーが倒れた時だ。アタッカーが重要では無いと言っているわけではない。稀にダメージの出せないアタッカーがいてもPTは崩壊するのだ。なぜなら倒せなければ戦闘が長引き、結果ヒーラーの負担が増えMP切れを起こし崩壊する。
「さっき宝箱からでたものだから遠慮すんな。自分の状況よく考えろ」
宝箱なんてなかったけど、こういうことにしとけば貰いやすいだろうと。しばらく考えたあとに飲んでくれた。
「ありがとうございます。」
ふらつくようだが、立ち上がり動けるようになった。
一通り終わったようなので、こちらの自己紹介が始める。
「俺はレッド、剣士で人族だと思う。」
「私はサーラ、モンクでレッドと同じ人族よ」
「私はシズク・・・・」
聞こえないので俺が
「この子はシズク、巫女で人族だ」
「私はルルにゃ、大陸一の弓使いにゃ!1m以内ならほぼ外さないにゃ」
いや、そこ1000mだったら尊敬しましたよ!?それにほぼって・・当たらない事もあるんかい!リティス達も一瞬驚いて、すぐにハイハイって顔になってたじゃん。
みんな落ち着いたようなので、アイテムボックスからコテージを出す。これが便利で、広さは10畳位でキッチン、トイレ付なのだ。イメージは遊牧民が使っているで伝わるだろうか?あと、使い捨てで理由は分からないが使用後は跡形もなく消えてしまうのだ。次元の狭間ってやつに飲まれるからなのかも。なのでゴミと一緒にさようならというエコシステム。
まぁ座って半畳、寝て一畳って格言もあるとかないとか。詰めれば8人寝られるでしょっと設置していると
「ななな・・・」
なの大合唱だ。めんどくさいやつらだな・・・
「レッド様たちは何者なのだ、王族か貴族なのか?」
リティス一同驚愕している
「いや、みんな孤児だぞ」
「なら何でこんな高級なものを使っているのですか?」
「作ったから、タダだし」
「作るって言ってもこれは・・・」
ん?デジャヴか?最近似たようなことが・・・サーラ達は笑っているようだ。
「君たちも諦めろ。私もレッドの凄さには追いつけないから、すべて受け入れることにしている」
何か俺が凄いみたいに言ってるが、全ジョブカンストの俺からみたら当たり前なのだがなぁ・・・。俺の仲間というかチームは総勢100名位いたが全員オールカンストしてたよ?この世界では皆カンストしてないのかと思ったので聞いてみた。
「ジョブカンストしているのはどの位居るんだ?」
「カンストの意味が分からないが、Aランク冒険者でLv70位、Sで90と聞いたがLv100がいるなんて聞いたことがないな」
ふむふむ、となるとどんなジョブでもカンストしたら最強じゃん。効率的なLv上げも知ってるしスーパーライトプレイヤーで最強で金策も余裕ときたら幸せで、遊びまくる未来しかないな。んーでも目立ちたくないからランクはA・・・だとめんどくさそうなのでBランクにとどめるか。いやCで良いだろう!お金には余裕があるはずだから、下手にランク上げて高難易度の依頼を強制的に受けさせられる場合もあるからな。ふふふふふふふと笑う。
「レッドどうした・・・気味が悪いぞ」
サーラに言われて、我に返った。
「ああぁ、ごめん考え事してた」
取り繕うように、難しい顔をする。
「そうか、大丈夫ならそれでいいのだけれど・・」
サーラが心配顔で言う。ズキューーーン!サーラのデレなのか?破壊力ありすぎだろ!ここ9年で初めてじゃないのか。めまいがしたが、気を取り直し夕食の準備をする。
「私たちも手伝います。何でも言ってください」
リティス達が言うので、
「ルルとウッドは周りを警戒しつつ、コテージを中心に半径8メートルにこの石を均等に8個設置してくれ」
「これ何にゃ」
「魔物からコテージを守る結界石だよ。俺の能力では、まだLv30までの魔物にしか効果がないけど、このダンジョンなら大丈夫だろう」
「俺がやるっす。ルルさんは兄貴の手伝いをお願いします」
そのようにウッドに言われたルルはさっさと持っていた結界石を渡した。
「後は宜しくなのにゃ。う~ん、レッにゃん暇になったにゃ」
いや、だったらウッドと一緒に設置してくればいいじゃん!と思ったがルルが俺と一緒に設営を手伝いたがっていたのが分かったので一緒にコテージの準備を始めた。
「じゃぁみんなで食事の準備をするか!」
コテージの設営が終わり、みんなに食材の準備をしてもらうため、アイテムボックスから食材を出す。今日の夕食はすき焼きだ。食材を見るなり驚いていたが、慣れつつあるのか準備を始めた。
このコテージ、すごいことに外に匂いが漏れないし完全防音なのだ。だから魔物に気が付かれにくいし結界石のおかげで安全。だが欠点もあり、魔物が多いところで使うと、いつの間にか周囲を魔物が囲んでいるという状態になってしまう。それも逆手にとって経験値を稼ぐ裏技もあるが今は必要ないだろう。
そうこうしているうちに調理が終わり、みんなで食事をとった。冒険者にとって食事は大事なのである。食事には一時的なステータスUP効果があるのだ。みんなは分かっていないようだけど幸せそうならそれでいい。
「お前たちのLvを教えてくれ。あと装備見せてもらっても良いか?」
俺が言うと何でって顔で見てくるのだ。めんどくさいな・・
「ダンジョンというのは命がけなのは知っているよな?」
コクコクうなずく
「ということは、出来る限りの下準備をするのは当然だ」
コクコクうなずく
「例えるなら、Lv18の敵に自分のLvより低い武器で切りかかる場合と自分にあったLvの武器で切る場合どちらが強いか分るよな?」
コクコクうなずく
「それと自分に見合わない高Lvの武器を装備した場合と適正Lv武器を装備した場合にもどちらが強いか分かるか?」
考え出したようだ・・・マジか。
「槍使いを例に挙げると、ウッドランスが適正の槍使いがロンギヌスの槍を持った場合どうなると思う?」
フルフルと首を振る
「答えは持ち上げられないか、たとえ持ち上げたとしても構える事さえできないんだ。お前たちは知っているか分からないが、高ランクの武器や防具には魔力が込められていて疑似の意思というか魂みたいなものがあるのさ」
サーラ達は俺の作ったものを装備して何となく感じるものがあったのか驚いてはいないようだったが、リティスたちは混乱しているようだった。
「ロンギヌスの槍を例に挙げても、伝説の武器で存在するかわからない槍では理解が・・・」
リティスが言うが、俺は持っていたので知っている。でも説明が難しいな。
「例えだから深く考えるな、感じろ!」
有名な武闘家の言葉だ。決まったな!だが反応がうすい。つまらん
「レッドの言うことが理解できなければ、とりあえず聞かれたことにこたえるにゃ」
ルルも理解しているが説明は難しいようで体で分かってもらう方が早いと判断したらしい。
「私たちはみんなLv14で、このダンジョン攻略でLv16になるつもりで来ました」
リーズが答える。
「だけど魔物の脅威をそれほど感じなかったので油断してしまいました」
リティス達の表情が暗くなってきた。
「あーーー、みんな無事だったからもういいじゃねーか。次は油断しないだろ?」
コクコクうなずく・・・ふりだしか!
「で、装備は見せてくれるの?」
コクコクうなずく
「片付けが終わったら、装備を外に出して寝ろ。見張りは俺がやる、異論は認めない!」
ビシっという。
「あと、外で作業するから覗くなよ?分かったな?二度は言わん」
「「「「はい」」」」一同
その後、片付けが終わり布団に入り寝たようだ。
さてと、装備を確認するか。とりあえず鑑定すると、Lv13の装備しかなかった。ダメだろこれ。初めから作るか悩んだが、銘が残ると中古でマーケットに出て後々面倒な事になりそうなのと、体に合わせる微調整で時間がかかるのとで、強化の方向で行くことにした。強化であれば銘は残らないし、調整もいらないからだ。
あいつらLv14だろ。あと数回の戦闘で15になりそうだった。であれば+3まで強化すればLv16でちょうどいい。逆に手持ちの材料では、ここまでが限界だった。
防音設備を兼ねた簡易工房を出して作業をする。5時間ほどで作業は終わった。コテージに入るとシズクが起きて抱き着いてきた。心配してくれていたようである。頭をなでてあげると頬を膨らませている。なんか間違えたか?そうこうしてるとサーラとルルも俺に気が付いて起きてきた。俺に休むように合図したので、休むことにした。
ひそひそと話声が聞こえてきたので目を開ける。睡眠を必要としないし、外の気配に気を使いながら目を瞑りリラックスしていただけだ。1時間ほど経ったようでHPMP完全回復していた。戦闘などしなければ休む必要もないのだが、ここはダンジョンなのだ、油断はしない。俺のミスで仲間が傷つくのは許せないというか後悔したくないのだ。
コテージから出るとリティス達が装備を装着して喜んでいるようだ。こいつらは油断するから、きちんと説明しないとな。
「お前たちの装備を強化した。だけど装備のLvがお前たちよりも上だと分かるか?」
コクコクうなずく。またかよ、こいつらは・・・
「だけど、お前たちのLvとかけ離れていないのと、使い慣れた装備の効果もあって、それほどマイナス効果は出ていないはずだ。実感できるか?」
コクコクうなずく
「で、前に説明したことを今なら理解できるか?」
コクコクうなずく
「よろしい。たぶん戦闘の幅が広がると思うが、強くなったわけではなく本来の力が出せるようになっただけだから油断はするなよ。油断すれば結果は同じになるからな。」
「「「「はい!」」」」
良い返事だ。
ここで一つ問題が。少人数PTのダンジョンを2PTでクリアすると経験値は入るのだろうか?ボスを倒したクリア報酬が2PTにでるなら問題ないのだが考えても仕方ないか。
道中の雑魚はリティス達に狩ってもらい経験値を稼いでもらおう。ボスのみ共闘でやってみて結果を見ることにした。
案の定、魔物を2集団狩ったところでリティス達はLvが上がったようだ。そのまま順調に進みボス前に来たところで作戦タイムを取った。
「ではここのボスの攻略だ。通常なら1PTで倒す魔物を今回は2PTで挑む。だからと言って油断するなよ?」
コクコクうなずく
「魔物がタコなのは知っていると思うが、気を付けるのがこいつのコンボだ。」
コクコクうなずく
「俺たちがいくつコンボ打てるか知ってるか?聞くまでもないな、答えは3連だ。当たり前だな。でも魔物にコンボの上限はない。だったらどうすればいい?」
「攻撃でコンボを断つですか?」
リティスが学校で習う答えを言う。
「半分正解だ。もう半分はタンクがそれを捌くだけの技量を磨くことだ。今はまだいい、だがこの先Lvが上がるにつれてコンボを断つだけではどうにもならなくなる」
コントローラーでやっていたときは、スタン技で簡単に攻略できたがリアルでやるとなると意外と難しい。それが高レベルになると、ポチっとボタンを押すように簡単に出来るとは思えないのだ。もしかしたら簡単かもしれないけど油断は禁物だ。これ以上口で言っても理解が出来ないと思ったので先に進めた
「今後のために、ここで先につながる戦闘をしていこう。体で覚えるんだ」
みんながうなずく
「大丈夫だ。俺の指示通りに動けば、多分理解できる」
コクコクうなずく
「まず計8本の脚?手?、どっちでもいいが俺と、リティスで4本ずつ受け持つ。次にアタッカーはタンクがヘイトを取っている脚を攻撃するが、ここではヒットアンドアウェイで頼む。深追いは無しだ。」
「もちろん、俺の受け持ち分をウッドが攻撃しても良いし、リティス分をサーラが攻撃しても良い。とにかく視野を広く持ってくれ。それだけでも攻撃力アップが期待できる」
視野を広くすることはとても重要である。一点に集中すると視野が狭くなり悪いことではないが多数と戦う場合などでは俯瞰で自身を見る事が必要だ。仲間の位置、敵の位置を知ることで自分の立ち回りが行いやすくなる。肉弾戦のガチタイマンであれば一点集中は必須だが、ダンジョンにおいて一点集中は隙を作るだけになってしまう。例えるなら車の運転もそうだろう。一点ばかり見ていたら不意に飛び出しなどがあった場合対処できない。常に見える範囲すべてを隈なく観察すれば事故も限りなく減る。
これは愚痴になってしまうが、仕事で車を運転する事が多々あり、沢山事故も見てきたせいかTVでドライブを楽しむとか言っているのを見ると神経すり減らして運転しているのに楽しめるわけねーよと思った。同乗者は良いかもしれないが運転者は常に周囲の状況を把握しなければならない。怠れば事故の確率は格段にあがるのだ。
「ヒーラーは各PTメンバーにヒールの準備と、ここ大事だからな、状態異常回復魔法がいつでも出せる準備をたのむ」
シズクと月花が頷く。
「俺と、リティスは予備で状態異常回復薬を準備して自分で状態異常を治す。なぜだか分かるか?」
リティスが頷く。
「そうだ、俺たちタンクが崩れても待っているのは全滅だからだ。あともう一つあるがわかるか?」
考えている。時間がもったいないので
「もう一つは、長引かせても俺たちには不利にしかならない。魔物の体力は俺たちより上だ。ましてボスクラスとなれば言わずもがな。シズクや月花が俺たちタンクに状態異常回復魔法をかけるくらいならアタッカーの状態異常を治してもらい十全の攻撃を確実に与えたほうが戦闘は結果的に短くなるよな?」
もうみんな理解できたようだ。MPも有限なのだ。であれば、もう言うことはない。
「いくぞ!」
みんなの目に迷いはなかった
戦闘はあっけなく終わった。リティス達はきちんと理解していたようなので問題なかった。センスがあったのだ。良いPTだ、油断さえしなければ満点だな。クリア報酬の経験値も入ったので俺たちは皆Lv19に、リティス達は16になった。
ん?あれ?ということは簡単にPL出来んじゃね?MMOだったら修正入るけど、リアルならばPLで上げても戦闘経験がなければ今後間違いなく死ぬからな。リアルでそんな馬鹿なことをする奴がいないってことか。しかーし、俺にとっては大収穫だったのだ!何がって?それはそのうち分かります。
のんびり書いていきます。