雲の旅団
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「おめでとうございます。これで皆さんDランクへ昇格しました。あとDランクになるとチーム名の登録が必要になります」
「え、そんなんあったっけ?」
「えぇ、決まりですので」
どうしよう・・・名前を付けたことでギルドに縛られたくないし・・・。うーん困った・・・振り返り皆を見ると俺を見ている。俺が決めろって事ね・・・。
はぁ・・こういうの苦手なんだよねぇ・・・えーっと、自由に旅をするチーム・・・雲のように・・・となると・・・
雲の旅団だな。
「雲の旅団でお願いします!」
後ろからは好意的な視線が送られてきていた。皆が気に入ってくれて良かったですよ。
「かしこまりました。レッドをリーダーとする雲の旅団を登録します。宜しいですか?」
俺は頷いた。
「では・・・登録完了いたしました。今後ともよろしくお願いします!」
えぇそうなんです、あれから一月半経過し、俺たちはランド王国の首都ランドへ来ているんです。ロマナを拠点として<古墳>、それからクジンを拠点として<魔の渓谷>を攻略してLvを30まで上げたんですよ。あと、この国でやることは上級職への転職で、転職に必要な英霊の石碑は国が管理しているため申請が必要なのでモッチョに任せることにした。
「とりあえず、ここでの用事は終わったから帰ろう。みんな夜まで自由時間にしよう」
ギルドでの事務仕事は終わったので、各々自由時間にすることにした。
「兄貴、マーケットに行きません?」
「おう、いいな。首都って初めてだから楽しみだ」
ウッドからお誘いが来たので乗ることにしたが、何やら女子組の出鼻を挫いたウッドが蛇に睨まれたカエル状態になっていた。
「いや、また今度で良いっすけど・・・」
女子組の圧力に負けたのか弱気なウッドだったが、俺も見学したかったので押し通した。
「いや、今後の事もあるから行くぞ」
俺の言葉で女子組が諦めたようだ。女子組のくらーい雰囲気に悪いと思ったが流通やら商品の売れ筋などチェックしなければならないことは沢山あったので諦めてもらった。
「サーラ達もみんな一緒に行くか?」
まぁしかしそれでは可愛そうなので一言声を掛けると、パァァァっと女子組の顔が華やいだ。
「「「「いくーーー」」」」
やはり笑顔が一番!
「よっし、みんなで行こう」
ランドのマーケットにもファング製、ルーク製の商品が沢山あった。どちらも大人気で何よりだったが、どちらにも俺達が作っていない商品があったがブランドマークが入っており作りもしっかりしているので偽物ではないと思われる。モッチョ氏お抱えの製作者達がファングチームに編入されたのだろう。俺の顔に泥を塗らないように何かあった際にもしっかりとした保証がされるようで保証書なるものまでついてくるようだ。
「ファング製は品質もいいけど、私達にはレッドさんが居るから必要ないわね」
リティスさん、ファングって俺なんだけどって言いそうになるが我慢。
「ファング製も素敵だけど、私はルーク製のアクセも良いと思うわ」
リーズちゃん、それお兄ちゃんが作ったものだから!言いたい。でも言ってしまってみんなが変な事件に巻き込まれても困るしねぇ。みんなが強くなるまで黙っていよう。
「でもなんか、ファング製の物は暖かい感じがする」
そんな中シズクの鋭いコメント。かなりドキッとしたが平静を保った。
「そうですね、手に取ると何故か馴染むというか何というか」
月花ちゃんまで。
「レッドはもっと凄いものを作れるにゃ!」
ルルよ・・・その通りだ。そうなんだよ。もっと良いの作れるけど、今の冒険者では使いこなせないからある程度で作っているんですよって言いたいのを我慢。
「レッドなら出来るわよね?」
サーラさんが返答に困る難しい事を言ってくる。
「えぇまぁ・・」
この「えぇまぁ」は色々な会話で上手く逃げたいときに重宝している。隣のウッドを見ると顔を合わせないようにしているが、肩が震えて笑いを堪えているようだった。
「何よ、いつものレッドらしくないわね」
「まぁ、転職したら装備更新するから。転職すればアンコモンが装備できるようになっているはずだから期待してくれ」
サーラからの鋭い突っ込みも上手くかわす、いや押し通す。
「何か腑に落ちないけど良いわ、期待しているからね」
何とか逃げ切ることに成功した。
そういえばモッチョに頼んでいた洋服店が出店したと言っていたがどこだろうと探していると、大通りの一等地に某〇ニクロっぽい店が見えた。
「あそこに行ってみよう。みんなの分も俺が買ってやる」
普段着が欲しかったんだよね。パーカーとかジャージとかね。お店に着くとみんな店内に散っていった。
「何かカラフルっすね」
「だけど定番の型ばっかりだから製作コストは抑えられるんだ」
「でも見たことない服ばかりっすね」
「これからだからな。浸透するまで赤字だろうけど、そのうち波が来るから見てろって」
「まさか、これも兄貴の案っすか?」
「そうだよ。モッチョ氏に頼んで作ってもらった」
店名はファングブランド傘下にモッチョ氏に因んでmottoを作った。
「ウッドも部屋着とか普段着選んで来いよ」
「行ってくるっす」
俺は試着した普段着とその色違いを2色、部屋着を3着色違いで購入した。パーカー、ロンT、ジーンズとジャージだ。どうやらウッドも俺と同じものを選んだようだ。女子組はみんなで色々とコーディネイトして楽しんでいた。みんな気に入ったのか大量に購入してくれた・・・支払いは俺だけど。
そのあと、喫茶店でお茶をして洋服の話で盛り上がり宿屋に戻ることにした。その帰り道で大通りへ向かうと何やら騒がしいので、その騒動の場所へ向かった。
「何か人族の子供が騒いでいるにゃ」
人だかりをかき分けルルが確認してきたので、俺も騒動の中心に向かった。
「駄目だ。ここで商品を売りたければ免許証をきちんと交付してもらわないと許可できない」
国の警備隊の人がもっともな事を言っている。
「なんでだよ!お母さんが病気で代わりに俺が売って何が悪いんだ」
「お前が免許を持っていれば何も問題はない。だが持っていないだろう」
「お母さんのなら、ここにあるよ」
「駄目だ、登録した本人でなければ駄目なんだ」
役人って法律に縛られているから融通が利かないんだよね。例え相手が子供であってもね。
駄目だ、子供の嘘のない一生懸命さを見ると、見ていられなかった。
「坊主!ここに居たのか!待ち合わせは宿屋だって言っただろ!警備隊の方たちに迷惑かけるなよ」
警備隊をすり抜け子供を確保。
「何だ、お前は」
「この子に商品を依頼していて、待ち合わせに遅れたから騙されたと思ったんでしょうね。帰るに帰れずマーケットに来たんでしょう。本当にご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
ウッドに目配せすると、警備隊に迷惑料をこっそりと渡してくれた。
「まぁ、それならいいが法律を守る様に言いつけるんだぞ」
仕事はきっちりこなしつつ、賄賂もしっかり受け取ってそれ言うか?と思ったが顔には出さずやり過ごすことにする。
「はい、申し訳ありませんでした!」
俺は頭を下げてやり過ごした。
で、この子どうしましょうかね。
のんびり書いていきます。
読んでいただいている方に感謝です。




