姉妹ブランド
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昨夜はかなり遅い時間まで飲み食いしたのだが、早朝女子組が起きるよりも前に俺とウッドはモッチョ氏が用意してくれた個人工房へ向かった。
「でかいな」
「広いっすね」
二人の開口一番だった。2人で作業するには大きすぎる工房でモッチョ氏の期待が現れていた。プレッシャーとありがたい気持ちが半々かな。
「で、ウッド、名前は何にしたんだ?」
「モッチョ氏と相談してファングの姉妹ブランドでアクセサリ専門のルークを立ち上げるっす」
「ルークか、かっこいいな!」
「兄貴にそういってもらえると嬉しいっす」
さてと、ウッドには何を作ってもらうか。うーん・・まずはリングだろうな。
「とりあえず価格を抑えたシルバー系で普通の女の子が使うことが出来るものを作ってくれ。装飾は凝ったもので頼むよ」
「アンコモンまでなら作れるっすよ?」
「いや、冒険者用は俺が担当するから、お前は一般用を作ってくれ」
「なぜっすか?」
「冒険者と一般人のどちらの人口が多い?」
「!!!、そっすね!わかったっす」
理解が早くて助かる。冒険者は総人口の2割居るか居ないかだ。だったら8割の人が皆使ってくれるものを作った方が儲かる。方向が決まれば、あとは作るのみなので2人で泊まり込み、3日間籠って作りましたよ。
「最初は広すぎって思いましたけど、ちょうど良かったっすね」
床に寝ころびながらウッドが言う。その顔には疲労もあったが、やりきった気持ちの良い笑顔だった。
「だな、でも頑張りすぎたな」
かくいう俺も床に寝ころび疲労困憊ながらも、製作Lvが上がったことで大満足の笑顔であった。あれだけ広かった工房も隙間が殆どなくなっていた。そこへ、タイミングよくモッチョ氏と番頭達が工房へ来た。
「ファング殿、ルーク殿、こ、これはまた・・・」
扉を開けて入ってくるなり、量と質に驚いているようだった。
「明日出発だろ、後は頼んじゃっていいかな?これからルークと昼食をとって明日に備えたいんだけど」
「えぇ、もちろんです。お任せください」
俺たちは街の繁華街へ向かった。あれが食べたいなと思い探すと・・・・あった!何かって?牛丼ですよ。
「ウッド、あそこに行くぞ」
ウッドを連れて中に入り店員を呼ぶ。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」
「ここって、キ〇グ牛丼ありますか?」
「キングって何ですか?」
店員さんが聞いてきたので、通常の牛丼の肉が6倍、ご飯が2.5倍でと説明する。
「はい、かしこまりました・・・少々お待ちください」
と言って店員さんが奥へ行く。店長に確認を取っているのだろう。
「大丈夫みたいです。1つでいいですか?」
「2つで頼む」
「俺もっすか?」
「そうだ、ウッドよ強くなるには食べるんだ!ミンクちゃんのためにも」
ミンクちゃんを出せばウッドは何でもやってくれるはず。
「やるっす!ミンクちゃんのためにも」
ちょっとイミフだが良いだろう。やる気を出してくれた。
山盛りの牛丼が2つ運ばれてきた。御飯が約700g肉約500g合わせて1200~1300g位だ。
「ウッド、味わったら負けるぞ」
味わって食べているとすぐに満腹になってしまうのだ。
「一つ教えてやろう。生卵をかけて、この熱々の牛丼を冷まして一気に飲み物の様に流し込むように食べるんだ。牛丼は喉越しだぞ!」
初心者は熱で速度が落ち、いつの間にかお腹がいっぱいになって食べられなくなるのだ。生卵をかけ、肉を冷ましつつ卵かけご飯状態にして流し込む必勝法だ。牛丼は飲み物ですよ!
「わかったっす!」
生卵を6個頼み3個ずつかけて一気に食べた。
余裕の完食。
「兄貴の言った通りです」
「だろ、俺は嘘言わねーよ、たぶん」
「たぶん?まぁでも、これで俺も少し強くなったすかね?」
は?牛丼食って強くなるわけないじゃん。
「えぇまぁ・・」
流すことにした。
「さてと、みんな待ってるから宿に帰るか」
「そっすね」
仕事もこなし、腹も満腹になったことで二人とも足取り軽く宿屋へ向かう。明日からは南東に位置するドラドの港町を目指す。距離があるので野営も視野に色々と準備をしなければならない・・・と思ったが、モッチョが何とかしてくれるんじゃね?いやいや自分で何とかしよう。女子組のご機嫌取りもかねて必要なものを買いに連れ出すか、などと甘く考えていた。
その後、宿屋へと帰った俺には、放置され不満爆発の女子組にいろいろと夜中まで連れまわされ詫びプレゼントを買わされるという奉仕が待っていたのは言うまでもなかった。食べる物や買うものが決まっていれば良いのだけれど、決まっていないものだから延々と歩き続けるという苦行。女子のお買い物って大変よね。次からは仕事で外出するから留守番する様に!って言っておかないと、心に誓った俺であった。
のんびり書いていきます。




