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商談ですよ!?その2

25


 翌朝、リビングの方が騒々しいので大部屋から確認すると、トイレ前に順番待ちの行列が出来ていた。どうやら昨日のラーメンの脂でお腹が緩くなったようです。


「ふっ、勝ったな」

 俺は一人呟く。


「ちょっと、ウッド早くしなさい!」


「サーラさん、無理っす。あと5分待ってくださいっす」


「お兄ちゃん、早く」

「ウッドちゃん、分かっているわよね?」

「ウッドさん早くしてください」

 ウッドが体の内と、外からの口撃でフルボッコだった。このままでは収拾がつかないので、急いで宿屋のオヤジに他の部屋のトイレを使えるように頼みに行った。


「オヤジさんが他の部屋のトイレ開けてくれたぞ。みんなそっち行け」


「レッ君ありがと」

「ありにゃ」

 そう言うと女子組が部屋から一斉に出て行った。


「ウッド、のんびりでいいぞ」


「ありっす」

 これでウッドも心置きなく用を足せるというものだ。そしてトイレ戦争が落ち着くころに、みんなを集めた。


「とりあえず、鞍作ったから渡すな。受け取った人から馬と初期設定してきてくれ。それが終わったら、朝食後出発するから荷物をまとめておくように」

 そう言って装備を渡していく。


 2時間後、馬車内で・・・・・


「なぜにゃ・・・」

「おかしいですわね・・・」

「そうね・・・」

「兄が細工したとか・・・?」

 馬車のメンバー分けが出発時と一緒だったことに疑問を抱いている人たちが居たようだった。かなり後にウッドから聞かされて知ったが、クジに細工をしていたみたい。バレたらやばいっしょと思ったけどバレてはいないので俺が言わなければ良いだけのこと。これでウッドの弱みを握ったな、フフフと内心ほくそ笑む。


 北部の村を出発して6日目の夕方にヨルダの街に到着した。


「えっーと、あの、そこの方」

 ん?俺か。ふと声のする方を向くとギッシュ・・もといモッチョが居た。


「おぉ、モッチョ氏。どうした?何で俺が帰ってくるのが分かったんだ?」


「それは、北部宿屋の主人から連絡がありまして、そろそろ着く頃かと思い待っていました」

 小声で何とお呼びすればと聞かれたので、レッドで頼むと伝えた。


「宿屋の親父もモッチョ氏を知っているみたいだったけど知り合い?」


「あの宿屋も、うちの系列なんですよ」


「あ、そうだったのね」

 今考えると、他とは比べようもない位豪華な宿屋だった気がする。


「それで馬舎を用意していたのですが、馬が見当たりませんがどうされたので?」


『それがさぁ、馬だと思ってたら幻獣だったんだよねぇ』

 モッチョに近付き小声で答えると


「はぃいぃ、幻獣ですとーー!」


「モッチョ氏、声大きいから!」


「これは、申し訳ないです」


「呼べば来るから、馬舎必要ないみたい」


「そうですか。ならば馬舎の仮押さえはキャンセルしておきます」


「手間かけて、すまないね。あと2~3日後にランドへ向けて出発するから、今度打ち合わせしないか?」


「初級でよろしいですかな?」

 ニヤリとモッチョ氏。


「うむ」

 俺もニヤリ。


 この時、気が付かなかったのだが背後でその様子を伺っているものが居たようだ。


「2日後、商会の裏へ21時で頼む」


「かしこまりました」

 がっちりと握手、そしていつもの宿屋へ帰ることにした。


 2日後の夜、女子組を何とか騙して・・・いや違うぞ、仕事に行くと説明し宿を出たのだ。追跡者が居ない事を確認しつつモッチョ商会の裏手に回り変装グッズを取り出す。


「兄貴、なにしてるっす?」

 ドッキーーン!!!敵意というか敵対リストも表示されていなかったので危険は無かったのだが浮かれて油断していた為かなり驚いてしまった。振り向くとそこには見慣れた男、ウッドが立っていた。


「ちょ、おま、何でここにいるんだ?」


「だって次は連れてきてくれるって言ってたじゃないっすか」


「それは、今日じゃなくてね・・」


「いや、今日ッス!絶対についていくッス。モッチョさんと怪しい笑顔で話していたからわかるッス。聞き耳たててたッス」

 あの時気配がしていたんだけど、ウッドだったのか。・・・しょうがない。


「わかったよ。正式にお前をモッチョ氏に紹介するよ」


「マジすか。あざーっす」


「じゃ、いくか」

 ウッドを連れて裏口で待つと時間通りにモッチョ氏が裏口から出てきた。


「今日はレッドさんで宜しいですか?」


「それで頼むわ。あと今日は弟子を連れてきたがいいか?」


「もちろんでございます」


「一応、下級職人ランクなので、もう少ししたら納品させるようにするよ」


「それは、ありがたい。最近ファングブランドが品薄で困っていたところです」


「ファングって何すか?」

 あららバレたな。もう隠すのはやめよう。


「俺の生産した装備がファングブランドとして売り出されていて結構人気らしいよ?」


「そうなんすね。今度マーケットに見に行ってくるっす」


「ささ、こんなところで話していても時間がもったいないので馬車へどうぞ」

 モッチョ氏に押されるまま金馬車に乗り込み、いつものお店へ着き、VIPルームへと入った。今夜は美女20人がスタンバって待っていてくれた。何故か急に大人しくなったウッドを見ると緊張して動きがぎこちなくなっていた。


「では、レッド様、乾杯から」


「今日は弟子を連れてきたのでよろしくね」

 ウッドを促す。


「ウッドです。今日は優しくお願いします」

 優しくってなんだよと笑ってしまった。


 今日は本当に商談というか相談があったので、モッチョ氏に別室で少し話したい旨を伝えると、別室に案内された。モッチョ氏への相談というのはランドへの旅程の事だった。ウッドはすでに大分出来上がって心配だったが、高級酒だから明日には響かないと思うし、モッチョ氏直属である歴戦のお姉さん達なので悪い様にはしないはず。


「モッチョ氏、単刀直入に言うが、今後俺達と一緒に旅をする気はないか?」

 俺は部屋に入るなり、すぐに本題に入った。


「私も同じことを考えていました。一緒に行動すれば商品がすぐに仕入れられる利点があり、レッド様たちにも私の情報網が手に入る利点があります。」

 モッチョ氏も回りくどく話すタイプではなく、すぐに答えてくれた。サラリーマンの管理職にいたでしょ、セミナーに行って習ったことを実践する人や、会議などで長々と話して、結果どうするの?って人。あとコスト意識が大切だからフロア間移動のロスを減らせとか言いながら、自分自身がフロア間行ったり来たりして面と向かって話さないと駄目な部長とか。内線とかメールで済ませろよ!って内心みんなで目配せして突っ込んでたっけ。


「では決定事項として受け取っていいか?」

 ウィンウィンだな。


「もちろんです。モッチョ商会は一蓮托生でついていくことをお約束します」


「その言葉を待っていた。ならば俺もモッチョ氏に隠し事をするのはやめよう。俺たちは戦闘職をLv100まで上げ、俺は製作・採集職も100まで上げる。今後流通していないものも作れるだろう。そうなると今後どういうことが起きると思う?」


「はい、装備品の出来をみた各国が貴方を取り合うでしょうし、Sランク討伐にも強制的に駆り出されるでしょう」


「そうだ、まっぴらごめんだ。国は個人など助けてくれないし、ギルドも同じだ」

 国は国益が絡まない限り基本的に個人を助けてくれることは無い。逆に国益の為なら個人を抹殺する事をしてくるだろう。だから強くならなくてはいけないのだ、みんなを守れるくらいに。


「ですね」


「そこで、流通に関して名が売れているモッチョ商会の出番なんだよ」


「レッド様とファング殿のつながりは出ないよう十分気を付けますがね・・・」

 なぜ言いよどむ?


「北部ゴブリンが名も無き冒険者に討伐されたと噂がたっております」

 あ、俺達やん・・・


「幸いにも北部の村は閑散としていて冒険者の目撃情報が少なかったため顔は割れていませんでしたよ。一応偽情報は流しましたけど気を付けてくださいね?」


「おぉすまんね。ありがと」

 頼りになるな、モッチョ氏。


「で、明日には出発したいんだけど、キャラバン用意できるか?」


「もちろんです。以前お話を伺った時から準備はしておりました」

 流石モッチョ氏!って万能かよ!


「じゃ、今後もよろしくな。お互いに裏切りには相応の対価を!」


「対価を!」

 がっちりと握手した。


 これで、商談は終わりだけど、かなり話し込んでいたようだった。VIPルームに戻るとウッドがかなり酔っているようだった。だが酩酊状態では・・・無い様にも見える。


「モッチョ氏、今日はありがと。そろそろ帰るよ。」


「そうですか。今日はあまり飲んでいないようですので中級あたり行きますか?」


「明日から忙しくなるし、仲間が待っているからやめておくよ」

 ほんとは行きたいっす。でもウッド居るし、みんなが待っているからって良い人アピールしてみる。


「なんすかぁぁぁ、中級ってぇぇぇ」

 おいウッド、完全に酒にのまれてんじゃねーか・・・


「なんでもない、帰るぞ」


「いやっすぅぅぅ、ボッジョさぁぁん、俺行くッスぅぅぅ」


「そんな状態で行ったら相手にも迷惑だろ。帰るぞ」


「どういたしましょうか」

 困る俺とモッチョ氏。


「このまま馬車に乗っても嘔吐してしまうかもしれませんので、私がウッドさんを朝まで介抱しますわ」

 ん?


「君は?」


「新人のミンクです」

 ホビット族の可愛らしい子だ。新人って大丈夫なの?モッチョ氏を見ると頷いているので大丈夫なのだろう・・だが心配だ。


「では私の部下が明日朝迎えに来て、そのままレッド殿と合流するように致します」


「では、それでお願いします」

 そう言って宿への帰路についた。馬車を用意してもっらたが今回は歩いて帰ることにした。今日はウッドの一人勝ちみたいで釈然としないが、楽しんでくれたなら良しとしよう。次こそは俺も。


のんびり書いていきます。

読んでくださっている方に感謝。

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