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あたしの中では黒歴史さ!

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 ナー爺が動き出すのと同時にアユも歩を進めた。アユの正面に立つのはヤーキェルと同じく白い衣を纏い一対の翼をもち、俺が言うのもなんだが不自然なほどにイケメンだった。不自然というのは違うか・・・非の打ち所がないほどのイケメンだった。いや、そもそも男なのか?女性だったとしてもおかしくないほどの美女・・・いやどっちなの?


 「久しぶりだねゼール。あんたが私たちを隔離した時以来じゃないか」


 「お久しぶりです、アンラ・マンユ殿。そうですね、我が神の命令で行った隔離以来ですね」


 「その言い方だと命令でやっただけで自分に非は無いと言うことかい?」


 「おかしな人ですね。神の言葉は絶対です、そこに自分の意志など無いので、非、というものも存在しません。」


 「なら、あんたの神が死ねと命じれば死ぬんだね?」


 「勿論です。しかし神が私を見捨てることなどありません」


 「そうかい、よぉーく分かったよ、あんたって奴がどういう奴なのかね」


 「理解してくれたのなら僥倖です」


 「ふんっ、あんたが馬鹿で間抜け野郎ってことが良く分かったよ!」


 「おや、それは聞き捨てなりませんね。私を侮辱することは我が神への侮辱になります。訂正しなさい!」


 「いや、しないよ。過去の私の気持ちを清算することが出来て、これ以上の喜びはないよ!訂正してほしいなら力ずくでやってみな!」

 アユが緑のオーラを放つ剣を構えた。


(おいぃぃ、あれってアユに渡そうと思って収納していた世界樹の剣インフィニット(裏)じゃん。しかも、よく見たら防具もhope装備じゃね?ビキニアーマーの見た目だけど間違いないよな?よく考えたら勝手にそんなことが出来るレディとメーティスって俺より凄いんじゃ・・・・)


(テヘッ、バレちゃいましたか、さっきも言ったん・・・オット・・・ですが、何となく渡した方が良いかなって・・アブナ・・・思って渡しちゃいました。)


(いや、メーティス戦闘中なんだから、俺の心の声に反応しないで戦闘に集中してくれ!)

 いや、パーティー会話じゃないから聞こえるはず無いよね?どういうこと?ちょっと怖いんですけど・・・俺のプライバシーって・・・


(レッドさん!勝手に譲渡してしまって申し訳ありません。この度の件についてのお叱りは後程二人きりでじっくりと時間をかけて話しましょうね)


(レディも、こっちに意識振らずに戦闘に集中してくれ!お前たちに何かあったらと思うと心配で・・・)


(承知しました。では後程)

 ってな会話をしていると、アユとゼールの剣が鍔迫り合いで虹色の火花を散らしていた。



 「懐かしいですね。私があなた方、天人族へ稽古をつけていた日々が昨日のことの様です」


 「ふんっ、懐かしいなんて思っちゃいないよ!あたしの中では黒歴史さ!」


 「失礼ですね、それがあったからこそ、貴方は私の剣と互角に打ち合っているのでは?」


 「へぇ、これで互角って言えてるあんたは素晴らしいね。あんたの剣にはブレが無く基本に忠実で美しいと思うよ」


 「ありがとう、これは神から授かった型ですからね、一分の乱れも許されません」


 「じゃぁ、もしあんたの型の発展したものがあると言ったらどうする?」


 「何を言うかと思えば、また神を冒涜するおつもりですか?私が授かった剣の型は完成形です。これ以上の発展はあり得ませんよ」


 「へぇ、じゃぁこれを受けても同じことが言えるのかい!」

 アユの剣がゼール頬に一筋の薄皮一枚分、長さで言うと10cmほどの筋を入れた。


 「!!!」

 ゼールは自身に剣が届いたことに一瞬動きが止まってしまっていた。その隙をアユが逃すはずもなく


 「今戦闘中だってことを忘れてはいませんかねぇ!」

 アユの斬撃は止まることなく続いた。


 「ありえん、私の剣が負けることなど、ありえないのだ!」

 うわ言の様に呟きながらもアユの剣を捌いていた。心此処にあらず、どこか虚ろな目で感覚だけで受け流すゼールも相当な実力者なのだろう。


 「オラオラオラァ!スピード上げていくよ!」

 アユの斬撃速度が上がっていった。


 「・・・・もう・・・許しませんよ!」

 急激にゼールの魔力量が上がった。


 「はなからそんなつもりも無いでしょうが!過去に行けるのなら、若かった自分に忠告してあげたいよ!純真な乙女の心をズタボロにしてくれたお礼はここで返させてもらうよ」

 斬撃速度が更に一段上がった。


 「もう、許しませんと言いました」

 アユの斬撃をすべて見事に受け流している。


 「あなたの剣は見切りました。発展といっても、ただスピードが上がっただけです。ならば私も速度を上げれば対処可能です。今度はこちらの番ですね」

 ゼールの斬撃速度が上がるにつれて徐々にアユが劣勢に立たされていった。


 「くっ!やはりこのままじゃダメか。本当ならアンタに教わった剣でアンタを倒したかったんだけど・・・さてどっちにするかね」

 アユが一瞬俺を見た。


 (どうした?無理なら引いてくれ!俺が出るから)

 アユが首を横に振るのが見えた。


 「うちの王に心配かけてちゃ、あたしもまだまだって事なのかな。ならまずは」


 「独り言を言っている暇があるのですか?負けを認めるのなら一思いに止めを刺してやろう」


 「見せてあげるよ、私がルシフェル様から教わった剣をね」

 アユの魔力量が急激に上がった。


 「まだこんなにも余力を残していたのか。だがもう遅いこの剣が届けば貴様も終わりだ!」

 ゼールの剣がアユの心臓へ狙いを定め突き出された。


 「流派嗟嘆!この剣に負けは無いのさ!」

 アユの剣がゼールの突きの威力を削ぐことなく受け流したことでゼールが態勢を崩した。


 (何だ、あの剣は・・・流派嗟嘆。あぁサタンか・・・ルシが興した流派なんだろうな。それにしてもゼールの剣も素晴らしかったがアユの剣はそれ以上だな。ゼールの型に磨きをかけ、更にすべての無駄を省き発展させた剣。これは旅団でも取り入れるべきだな。だがアユは負けることは無いが勝つには相当な時間が掛かるだろう。剣の腕は上でも多少の傷を与えるだけでは倒せない。致命傷を与えない限り天使族特有の超回復で回復してしまうだろう。まぁアユの事だから何か考えあってのことだろうと思うけど)


 「くっ、またしても私に傷を負わせるとは・・・許しません・・・許さんぞーーーー」

 ゼールの綺麗な顔が怒りで歪んでいた。


 (うーん・・・やっぱりイケメンは素の状態がイケメンであって、怒ったりすると何かちょっと違うかなって思ってしまった。俺も気を付けなければね)


 怒り状態のゼールに乱れが生じてきた。少しずつだが剣の型が崩れてきているのだ。それを見逃すアユではなかった。


 「待っていたよ、この時を!O!」

 アユの防具で覆われていない肌の露出部分が網目状に覆われていく。よく見るとビキニアーマーから緑の植物の蔦のようなものが伸びて形を整え網目状になっていった。

 その間もアユは隙を見せずゼールと打ち合いを行っており、特に変わったことをしていないのだが、今度は剣が形を変えていった。柄の部分、右手と左手で上下に柄を引っ張ると柄の中央部分から心棒が見え、そこから緑の蔦が伸びアユの腕に突き刺さった。


 「痛っ、B!」


(あれって・・もしかしたら・・・あれだよね・・・)

 俺には分かったが隙が多くなるので使いどころが難しいあれだよな。上手く使うもんだと感心してしまう。これも旅団で採用だな。


 「クソクソクソ!劣等種が調子に乗りやがって!いくら捌いて私に傷を与えても劣等種の剣で私は倒せぬ!」


 「あぁそうだね、今のアタシだけの力じゃ無理だろうね。だけどね!」

 アユも必死に攻撃を入れている。攻撃を入れなければ、ただ剣を打ち合っているだけの素振り練習と変わらないからだ。


 「私は、(バージョン)一人で、(Led)戦って、(リミットオフ)いるわけじゃ、(コード)無いのさ、hope!」

 アユの剣から体までが緑の光で包まれていった。


 「何をするのか知らんが、劣等種ごときの剣で私を倒せるわけがないんだよ!」

 「消えろ私の初恋黒歴史!」

 アユとゼールの言葉が重なる。


 「おっと、そうだ、教えてやるよ。今のは紅の王から貰った武器の固有奥義「エンドレスナイトメア」だよ。そこでゆっくりと悪夢にうなされるといいよ、って聞こえていないか」

 ゼールを切り裂いた瞬間、そこからゼールの魔力を吸い取り世界樹の枝が一瞬で伸び、大きな大木となっていた。


 「いつか、その木が枯れることがあれば目を覚ますことが出来るかもな。それまでは悪夢の中で信じる神に祈りでも捧げるといいさ」

 アユが振り返りガッツポーズを見せる、と同時にアユと同じ天人族から歓声が上がった。


のんびり投稿していきます。

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