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馬ゲッツ!

23


 一息ついて周囲を確認する。追い込まれていた動物たちは一向に逃げ出す素振りを見せなかった。試しに近づき触れても逃げないのでシカやイノシシなどを押しのけつつ馬の方へと向かった。馬が居れば良いので他の動物は邪魔でしかなかった。


「兄貴、なんでこいつら逃げないんすか?」


「わかんね。もしかしたら身を挺して馬を守ってる、とか?」

 どう見ても、馬を中心に動物が周りを囲っていたのだ。


「そうなんすかね。それで、どうやって捕まえるっすか?」

 ウッドに聞かれハッとする。考えていなかった・・・・


「それはだな・・・」

 西部劇では投げ縄で捕まえていたよな。俺に出来るのか・・・。そんなスキルあったかなぁ・・・・などと思考していると。


「兄貴、馬がこっち来るっすよ」

 おや、それは好都合。


「みんな一応ロープ準備で」

 一応ロープだけは準備していたのだ。最悪魔法で眠らせれば何とかなると思っていた。


「「「「「「「はい」」」」」」」

 俺達との距離10m程で馬が止まる。


「ん?」

 俺達が寄る、馬が離れる、寄る、離れる・・・・エンドレス。それを繰り返していて、ふと気付いた。どうやら馬は海岸線にある洞窟へ俺たちを誘導しているみたいだった。


「何か洞窟に誘導しているみたいだな」


「そうね」

「呼んでるみたいにゃ」


「行ってみるか」

 みんなが頷いた。


 馬が洞窟に入り、それに続いて俺達も洞窟へ入った。洞窟内は壁に光を反射する鉱石が多く含まれているせいか、それほど暗くはなかった。5分ほど奥へ進むと直径50m位の円形の空洞に着いた。馬達は空洞の奥に居た。円形の空洞の中心には岩が隆起してできた台座の上に枯れた小さな木があった。

俺はそれに見覚えがあった。だが俺の記憶しているものとは少し様子が違うのだが多分それであっているはず。それは俺のやっていたMMOにあった神樹だと思う。これを登録することによってファストトラベル(瞬間移動・テレポート)が出来るようになる。だが今は枯れていて記憶の姿とは程遠い。とりあえず以前のように魔力を流し込んで登録してみることにした。


「みんなも手伝ってくれ。中心の枯れた木に魔力を流し込んでみてくれ。いくぞ」

 みんなが一斉に魔力を流し込む。すると、少しずつだが木が息を吹き返したように緑の葉をつけ、根元には綺麗な水たまりが出来た。


「まだだ、ありったけ注ぐぞ」

「「「「はい」」」」

 しばらくして、やっと記憶にあるような神樹になった。するとステータスの一部がアンロックされ神樹モノケロスが登録された。みんなもアンロックされたようだ。


「何があるか分からないから、とりあえずMPポーション飲んどいてくれ」

 いきなり戦闘が始まるとは思えないが用心に越したことは無い。ここは俺が知っているMMOの世界とはシステムは似ているが完全に一致していないのだ。


「なんすかこれ?」


「これはいつでもここに瞬間移動できる魔法の木みたいなものだと思ってくれ」


「「「「「「「!!!!」」」」」」」

 普通の人は驚くよな。MMOでは当たり前みたいなものだったからなぁ。神樹も開放できたし残すは馬だな。


「礼を言う。冒険者よ」

 ん?神樹ってしゃべったっけ???


「レッド!馬がしゃべった!」

 サーラ一同、目が点。

 

「あ、馬ね。って馬がしゃべるかい!」

 と馬を見るとオレオレみたいな顔というか馬面をしていた。


「もしかして、馬さんしゃべった?」


「そうだ、私が話している」

 あれ、この世界の動物って話せたっけ?


「勘違いしているようだ。私は馬ではなくウォーホースという幻獣である」

 あぁ!そういうこと・・・でも確かウォーホースって角あったよな。マウントクエもこんなんじゃなかったし。それに・・・いろいろと思案していると


「お主たちが神樹を再生してくれたおかげで力を取り戻しつつある。会話が出来るようになったのも今しがた」

 なるほど!


「お礼というものでもないがモノケロスの神樹を再生してくれた礼として、お主らと契約を結ぼう」

 おっと、これは一石二鳥だな。断る理由がない。


「じゃ、頼むよ。こちらは8人いるが同数契約できるのか?」


「無論」


「お前ら、ウォーホースと契約するぞ。馬捕まえるより楽そうだ」

 みんな未だ理解していないようなので。俺が見本を見せることにした。


「俺と契約してくれるのは、どの幻獣だ?」


「お前は何か懐かしい匂いがする。この私が契約しよう」

 先ほどから話していた一回り大きな漆黒の馬だった。


「俺の名はレッド、汝?」


「我の真の名はボレアレス」


「ボレアレスは我が足となり翼となり牙となり共に行動することを誓うか?」


「主死すまで共に行こう」


―――契約は結ばれた―――


 俺に倣いみんなも契約をした。


サーラは赤っぽいキグス

ウッドはオクス

ルルは黄色セス

シズクはフェニ

リティスはカリーナ

リーズは茶色カプス

月花は水色アクア


 どの馬も基本黒だが光の加減で多少色が違うように見える。鞍とか無いけど乗ってみると、体にフィットする感じで安定感があった。それを見たみんなも乗ってみる。


「馬は初めて乗るけど馬車より乗り心地が良いかもにゃ!」

「うん、これは乗りやすいよレッド」

 ルルもサーラも気に入ったようだ。


「目的も果たしたし、いったん宿場町まで戻ろう」


「「「「はい」」」」


 早いのなんのって、1時間ほどで町が見えてきた。時速100km出れば早いですよ。落とされないように必死でしがみついてましたから。


「主よ、そんなにしがみつかなくとも、我らは主を落としたりしませんよ」


「ほぅ、言うじゃないか。だったら寝てても大丈夫なのか?」


「もちろんです」

 そうは言われても試しにやってみるほど肝が据わってはいない。リアルでも馬に乗ったことが無いので多少は怖い。いやめっちゃ怖いわ。


「まぁ、そのうち試してみるさ」


「その時を楽しみにしております。主と自由に走り回れる日が楽しみです」


 速度を落として町に入り宿屋の馬舎に馬を入れた。幻獣なので召喚すればいつでも出せるのだが、今は幻獣という事を知られるのはいけないような気がしたので馬と同じ扱いで我慢してもらった。

まぁしかし人が少ないとはいえ俺達の馬はひと際目立っていた。それほどまでに見事な体躯と毛並みも素晴らしかった。馬舎の世話係の使用人も驚いていた。


「これほどの馬が居たんですね・・・初めてみます」


「そうなんだよね。俺達運が良いみたい。この馬さん今は大人しいけど気を付けてね。暴れると手が付けられなくなるかもしれないから」

 嘘は言っていない、ウォーホースなのだから。


「勿論です、こんな素敵な馬に失礼な事なんて出来ませんよ。これほどまでに素晴らしい馬に巡り合えて僕は幸せ者です。人生で一度あるかないかの出会いに感謝です」


「じゃ後は宜しくね。俺達は部屋へ戻るんで」

 そう言って馬舎を後にして宿屋の正面扉を開けると宿屋の主人が満面の笑みで俺達を迎えてくれた。


「おっす。馬捕まえたわ」


「お前らよく無事に帰ってきたな。いやモッチョさんの知り合いなら当然か」


「そうなんだよね、運良く見つかってさ。もうほんと運が良かったよ」


「そうか。見つかって良かったな。それにしても素晴らしい馬だな」


「あ、見たの?」


「おうさ。お前たちが馬に乗ってくるのは衛兵の鐘で分かったからな。店番放り出して見に行ったよ」


「あぁ、鐘が鳴らされていたのね。どうりで人が少ない町なのに沢山いたわけだね」

 鐘の鳴り方で危険かの判断がされているのだろう。俺達が町を出ていくのは衛兵が見ていたのだから帰還の鐘でも鳴っていたのかな。


「それで明日帰ろうと思うんだけど、今日部屋空いてる?」


「がははは、開店休業じゃからな。大歓迎だ」


「多分、また人が増えると思うよ」


「それは、またどうして?」


「何となく」

 ゴブリンを殲滅したことは伏せた。知名度を上げることは身軽に動けなくなる可能性があった。俺は何かに縛られるのは嫌いなのだ。


「そうか?でもお前が言うなら何となくそう思えるから不思議だな。がははは」

「そう?あはは」

 2人で笑った。


のんびり書いていきます。

皆さんに感謝。

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